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2008年10月31日

レビュー:Mazha(追記)

mazhaSindhu01jpg.jpgmazhaSindhu02.jpg

そこで先日のレビューの続きである。主演のサミュークタ・ヴァルマー以外にこの映画のキャストでもう一人目を惹いたのが、無垢なバラモンの少女ニャーナムだった。様々な不幸に見舞われながらも自分で道を切り開いていくヒロインのバドラーとは対照的な存在として描かれている。何も考えることなくひたすらに幼馴染の後を追いかける一途さ、小さな世界の中での平穏が失われたためにポキリと折れてしまう哀れさ。そして、許婚に恋人がいたことを知った時、その相手を憎むのではなく、二人の間に割って入った自分自身を責めてしまう無私の純粋さ。このキャラクターがあればこそ、ラストシーンでの運命の無情が観客の胸に突き刺さるのである。そしてこの役を演じる少女が、どこから探してきたんだというくらいの、天性を感じさせるはまり役。

マ映画の脇役には結構詳しいつもりだったけど、この長身で丸顔の女優には2000年公開の本作で初めて遭遇した。そしてこの映画についてのもともとそう多くもないレビューには、ニャーナム役についての言及が(役者の名前すら)見当たらないのだ。これは何か深いわけがあって、というよりはレビューワーにも情報がなかっただけなんじゃないかと思われる。本作DVDは(VCDも)エンディングロールが完全にカットされた状態で終わってしまうので、画面からは知りようがない。ともかく忘れがたい演技、この女優さんについて知りたいと思っていたところ、なんと同年公開の Swayamvarapanthal (Malayalam - 2000) Dir. Harikumar にも出演していたことが分かった。これもサミューちゃん主演映画、ただしこっちではニャーナムちゃんは大したことのない端役、レビューから名前を知るのはますます難しそう。

ところが諦め悪く検索を続けていた最中に微かな手掛かりが見つかったのである。

Sindhu who played as Gnanam, wife of Ramanujam was competent and convincing 100% as a Tamil Brahmin girl. (チェンナイ在住のタミル人らしい Maheshwaran. I さんによるレビュー Mazha - Classical Rain より)

たったこれだけ。なんでこの人が知ってるのか、そしてどこまで信用していいのかもわからない。でもひとまずニャーナム役の女優さんはシンドゥという名前なのだと仮定しよう。

現在サウス映画界で活躍してる女優でシンドゥを名乗っているのは筆者が知る限りで2人だけ。生まれも育ちもバンガロールのケララ人シンドゥ・メーノーンと、先日紹介の出身地不明シンドゥ・トラーニだ。前者(ギャラリー)は一目で分かる別人、後者だってケバ系一筋の問題外。

と、思ったが、待てよ。

シンドゥ・トラーニのこの画像(左)、微かにニャーナムちゃん(右)の面影がないか?
sindhu5.jpgmazhaSindhu03.jpg

慌ててDVDからキャプチャした画像をギャラリーにあげて鑑識にまわしたのだ。で、鑑識課のラル博士の所見はというと、「鼻および耳の形状から判断して同一人物の可能性が高い」ということだった(その後追加で Swayamvarapanthalギャラリーも作成)。

うーん、ネット上では Aithe (Telugu - 2003) Dir. Eleti Chandra Sekhar がデビュー作とされているシンドゥ・トラーニが、実は2000年のマラヤーラム映画2本に出演して渋い演技をしていた?そして例によってというかなんというかオフィシャル・ファンサイトでもそれが全く無かったことにされている。なんでだ?2~3年のブランク(若い娘さんにとっちゃ結構長い時間だ)には何があったのだ?この謎の探求には男のロマンてやつが感じられませんかい? え、そんなもんありゃしない? あ、そう。

とりあえず、長身・なで肩・ぽっちゃり頬っぺ・どんぐり眼のシンドゥちゃんがその後公開のマラヤーラム映画に出てるのを見つけでもしない限り、筆者はニャーナム=シンドゥ・トラーニ説をとって、これからもヲチを続けていくつもりだす。たれ込み大歓迎。

■追記の追記
先日の紹介ではチョイ役が定位置なんてことを書いたシンドゥ(・トラーニ)ちゃん、今年になって主演した低予算映画 Bathukamma (Telugu - 2008) Dir. T Prabhakar が予想外にヒットして連続上映100日超となったという。テーランガナ地方の伝統的な花祭りをモチーフにした映画、久しぶりにカントリー・ガールを演じるシンドゥちゃんだ。しかし、ナチュラルメイクだってのに、Mazha のシンドゥちゃんとあんまし似てないのが気になる。やっぱりちょっと自信がなくなってきたなあ。

Bathukamma01.jpgBathukamma02.jpgBathukamma03.jpg

DVDも発売中。ギャラリーはこちら

■追記の追記の追記 2009.03.21:結局この二人は別人であることが判明。こちら参照。

投稿者 Periplo : 00:30 : カテゴリー so many cups of chai
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2008年10月29日

レビュー:Mazha

Mazha01.jpgMazha02.jpg

マラヤーラム映画でしかありえない、とまでは言わないが、とてもマラヤーラムらしい文芸系の佳作を紹介したい。

何をもって文芸系かというと、文学作品が元になっているという以上に、分かりやすいモラルを前面に押し出しそれに向けてストーリーの全てを収斂させていくという作り方をしていない点が大きい。そして、ところどころにリアリティから遊離した詩的な飛躍がある。かといって晦渋さと象徴性を売り物にした芸術のための芸術でもない。話の流れはメロドラマチックだし、ソングシーンはマ映画に珍しく7つもある。良い意味でのパラレル映画といえるだろうか。登場人物が全員不幸になる類のストーリーだが、メソメソぐずぐずの落涙シーンは少ない。いわば鮮やかな悲劇、カタルシスが感じられます。

cvMazha.jpgMazha (Malayalam- 2000)
タイトルの意味:

DVD版元: Nagan Pictures
DVDの字幕: 英語(歌詞含む)
DVDの障害: 現在のところ特になし
主な販売サイト: Any Tamil

Director: Lenin Rajendran
Music Director: Raveendran
Background Score Composer: Baiju P
Playback Singers: K J Yesudas, K S Chithra, Asha G Menon, Neyyattinkara Vasudevan, Arundhathi
Story Writer: Madhavikutty※1
Producer: G Harikumar
Cinematographer: S Kumar

Cast: Samyuktha Varma, Biju Menon, Lal, Sindhu※2, Charu Haasan, Urmila Unni, Jagathi Sreekumar, Thilakan

【前半部の粗筋 - 完全ネタバレ仕様】
タミル・ナードゥ州南部、ケララとの州境に近いシヴァプラム村※3。ケララ人の医師マーダヴァン・ナーイル (Charu Haasan) は妻 (Urmila Unni) と一人娘のバドラー(スバドラー、Samyuktha Varma)を伴ってバンガロールから帰郷した。ナーイル医師は親の意志に反した恋愛結婚をしたため、長らく故郷に戻れなかったが、これからは先祖伝来の屋敷に落ち着き、村の診療所で住人達を診ながら静かに暮らすつもりでいる。都会での生活に未練がある高校生のバドラーは、村に馴染めず不平たらたらだ。この地では習慣の違いから菜食中心の食事になることにも10代の彼女は我慢ができない。

ある日彼女は村の寺院で同年代のバラモンの少女ニャーナム(ニャーナンバル、Sindhu) と出会う。そしてさらに構内で僧侶ラーマヌージャ・シャーストリ (Biju Menon)に遭遇し、彼の歌うニーランバリ※4とその美声に魅了される。一方、マーダヴァン・ナーイルはラーマヌージャの伯父で育ての親でもあるヴァイクンダ・シャーストリ (Jagathi Sreekumar) を近所のよしみから家に招き、プライベートの場でその歌を披露して貰う。 [Song 1:Parukkulle/Raga:Jonpuri] 見事な歌唱に賞賛を惜しまないナーイルに対してヴァイクンダは、自分と家族が不遇であること、歌の才能が世間的成功をもたらしはしなかったことなどを訴える。その彼はアルコール漬けの生活不能者である。ナーイル医師は娘の希望に応えて、彼女がヴァイクンダから声楽のレッスンを受けられるように取りはからう。ところが昼間から酒に溺れるヴァイクンダは役に立たず、若いラーマヌージャが先生役を引き受けることになった。

バドラーはニャーナムと友達付き合いを始め、彼女を通してラーマヌージャの生い立ちについて詳しく知ることになる。 [Song 2:Geyam Harinamadheyam/Raga:Charukesi] 彼の母はケララのトリヴァンドラムで結婚し、彼自身もそこで学生時代を過ごしたので、一族の中ではマラヤーリーと見なされている※5。父が早逝したために、伯父のヴァイクンダの元で養育されることになった。声楽の訓練もまた伯父によって施されたものだ。伝統に従って母方伯父の娘であるニャーナムを妻として娶ることになるだろうとも。

ラーマヌージャの教室に通い、音楽だけでなく文学についても彼と多くを語り合うようになったバドラーに変化が訪れる。菜食を専らとするようになり、サリーをまとい、村の小川で近所の少女達と一緒に沐浴をするようになったのだ。また彼女は詩作にも多くの時間を費やすようになる。そんな詩の中の一つを父は出版社に送り、彼女の知らぬ間にそれは雑誌に掲載されることになった。ある朝、彼女がラーマヌージャの元を訪れると、彼はそのにメロディーをつけて教室の子供達を前に歌って聞かせていた。  [Song 3:Ithra mel manamulla/Raga:Mohanam]  感激したバドラーはさらに詩作に励むようになり、ラーマヌージャを追い回しては新作の詩にメロディーをつけてくれるよう、そして最初の出会いに彼が口にしたニーランバリのラーガを再び歌ってくれるようせがむのだった。 [Song 4:Aaradyam/Raga:Mohanam]

現代っ子でありながら同時に夢見がちな文学少女のバドラーと、シニカルで寡黙な世捨て人ラーマヌージャは、お互いに惹かれ合っていることに気づいていた。ただし、あくまでも積極的なバドラーに対して、ラーマヌージャは自分の背負った義務を忘れることはなかった。ある日、バドラーは歌によって雨を降らせることができるかとラーマヌージャを挑発し、彼はアムリタヴァルシニのラーガで歌う。 [Song 5:Ashadam/Raga:Amrithavarshini]

やがてバドラーの恋は両親の知るところとなり、医師夫妻は娘を詰問する。将来のない貧乏祭司との恋愛は絶対に許すことができない父親は、ヴァイクンダに金銭的な援助をしてラーマヌージャとニャーナムの結婚式を執り行わせる。その上でナーイル一家はケララの沿海地方に引っ越をすることになり、バドラーの初恋はあっけなく幕引きとなる。

【後半部の粗筋 - 完全ネタバレ仕様】
数年後。コーチンの病院に医師として勤務するバドラー。見合い結婚した夫のチャンドラン(チャンドラシェーカル・メーノーン、Lal)はIT企業の経営者で何不自由のない身分だが、彼女は専業主婦になるつもりはない。しばらく前に父は他界しており、チャンドランと折り合いのよくない母はトラヴァンコール地方の老人ホーム※6に入居している。ことあるごとに小さな波風の立つ結婚生活の中で、それでも良き妻たらんと努めている彼女は、ある日一人で母親の元を訪れる。娘の結婚に乗り気でなかった母は、晩年の父がバドラーとラーマヌージャとの仲を引き裂いたことを後悔し、良心の呵責に苛まれていたことを語る。バドラーは初恋に破れて以来止めていた詩作を母親に促されて再開する。 [Song 6:Manjinte] 傍目には円満に見える家庭生活の中で妻との距離が縮められないことに苛立つチャンドランは、バドラーが詩を書き溜めている日記帳を盗み見し、行間に妻の過去の恋愛を嗅ぎ取る。それを知り激怒するバドラーに対して、チャンドランは昔の恋愛沙汰を知ることも夫の権利だと言い張る。二人の間の溝は深まり、チャンドランは元々多かった飲酒量がさらに増える。インターン時代の恩師 (Thilakan) はバドラーの悩みを聞き助言する。

過度の飲酒が原因で体調を崩したチャンドランの療養も兼ねて、夫婦はアシュタムディ湖のリゾート※7に休暇に出かける。 [Song 7:Varmukile/Raga:Jog] しかしそこでも猜疑心に苛まれるチャンドランと、過去の思い出を守ろうとするバドラーとの間の諍いは絶えず、激昂した夫は彼女に暴力を振るうにいたる。

恩師は彼女に子供を持つことを勧める。その恩師自身、かつて夫婦間の行き違いから妻を自殺に追い込んだという苦い過去を持っていた。芸術家となった一人娘は勝手気ままに生きていたが、精神のバランスを崩して不安定な状態にある。

チャンドランの病的な嫉妬は収まらず、ついには恩師との仲まで疑い始める。もはや関係の修復も不可能とバドラーが感じた時、チャンドランは大量に吐血し床に伏せる。病床に寄り添い献身的に看護するバドラーに夫は許しを請い、一緒に彼女の思い出のシヴァプラムを訪れようと言う。二人が和解したのも束の間、チャンドランはそのまま不帰の人となる。

40日後、一人シヴァプラムに帰還するバドラー。ラーマヌージャの家を訪れたバドラーが目にしたのは、荒廃した屋内でぼんやりと佇むニャーナムの姿だった。突然現れたバドラーを見て驚くこともなく、ニャーナムは語る。ラーマヌージャとの間に生まれた娘は乳児のうちに死んでしまった。そして夫も喉頭癌でこの世を去ったと。そしてラーマヌージャとバドラーの仲を知らず二人の間に割って入った自分を許して欲しいとも。

呆然として寺にさまよい込んだバドラーはそこで目を疑う。死んだと聞いたラーマヌージャの姿がそこにあったのだ。ニャーナムは嫉妬のあまり二人を逢わせまいと嘘をついたのか。寄り添うバドラーにラーマヌージャは彼の家に起きた悲劇を語る。婚礼の夜、妻に誠実たらんとした彼は、バドラーとの間に存在した恋愛感情をありのままに告白した。自分が二人の仲を裂いたことなど考えてもいなかったニャーナムは激しいショックを受け、心を閉ざしてしまう。やがて彼女は深刻に精神を病み始める。後に生まれた娘が2歳の時に頭部に外傷を負って死んだのも、発作を起こしたニャーナムの暴力が原因ではないかと疑われている。

バドラーは訴える。ここにやって来たのは、何ものかを所有したいと思ってのことではない、もう一度だけ懐かしいニーランバリの調べを聴かせては貰えないだろうか。彼女の望みに応えて歌い出したラーマヌージャの歌声は、しかし突然途絶える。彼が走り書きしてバドラーに渡した紙片には、彼が喉頭癌を患って治療中であることが記されていた。

【注釈と疑問点】
※1 本作はマーダヴィクッティの短編小説、Nashtappetta Neelambari(消えたニーランバリ)を元にしている。マーダヴィクッティはマラヤーラム語で執筆する際のペンネーム、カマラー・ダース名義で英語で執筆された自伝 My Story は『解放の女神—女流詩人カマラーの告白』として日本語訳が出版された。イスラームに改宗したため、Kamala Suraiya を名乗ることある。バイオグラフィーはこちらなどを参照。
※2これに関しては後日別にポストを設ける予定。
※3本作前半の舞台。かつて別の所で、本作の舞台をケララ州パーラッカードと書いたが、再度の検証を経てこれは恐らく誤りだったという結論に到った。まず、作中に登場するシヴァプラムの道標がタミル語のみで書かれていること。たとえバイリンガル地域であっても、ケララ州内ではこれはあり得ない。そしてラスト近く、里帰りしたヒロインが列車から降りるシーンで Azhwarkurich の駅名が見られること。アルワルクリチはタミル・ナードゥ州ティルネルヴェーリ郡の小村。ケララ州との州境に近い西ガーツ山脈の麓に位置する。駅は Tirunelveli - Tenkasi 間の路線上にある。また、劇中でのバドラーとニャーナムのやりとりに以下のような興味深いフレーズが見られる。

G:アルワモリ(Aruvamozhi)の向こう側の人間を信用しちゃ駄目。
B:アルワモリって?
G:ここから少し北にあるの。
B:私たちのところではアルワ川(Aluvapuzha)の向こう側の人間を信用するなというのよ。
G:アルワ川って?
B:私の母はアルワ川のもう片方の側の出身なのよ。

とはいえ、ロケ地自体はパーラッカードに非常に良く似たものに見える。この舞台の特定は今後の課題として残る。

[11.06付記]別の場所で祭司の一家をアイヤルとしたのもおそらく誤り。ラーマヌージャ、ヴァイクンタ(ヴィシュヌ神の棲家)というのは明らかにヴィシュヌ派(アイエンガル)の名前。
※4ラーガの名前。明るく穏和で、睡眠に誘う効果があると言われている。語としての意味は「青衣」「青空」「青い蓮」など。実のところ、作中フルコーラスで歌われる楽曲にニーランバリ・ラーガを用いたものはひとつもない。冒頭とラストでラーマヌージャが口ずさむ数フレーズだけなのだ。サントラCDを聴くと、これが長大で華やかな[Himashaila/Raga=Raagamalika:Neelambari, Karahara Priya, Kalyana Vasantham]のほんの出だし部分であることが分かる。随分と贅沢な使い方をしているのである。現状でサントラCDはネットショップ上に見当たらないので、試聴はこちらなどで。
※5本作前半部では、バドラーの家族内の会話、およびバドラーに話しかけるラーマヌージャとニャーナムの台詞以外は全てタミル語。このバイリンガル性もまたマラヤーラム映画州境ものの際立った特徴のひとつ。
※6コーヴァラム・ビーチにある老舗のリゾート Somatheeram Ayurvedic Health Resort がロケ地となっている。このホテルは他のマラヤーラム映画でも時々舞台として使われていることがある。
※7こちらはコッラム郡にあるアシュタムディ湖の高級リゾート Ashtamudi Resort が舞台。

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【寸評】
-歌の力で雨を降らせることができる? -できるさ、君の心の中になら。
(Song 5:Ashadam/Raga:Amrithavarshini の導入部分)

この台詞だけ切り取ると、イイ歳した大人が見るに堪える映画とはとても思えないのだが、主演のサミュークタ・ヴァルマーのたぐい稀な清新さと瑞々しさが、こんな少女の夢のシーンを描き切って少しも嫌味がない。その一方で後半の、様々な苦い現実に直面した既婚女性としての部分では、別人かと思えるほどの落ち着きと色香が立ち上り、圧倒される。1999年にデビューして2002年に結婚引退(本作で共演のビジュ・メーノーンと)するまでの短い期間、サミュークタはまさに大輪の花として咲き誇っていたのだが、いわゆるメジャー系作品は少なく、字幕つきディスクで見られるのは現在のところ本作と Thenkasipattanam (Tamil - 2002) Dir. Rafi ぐらいなのが残念。Udayananu Tharam (Malayalam - 2005) Dir. Rosshan Andrrews の中で、「いい具合にキャリアを伸ばしてる女優がいると、必ずどこかのウマの骨がその娘をさらっていきよる」という台詞が出てくるのは、このサミューちゃんとマンジュ・ウォリア(活動期間1996~1999年、ディリープと結婚して引退)のことを言ってる訳だ。サミューちゃんをサポートするウマの骨、じゃなかったビジュ・メーノーン、ジャガティ・シュリークマールも、通常の決まりきった役どころとは違うキャラクターを見事に演じていたと思う。

女性が主人公、ハッピー・エンディングにならない、などの点で一般的な娯楽映画とは一線を画する。しかし音楽シーンの充実では、逆に通常のマラヤーラム娯楽映画の水準を遥かに超えており、インド人が言うところの「ミュージカル映画」のカテゴリーに入れるべきものと考えられる。 2005年に死去した作曲家ラヴィーンドランは、1970年代末から活動していたマラヤーラム映画音楽界の巨匠。その作風をここで一言で述べるにはあまりに巨大な存在だが、古典に傾斜した本作サントラも高く評価されてしかるべきものだと思う。バックグラウンド・スコアを担当したバイジュPについてはプロフィール不明だが本作で州映画賞を受賞している。時にラヴィーンドランの楽曲に被さって使われることもあるBGMが素晴らしい。詩的なシーンを詩的たらしめたのにはカメラのSクマールの力も大きい。27年ものキャリアをもつこのベテランはケララ時代のプリヤン組の常連でもあった。Kilukkam (Malayalam - 1988) Dir. Priyadarshan でラルさんをウーティ登山電車の上で踊らせた(といったら言い過ぎか)のもこのクマールさん。ややこしい話だが、デリーベースのこの人は同名の別人。

【参考資料】
レビュー(最後のひとつを除きいずれも一般観客によるもの)
http://www.mouthshut.com/review/Mazha-26736-1.html
http://www.maheshwaran.com/index.php/Movies/Malayalam/Mazha-Classical-Rain.htm
http://aprilslady.blogspot.com/2006/10/mazha.html
http://movies.indiainfo.com/malayalam/reviews/mazha.html
監督のレーニン・ラージェンドランのインタビュー(以下の二つはほぼ同内容)
http://www.screenindia.com/old/20010112/recover.htm
http://movies.indiainfo.com/malayalam/interviews/lenin.html
マラヤーラム映画界の「アメフラシ」に関する興味深い記事
http://www.hinduonnet.com/thehindu/fr/2008/06/20/stories/2008062050310200.htm

投稿者 Periplo : 00:23 : カテゴリー so many cups of chai
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2008年10月28日

ディスク情報0810-3

cvKathaParayumbol.jpg

Katha Parayumbol (Malayalam - 2007) Dir. M Mohan のDVDが発売になりますた。版元は Central、確証はないけどおそらくは字幕付き。お求めはこちらなどで。

Kuselan / Kathanayakudu の元ネタ。一応プリヤン映画 Billoo Barber (Hindi - not yet released) の関連映画になるはず。

投稿者 Periplo : 01:27 : カテゴリー プリヤンremake
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2008年10月27日

大部屋以上明星未満★24

Indrans 他に聞いたことがない名前の不思議さ。しかし容貌のインパクトでそんなものは吹っ飛んでしまうのだった。デカ頭が主流のマ映画界でずば抜けた小顔、小母さんみたいな顔の小父さんコメディアン。

indrans.jpg

大昔に紹介した Albhutha Dweepu [Wonder Island] (Malayalam - 2005) Dir. Vinayan は、4人のインド空軍兵がアラビア海のどこかにある小人島に漂着するという設定のストーリーだった。インドランスはそのガリバー軍団のうちの一人だったのだが、この人が小人国の住人と並ぶと何か微妙なものがあったな。

昨日のポストで、脇役俳優のバイオグラフィーがネット上に出回るには、1.死去するか、2.主役を張るか、3.国家映画賞を取るか、しかないなどと書いたけど、ここにきてインドランスの初主演作品の話が聞こえてきてやっと経歴の一部が判明。

Indrans, a tailor by profession, debuted in films with Choothattam as a costume designer. It was producer Charlie who offered him a chance to assist in costume designing. Although he had the opportunity to meet many filmmakers, including evergreen hero Prem Nazir, Sattar, Pappu, Jose Prakash and Jayabharathi, he concentrated only on designing costumes for several years in the industry. However, he did very small roles on screen.

Soon, Indrans started getting fresh assignments from well-known directors like Padmarajan, Venu Nagavally, Shaji N. Karun, Sibi Malayil and K. Madhu. CID Unni Krishnan was a turning point in his career as an actor. Luckily, his brand of comedy clicked among the audiences and he went on to become one of the mainstream comedians in Kerala. Since then, he is busy till date.

Indrans had acted in more than 200 films so far. He created his own style in cinema and never replicated the comedy of the legendary Adoor Bhasi, Bhadoor or Jagathi Sreekumar. Renowned directors Adoor Gopalakrishnan and T.V. Chandran too offered him roles.(oneIndia 記事 Indrans' dons a hero role より)

最初のセンテンスにあるテイラーとデザイナーというのは随分ニュアンスの違う言葉のような気がするが、当時のマ映画界ではどっちも同じようなものだったのだろうか。

IMDb のフィルモグラフィーは比較的充実していて、Innale (Malayalam - 1989) Dir. Padmarajan から始まる101本が登録されている。コスチューム・デザイナーとしてのエントリーもあって、映画出演と並行して1997年頃まで活動していたことがわかる。そのリストの中には Sphadikam (Malayalam - 1995) Dir. Bhadran なども含まれている。

上に引用した記事からすると主役級の男優の衣装を中心に手がけていたようだ。それにしても1980年代から90年代中頃までのマ映画(っていうよりサウス全般か)の衣装ってのはなかなか味のあるものが多かった(こちらなど参照)。過去作品の衣装デザイナーにインドランスの名前を探すというのも面白そうだね。もちろん、これから撮影が始まる主演映画 Sudharil Sudhan (Malayalam) Dir. Jayaraj Vijay にも注目。

投稿者 Periplo : 02:39 : カテゴリー brown dwarf galaxy
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2008年10月26日

Ecce!:Surya

検索屋としてこんなにお手上げなのははじめてかも。バイオグラフィー一切不明。

surya01.jpgsurya02.jpg
左はGrahanam (Telugu - 2004) Dir. Indraganti Mohana Krishna のシリアス医師、右はMangatayaru Tiffin Center (Telugu - 2008) Dir. Venky のスケベ医師

比較的悪役の多い脇役。IMDb でのフィルモグラフィーには Eduruleni Manishi (Telugu - 2001) Dir. Jonnalagadda Sreenivas から始まる10本が登録されている。それ以前は何をしてたのだろう。90年代末にデビューしたタミル映画界のスーリヤ(混乱するからこのブログでは Surya Sivakumar と呼ぼう)よりも映画界での経歴は浅い可能性もあるな。ともかく、スーリヤ・シヴァクマールのタミル語作品のテルグ吹替版がどんどん公開され続けているというのに、当人達も周りもなんら手を打とうとしないのだ。いっそ共演でもしてみたらどうか。

悪役で登場する際に時おり目の奧にキラリと走る邪悪の光、これが一番のUSPだと思う、演技というより照明さんが上手いだけなのかもしれないけど。ともかく、このクラスの脇役の人は1.死去するか、2.主役を張るか、3.国家映画賞を取るか、でもしないとバイオグラフィーがネットにあがらないんだ。1は縁起でもないから、2→3を目指して頑張って欲しい、心から。

投稿者 Periplo : 21:39 : カテゴリー Scribble : Ecce Homo
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2008年10月23日

どてらい男

Sakthi Chitran。批評家受けのする佳作だったという Ponmekalai [Ponmegalai] (Tamil - 2004) の監督。しかし批評家だけにしか評価されなかったのだろうか、まともなレビューもインタビューも見当たらない。探し方が悪いのかもしれないけどディスクも今のところ見つからず。ないない尽くしだけど、そのうちきっと注目が集まるにちがいない。現在この人物が撮影中の作品の名前は Kalaignar

投稿者 Periplo : 01:57 : カテゴリー バブルねたtamil
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2008年10月21日

収集癖 1:鐵もの

[Myboom Archipelago 1:鐵もの]より改題 (2008.12.05)

俺ブーム群島アイランド・ホッピングじゃ(なんのこっちゃ)。

NadiyaKollapetaRathri2.jpg

先日のポストでちょっとだけ言及したNadiya Kollapetta Rathri (Malayalam - 2007) Dir. K Madhu、気が付けば既にDVDをゲット済。なので早速見てみました。

いや、ここで告白して何がどうなるとも思わないけどね、わが偏屈な探求テーマのひとつに「鉄道映画」ってのがある訳よ。読んで字の如く、鉄道が出てくる映画。なるべくなら列車や駅が舞台のシーンが長いほうがいい、それからストーリーも鉄道と分かちがたく結びついたものが望ましい。一番重要なのは具体的な地名が出てきて旅情を味わえるもの、ということになるか。あ、それと Palace on Wheels みたいな豪華ツアー用特殊列車よりも普段使いのものの方が良いな。このジャンルでこれまでに出会った傑作はやっぱり No: 20 Madras Mail (Malayalam - 1990) Dir. Joshi だな。これは最近になってDVDとして再発売されたんだけど、相変わらず字幕なしでガックリ来た。Vishaka Express (Telugu - 2008) Dir. Mullapudi Vara は名前で期待させたが、鉄道シーンはほんの一部で、それもストーリーに本質的に関わっているとはいえないものだった。Mumbai Express (Tamil - 2005) Dir. Singeetham Sreenivasa Rao は引っかけ問題で、実は鐵分ゼロ(←訂正090720:クライマックス部分に鉄道シーンがあった)。

cvNadiya.jpgで、今回のNKR、一般映画としての評価はそこそこというとこだが、鐵ものとしては異様なまでに濃ゆい内容で、かなり満足度の高いものだったのでした。

Nadiya Kollapetta Rathri (Malayalam - 2007)
タイトルのゆれ:Nadiya Kollappetta Rathri, Nadhiya Kollapetta Rathri, Naahiya Kollapetta Rathri, Naadiyaa Kollapetta Rathri
タイトルの意味:The Night Nadiya Was Murdered
Director:K Madhu
Cast:Suresh Gopi, Kavya Madhavan, Sooraj Venjaramoodu, Siddique, Rajan P Dev, Bindu Panicker, Vijayakumar, Suresh Krishna, Shammi Thilakan, Subair, Kollam Thulasi, Anoop Chandran, Urmila Unni, Madhupal, Niaz, Poornima Anand, Sajithabeti, Suja Karthika, Baburaj, Prithviraj
DVDの版元:Moser Baer
DVDの字幕:英語
DVDの障害:今のところなし

ソングシーンのない、ストレートなミステリ。当然ながら南鐵の協力のもとに制作されていて、全編の半分以上が列車内で展開する。必然性のないシーンでもなぜか線路脇で撮影されてたりする。ただし、日本の時刻表ミステリ小説のような秒単位のダイヤの間隙をついたアリバイ崩しとか密室性の裏をかくトリックとかはない。そりゃあんた印度だもん。基本的には捜査は指紋採取と血液型照合という古典的な手段によって進むのだ。犯人・参考人の真相告白は、証拠を突きつけられてというよりは、スレーシュ・ゴーピ演ずる捜査官に凄い顔で睨まれてビビって囀りだしちまうっていうのがほとんどか。そういう意味でのソングシーンは豊富(爆)。

【ネタバレ無し・安心仕様の粗筋】
タミルナードゥ州とケララ州に跨るサザンレイルウェイ・パーラッカード線区。このエリア内で起き、鉄道警察が匙を投げた未解決事件の捜査のために RACT (Railway Anti-Criminal Task Force) ※1の Sharafuddin Tharamasi 警部とそのチームが着任する。シャラフッディーン警部はもとタミル州警のエンカウンター専門家だった凄腕。1月12日の夜、チェンナイ発マンガロール※2行きの夜行列車 Souparnika Express ※3冷房つき一等寝台車の中で、一度に三人の(しかもそれぞれが全く無関係の)女性が殺された(一件は未遂)事件の解決のために動き出したのだ。

一人目の女性シュレーヤー・マリアはセーラム-イーロード間で列車から転落して死亡。事故・自殺・殺人、いずれもが考えられる状況。二人目の女性ナーディヤ(Kavya Madhavan)は列車がコインバトール※4を出た後に、刃物で刺されて意識不明の重態で発見される。傍らには血まみれの刃物を手にした男が立ちつくしており、彼はその場で犯行を認める(後に否認)。事件発生をうけて列車はパーラッカード手前のマドゥッカライ駅で緊急停止する。既に夜は明けていた。一等車に立ち入った鉄道警察官が最初に目にしたのは、内側から鍵をかけたコンパートメントのなかで首を吊っている第三の女性トゥラシ・マニだった。

シャラフッディーン警部はマドゥッカライ駅の近くに臨時のオフィスを設けて再度の関係者への聞き込みを開始する。その過程で、最初はバラバラの寄せ集めに見えた乗客たちが、微妙な形でそれぞれに繋がりがあることが判明する。

※1 カルナータカ州沿海部の都市。劇中では一貫して Mangalapuram と呼ばれている。マラヤーラム語話者は普通こう呼ぶようだ。言語によって様々な呼称があるらしい。トリヴァンドラム市の一地区とは別物。

※2 これは架空の組織らしい。モデルはこれあたりか。

※3 サウパルニカ急行は架空の列車。運行ダイヤはそっくり同じではないものの、おおよそのルートは Mangalore Express/2685 をモデルにしているものと思われる。これはこの区間で唯一のAC一等寝台コーチつき編成。

なおチェンナイ-マンガロールはサザンレイルウェイの中でも大動脈と言っていい幹線区間。チェンナイとほぼ一直線の位置関係にあるバンガロール-マンガロール間がなぜかこれまで等閑にされてきたため、最短時間で西ガーツ山脈越えができる路線としてコロマンデル-マラバール両地方を結んできた。

また殺人未遂事件発生のため列車が緊急停止するマドゥッカライ駅は実在する。ここだ。コインバトールの南10キロちょっとのところで、ケララ州境近く、ぎりぎりタミルナードゥ州内。パーラッカードの手前。

※4 タミルナードゥ州の都市。コインバトールは英語読み、タミル語ではコーヤンブットゥールと発音される。劇中ではこの都市を Kovai の別名で呼ぶシーンも何度か出てくる。隣のパーラッカード市はケララ州になる。

【鑑賞のしおり】
ループホールがゼロな訳ではないのだが、ストーリーは良くできてる。本作スタッフの名誉のために言っとくが、この記事が言ってるような『オリエント急行殺人事件』のそのままパクリでは全然ない。携帯電話時代である現代をプロットに生かしきったオリジナル脚本なのだ。

ただし、問題なのは、この急行列車が駆け抜ける地域に関して、位置関係などがそこそこ頭に入ってないと若干こんぐらがる可能性があること。それからラストまで真犯人を隠しておくために挙動不審な人物がやたらと沢山出て来るんだけど、そいつらの名前と関係性をおさらいしとかないと時々ビデオを巻き戻ししなきゃならないんだな。つまり娯楽映画なのに異様に肩の凝る鑑賞になっちゃうんだ。

そこで老婆心から主要登場人物一覧を作ってみた。もちろんネタバレ無しの親切仕様。

■捜査チーム
Sharafuddin Tharamasi (Suresh Gopi):RACT (Railway Anti-Criminal Task Force) の警部。
Sudarshan (Shammi Thilakan):シャラフッディン警部の部下。他にも二名の部下がいる。
■乗務員
Muthu Rajana Thaathamangalam (Sooraj Venjarammoodu):サウパルニカ急行AC一等の車掌(TTE)、職権を利用した不正を働くこともある。
Sundaram Kutharamoli (Anoop Chandran):ACアテンダント。寝具の配給などを行う。コッレンゴードの出身。
■コンパートメントAの乗客
Thulasi Mani (Suja Karthika):カラクシェートラのダンサー。コッレンゴード王家の末裔。マンガロールに(そしてそこからコッルールのムーカンビカ寺院に)向かうところだった。彼女の姉はヴィジャヤ・ヴァヌに嫁いでいたが、今は故人。
■コンパートメントBの乗客 
Naadhiya (Kavya Madhavan):パーラッカードに向かっている。チェンナイ-コインバトールのフライトがキャンセルになったため、やむなく列車で移動することになった。
Priya Jose:映画女優。コインバトールに向かっている。
Rajamma (Bindu Panicker):プリヤの母、マネージャー。
Ramachandran:プリヤの父。
■コンパートメントCの乗客
Dr. Ajay Ghosh (Madhupal):見習いドクター。仲間の Dr. Rupesh KothvalDr. Govind RaghavanDr. Madhanghi Varma とともにチェンナイでの学会に出席し、パーラッカードに戻るところ。
■コンパートメントDの乗客
Kalpathi Seetharaman (Vijay Menon):パーラッカード出身のタミル語文学者。
Alexsander Chembadan (Subair):パーラッカード市警察のサブインスペクター。汚職の噂が絶えない。
■コンパートメントEの乗客
Madavan Master (Kollam Thulasi):マスターと呼ばれているものの職業は不明。
Ambika:マーダヴァンの妻。
Balu (Vijayakumar):マーダヴァンの息子。精神を病んでいる。
Shreya Maria:NDTVのレポーター。バルーを気味悪がってDコンパートメントに移る。
■ケララ州パーラッカード市郊外の Kanjikode(パーラッカード市中心部からコインバトール方面に10kmほど) にある芸能学校 Muthra Peedam の関係者
Naadhira (Kavya Madhavan) :ナーディヤの双子の姉妹。もと孤児で、ナーディヤと共に先代の校長の養女となる。
Usthad Ghulam Musafir (Siddique):人気ガザルシンガー兼作曲家。ナーディラの婚約者。
Aadi Lakshmi Varadhachalan (Urmila Unni):姉妹の先生。現在の学校の責任者。
Lakshman:写真家。学校の雑用も引き受ける。
■それ以外の人々
Vijay Bhanu (Suresh Krishna):サザンレイルウェイ・パーラッカド線区のマネージャー。トゥラシ・マニの義理の兄。なぜかアレクサンダー・チェンバダンと犬猿の仲。
Mayilvahanan Kathireshan(Rajan P Dev):事件直後に捜査を担当した鉄道警察のサブインスペクター。その後引退してパラニ・スブラマニヤム寺院の修行僧となる。
Ponnambalam:マイルヴァガナンの後をついでサブインスペクターとなる。
Albert, Mario and Robert Vincent:シュレーヤー・マリアの兄弟。
Appukuttan Nair:マドゥッカライ駅の駅長。
Lakkidi Manikantan (Baburaj):アレクサンダー・チェンバダンの腰巾着の巡査。

【蛇足的寸評】
ところどころ腑に落ちないループホールはあるものの、良くできた脚本だと思うのだ、クライマックスまで真犯人を隠しておくための、幾重にも張り巡らされた煙幕は特に上手いね。

舞台がAC一等寝台車というのにも意味があるのだ。たとえば、このクラスは4人(一部2人)掛けの完全個室になってるんだけど、4人以下のグループの場合、他のグループとどのように組み合せるかは発券時点で決められて乗客には選択権はない(未婚の男女を同室にはしないという程度の配慮はされる)。例えば2名分のチケットを一人で買って2名個室を占領、などということは禁止されている。なので下のクラスのコーチと比べて、気まずい状況が生じやすいんだよね、この最上級クラスは。そしてそこから色んなドラマが生まれるのだ。

それにしてもこの映画に出てくるコーチはどえらい豪華さだ。ホントにこれがチェンナイ-マンガロール間に投入されているのだろうか。実はこの映画、不正行為常習犯の車掌が出てくるはなんやらで、冷静にみると南鐵にとってはイメージダウンも甚だしい出来ばえなんだが、この美麗コーチをアピールしたくて協力したのだろうか。その職業倫理サイテー車掌を演じるのはこのひと。ソングシーン無しの2時間半の中で緊張を緩和させる役割を担っていた。やっぱ味のある車掌が出てきてこその鐵ものだわな。

乗客の一人がコッルールのムーカンビカ寺院に向かう途中という設定にも吃驚。字幕の表現が曖昧でどうもはっきり意味が取れないんだけど、やはりこの女神は縁結びや結婚とつながりがあるようなのだ。この映画の中で出てくるのは単なる偶然ではないんだな。

それから、劇中でカーヴィヤ・マーダヴァンさんが持つ携帯の番号へのいたずら電話集中事件だけど、ほとんどサブリミナル的に一瞬画面に現れるだけで(DVD作成段階で編集されたのじゃなきゃ)、ここから番号を記憶して実際にコールするなんぞとてもじゃないけどできたもんじゃない、と感じられた。よほどの狂ったファンが劇場にリピートして番号をひかえて、しかもそれをバラ撒いたりしたのかね。

最初から最後まで幾度となく登場する、爆走するチェンナイ-マンガロール急行。大幹線だから当然ながらブロードゲージ区間な訳だが、ところどころ、さして重要でもないと思われるシーンで何故かメーターゲージ鉄道の映像が挿入されているのが不思議だった。特に列車が緊急停止するマドゥッカライ駅ってのがこの駅(または近隣駅)で撮られているのには仰け反った。

nadiyaStation1.jpgnadiyaStation2.jpg
もちろんこれは揚げ足取りではない、喜んでいるのだ。

なんて楽しいんでしょう鐵映画。うふふ、次はこれなんか見ちゃおかしら。あらやだ、タミル・リメイクも作るのね♪

投稿者 Periplo : 16:06 : カテゴリー バブルねたkerala
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2008年10月19日

やってるやってる♪

そろそろ楽しいバックステージ話が聞えてきてもいい頃だと思ってた。

20twentyPoster.jpg

今月15日にコーチンの某ホテルオーディオお披露目式典が催され、いよいよ24日の公開に向けて秒読みが始まった Twenty:20 (Malayalam - 2008) Dir. Joshi。荒唐無稽のガセネタと笑い飛ばしていたこの映画がホントに封切りされる日が来ようとは(感無量)。

6種類が公開されたというポスターを巡って一騒動。図柄中央にマンムーティが来て横にモーハンラールっていう構図に、ラルさんスーパーファンの皆さんがブチきれ!

Fans of Mohanlal in Thiruvananthapuram is reported to have cut off Mammootty's head in the posters, while fans of Mammootty in many places in Malabar area has tarred and blackened the face of Mohanlal! (Sify 記事 T: 20 poster creates tension in Kerala! より)

うーっ、ワクワクするう。騒乱の州都に居合わせたかったああ。

上の記事によれば、制作サイドは一番年長のマンムーティを一番真ん中に持ってきただけだと説明してるらしいが、こういう騒ぎになるのは分かりきったことじゃん。何考えてんのか、それとも何も考えてないのか。ともかくさあ、正味なとこで一番偉いこの人を真ん中にしときゃ八方丸く収まったんじゃねーの?

投稿者 Periplo : 03:00 : カテゴリー バブルねたkerala
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2008年10月17日

ご近所の評判

こないだのポストでは、ケララ人からのタミル人への蔑称 pandi についてちらっと書いたっけ。そんなつもりじゃないんだよ、と言ってるケララ人もいる。

Classmates (Malayalam - 2006)、Arabikatha (Malayalam - 2007) などを手がけたラール・ジョースは今マ映画界で最も注目されている中堅監督の一人。なんかケララ名物の2人組監督みたいな名前だけど、単独の人物だということが最近になってやっと確認できた。


そのLJ監督、今度はタミル映画に進出するのだそうだ。なんでも、乾いた大地が広がるタミル内陸部でないと成立しないストーリーだから必然的にタミル映画ということになったらしい。LJ監督がインタビューでマ映画とタミル映画の関係性などについて語った部分が面白かった。

Surprised at the news that Tamils are hurt at being called ‘Pandi’ and that even Tamil actors are always offered negative roles, the director says, “Yes, we call you Pandi. The meaning of Pandi is Pandya Nattu Makkal (people of the region that was once ruled by Pandyan kings).There is no double meaning in that. Moreover, who said that Tamil actors are always villains in our films? Kamal Haasan’s first film as a hero was in Malayalam. Also Vikram has done many positive and lead roles there.”(ExpressBuzz インタビューKollywood is Lal's ticket to Hollywood より)

まあ、LJさんがこう言ってるからって、安易に使うとまずいんだろうけどね、パンディって言葉は。

特に印象的だったのは両州の観客気質の比較。

“Tamil movie lovers are not like Malayalees.

Films are part of their life and they consider it as important as water, which is very essential for survival. But people back in Kerala watch films for the sake of entertainment,” explains Lal Jose adding that Tamils know how to appreciate films even if a Malayalathaan makes them.(同上)

もちろんタミルの観客へのリップサービスもあるんだろうけどさ。でも上の話の延長線上で、映画へのカルト的熱狂で全国的に有名なタミルでよりも、識字率100%を誇るケララの方がスターさんを粗末に扱うという、ちょっと逆説的にも思える説を現地の複数の人物からも聞いた。

例えば、酔っ払った状態でマンムーティにしつこく付きまとったダイハードファンが逮捕されたなんても最近あった。それから昨年には、スリラー映画の中でカーヴィヤ・マーダヴァンさんの携帯番号として画面に現れたナンバーにイタズラ電話が殺到なんていう厨房な事件も。スターさんたちも苦労が耐えないんですなあ。

Nadiya Kollapetta Rathri (Malayalam - 2007) Dir. K Madhu でのことだそうだ。この映画、アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』をケララを舞台に翻案したものだという。好き心をそそられまくりだわい。
NadiyaKollapetaRathri.JPG


マラヤーラム映画の撮影クルーが何かというと越境してタミルの田舎にやってくる理由は、相対的な物価の安さ(もちろんチェンナイなどの大都会は別にした話だが)だけじゃなくてそういう環境の違いもあるのか。

タミル映画界の若手スターのカップルが新婚旅行に出かけるのに、チェンナイ国際機場で普通に列に並んでチェックインしてた、なんて目撃情報も以前聞いたっけ。タミル、というか少なくともチェンナイにはそれを可能にする雰囲気があるんだね。

南印4州の作風の違いを言語化するのには、隣近所からの評判ってのも結構重要な手掛かりなんじゃないかと思ったりしたのだ。

投稿者 Periplo : 05:30 : カテゴリー バブルねたsouth
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2008年10月16日

家業:スター

うむむむ、疲れた。「秋のオヤジ狩り」と銘打って、南印4州のディープな映画を探訪するなどという企画を考えていたのだけれど、カンナダ、テルグときて力尽きてしまった。

okkamagadu01.jpg

カンナダのクレイジースター V Ravichandran のインパクトも大きくて、色々書きたいこともあったはずだったんだけど、後から見たNBKのせいで吹っ飛んでしまった。

Okka Magadu (Telugu - 2008) Dir. Y V S Choudary はディスクで見られる限りでのNBK最新作。著名ポータルサイトではギャラリー壁紙はあるのにレビューは見つからない、怖くてあげられないのか。

ラーヤラシーマものという触れ込みだったが、暴力的ファクショナリズムの要素は特になかった。

ストーリーは、ええと、対英独立闘争時代のファイター(NBK)が、独立後60年のインド社会にはびこる貪欲、汚職、利己主義に立ち向かい、不正な権力者を剣によって誅しながら悪の総本山であるAP州首相(Asutosh Rana)と対決するという話。この義賊の正体を知らず、体制の枠内で人徳者として平穏に暮らす孫息子(NBK)との対比によってストーリーが展開する。なんだかどっかで聞いたような話だと思いませんかい。そうです、こりゃ『インドの仕置き人』こと Indian (Tamil - 1996) Dir. S Shankar (ヒンディー吹き替え版 Hindustani、テルグ吹き替え版 Bharateeyudu)の設定イダダキものなんですわ。

しかし、言い逃れしようのないパクリではあってもリメイクではない。シャンカルのオリジナルでは、収賄常習者の免許ブローカーが仕置き人の実の息子でありながら容赦なく処刑されてしまう、というところにドラマの要諦があったのだが、こちらでは違う。爺さんは武闘派、孫は平和主義者、どっちも倫理的には全く潔白(おいおい)という設定になってるのだ。何して暮らしてるのかもよく分からない孫息子は、ともかく絶大なカリスマを持っていて、彼の前では男衆は涙流してひれ伏すは(うつ伏せ)、女の子ちゃんは出会い頭に体投げ出しちゃうわ(仰向け)でもう大変なんだ。

okkamagadu02.jpg

AP州有権者であるかぎりどんなオーディエンスであろうと気分を害することがないように、細心の気配りがされている。なんたって悪役の州首相の名前がナンブーディリってんだから(シュールでトンマなこの役はボリウッドからきたこの人が誠実に演じようとしている)。もちろんAPにだってケララのバラモン・コミュニティは極小規模で存在はするだろうけどさ。だけど州首相を輩出するなんてのは100万年経っても無理。この悪徳CMが「お前のカーストは何だ?」と尋ねるシーンがまた凄くて、主人公はこれに答えて「知性においてはバラモン、富ではヴァイシャ、…(かなり略)…アグレッシブネスではレッディ、力はカープ」などという演説をするのだ。

お前はNBKを虚仮にしたくてクドクド書いてるのかと怒られそうだが、そんなことは断じてない。年の割にはダンスが上手い。それに爺さんが武装闘争に目覚める前のインテリ医師時代の部分では誠実な人柄を手堅く演じていた。芝居のツボもちゃんと心得てる気配がある。ただその能力を、国家映画賞を獲ろうとか、文化人サークルのセレブになろうだとか、そういうエゴイスティックな目的には使おうとしてないだけなんだ。全てのセリフ、全てのショットがダイハード・ファンの為にある映画を作るのだ。ファンのことしか考えていない無私の人なんだ、NBKは。俳優としてのエゴを押し殺して自画自賛映画を作る、中途半端な自意識の持ち主だったらできることじゃないよ、普通。テルグ界で名門芸能一族を率いていくというのはこういうことなのか。それにしても、ヅラとメイクを取り去ったこの人の素顔には名状しがたい妖気がある。フツーの家に生まれていたら性格俳優として一家を成していただろうね。それはそれでちょっと惜しい。

ソングシーンは全部で七つ、総ランタイムは170分超。全編を見る気にはなれないや、という向きには、ひとまずこれあたりをお勧めしておこう。だけど、これで止めてしまった人は、驚倒天地のラストシーンの衝撃を知らずに終わってしまうんだなあ、やっぱ勿体ないやね。

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投稿者 Periplo : 04:33 : カテゴリー バブルねたtelugu
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2008年10月14日

ディスク情報0810-2

Mohanlal Discography の中の Vietnam Colony について、版元の違うディスクの情報に差し替え。

1993VietnamColony.jpgcvVietnamColony.jpg

Vietnam Colony (Malayalam - 1993) Dir. Siddique & Lal
Cast : Mohanlal, Innocent, Kanaka, Devan, Jagannatha Varma, KPAC Lalitha, Nedumudi Venu, Pappu, Vijayraghavan, Beeman Raghu, Philomina, Kaviyoor Ponnamma, TP Madhavan, Kunchan, Shankaradi, Santhakumari, Priyanka

こないだはカンナダ映画の情報やディスク流通に関しての環境の変化についてちょいと書いたけど、マ映画に関してもやっぱり変わってきてるんだよね。

ほんの2・3年前までのマ映画DVDは、ネットショップと現地ショップとで流通してるものが共通、数は多めに見積もってせいぜい150本ぐらいだった(ここなんかで全容が捕捉できた)。毎月4・5本づつ、新作がリリースされるスピードよりも若干速めに潰していけば、別に田舎の山を売らなくともDVD全点制覇できるんじゃないか、そんな幻想を抱かせるものがあったのだ、マラヤーラムとカンナダに関しては。それが今じゃ状況激変。ネットショップと現地ショップの品揃えが食い違いはじめてる、リリース点数が雪崩的に増えた。まあ、嬉しい悲鳴ではあるのだが、廃盤化も早まってるようで油断ならない状況でもある。何が言いたいのかというと、ライフワーク宣言までしたラルさんDVD完全ディスコグラフィーも挫折しかかってる、という泣き言なのだった。

ダラダラ前置きはさておいて、今回のDVDリリースは Moser Bear から(右のジャケ、ただしこれはVCDのもの)。以前の Sangam 版(字幕無し、左のジャケ)の焼き直しだろうと決めてかかっていたのだが、さにあらず。メニューに選択肢こそないものの、歌詞以外にはちゃんと字幕が出るのだった。

字幕無しで見ていた時分から、どたばたコメディーが楽しくて結構評価の高い作品だったのだが、今回字幕付きで改めて見直してみて、疑いなく名作、という確信に到った。

【導入部の粗筋】
パーラッカードに住むタミル・ブラーミンの若者クリシュナムールティ (Mohanlal) は大学を出たものの就職口がなく、母と共に親戚の家に間借りして肩身の狭い暮らしをしていた。ある日、彼の元にコーチンの建設会社からの採用通知が届く。彼に与えられた肩書きはコーチン郊外の大規模再開発事業のサイト・オフィサー。その内実は、会社の取得した事業用地の中に孤島のように残る「ヴェトナム・コロニー」と呼ばれる低所得者集住地域の住人を立ち退かせる交渉役だった。ジョセフ (Innocent) という名の助手を与えられたクリシュナムールティは、作家と身分を偽ってヴェトナム・コロニーに移り住み、平和的に住人を立ち退かせるために策を練る。


そうなんだ、ぼんやり字幕無しで見ていたときは気づかなかったんだけど、これは「タミル・ブラーミン@ケララのアイデンティティ格闘もの」でもあったんだな。作中、主人公は周囲の人々から一貫して「スワミ」と呼ばれている、お坊さんでもないのに。そして彼が周りに対してやや自嘲的に自らを語る場面では、ケララ・アイヤルを意味する「pattar」という語が使われている。一般的にはマラヤーラム世界の中でタミル人を指す言葉としては「pandi」というのがあって、これにはかなり差別的なニュアンスがあるらしいのだが、さらに限定されたタミル系を指すパッタルも状況によっては同様の含みを持つらしい(こちら参照)。それから枕詞として「オクラとドラムスティックとサンバルばっか食べてる奴」っていう台詞が何度も出てきた。

婆羅門ものとはいえやはり娯楽映画だから、人権学習の教材みたいな極端さはない。主人公はクリスチャンの助手とともに起居するし、ムスリムの葬儀では棺を担いだりもする。一方でその助手が同じ部屋でチキンカレーを食そうとする時には激しい拒絶反応を示し、またムスリムの葬儀に参加しているのを見た彼の親族は縁を切ろうとしたりするのだ。まあそのあたり、あくまでも目的は笑いとストーリー進行にあるので、リアリティからは一定の距離を置いているものと思われるが、婆羅門コメディの定型パターンみたいなものが窺い知れて面白い。

他コミュニティに対する寛容というメッセージを滲ませながらも、建前ばかりに傾くことなく適当にエキゾチズムをちりばめた、あくまでも下世話などたばたコメディー。シッディク&ラール監督の真骨頂といっていいマジカル・ストーリーと演出が楽しめる本作DVD、ハッキリ申し上げて「買い」です。

投稿者 Periplo : 00:24 : カテゴリー so many cups of chai
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2008年10月13日

レビュー:Big B

凄いものを見てしまった、まさかのマ映画で。いんや、ともかく格好エエ。これについちゃクドクド粗筋を書いたりする必要は感じない。ポスターのイメージ通りの内容ですた。

BigBposter1.jpg
BigBposter2.jpgBigBposter3.jpg

Big B (Malayalam - 2007)

DVD版元:Moser Baer
DVDの字幕:英語(歌詞含む)
DVDの障害:現在のところ特になし
主な販売サイト:MaEBag.com

Director:Amal Neerad
Music Director:Alphons Joseph
Cinematographer:Samir Thahir
Producer:Shahul Hameed Marikar, Anto Joseph

Cast:Mammootty, Manoj K Jayan, Nafisa Ali, Bala, Sumit Naval, Mamta Mohandas, Vijaya Raghavan, Manianpillai Raju, Pasupathy, Lena, Mansa, V K Sreeraman, Vinayakan, Jaffer Idukki, Sherveer Vakil, Ramesh Varma, Innocent, Sreejith Ravi

芸能生活30周年に近づこうとしているマンムーティの出演作の中で、ここまでスタイリッシュなアクションは無かったんじゃないか。50を超したマ様をスタイリッシュに撮るのに必要なのはアルマーニのスーツじゃない、ってことを本作でデビューのニーラド監督は充分に分かってた訳なんだわ。

ストーリーは平凡なスリラー。アクションシーンでもロープワークなどはほとんど使われていない。空中三回転回し蹴りとかはしないのだ。基本的にマ様はのっしのっしと歩いてるか、どーんと立ってるかだけの省エネ仕様。RGVスクールの撮影監督だったニーラドさんは、カメラに多くを語らせるんだな。テクニックに淫して中身がない、という批判は当然起こってくるだろうが、バックウォーターのカタカリ群舞だけがマ映画じゃないぜ、というマニフェストとしては充分にインパクトのあるものだったと思う。第2作以降にも注目したい。

資料
Rediff 特集 Now, call Mammootty the Big B
Rediff 特集 Neerad directs Mammootty in Big B

■オマケ

カメラ以外で感心したのは、脇役の絶妙なキャスティング&役作り。一例として「子犬を連れた小父さん」Jaffer Idukki のシーン。場末の酒場で繰り広げられる大運動会を、美味そうな子犬を両手に抱えたこの小父さんがうひゃあとかいいながら観戦するのだ。犬を連れてる訳は一応セリフで示されるのだが、あって無いようなもの。酒瓶割れまくりの大乱闘の中での能天気な親爺と怯えるパピー、一種独特なビジュアル上のユーモアなのだ。

JafferIdukki.jpg

ジェッフェル・イドゥッキについては情報が少ない(たったのこれだけ)のだが、Sooraj Venjaramoodu に次いでメキメキ頭角を現しつつあるコメディアンらしい。確かに忘れられない顔。この先情報が集まったらまたフォローしていきたい。

あと、ロケ地マニア的にも堪らないものがあったな。狭いコーチンを舞台にしてるから、知ってる場所が出てくるのは当たり前なんだけど、このホテルが遠くに見える岸辺でカツアゲやってるシーンなんて涙出そうだったわい(泣)。

投稿者 Periplo : 04:59 : カテゴリー so many cups of chai
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2008年10月11日

Ecce!:Sindhu Tolani

Sindhu Tolaani とも。テルグ映画でのチョイ役常連さんとなりつつある女の子ちゃん。

sindhu1.jpgsindhu2.jpg
sindhu4.jpgsindhu3.jpg
イメージはすべて Sullan (Tamil - 2004) Dir. Ramana から。

スリム・長身で色白、バタ臭い顔立ち。タカビー系だけど笑顔がかわゆい、蓮っ葉役も難なくこなす、つまり近頃のサウスで求められてるヒロインの資質を一通り揃えてるってことになる。Wikipedia での紹介によれば1983年生まれ。ところが出生地に関して、同じ頁の中でムンバイとバンガロールの2通りに食い違って記述されている。どうやら更新が途絶えているらしいオフィシャル・ファンサイトでは出身に関する情報はなし。タミル、テルグ、カンナダに出演。

デビューはテルグ映画 Aithe (Telugu - 2003) Dir. Eleti Chandra Sekhar だったらしい[余談ながらこの映画は後に Naam (Tamil - 2003) Dir. Saba Kailash、Wanted (Malayalam - 2004) Dir. Murali Nagavalli としてリメイクされた]。2004年に Sullan のヒロインとしてタミル・デビュー(本作冒頭には introducing Sindhu Tolani のクレジットが見られる)。当時上り調子だったダヌシュの相手役。良い感じのスタートに思えたが、なぜかこの先メジャー作品のヒロインのオファーが途絶える。その後タミルからテルグにシフトして本数だけは稼いでいるのだが、Pournami (Telugu - 2006) Dir. Prabhu Deva でのスポット出演に見られるような、セカンドヒロインでもアイテムガールでもない端役ばかりが目立つようになってしまっている。なんでなんだ。

なお、シンドゥちゃんのデビュー作に関して、筆者はとある重大な疑念を持っている。これについては近日中に稿を改めて提起したい。楽しみに待ってるように。

投稿者 Periplo : 23:58 : カテゴリー Scribble : Ecce Homo
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2008年10月09日

ディスク情報0810

cvSahukara.jpgいんや抜かってた。これに関しちゃ制作発表から間もない時分に別んとこで盛り上がったりしてたのに、その後完全に記憶から消えてしまっていた。っていうか続報を追いかけるのを怠って、立ち消えになった話だと勝手に思いこんでたんだよね。まあ、無理もない部分もあったのだ。例えば、当時通販サイトなどで目にすることができたカンナダ映画ディスクは10本を超えてはいなかったんじゃないかと思う。僅か4年前なのに、そのくらい情報がない領域だったのだ。なにはともあれ SahukaraVCD発売を遅ればせながら確認。

Sahukara [Sahukaara] (Kannada - 2004) Dir. N Omprakash Rao
Cast : Ravichandran, Rambha, Vishnuvardhan, Shashikumar, Anuprabhakar

Thenmavin Kombath (Malayalam - 1994) Dir. Priyadarshan か、『ムトゥ 踊るマハラジャ』 (Tamil - 1995) Dir K S Ravikumar か、どっちかのリメイク。まあ、なるべく早くチェックしてみますわ。

ネット上のレビューなど
http://movies.indiainfo.com/kannada/reviews/sahukara.html
http://www.viggy.com/english/review_sahukara.asp
http://kannada.galatta.com/entertainment/movies/kannada/released/sahukara/
http://www.vishnuvardhan.com/sahukara_rev.htm

カンナダ界の熊親爺と勝手に呼んでる、Crazy Star ラヴィチャンドランについては、こことかここあたりを。インタビューギャラリーもあり。

投稿者 Periplo : 00:03 : カテゴリー プリヤンremake
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2008年10月08日

レビュー:Malaya Marutha

malayamarutha01.jpg

変則的な芸道ものであり、風変わりなバクティ映画でもあり、地上の愛と天上の愛が交錯する独特な三角関係ロマンスでもある。時に「教養小説」的な要素もあり、ぬけぬけと都合のいい超常現象の出てくるお伽噺であり、さらに素朴な観光映画でもある。そしてコンサートに行った気になれるミュージカル。ブキッシュなところもあるけれど、おっとりとして品がある。

そんな不思議な古い作品を見て大層気に入ったので粗筋とよく分からない点などを記録しておきたい。


cvMalayamarutha.jpgMalaya Marutha (Kannada - 1986)
タイトルのゆれ:Malayamarutha, Malaya Maarutha
タイトルの意味:山から吹く爽やかな風、カルナーティック音楽のラーガの名前

DVD版元:Sri Sri
DVDの字幕:英語(歌詞含む)
DVDの障害:現在のところ特になし
主な販売サイト:Kannada Store

Director:K S L Swamy a.k.a. Lalitha Ravi※1
Music Director:Vijayabhaskar
Playback Singers:K J Yesudas, S P Balasubramaniam, S Janaki, Vani Jayaram, Ravi
Story Writer:Lalitha Ravi
Producer:C V L Sastry

Cast:Vishnuvardhan, Saritha, Madhavi, N Shivaram, Dinesh, Umesh Kulkarni, Kodai Lakshminarayana, Jari Venkatram, Gopalakrishnan, Jayamalini, Aswathnarayana, R K Suryanarayana, Veenavaruni


【事前に分かっても問題ない程度のストーリー前半部】

1.マイソール
壮年の古典声楽家ヴィダン・シュリカンタイア(R K Suryanarayana)は大勢の門弟を従えて一家を成し、音楽家として栄光の絶頂に近づきつつあった。内弟子の中で最も献身的に彼に仕えているのがヴィシュワ [ヴィシュワナーダ](Vishnuvardhan)で、常に師の側に寄り添い、細々とした雑用を言い付かっていた。しかしながらこのヴィシュワには音楽的才能が皆無で、入門してかれこれ7・8年も経つというのに子供達の教室にすら加わることができずにいた。音楽に対する憧れは他の誰よりも強いのに、いっこうに芽が出ない彼に対して、師は音楽の道を諦め他の仕事に就くように忠告する。そんなヴィシュワを何かと庇うのがシュリカンタイアの娘シャーラダ(Saritha)だった。♪Ee Sneha Ninade♪ 感謝するヴィシュワに対してシャーラダは愛を告白するが、師の娘との恋愛沙汰は裏切りになるとして彼は取り合わない。そんなことも知らず、シュリカンタイアはヴィシュワを霊験あらたかなシュリンゲーリのシャーラダ寺院※2に詣でさせてみてはどうかと思いつく。しかしシャーラダは自己に対する確信が欠けている彼にはそれも効かないだろうと考える。シャーラダの愛に後ろめたさを感じたヴィシュワは結局師の元を離れ、バンガロールに向かう。

2.バンガロール、マイソール
苦労を重ねながらもタクシーの運転手として生計を立てていたヴィシュワは、ある日新聞でシュリカンタイアが交通事故で身罷ったことを知る。生涯の夢であった、大規模な音楽学校の建設も叶えることなく、道半ばでの死であった。急ぎマイソールに戻ったヴィシュワは、雷雨の晩、一人師の墓前に額ずき、むせび泣く。するとそこに師の霊が現れ、自分のやり残した仕事を達成するために、持てる知識と音楽的才能の全てをヴィシュワに与えようと言う。

翌朝病院のベッドで目覚めたヴィシュワは、何が起こったのか分からぬままカーヴェーリ河畔にさまよい出て、呆然としながら歌を口ずさむ。  ♪Ellellu Sangeethave♪ その見事な歌唱を耳にして、古典舞踊家の伴奏をつとめる音楽家達が近寄ってくる。彼らはリードボーカルを病気で欠いてその補欠を必死で探し求めていたところだった。

3.マイソール
リサイタル会場で、まだ何が起こったか分からずにいるヴィシュワは楽団の伴奏者に促され、追い立てられるように歌い出す。 ♪Natanavi Sharada Nata Sekhara♪ その神懸かり的な歌唱には場内から讃賞の声が上がる。舞台ではじめて彼を見た踊り手ギリージャ(Madhavi)もまたその卓越に打ちのめされる。コンサートの後、やっと自分の実力を悟ったヴィシュワは再び一人でさまよい出して寺院※3 に赴き、シャーラダ女神に讃歌を捧げる。 ♪Sharade Dayathoride♪ 偶然その場に居合わせたギリージャは彼を家に招き、自分の専属の音楽団に加わるように懇願する。それを受け入れた彼は他の楽士と共に彼女の家に起居するようになり、ギリージャとヴィシュワのステージは大評判となる。マネージャーをつとめるギリージャの父クリシュナ(Dinesh)はこのコンビを派手に売り出して富を得ることを目論むが、一方でギリージャは彼の才能の前での自分の踊りの卑小さを知り、ステージから退くことを決意する。全てがヴィシュワの音楽を中心に回り始めるなか、ヴィシュワとギリージャは、二人の間の芸術家としての交感が男女の愛に変わっていることに気づく。ギリージャはこれからの人生をヴィシュワの幸福と成功のためだけに捧げることを、ヴィシュワは師から引き継いだ音楽学校設立の事業が成ったら彼女と結婚することをムーカンビカ女神※4に誓う。

4.ドリーム・シークエンス
果てのない芸術談義のなかで、ギリージャは朝に歌われるべきラーガの種類について問う。ヴィシュワは Bhupali, Bilahari, Mayamalava Gowla などとともに、「山から吹く爽やかな風」を意味する Malaya Marutha を挙げて歌ってみせる。 ♪Malaya Marutha Gana♪Sangheeta Gnyana♪Olavina Baleyali Sereyaagiralu♪※5

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【続き - エンディングまでの完全スポイラー】

5.バンガロール
古典音楽学会に出席するためにバンガロールを訪れたヴィシュワは、会場でシャーラダと再会する。父の死後、家を売り払いテレビ局に勤めるようになっていたシャーラダは、大家として遇されるヴィシュワを信じられない目で眺めたが、亡父のそれと寸分違わぬ歌唱と音楽学校設立に向けた演説とを聞いて涙する。

6.マイソール、バンガロール
ヴィシュワの芸術を守ろうとするギリージャと金儲けに拘る父クリシュナとの対立はますます深まっていく。演奏活動で得られた金を全て我が物にしようとするクリシュナに業を煮やして、ヴィシュワは家を出て、バンガロールのシャーラダの元に身を寄せる。 ♪Hindanagali Hidivadeda♪ 一人暮らしの家に自分を迎え入れてくれたシャーラダに対して、無邪気にもなぜ結婚しないのかと問うヴィシュワ。逆に自身が未婚の訳を尋ねられて、目標を達成した後に結婚するつもりだと語るが、相手の名前を口にすることはなかった。

7.バンガロール
シャーラダはヴィシュワのマネージャーとなって資金集めに尽力するが、目標は遠かった。ヴィシュワはキャバレーダンサーの伴唱までを引き受ける。その話を伝え聞いたギリージャは再びステージに立ち、その収益を寄付することを思い立つ。ヴィシュワが今はシャーラダという女性の家に暮らしていることを知ってもその意志は揺るがなかった。バンガロールに赴いたギリージャは、女主人として振る舞うシャーラダを見て心を乱しながらも高額の小切手を渡して去る。後から話を聞いてギリージャのもとを訪れたヴィシュワは短いやりとりのなかで、改めて将来の結婚を誓い合う。

8.バンガロール
ついに念願の音楽学校が完成する時がきた。記念式典でヴィシュワは、音楽の国境を越える力について、Mayamalava Gowla のフレーズを世界の音楽スタイルで実演しながら説く。ギリージャは最大の功労者として表彰される。こけら落としのコンサートで堂々と歌うヴィシュワ。ところがその最中、壇上のシュリカンタイア師の肖像画に掛けられた花輪が滑り落ち、突然ヴィシュワは歌うことができなくなりステージは中断する。師から授かった音楽の技能・知識の全てが彼から去った瞬間だった。

9.バンガロール、マイソール
シャーラダとギリージャの献身的な介護を受けながらもヴィシュワは声を回復することはなかった。※6  師の墓前に赴き、絶望のあまり命を絶とうとする彼をシャーラダが止める。ここで彼ははじめてシャーラダに数年前この同じ場所で起きたことを筆談で告白する。労することなく得られたものは長続きしない、神に与えられたもの、努力の末に勝ちとったものだけが永続するのである。そう言って彼女は再び修行を始めるよう彼を励ます。そのころギリージャは父に呼び戻され、無理矢理に見合い結婚をさせられそうになる。追いつめられて毒をあおるギリージャ。

10.亜大陸各地の巡礼地、シュリンゲーリ
シャーラダはヴィシュワを伴い巡礼の旅に出かける。そして道すがら、音階練習から始まる最初歩の訓練を辛抱強く繰り返す。 ♪Adharam Madhuram Vadhanam Madhuram♪※7  シュリンゲーリ寺院での行の最中に昏倒したヴィシュワは夢のなかでシャーラダ女神のダルシャンを得る。女神の祝福を受けて意識を回復した彼は完全に声を取り戻したことを悟り、むせびながら女神への讃歌を歌う。 ♪Sharade Dayathoride♪ 寺の僧は彼にムーカンビカ女神への参拝を終えてから音楽活動を再開するように忠告し、二人はコッルールへ向かう。※8

11.コッルール
ムーカンビカ寺院の手前で立ち止まりシャーラダを見つめるヴィシュワ。※9 訳を尋ねる彼女に、彼はシャーラダを女神として崇めると答える。師の娘として現れ、友として導き、母として再生を与えてくれたシャーラダよ。それを聞いたシャーラダは、自分は別の存在でありたかったと言って涙し、密かに持ち歩いていたターリーを自分で自分の首に掛ける。同じ頃、病院を抜け出したギリージャはよろめきながらコッルールに向かう。 ♪Amma Ninna Nodidare♪  ムーカンビカ女神の前で讃歌を歌うヴィシュワのもとに瀕死の状態で辿り着いたギリージャは彼の足下に倒れ込む。それを見たシャーラダは首に巻いたターリーを外してヴィシュワに手渡し、ギリージャの首に掛けるようにうながす。シャーラダの見守るなか、ムーカンビカ女神の神前で二人が結ばれるシーンによって物語は幕を閉じる。

注)サントラは上の文中に挙げた以外にもあり、全16曲。一部はこちらで試聴可能。クレジットはこちらのリストで確認できる。CDも通販サイトで入手可能。動画もほとんどを YouTube で見ることができるが、敢えてここではリンクしない。

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【注釈と疑問点】

※1監督問題
本作のオープニングエンディングどちらのクレジットを見ても監督名として Lalitha Ravee という女性の名前が表示されている。しかしながらDVDのカバーには、カンナダ語で K S L Swamy (Ravee) なる男性のものらしい名前。通販サイトを含む、あまり多くは見つからないネット上のレビューなどでも K S L Swamy を監督として挙げているものが幾つかある。この二つの名前の関係は何なのか。

Lalitha Ravee の他の監督作を調べてみるのだが、Mithileya Seetheyaru (Kannada - 1988) とパラレル映画らしいHarakeya Kuri (Kannada - 1992) の2本しか見つからない。IMDb での登録は本作1本のみ。

一方 K S L Swamy (Ravee) のほうはというと、IMDb での登録はゼロながら、1960年代から監督・プロデューサー業を始めている[Bhagyada Bhaagilu (Kannada - 1968) がネットでたどれる最古のもの]大ベテランで、ラージクマールのフィルモグラフィーでも名前が頻繁に登場する。俳優としての顔ももち、2000年以降の作品でも脇役として時に顔を出している。映画界の古老として各種行事にも出席し、活発に発言もしている模様。このイメージMalla (Kannada - 2004) Dir. Ravichandran 中のもの。

結局ネット検索はここで行き詰ってしまったのだが、現地情報によれば、スワミ氏とラリタ女史は夫婦、ラリタ女史は女優ということらしい。そして映画監督ラリタ・ラヴィは実質的にはKSLスワミであるとも。どうやらある種の雅号としてスワミ氏は Lalitha Ravee を名乗ってるらしいのだ(この人と同じか)。しかし K S L Swamy 名義の監督作も多数あるというのはどういうことなのか、何らかの使い分けの法則があるのか。そのへんは上にあげたラリタ名義作品あたりからぼちぼち観ていくしか探りようがないか。現地情報提供のラーキン氏に感謝。

※2シュリンゲーリのシャーラダ寺院
本作で最も重要な意味を持つ寺院。カルナータカ州チクマガルール郡の山中にあり、巡礼スポットとして名高い。主神はシャーラダ女神、学芸の女神サラスワティーの別名。サラスワティー寺院は全インドに無数にあるが、シュリンゲーリがこの女神信仰の中心地のひとつであることは疑いない。寺院に隣接して、中世の宗教哲学者アーディ・シャンカラの創建になる大僧院もあり、シャンカラの四大マタのひとつとして現在も繁栄している。バンガロールから約340km、マイソールからは280km。本作のクライマックスの一部は実際にこのシュリンゲーリ・シャーラダ寺院で撮影されている。

※3寺院に赴き、シャーラダ女神に讃歌を捧げる
ストーリーの流れからすると、この寺院はマイソールになければおかしいのだが、マイソールにこのようなシャーラダ=サラスワティー寺院が存在するかどうかは不明。なおかつここで画面に現れる本尊の女神(下左画像)はクライマックスに登場するシュリンゲーリのシャーラダ女神と同一のもの。これは予算の制約上の手抜きなのか、もっと深い意味を持つ作劇上のキャラクター統合なのか、判別がつけられず。またこの建築()が実際にはどこの寺院のものなのかも不明。

劇中でシャーラダ女神として映し出される愛らしい神像は、黒々としたムーカンビカ女神(後述、下右画像)のそれとともに、映画用に製作された大道具と推測される。寺院内でのロケが許可されてもさすがにご本尊の撮影までは許されないことがほとんどみたいだ。
Malayamarutha04.jpgMalayamarutha05.jpg

※4ムーカンビカ女神
この場面でいきなりこの女神の名が言及される理由も不明。シャーラダとは異なり、ムーカンビカ女神はカルナータカ州ウドゥピ郡コッルールにある寺院の主神にほぼ限定されている。その実質はカーリー、サラスワティー、ラクシュミーの三柱の女神と同一ということなのだが、特定の伝承に基づきここコッルールの本尊だけがムーカンビカの名で呼ばれる。この寺院もまたアーディ・シャンカラ創建の伝承を持つ大巡礼センター。シュリンゲーリとともに解脱に至るためのカルナータカ7大巡礼地のひとつに数えられている。バンガロールから約410km、マイソールからは370km。またシュリンゲーリとの間の距離は約90km。

※5♪Malaya Marutha Gana♪(マラヤ・マールタの調べ)
観光映画のとしての側面もある見せ場。絵としての構成はこの時代のものらしく垢抜けないのだが。しかしタイトルソングであるテーマ曲はすばらしい。歌に入る前に Malaya Marutha ラーガの音階(Aa: S R1 G3 P D2 N2 S / Av: S N2 D2 P G3 R1 S)をおさらいしてくれる親切さもいい。盛期ボリウッド様式(と勝手に呼んでいる)を思わせるきゅるきゅる煽るバイオリン、「るるる~」とトロけるバックコーラス、時代を感じさせる要素も多いが、キャッチーなメロディー、堂々たる構成には聴くものを圧倒する魅力がある。フィルミー・クラシックの名作と呼んで差し支えないのではないか。

主なロケ地はハレビードのホイサレーシュワラ寺院、ベルールのチェンナ・ケーシャヴァ寺院ケンマナグンディカッラハティの滝、マイソールのチャンムデーシュワリ寺院の巨大ナンディン像前、メルコートの巨大沐浴池 Pushkarni [Kalyani Theertam] など。

※6声を回復することはなかった。
楽器は演奏できるのである(わざわざ楽器を演奏するシーンが挿入されている)。あらゆる楽器の王である声楽の巨匠にとって器楽家になることなど問題外、という序列の価値観の現れだろうか。

※7♪Adharam Madhuram Vadhanam Madhuram♪
ネパール・カトマンドゥのランドマーク、スワヤンブナート寺院のマニ車をまわすシーンから始まり、意表をつかれる。これには何か象徴的な意味があるものなのか、純粋にビジュアル的効果を狙ったものなのか不明。全ての知識と技巧を失った元歌い手にゼロからレッスンをつける、これをリアリズムで映像化されたら観客には付き合いきれない。ここでジャンタイ・ワリサイに被って立ち上がるのは Madhurastakam と呼ばれる8連詩(astakam)。16世紀、ヴィジャヤナガル朝に仕えた学僧 Vallabha Acharya の手になるクリシュナ讃歌は、神の名を madhura(甘露)という単語に置き換えて繰り返すことによって瞑想に誘うような効果をあげている。もちろん 16世紀のオリジナルメロディーは残存していないが、MSシュブラクシュミーによる詠唱からテルグ映画のラブラブソングまで無数のヴァリアントが存在する。本作でのそれは音階練習と絡めたユニークなコンポジション。

映像も、あるもの全てを大放出してゴージャスな世界を作ろうとしがちなインド映画には珍しく、抑え目な演出で幻想的な効果を上げることに成功している。カンナダに限らずこの時代のサウス映画のソングシーンとしてもかなりハイレベルなものと言えるのではないか。

なお、この曲より前の、師匠の声を借りて主人公が歌うシーンのプレイバックは一貫してイエースダースが担当している(例外はヒロインの妄想ソングである♪Ee Sneha Ninade で、これはSPBが歌っている)。主人公が自分の声で歌い出すという設定のこの曲以降はSPBにスイッチ。何でもアリの吹き替えワールドでこれは結構珍しい律儀さである。したがって劇中で2回登場する♪Sharade Dayathoride では、同じ曲でイエースダースとSPBの聴き比べができるという贅沢さ。

※8ムーカンビカ女神への参拝
シュリンゲーリの僧がコッルールへのお礼参りを勧めるのはなぜなのか。アーディ・シャンカラの縁や西ガーツ山中という環境など、たしかに共通点も多い二つの寺院だが、どのような劇的必然によって繋がっているのか。

※9ムーカンビカ寺院の手前
以下の二つの風景がムーカンビカ寺院の門前として現れるのだが、実際の寺院とは別物。一体どこで撮影されたものなのか。ラストの神前のシーンも明らかにセット。本物のムーカンビカ寺院は門前がかなり手狭な上に、回廊と本殿の間の元来は露天だったスペースにトタン屋根を被せているために、絵になりにくいものになってしまっている。下左の画像の寺は、「6」のバンガロール近郊のシーンにも使われていた。
Malayamarutha06.jpgMalayamarutha07.jpg


【参考レビュー】
●フランスで行われている映画祭 Festival des 3 Continents オフィシャルサイト中の紹介
http://www.3continents.com/3continents/fiche_films_eng.jsp?mnuCountry=IN&filmid=1496
●indianetzone 中の筆者不明のレビュー
http://www.indianetzone.com/2/kannada_films.htm
●The Music Magazine のエッセイ The unreal classical musician にも若干八つ当たり気味の言及あり
Encyclopaedia of Indian Cinema P.475-476

投稿者 Periplo : 16:28 : カテゴリー so many cups of chai
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2008年10月06日

掌中の玉石

若干の編集方針の変更。

ある種の韜晦癖から、プリヤン関連作品以外のお勧めの映画について書くのを極力抑えるようにしてきたのでした(断るまでもないけどプリヤン映画が全てお勧め作品というわけじゃ全然ない)。うっとり陶酔的なレビューを書くことによって、かえって読者をその映画から遠ざけやしないだろうか、という危惧もあって。しかし、そんなことも言ってられないような状況をここのところ感じている。

ちょっと昔の映画について調べようとして検索すると、無料で見られるサンプル動画と劇中歌mp3の頁が山ほどヒットする、数年前には考えられなかった夢のような環境。一方でその同じ映画に関して、文字で書かれたデータがほとんど見当たらないというのもごくありふれた現象。百聞は一見にしかずとは言うけれど、これはこれで問題だと思う。

少なくとも、自分が気に入った作品に関しては可能な限りデータを集め、他の場所で言及するときにも引用できるようにしたい。また不明な点などについて問題提起しておきたい。そのためには必要とあればネタバレの粗筋表示もありとするが、レビューの形式的統一にはこだわらない。だいたいこんな趣旨・方針で、新カテゴリー so many cups of chai を設け、過去に遡って一部エントリーに適用しました。

投稿者 Periplo : 03:29 : カテゴリー so many cups of chai
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2008年10月05日

嘘つきはプリヤンのはじまり

PoiSollaPorom.jpg

以前のポストからちょいとお留守になってたけど、プリヤンがプロデュースしたタミル映画 Poi Solla Porom (Tamil - 2008) Dir. Vijay は結構良い感じにヒットしてるらしい。

レディフのレビューによれば、タイトルの意味は We're Going to Lie で、リメイク元は Khosla Ka Ghosla (Hindi - 2006) Dir. Dibakar Banerjee だそうだ。プリヤンのアシスタントだった監督の A L Vijay は、ラルさん主演作 Kireedam (Malayalam - 1989) Dir. Sibi Malayil のリメイク Kireedam (Tamil - 2007) でデビューして好評をもって迎えられ、幸先のいいスタートを切った人物。このさきタミル映画界のリメイク・マエストロとなっていくのか。

ギャラリー見てると名前聞いたこともない若い衆ばっかが出てくるんで不安になるが、ストーリーは二人のオッさん(Nedumudi Venu, Nasser)の対決が中心らしいんで一安心。

投稿者 Periplo : 03:03 : カテゴリー
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2008年10月04日

まだ半信半疑

twenty20Logo.jpg

2年越しの企画、ついに実現か?

The star-studded film Twenty:20, which is to hit screens across the state later this month, includes every Malayalam actor who matter.(Gulf Times 記事 ‘Historic’ movie ready for Kerala release this month より)

上の記事中にもあるが、内容はクリケットとは無関係だという。

■トウェンティ20方式(TWENTY20)
正式なクリケットの試合では、双方のボーラー(投手)が各300球(50オーバー)を投じて勝負を決めるため、試合終了までに3~5日を要する場合もある。IPLを主催するインド・クリケッ国の米生産量ト協会(BCCI)では、テレビでの中継を前提に、ボリウッド映画の上映時間と同じ3時間弱で決着がつく「トウェンティ20」方式を採用している。これは、先攻・後攻の投球数を各120球(20オーバー)に限定したもの。(インドチャンネルクリケット解説より)

まあ、要するに「イイトコ取り」っていう意味を込めたかったんだろうね。ギャラリーはこちらが充実。

過去のエントリーその1その2

投稿者 Periplo : 21:23 : カテゴリー バブルねたkerala
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2008年10月03日

大部屋以上明星未満★23

Baburaj またまた検索しづらい名前。これも最近やっと顔と名前が一致して溜飲が下がった案件。

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「中国の不思議な役人」てな佇まい、結構印象に残る顔だ。ただそれだけ。演技に感銘したとか、そういうんでは全然ない。そもそも演技の余地があんまし与えられていない、どっちかっていうと大部屋寄りの悪役。

最近の出演作中では、例外的にAvan Chandiyude Makan (Malayalam - 2007) Dir. Thulasidas でかなりの活躍をしていた。セカンド・ヴィーランだ。にもかかわらずこの映画のレビューでバーブラージの名前をきちんと挙げてるものは皆無だった。なんでだ、レビュー書いてる連中にも名前不明だったのだろうか。

幾度となくブラウズしたマラヤーラム映画俳優組合(AMMA)の名簿中では Babu Raj の名前で登録されているが顔写真はなぜか掲載なし。これじゃわからん訳だ。IMDb 上のフィルモグラフィーは26本を数えるが、実際はこんなんじゃきかないはず。他にネット上のバイオグラフィー情報としては、妻が女優の Vani Vishwanath(お色気アクション女優と見られてるらしい、こんな感じ) であること、2004年の AMMA の内紛の際には「スト破り」として糾弾されたということぐらい。

前回紹介のジョニーさんとこのバーブラージの名前が分かったのは、最近DVDになった Bharghavacharitham Moonaam Ghantam (Malayalam - 2006) Dir. Joemon のおかげ。脇役さんの名前を役名と一緒にエンディングで表示するという、ごく当たり前に思える慣習が何故かあまり根付いていないマ映画界において、貴重な例外だったのでした(大方の批評通りの駄作だったけど…笑)。

投稿者 Periplo : 00:31 : カテゴリー brown dwarf galaxy
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2008年10月02日

大部屋以上明星未満★22

Johny (Jony, Johnny とも)

johnny1.jpgjohnny2.jpg

顔と名前がやっと一致。長らく喉に引っかかってた小骨がとれたような気分だ。これまでにこのシリーズで取り上げた人物の中では一番大部屋に近いかも。しかしこの異貌、大部屋にはもったいない。

いちおうマラヤーラム映画俳優組合の名簿に掲載されてる写真はあるのだが、ボケボケで確証が得られなかった。

悪役・チョイ役でしょっちゅうお目にかかるのに、レビューなどでクレジットされることはごく稀。それにしても、あまりにも検索に適していない名前だ。フィルモグラフィーもバイオグラフィーも一切不明。あるいはテレビなどでの活躍もあるのかもしれないが。

投稿者 Periplo : 00:08 : カテゴリー brown dwarf galaxy
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2008年10月01日

正真正銘のご近影

を見つけてちょいと嬉しいっす。なんの話かって? リシーたんだよ。

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9月25日にチェンナイ・サティヤム劇場で行われたVaaranam Aayiram (Tamil) Dir. Gautham Menon のサントラお披露目式典にて。他にこんなショットもあり。

The album was finally released by producer Ramkumar in the presence on Sony BMG's Ashok and Nandhini; actors Sathayraj, Prakashraj, Nasser, Meena, Divya Spandana, Lizzy Priyadarshan and Prithviraj (Bablu); directors Dharani, K.S. Ravikumar, Karu Palaniappan, Ameer, Vasanth and Radha Mohan; camerman R.D. Rajasekar, editor Anthony, art director Rajeevan, singers Sudha Raghunathan, Naresh Iyer and Devan and lyricist Thamarai. Also present at the occasion were cinematographer K.V. Anand, director-actor Samudhrakanni, director Priya V., actor Dushyanth and others.

以前と比べて明らかにリシーは表舞台に顔を出すようになってきてる。子供の世話もひと段落して映画界・TV界に復帰も考えてるのかね。ヲチ続行。

投稿者 Periplo : 00:40 : カテゴリー プリヤンtrivia
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