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2007年01月21日

Thevar Magal

不毛なTV茶番劇には飽き飽きしたので本業に戻ろう。気になるタイトルのエッセイに気になる一節を見つけた。

Kaadhal does not explicitly state the caste background of either the boy (Murugan, a two-wheeler mechanic) or the girl (Iswarya, a class X student). However, it is made amply clear that director Balaji Sakthivel, a Thevar, is 'authentically' portraying a Thevar subculture in representing Iswarya and her family. All we know of Murugan is that he lives in a dirty slum--the door of his house painted an Ambedkarite blue--with his mother.(Outlook オンライン版2005年5月30日号、特集Indian Cinema 1995-2005 中の Politics, Tamil Cinema Eshtyle by S. Anand より)

cvKaadhal.jpgおかげで糞がつくほど忙しいってのに、Kaadhal (Tamil - 2004) Dir. Balaji Sakthivel をもう一回見てしまった。やっぱり傑作だ。低予算映画だったにもかかわらず、大ヒットしたという。助監督の温めていた脚本をバックアップして世に送り出したシャンカル先生はやっぱりたいしたもんだ。

徹底的なリアリズムで描かれた貧乏ヒーローと中産階級ヒロインの逃避行。マドゥライからチェンナイへ、そしてチェンナイの町中を彷徨う未成年カップルの、それはもう見てるこっちまで目に隈ができそうなシンドい旅路。万国共通の深夜の高速バスの寂寥感。ほんのちょい役に至までの、あまりにハマったキャスティング、名前の知られた俳優の登場によってストーリーの先を読まれることを避けたかったのだという。間接的に語られるメインストリーム映画への批判(たとえばプリヤン関連作のこの映画が恐ろしく適切に挿入されたりするのだ)、自嘲(トリプリケーンのむさ苦しい男子寮に住む40がらみの万年助監督が登場するのだがこれは監督自身がモデルかもしれない)。しかし一方でコメディトラックがあり、加えて歌舞シーンは7つも入っていて(嫌々入れたのかもしれないが)、そのうちのひとつ♪Puraa Goondu はお決まりのウェディングソングのパロディとしてよくできてる。

まあ、最も前面に打ち出されたモチーフは、タミル地方都市の中産階級の抑圧性と暴力性というところなんだろうけれど、その中産階級(といってもこの作品中ではかなり特殊で、酒造販売の元締めを行いながらも、街の顔役として非公式な警察機能までもっちゃってる金持ち一家)に具体的なカースト名までが読み取れるとは思っていなかった。

テーヴァルというのは俗に呼び慣わされているカースト名だけど、憂記百科によればこれは名字で正しくは Mukkulathor なんだそうだ。そして舞台となるマドゥライはいわゆる Thevar Belt の中心地。しかし映画中でこのくらい暴力と結びつけて語られるコミュニティも他にない、これは現実を反映しているだけなのか。それともタミル南部を題材にすれば必然的にテーヴァルが登場する、というくらいに有力な集団だということなのか。

マドゥライにあるイングリッシュ・ミディアムのミッション系女学校に通うヒロインが初潮を迎えたことで催される、驚倒するほどに盛大な祝いの宴にやってくる客達。
kaadhal1.jpg

食卓にを持って現れるのがしきたりなのか?こういう部分でタミル人の観客はピンと来るのかもしれない。

一方でスラムにあるヒーローの家。
kaadhal2.jpg

これがアンベドカル・ブルーってやつなのかいな?ちょいと深読みしすぎの気もするんだが、アーナンドさん。

幼い恋が出口なく追いつめられた果ての駆け落ち逃避行、これをリアリズムで描くとなれば当然結末は明るいものにはなりはしないのだが、ラストシーンでヒーロー・ヒロインに救いの手を差し伸べる人物(この役を演じる俳優も全くノークレジット)が実は一番シブい奴、というのがやっぱり少しだけ重苦しい後味を残したのでした。

本日時点での感想まとめ:マサラあってこそのオルタナ系。

資料:The Hindu による監督Balaji Sakthivelインタビュー

投稿者 Periplo : 21:46 : カテゴリー so many cups of chai

コメント

投稿者 Periplo : 2007年02月18日 20:39

>ヒーロー・ヒロインに救いの手を差し伸べる人物(この役を演じる俳優も全くノークレジット)

Krishna という名前であることがかろうじて判明。チェーランの【Autograph】にもチョイ役で出演。しかしこれ以上の検索は絶望的。

投稿者 Periplo [TypeKey Profile Page] : 2009年01月18日 02:54

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