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2009年02月28日

名前の神秘2

なんでか分かんないけど最近自分のストライクゾーンが広がってる気がする。
swathi.jpgsuja.jpg
左は Ashta Chemma のスワティちゃん、ガラッぱちぶりが良い。右は Gopalapuranam のスジャーちゃん、ちんくしゃ顔が妙に印象に残る。

なんの話だ。

以前にディスク情報として紹介した Ashta Chemma (Telugu - 2008) Dir. Indraganti Mohana Krishna をやっと鑑賞。注目の監督インドラガンティの第三作目、Maya Bazaar (Telugu - 2006) に続く低予算娯楽映画。

【ネタバレ度35%の安心粗筋】
マヘーシュ・バーブの狂ったファンであるラヴァンニャ(Swathi)は、2005年のマヘーシュの結婚で精神のバランスを崩す。その後かろうじて立ち直ったものの、自分の結婚相手はマヘーシュという名前でなければならないという思いこみに凝り固まっていた。隣家に住む幼馴染みのアーナンド(Srinivas Avasarala)はラヴァニャの狂態に悩まされ、打開策としてハイダラーバードのクラブでマヘーシュという名の好男子(Nani)を見つけ出してきて引き合わせる。たちまちのうちに恋に落ちる2人。しかしこのマヘーシュ、深い訳があってラームバーブという本名を隠している人物なのだった。

テルグ映画に多少馴染みがあれば爆笑必至のギャグの数々。プリヤン先生がボリウッドで作ってるコメディが古くさく感じられる軽快な笑い。ボックスオフィス的にもかなりの成功を収めたという。しかし笑うだけ笑って見終わった後に引っかかるものがなにもない。まるでテレビドラマみたいに平板で手応えがない。フロップに終わったという前作 Maya Bazaar にはあった「映画の喜び」(それはもっぱらこの人に負っている)がどうしても感じられないんだ。本作でデビューの Srinivas Avasarala は拾いものだったが、こいつが狂言回しの寝業師として登場しておきながら途中から登場人物の一人になってしまうストーリーには収まりの悪さが感じられた。ともかく、こういう小粒が受けるってのはテルグ・オーディエンスの皆さんも何か疲れてるのかと思ってしまったのよ。

しかし、結局のところ、良作の感動には恵まれなかったものの、本作によってまた細かい学習をしてしまったんだわな。たとえばテルグ界(サウス、いやインド全域?)ではNRIのブランド力がとてつもないってこと。それからマヘーシュ・バーブって名前は凄くクールだけど、ラームバーブじゃドン臭くて救いようがないってこと。こういうのは幾ら鑑賞本数重ねても体感できるようになるのは無理。試験勉強よろしく一個ずつ丸暗記だな。

cvGopalapuranam.jpg名前の話で思い出した、最近見た Gopalapuranam (Malayalam - 2008) Dir. K K Haridas。これまでに見たマ映画のなかでも一、二を争うサイテーぶりだった。こんな素人くさい脚本にマ映画が誇る芸達者脇役さん達がよく出てきたなというくらいのダメダメ。でありながら、主人公であるゴーパーラクリシュナンという名の若者が作中に叫ぶこんなセリフで、やっぱり観て無駄じゃなかったと思えてしまうのだ。そのセリフとは、

「ゴーパーラクリシュナン、この名前で呼ばれるたんびにオイラは死にたくなるんだよう」

マ映画界の若頭、ディリープの本名がゴーパーラクリシュナンであること(というよりはディリープという芸名との落差か)が執拗に揶揄の種とされていることを側面から補強する名セリフ(笑)だわな。

Ashta Chemma についての追記:タイトルの Ashta Chemma はインドに伝わる子供向けの双六ゲームのこと。詳しくはこちらなどで。

投稿者 Periplo : 00:37 : カテゴリー バブルねたsouth
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2009年02月22日

ディスク情報0902-2

cvFlash.jpgディスクのリリースだけは告知したつもりになっていたけど、今確かめたらそんな過去記事はなかった。だもんで新発売では全然ないのだけれど、ラルさん2007年作品のDVDを鑑賞の上で初紹介。

Flash (Malayalam - 2007) Dir. Sibi Malayil
Cast : Mohanlal, Parvathi, Indrajith, Siddique, Ponvannan, Sai Kumar, Jagadeesh, P Sreekumar, Suresh Krishna, Sreelatha, Shamna Kasim, Jagathi Sreekumar, Suraj Venjaramoodu, Bijukuttan, Parvathi Melton, Bayon

プリヤン先生の仇敵シビ・マライル監督といえば、過去にラルさんと組んで Kireedam (1989 - Malayalam)、His Highness Abdullah (Malayalam - 1990)、Bharatham (Malayalam - 1991) などの佳作を生んだ名匠。ラルさん映画じゃないけど当網站ではリシーたんの出てる Mutharam Kunnu PO (Malayalam - 1985) を強力にプッシュしている。

なのにどうしてゲットしてすぐに見なかったかというと、ひとえにジャケ写真が醸し出すどよーんとしたイメージに怯えていたため。無茶な若作りのラルさんが、娘といってもおかしくないヒロインとあんなことしたりこんなことしたりする痛い系ラブコメじゃないかと思ってたんだよね。

しかし全然違ってた、謎解きスリラーでした。先祖伝来のタラヴァッドに住む大家族のなかで起きた殺人事件。疑いをかけられた娘は、しばらく前から情緒不安定な症状を見せていた。予断に満ちた強引な捜査を進める警察を尻目に、精神分析医のラルさんが演劇的な手法を使い真犯人を見つけ出す、というもの。

流通しているレビューのほぼ全てが言及しているように Manichitrathazhu (Malayalam - 1993) Dir. Fazil の影を感じずにはいられないストーリーライン。というよりかは、あの映画にはスリラーにおいてケララ人が好むエレメンツが全て入っていたから、それ以降ケララ人に受けるスリラーを作ろうとすると、どうしてもインスパイアと言われてしまうということなのかな。そして Manichitrathazhu があまりに鮮やかにコンポーズされていたんで、同じ路線で作品を送り出しても大抵はメタメタに貶される結果になる。 Manichitrathazhu の制作にセカンドユニット監督として(プリヤンと一緒に)参加していたシビ・マライルであっても結果は同じだった。

ただ本作にはお化け話っぽい要素はほとんどない。それから治療の過程で患者が精神分析医に対して時に抱く恋愛感情というのが描かれていて、これが目新しいウリだったと思う。しかし、「世界を駆ける精神分析医」の多才ぶりを示そうとしたらしい非現実的で焦点のボケたエピソード(例えば入社面接にまつわるくだり)の鬱陶しさと、動機が薄い(と感じられる)真犯人の妙にあっさりとした自白とかが、見終わってスカッとした後味を与えてくれないんだな。クライマックスまでの盛り上げは上手いのに、フィニッシュが綺麗に決められなかった惜しいスリラーの部類に入るだろうか。

クライマックスまでの盛り上げを一手に引き受けてたのがヒロインのパールヴァティ・メーノーン。トラウマとそれを抑圧しようとする心の動きとの狭間で異常行動に駆り立てられていく孤独でデリケートな女性を好演。Notebook (Malayalam - 2006) Dir. Rosshan Andrrews ではマセてはいるけどただの小娘(そういう役だから仕方ないのだが)、Vinodayathra (Malayalam - 2007) Dir. Sathyan Anthikad ではそもそも存在に目が行かなかった。それが本作で一気に萌えゾーンに入ってきて小父ちゃん吃驚よ。

ParvathiMenon1.jpgParvathiMenon2.jpg

でもって、めんこいケララ娘を放っておいちゃくれないこのご時世、すでにタミル、カンナダで仕事を始めてるのだった(Nowrunning によるインタビューなど参照)。テルグ進出も時間の問題か。

文句を言いたいのはもちろん芸名についてだ。マ映画関連記事のほとんどで一語名前のパールヴァティが流通している。往年の美人女優、我が愛しのパールヴァティ様のカムバックを妨害するみたいじゃないかあ。全貌は掴めないのだが、マ映画ヒストリーには Parvathi および Parvathi Menon という芸名の女優が複数いるみたいなんだ。たとえば、Thalappavu (Malayalam - 2008) Dir. Madhupal に名前を連ねるパールヴァティは(どれがそれなのか分かんないけど)明らかに別人。人騒がせもいい加減にして欲しい。

投稿者 Periplo : 14:38 : カテゴリー Mohanlal Discography
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2009年02月20日

人騒がせな奴ら(3)

研究のためとはいえ、こんなむさいイメージを載せちまって忸怩たるものがある(泣)。

anirudh.jpgアビシェーク・バッチャンになれなかった男、サイジュ・クルップが業績不振から芸名変更。

名匠ハリハラン監督による Mayookham (Malayalam - 2005) でデビューしたにもかかわらず、その後鳴かず飛ばず。同作で一緒にデビューしたマムター・モーハンダースちゃんが、正統派ヒロイン路線ではないにせよ順調にキャリアを伸ばしてるのとはえらく対照的に。

で、人騒がせな打開策に出たというのだ。つまり、芸名を Anirudh に変更して、タミル映画にも進出。詳細は indiaglitz 記事 Anirudh stars in 'Marubadiyum' にて。しかしマ映画俳優には珍しいオフィシャルサイト(よっぽど暇だったのか)のURLは http://www.saijukurup.com/ のまま。どう始末をつけるつもりなのか。

投稿者 Periplo : 01:22 : カテゴリー brown dwarf galaxy
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2009年02月18日

お勝手拝見

舞台裏を覗く企画ってのは面白い、時に本編よりも面白いことがある。

billulocation.jpg

先週末公開のプリヤン新作 Billu はロケットスタートではないものの、まあまあの滑り出しらしい。さすがカーン様出演作、情報の量ってったらこれまでの比じゃないね。

上のイメージは BollywoodHungama によるミニ特集 Behind the scenes of Billu から。このマ映画とおんなし場所で撮影してるのがわかって面白〜い。

それから、ApunKaChoice の Things you don't know about 'Billu' によればだな、シャー様のダンスシーンのうちの一つだけ、サントーシュ・シヴァンがカメラを廻してるってんだが本当かね。できれば曲名まで書いて欲しかったもんだが。まあ、全体の撮影監督がAnniyan (Tamil - 2005) Dir. Shankar や Om Shanti Om (Hindi - 2007) Dir. Farah Khan をてがけたV Manikandan だってんだから贅沢な話やね。

投稿者 Periplo : 05:55 : カテゴリー プリヤン新作
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2009年02月11日

ディスク情報0902

めでたきミーナークシ女神よ、その名はカーンチーではカーマークシ
力あるミーナークシ女神よ、その名はヴァーラーナシーではヴィシャーラークシ

arjunSP1.jpgarjunSP2.jpg

衝撃の一作とまで言って紹介したからには、その後の動きもフォローしなければ。

Arjun のディスクについて、

1.字幕がないと騒いでいた従来版(下左)に字幕セクタが存在することが判明した。
2.スペシャル・エディションを銘打ったDVD(下右)が同じ版元から新たに発売された。

まず、1について。いわゆる民生機、およびウィンドウズ、マックに対応した何種類かの再生ソフトで試して字幕が出なかった。しかし海外在住の複数の知り合いによる「字幕は出る」という証言を聞いて訝しく思っていたのだった。しばらく前に、破廉恥ディスクに強いと評判の再生機 EG-DVDP2200Cエバーグリーン社製、現在は生産終了)を入手したので改めて試したところ、日本製のTVモニターでもちゃんと字幕がでますた。これまでに、再生出来んとか字幕が出んとか文句たれてきた各種ディスクも、エバグリ君で再検証してみる必要ありだわな。

2のスペシャル・エディションについて。現在取り扱いをしている通販サイトはKADのみのようだ。なにがスペシャルかというと、「Widescreen with DD/dts sound tracks」なんだそうだ。字幕は普通に出ます。通販サイトでは下中のジャケイメージがアップされているが、実際には下右のもの。しかし筆者が注文して最初に届いたものはジャケのみ新盤で中身は旧盤という杜撰さだった、全くもう、どこまでも飽きさせない仕組みになってるぜ。それにしてもこういう改訂盤のリリースとは珍しい。裏にどういう事情があったのか?

ひとまず、これから本作を買おうという人には、スペシャル・エディションが断然お勧め。

cvArjun.jpgcvArjunSP1.jpgcvArjunSP2.jpg

以前に書いた粗筋に加わった訂正は以下の通り。

■ストーリーの大枠
ハイダラーバードの平凡な中流家庭に暮らす双子の兄妹( 姉弟 ?) のミーナークシ (Keerthi Reddy) は大学の同級生ウダイ (Raja) に恋心を抱いているが、告白できずにいる。卒業によって別れ別れになる間際になって、ウダイはミーナークシへの愛を打ち明け、それにもかかわらず両親のいるマドゥライ(タミル・ナードゥ州南部)に戻り見合い結婚をするつもりであることをさせられる前に2人で駆け落ちをしようと手紙で告げる。 (Mahesh Babu) は の懊悩を知り、両親と を伴ってマドゥライに赴き、優柔不断なウダイに決断をせまり 姑息な手段に訴えようとするウダイを叱責し、双方の両親の臨席のもとで、ついに両人を結婚させる。ウダイの両親、バーラー・ナヤガル (Prakash Raj) とアンダル (Saritha) の夫婦は、マドゥライの名家の当主ながら利権のためなら殺人にも手を染める冷血な守銭奴。表向きは新婚カップルを祝福しながらも、ウダイと資産家の娘との縁談が破棄されたことに深く失望し、折りをみてミーナークシを謀殺しようと試みる。

ストーリーの理解度からすると字幕無しで見てた時とあんまし変わらないや。こういう映画も珍しいと思う。一番知りたかった、ラストシーンで初めて主人公の名前が明かされるというくだり、これは今ひとつ効果的とは思えなかった。マハーバーラタのメインキャラクターの一人であるアルジュナと、ミーナークシ女神との間に何か神話的連関があるものかと思って随分と調べたりしていたんだけどね。

それから、字幕とは関係ないけど、冒頭およびクライマックスのアクションシーンの舞台設定がタミルナードゥ州最西端のカンバンという村の近くであることが、作中に現れる里程標からわかった。ロケ地マニアとしてはここも行ってみたいもんだ。

ともかく、サウスには「美しく楽しい暴力」というものが存在するのだ、ということを知らしめてくれた本作、改めてここで推薦。
arjunSP3.jpg

再生機に関する情報は、むんむんさんのご示唆に助けられました。作品そのものに関しては、魚の目をもつ女神さんに多くを負っています。お二方に多謝。

投稿者 Periplo : 23:29 : カテゴリー so many cups of chai
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2009年02月10日

せびり屋の理髪師

billu.jpg

2月13日に公開のプリヤン新作、タイトルが Billu Barber から Billu に変更に。

The term "barber" in India usually connotes a travelling professional in small towns and villages, who gives haircuts and shaves using minimum paraphernalia and at very low charges.(Reuters India 記事 "Billu Barber" now "Billu" as film faces hairdressers' ire より)

うーんと、お洒落な店舗を構えて営業してらっしゃる理髪師の皆さんが、用語の使い方が不適切であるとして映画制作者に抗議したらしいのだな。

対してのプロデューサー・カーン様は、いたって事務的。

"I don't think it's wrong, they have their own take on it. Instead of going to and fro on who's wrong, we decided on the posters and hoardings ... we'll stick a paper on the word 'barber' wherever it can be done," Khan told CNN-IBN channel.

Khan, arguably Bollywood's most bankable star, talked to an association of hairdressers and salon owners and said he would hide the word "barber" from posters and billboards, and bleep out the word from the film, which releases on Feb. 13.

"I just wanted to make sure people were not unhappy," said Khan, whose production company is associated with the film.

"I still don't understand the reason but if they are so emotional about it, we will do what we can."(同上)

オフィシャルサイトのアドレスはさすがに変更無しだけどね。

投稿者 Periplo : 01:27 : カテゴリー プリヤン新作
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2009年02月06日

20lakh:20lakh

タラ子女王様はやっぱスケールがでかい。

20lakhs.jpg

Nayanthara was signed for this film opposite Paruthiveeran Karthi for a record salary of Rs one crore. It was the talk of Kollywood, as no actress has ever been offered such a whopping amount in an industry in which heroines are paid only in the range of Rs 40 to 50 lakhs.(Times of India 記事 Nayathara is angry! より)

上の記事の続き部分:女優としてはタミル映画界空前の1000万ルピーのギャラでリングサーミ監督の新作にサインしたナヤン様だったが、制作側はその後世界的な景気の悪化を理由にギャラの引き下げを要求。これをにべもなく断った女王様とプロデューサーとの間で激しい応酬があったらしい。結果、プロデューサーはヒロインをナヤンターラからタマンナに差し替え、ナヤンターラには手付け金として支払った 20 lakhs (200万ルピー)のうちの15 lakhs の返還を求めたのだという。うーん、セコい。もちろん女王様がこんな非礼に応じる訳もなく、押し問答が続いた。そしてここに来て、制作サイドの訴えを受けた Tamil Film Producers Council (TFPC) と South Indian Artists Association (Nadigar Sangam) とが連名でナヤン様使用禁止令を出したのだそうだ。おい、ちょと待て、プロデューサー組合はまだ分かるが俳優組合が女優を弾劾していいのか? 大体お前ら手付け金ってものの意味をわかってるんかい?

俺はタラ子様を断固として支持するぜ!!

などとここで息巻いてもしょうがないか。別んとこでのマムターちゃんの証言もそうだが、元気なケララ美女軍団の皆さんのおかげで、サウスの相場の片鱗が見えてくるのはありがたいことじゃ。

投稿者 Periplo : 15:17 : カテゴリー バブルねたsouth
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2009年02月04日

アートセンターあらし

タイトルとイメージと本文はあんまし関係ないっす。

laTempesta.jpg

ラルさん多角経営はまだまだ広がる。今度はコーチン郊外のトリプニトゥラに Jose Thomas Performing Arts Centre (JT Pac) なる文化施設をオープンさせるのだそうだ(OneIndia 記事ほか)。ここ、留学できるんだろか。

で、こけら落としにラルさん自身の舞台上演の話。演目はなんとシェークスピアの『嵐』(マラヤーラム語版)だそうだ。ラルさんは Duka di Milano, Prospero 役。

'Karnabharam' was a once-in-a-lifetime experience, where he spoke those sanskrit dialogues before experts in the language `sitting on the front row' of the show. `Chayamukhi' came next as a stage production.(もひとつ別のOneIndia 記事 Mohanlal is Shakespeare's Prospero より)

これまでのラルさんの舞台歴、サンスクリット劇 Karnabharam についてはここに動画あり。2001年初演時の内輪話も。それから昨年各地で上演していた Chayamukhi のほうは、動画はこれだけだが、ギャラリーやレビューも豊富。サントラも売ってるよ。

とにかく、ラルさん以外のキャスト、それからストーリー&設定のインド的翻案はあるのかどうか、などを含めてこれからヲチだな。

投稿者 Periplo : 01:01 : カテゴリー バブルねたkerala
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2009年02月01日

レビュー:Veeralipattu

こーんなポスターを見せられたら、普通は弱っちい恋愛ものだと思っちまうわな。
Veeralipattu01.jpg

だけど全然違うんだ。実際はこーゆー映画。
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ってこれじゃ分からんか。

民俗学あり、ファミリーセンチメントあり、伝統と近代の対立あり、共同体の絆と個人の幸福の相克あり、若干図式的(それにややインテリ臭あり)という謗りはあるかもしれないが近年にない傑作だと思う。

cvVeeralipattu1.jpgVeeralipattu (Malayalam - 2007) Dir. Kukku Surendran
Cast : Prithviraj, Padmapriya, Jagathi Sreekumar, Murali, Jaffer Idukki, Rekha, Anoop Chandran, Suraj Venjaramoodu, Indrans

タイトルの揺れ: Veeraalipattu, Anantham(公開前のタイトル、この名称でのレビューも幾つかあり)
タイトルの意味: silk cloth
ディスク版元: Speed(字幕なし・左)、Moser Baer(歌詞を除き英語字幕あり・右)
DVDの障害: 現在のところ特になし
主な販売サイト: MaEBagなど

Speed 版の字幕なしDVDで見ただけでも只ならない一作だということは分かったので、レビューしたかった。しかしやはり完全に理解しきっていないのではと思い悩んで悶々としていたのだ。そしたらつい先月 Moser Baer から字幕付きがリリース。女神への祈りが通じたのか。御難続きのマ映画人生でもたまにはこういうこともあるんだわな。

しかしこの映画、楽しむためにはやっぱり少しは予習が要る。タイトルの veeralipattu というのは「絹の布」の意味だが、ここではケララ特有の祭司ヴェリッチャパード velichappadu が身にまとう儀礼用の赤い布のことを指しているようだ。

 一方、ヴェリッチャパード、または、コーマランと呼ばれるバラモンではない祭官が、時には、テイヤムなどのシャーマンとともに、あるいは単独で祀りの場に現れ祭祀を司り、時には彼自らも神がかりになり予言をすることがある。テイヤムは神そのものと信じられるが、ヴェリッチャパードの場合は、神の代理、お使いとして現れるという違いがある。神でないゆえに、特別なメイクをしないということになるのだろうか。コーラム・トゥッラルは、それぞれの地域の特定のジャーティ(たいていの場合儀礼的に低い地位に甘んじる)の者のみがシャーマンとなり、先祖代々務めているというインド的特色を示すのに対し、ヴェリッチャパードはナイルからでもどの階層からでも出るシャーマン・プリーストだ。
 ヴェリッチャパードは白い着物(昔のナイル女性の儀式を行うときの正装)を着る。その上にさらに赤い着物を重ねて着て、首の回りをチェッティの花で飾り、長い髪を腰まで伸ばす。さらに、ベルを腰に着けて、右手には剣、左手にはアンクレットを握る。ヴェリッチャパードは、実は、カンナギというタミル古典叙事詩のヒロインの化身なのだ。これは、金細工師の策略に陥れられ、王によって女王のアンクレットを盗んだ罪で処刑された夫コバラムの恨みを晴らすため、怒り狂ってマドゥライの町を火に包んだカンナギの姿そのものなのだ。(『カタカリ万華鏡』、河野亮仙、平河出版社、1988年、P.86より)

神降ろしのシャーマンというのはどちらかといえば低カースト出身者が従事するものかと思っていたけど、そうじゃないこともあるんだね。

Komaramthullal
The oracle dance performed in temples, especially Devi temples during festivals to inform the presence of Devi is known as Komaramthullal. It is also known as Velichappad thullal. There will be identified persons in each temple to perform this act. They tie bells around their waist, takes out sword in hand, wear chilambu in legs and dance with divine sword in hand and announce the desire of the presiding deity.(Nairs Academy of Information Reserch and Services サイト中の用語解説 Komaramthullal の項)

上の文中の chilambu とはアンクレットのこと。

Veeralipattu04.jpg

【ネタバレ度40%の安心粗筋】
中部ケララ内陸部の農村。70歳になるナーラーヤナン・ナーイル(Jagathi Sreekumar) は村人から尊敬を受ける巫覡(ヴェリッチャパード)だった。先祖は代々この村の巫覡を務め、彼もまた18歳のときにバガヴァティ女神に選ばれてその任に就き、以降50年以上を女神への奉仕に明け暮れてきた。妻帯し家庭を構えはしたが、村人たちと気安く交わることはなく、自らを厳しく律した祈りの生活を送っている。壮年の息子マーダヴァン(Murali)は篤実な農業家で、父・妻ガーヤートリー(Rekha)・2人の子供達からなる決して豊かではない所帯を維持するために、休みなく野良で働いている。若い頃に貧困ゆえに勉学を諦めなければならなかった彼は、息子のハリ(Prithviraj)が高等教育を受けてビジネス界で成功者になることを夢見ている。

老境に入ったナーラーヤナンは、息子を相手に巫覡の後継者の問題を口にするようになる。代々受け継がれてきたこの務めを彼の代で絶やすことだけは許せないのだ。しかし常識的な生活者であるマーダヴァンは、自分は適格ではないと応える。幼少時から神憑りになる祖父を恐怖し続けてきたハリは、父と2人きりの場で、巫覡を継がないで欲しいと懇願する。自分にはそんなつもりは全くないし、相応しい資質を備えた後継者を決めるのはバガヴァティ女神に他ならないのだから安心するように、父はそう言ってハリを宥める。

村で初めての快挙としてハリが工科大学の入試に合格したという知らせが入った日、祖父は孫息子を抱きしめて祝福する。子供時代からずっと祖父を避け続けてきたハリは、その真心に触れて初めて親しみを抱くようになる。しかしその後しばらくして、祖父は眠りの中で静かに絶命してしまう。そして、服喪が終わったある日、ハリは父がバガヴァティ寺院で憑依の舞を繰り広げているのを目撃する。

Veeralipattu05.jpgVeeralipattu07.jpgVeeralipattu06.jpgVeeralipattu08.jpgVeeralipattu09.jpg

【かなり長い寸評】
キャストはそれぞれに適役で、これ以外考えられないという嵌り方。

中でもやはり感動的なのは、ジャガティ先生だわな。普通に考えればムラリの父親役なんて無茶もいいとこなのだが、女神一筋に生きてきた老巫覡のイメージは完璧だった。自らが選んだ、というより女神に選ばれた己が人生には全く疑いを差し挟んだことがない。一方で新時代のエリートへの道を歩もうとしている孫には気後れを持っていて、浅薄な恐怖心から自分を避けようとすることも強く諫めることができない。そういう内面の葛藤を、さほど多くない登場シーンで、くっきりと描写する表現力には圧倒される。Mazha とかを見ても思うのだが、ジャガティ先生のシリアスものでの芝居は、鑑賞してる最中に普段のお馬鹿を全く思い出させない迫真性があるんだよね。これは永年勤続コメディアンとしては凄いことではないだろうか。そして過去の多数の出演作でのインチキ霊能者役の名演を思い起こすと感慨もひとしおなのだ。

Ponmutta1.jpgPonmutta2.jpg
例えば Ponn Muttyidunna Tharavu (Malayalam - 1988) Dir. Sathyan Anthikad でのヴェリッチャパード。神憑りダンスの最中に粋な年増とアイコンタクトして逢い引きの約束しちゃったりするナイスな奴。

プリトヴィラージも凄い。一部の日本人印映愛好家からは「オーラのない奴」などと心ない言われようをしているが、本作ではその普通の兄ちゃんぷりが最大限に活きている。特にラスト、P君のオーラのなさが炸裂してる衝撃のクライマックスにあなたは耐えられるか、ってくらいのものなのだ、金縛りになるよ。P君を採用したことで、このストーリーが持つ、残酷なユーモアが鮮明に浮かび上がる形となった。

タミレカも良かった。ストーリー上は大して活躍することのない、いつものメソメソ・キャラだけど、家族思いの平凡な母親役が何故か非常に印象に残った。「専業お母さん女優」として円熟期に入ってきたのではないか。

Veeralipattu10.jpgVeeralipattu11.jpg

アトラクションはまだある。上に書いたことだけなら、アート寄りの一風変わった秀作というだけで終わってしまったかもしれない。しかし本作には主筋とほとんど無関係なコメディトラックがあって、それがもう転げ回るくらいのおかしさ。

星の巡り合わせが悪くお見合いに失敗し続けているコソ泥稼業のラーム(Indrans)は、ナーラーヤナン・ナーイルのあとを襲って村のヴェリッチャパードになる野心を抱く自称修験者のパヴィトラン(Suraj Venjaramoodu)のカモとなり、厄落としのためにバナナの木との儀礼的な結婚をお膳立てされる。

プロットはこれだけ。screen chemistry という言い方がよくあるが、本作でのスラージインドランスがまさにそれ。木婚(樹木との結婚)は、日本では、南インドのバラモンの長男が行うことのある奇習として紹介されてトリビアネタになっているが、インド国内ではむしろ北部印度で女性が主体となる事例がよく知られているようだ。星回りに問題があって結婚相手を不幸にすると判定された女性が、樹木と結婚した後にその木を切り倒し、悪い運気を祓った上で人間の男性と結婚するという慣習。これをモチーフにしたものでは Sati (Bengali - 1989) Dir. Aparna Sen という有名作品もあり。それから日本でも翻訳が出版されたことがあるベンガル系英語作家バーラティ・ムーカジの2004年発表の小説にも The Tree Bride というのがあった(読んでないけどさ)。またこちらも在外作家であるギータ・メヘターのエッセイだか小説だかでこの習俗を扱ったものがあるらしい。そのタイトルは特定できなかったが、おおよその内容はこちらさんが紹介してくれている。

しかし現地人のレビューではこのコメディ、あまり評判は良くないみたいなのだ。ともかく劇場が笑いの渦に包まれるという感じじゃなかったらしい。やっぱネタとしてちょっとインテリ臭が過ぎたのかね。でもオイラは字幕なしで見てた時から笑い転げてたけどな。ジャガティ先生の跡目を継いで(ってまだ生きてるけどさ)スラージ君がインチキ祈祷師を十八番にしてくれるなら大歓迎だ。断言しちまうが、しょーもないソングシーンは早送りで逝ってよしだが、コメディシーンは繰り返し味読すべし、だ。

【付記】
cvOraal.jpg監督のクック・スレンドランは本作が第2作目となる新進。デビュー作の Oraal [Oral] (Malayalam - 2005) は、現地映画祭で上映されたものの劇場公開されたかどうかもわからない低予算映画だが、一応VCDにはなっている。恋人と共に森のログハウスで暮らしながら次作の構想を練ることを目論んだ映像作家が、どこからともなくやって来た若い男の影に怯えて強迫神経症になり、最後には自我が崩壊してしまう、というストーリー。典型的なアートのためのアート映画だわな。これを観たという証言はホントに少なくて、The Hindu 記事、個人ブログであるこちらさんぐらい。よくわからない盗作騒ぎもあったようだ。

しかしまあ、ラルさん主演ジャパン関連大作を撮影中のアルバート監督の前作を見ても分かるように、デビュー作ってのは一種の卒業制作のようなものなのかもしれん。第一作目からその監督の指向を占うことは難しいように思う。スレンドランに話を戻すと、2005年のデビュー、2007年の本作ときて、その後の動向は一切把握できず。今年あたり何らかのアクションがあるだろうか。



それと、ヴェリッチャパードとその他のインドのシャーマンとの違いとかも気になるな。タミルやテルグでよく目にするのはトゥラシの枝を持ち髪振り乱して踊りながらトランスに入る女性の姿。これは何という名前で呼ばれているのか。そして不思議とマラヤーラム映画ではお目にかかったことがない。出てくるのはいつも男性のヴェリッチャパード、下のリンク集の中の写真を見ても分かるとおり実際には女性もいるようなんだけどね。

sivakasi.jpgthenali.jpg
左:Sivakasi (Tamil - 2005) Dir. Perarasu 右:Thenali (Tamil - 2000) Dir. K S Ravikumar より

まあ、そんなこんなで楽しく見た後も湧き上がる疑問etc.が押し寄せて、例によって物好きガイジンの暇潰しが始まってしまう作品なのだった。

【資料集】
■レビュー
http://filmysouth.com/admin/Malayalam/News/202X140/MaNe_06092007_040735.htm
http://www.hindu.com/fr/2006/12/01/stories/2006120100410200.htm
http://www.indiaglitz.com/channels/malayalam/review/9333.html
ttp://www.nowrunning.com/Movie/Reviews/MovieReview.aspx?movie=3617
http://sify.com/movies/malayalam/review.php?id=14505437&ctid=5&cid=2428
http://www.bharatstudent.com/cafebharat/review.php?rid=4&cat=4&id=203
http://movies.bizhat.com/review_veeralipattu.php
http://www.keralapals.com/previews/Anantham-preview-p-301/

■ギャラリー
http://www.keralapals.com/gallery/anantham-1.html

■神降ろし Velichappadu と、ケララ中から神降ろしが集まる Kodungalloor Bharani Festival について
http://www.india9.com/i9show/Velichappadu-65054.htm
Velichappadu - the revealer of light
'Kavu Theendal' held at Kodugalloor Temple
Kodungallur Bharani Festival
Scandalizing the Goddess at Kodungallur
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投稿者 Periplo : 03:45 : カテゴリー so many cups of chai
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