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2010年03月24日

Off Season

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Kerala Cafe (Malayalam - 2009) の一篇、Off Season Dir. Shyamaprasad より

リーマンじゃないからさ、繁忙期が終わったからって喜べない訳よ。網張って待ってたって引っ掛かるのは屑仕事、かえってコチトラの持ち出しになっちまうことだってあるわな。世界同時不況で丸々肥えたジンガイのカモも減っちまったしよ、観光業界もお先真っ暗だああ。

洒落で書いてるうちにホントに泣けてきちまったわ(泣)。半月ほどの更新休止。またお会いしましょう。

投稿者 Periplo : 00:01 : カテゴリー miscellaneous
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2010年03月19日

魅惑の化け物屋敷

血を見ると怖気をふるう平和主義者なのにテルグ暴力映画は止められない。お化け話には耳を塞ぐ小心者なのにマラヤーラム・ホラー映画は止められない。我ながら一体これは何なのかと思う。

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Kanaa Kanmani より

Moonnamathoral (Malayalam - 2006) Dir. V K Prakash は、コミカルなものが主体のマラヤーラム・ホラーの中では珍しくシリアスなタッチで、中盤のどんでん返しが印象的な秀作だった。しかし現地での評判は芳しくなく(こちらなど)、テクニックに淫して内容が無い未熟な作品とされて、興業的には沈没してしまったらしい。

そんなに酷いもんだったかな、キャストは適材適所だったし、怖くはないけど適度な緊張感が途切れなかったし、悪くない出来だと思うのだが。ただ、手放しで賞賛できないのは、もしかしたらストーリー丸ごとを欧米のインディーズ系ホラー映画から頂いて来てしまっているのではないかという疑念が拭いきれないから(もっとも、現地での批評にはこれを裏付ける言及はない)。そう思えてしまう原因のひとつにインド的要素の希薄さがある。マ映画ホラーにつきものの黒魔術師とかも出てこないしね。憑き物落としの祈祷師はちょこっと登場するがほとんど活躍しないし。怪異の起こる舞台となっているのも、どこか高地の洋館だしね。そのまま設定をインド以外の場所に置き換えても全く違和感がないストーリーになりそうだ。

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Moonnamathoral より

ところが、ついこないだ見た Kanaa Kanmani (Malayalam - 2009) Dir. Akku Akbar にたまげた。いつものジャヤラーム主演のほのぼのファミリー・コメディだと思ってたら、インターミッション前に突然、一家の一人娘に霊が取り憑いて暴れまくる!

で、その舞台が Moonnamathoral と同じ高原の洋館!

Kanaa Kanmani のストーリー自体は、またその後で意外な方向に転回し、気持ち悪い教訓話に終わってしまうのだが、怪奇映画のフォーマットに則った中盤部分の出来は悪くなかった。

それにしても何なのだろう、この洋館。両作品共に館の外観だけでなく内部でも撮影がされている。また周辺の眺望絶佳な高地の風景も共通。お化け映画専用に貸し出しされてる、保存状態の良い廃屋なんてのがイドゥッキあたりにはあるのかね。

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Kanaa Kanmani より

なんてところで話を終えようとして、ふと手元にあったケララのガイドブックめくってみたら、なんだ、高級ヘリテージ・ホテルとしてバリバリに営業してるところじゃん!

イドゥッキ郡クッティッカナム村(一帯はピールメードと呼ばれているらしい)にある The Ashley Bungalow なのですた。それにしても、立て続けに怪奇映画のロケ地として撮影を許可するたあ、太っ腹なのか自棄なのか。とっても良さ気なところだけど高っ

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Moonnamathoral より

投稿者 Periplo : 02:29 : カテゴリー バブルねたkerala
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2010年03月17日

注目のHDBウルドゥー映画?

制作はボリウッド、俳優も(どうやらほとんどが)北インド人。だがメインの撮影地はRFC、そして監督はハイダラーバード出身。

Well Done Abba (Hindi/Urdu - 2009) Dir. Shyam Benegal

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これもまた我が偏愛の収集アイテム、ハイダラーバード産ウルドゥー語映画の系譜に連なるのか、それともボリウッド映画のオフビートな1品ということになるのか、見てないから分からないが、見ても分からないかもしれない。

サウスの映画世界には幾つかのマイノリティー・ジャンルがある。個人的に最も慣れ親しんでいるのはケララのマーピラ(ムスリム)映画とアチャヤン(クリスチャン)映画。しかしこれは、以前に書いたように、あくまでもメジャー作品の中のテーマで、当該コミュニティの観客だけを見込んで作られたものではない。

それから思いつくのは言語的なマイノリティーの映画だ。カルナータカ沿海部ではトゥル語の映画が細々と作られていると聞いているのだが、これは今までのところ見る機会に恵まれていない。商業ベースに乗る以前の状態で奮闘しているらしいのだが。

で、ハイダラーバード産ウルドゥー語映画。ハイダラーバードという一都市の住人、それもウルドゥー語話者(この半世紀ほどの間にアーンドラやラーヤラシーマから移ってきた住人の大半は除外されるものと思われる)だけを観客に当て込んで作られている、世界でも珍しいマイナー映画群。香港映画はどうなんじゃと、突っ込まれるかもしれないが、あれは第二次大戦前の上海映画界が引っ越してきて成立したものだし、その後もローカル色を保ちながらも広大な中華世界をマーケットにして発展してきたものだから、全然違うと思う。

本作は昨年のロンドン国際映画祭に出品されたらしいが、インドでの一般公開は今月に入ってから。メインの公開地はやはり北インド・ヒンディー語圏なのだとは思うのだが、当然ハイダラーバードでもやってるんだろうね。これが最近マンネリ&ネタ切れ気味になってきてるという在地のウルドゥー語映画に活を入れることになるのか。

ともかく、アーンドラ・プラデーシュが生んだヒンディー・ニューシネマの旗手にして、一本もテルグ映画を撮っていない、そしてこれまで深刻路線で来ていたのに前作Welcome to Sajjanpur [ようこそサッジャンプルへ] (Hindi - 2008) で突然コメディに目覚めた、あのシャーム・ベネガルの最新作、舞台はハイダラーバード、そして地方政治への風刺もたっぷり効かせてあるという。期待せずにいられようか。

資料集
Sify:Well Done Abba is extremely contemporary: Minissha Lamba
IBN:Shyam Benegal completes 'Well Done Abba'
BFI:The BFI 54th London Film Festival
Glamsham:ポスター集
NowRunning:レビュー
PlanetBollywood:レビュー

投稿者 Periplo : 01:00 : カテゴリー バブルねたsouth
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2010年03月14日

レビュー:Kerala Cafe

Photobucket

Kerala Cafe (Malayalam - 2009) 企画:Ranjith

ディスク版元: AP International
DVDの字幕: 英語
DVD の障害: 現在のところ特になし
主な販売サイト: MaEBag など

オフィシャルサイト:http://www.keralacafe.in/
第二オフィシャルサイト?:http://keralacafe.moviebuzz.org/

cvKeralaCafe.jpg以前に予告的に紹介したオムニバス映画がついにディスク化。これはホントに待ち焦がれていた。好奇心をそそられて印度まで見に行っちまった程だが、見たら見たで分かんないことが多くて悶絶してたのだ。現地で見た時にはある箇所で引っくり返りそうになったのだが、それは別のところで書く予定。今回字幕付きで見ることによって、溜飲が下がったし、評価が高まった。

10~15分程度の短編映画が全部で10篇、全体のランライムは約2時間20分。まあね、オムニバスってやつに大感動したことはこれまでにないわな。だいたいソング&ダンスや格闘シーンもないしね、どっちかっていうとパラレル映画に近い作風のものが主体。短編という形式の制約上、一筆書きのスケッチ、あるいは象徴的&寓話的なストーリーとなるわけだし、カタルシスを得られるものじゃないね。印度映画特有の満腹感は期待できない、なんていう紹介になるだろうと思ってた。でも再見して見ると、やっぱり各篇が味わい深いのよ。

10人の監督が「旅」をキーワードに描く今日のケララ。もちろん、そうはいっても観光振興のプロモーション映像とは訳が違う。聞くところによれば、Tickets (Italy/UK - 2005)、Paris, je t'aime (France - 2006) というヨーロッパの二つのオムニバス映画に刺激されたものらしい。また Mumbai Cutting (Hindi - 2009) との関係も気になる。根拠は全くないけれど、個人的には2008年度の大ヒット Twenty:20 (Malayalam - 2008) Dir. Joshiy もまたこの作品を世に送り出すきっかけになったんじゃないかと思ってる。Twenty:20 は、60人を超えるマラヤーラム・スターが総出演の壮大なイロモノ企画。ランジット監督はこれ見て、「確かに凄いが、ちょっとちゃうやろ」って思ったんじゃないのかな。こちらの喀拉拉茶館もまたマルチ・スター映画(不在が気になるのはモーハンラールとジャヤラームぐらいだ)、しかし嬉しいことに Twenty:20 では蔑ろにされていた女の子ちゃんたちが華やかに咲き競っている。超新星ニティヤ・メーノーン、モデル出身のダニャ・マリー・ヴァルギース、隈取り萌えを刺激するリマ・カッリンガル、年季の入ったお色気女優ジョティルマイ、そしてもちろんシュウェちゃんも。デカン・ヘラルド紙の記事によれば、どの役者・技術者を使うかは完全に各監督の裁量に任されたらしい。また、samaylive 記事によれば、八割がたの役者はノーギャラ出演、したがって低予算で成立した映画だという。10人の監督の人選もまた心憎い。本作でデビューした新人も混じってるようだが、間違いなくこの先のマラヤーラム映画界をリードすることになるはず。

一般的なレビューとしては川縁先生が見事にまとめてくれていて、新しく別に自分で書く必要をあまり感じないのだが、せっかくの「旅」映画だし、字幕付きディスクで見て確認できた地名にまつわる情報などを脚注として若干記録しておきたい。

1.Nostalgia
監督 : M Padmakumar
出演 : Dileep, Navya Nair, Babu Namboothiri, Sudheesh
場所 : ドバイ、ケララ州のどこかの街、マール・トンマー派クリスチャンが多いトラヴァンコール地方中部のパッタナンディッタ県かその周辺ではないかと勝手に推測している。作中ではドバイから一時帰国したジョニー(Dileep)が、老父母の住む豪壮な邸宅を売ってリゾートホテルにしようと目論むくだりがある。

2.Island Express
監督 : Shankar Ramakrishnan
出演 : Prithviraj, Rahman, Manianpillai Raju, Jayasurya, Sukumari, Geethu Christie
場所 : やはりトラヴァンコール地方のコッラム(クイロン)県アシュタムディ湖に架かるペルマン鉄道橋。1988年にここで起きた6526バンガロール・カニャークマリ急行(別名 Island Express)の脱線事故(107名が死亡)の原因は未だに謎だとされている。CGによる再現映像を見ても何でこんな大惨事が起きたのかさっぱり分からない、
 
3.Lalitham Hiran Mayam [The Story of Two Women]
監督 : Shaji Kailas
出演 : Suresh Gopi, Jyothirmayi, Dhanya Mary Varghese, R Jayan
場所 : 不特定

4.Mrithyunjayam [Victory over Death]
監督 : Uday Ananthan
出演 : Thilakan, Fahad Fazil (Shanu), Reema Kallingal, Meera Nandan, Anoop Menon
場所 : ケララ中北部パーラッカード県オッタッパーラムのどこか、老バラモンの住まう歳を経た邸宅。この周辺にはこれなどに代表される味のある館が残ってるらしい。

5.Happy Journey
監督 : Anjali Menon
出演 : Jagathy Sreekumar, Nithya Menon, Mukundan
場所 : エルナクラム~コーリコード(カリカット)の急行バス。両都市間は直線距離で約180km、バスだと5~6.5時間の道のり。

6.Aviramam [Endless]
監督 : B. Unnikrishnan
出演 : Siddique, Shweta Menon
場所 : 不特定

7.Off Season
監督 : Shyamaprasad
出演 : Suraj Venjaramoodu, Frank Pietropinto, Marie Muscroft, Vindhyan
場所 : 州都トリヴァンドラムから13kmほどのところにある、コーヴァラム・ビーチ。ウィキペディアの解説によれば、トラヴァンコール藩王国時代にすでに高級保養地だったらしいが、1970年代頃から西欧人ヒッピーの溜まり場となり、「ケララのゴア」として今日に至っている。観光業に携わる連中のほとんどが外国人相手、UP州出身の作家パンカジ・ミシュラによるエッセイ ‘Whiter than white in God's own country...’ (Butter Chicken in Ludhiana: Travels in small town India に所収)によれば、印度人お断りの人種差別ゲストハウスもあるという。

8.Bridge
監督 : Anwar Rasheed
出演 : Salim Kumar, Kozhikode Shanthadevi, Kalpana, Jinu Joseph, Molly Master Akash, Baby Karthu
フォートコーチン、エルナクラム、バックウォーターのどこか。冒頭に登場する少年の父親は、フォート・コーチンで観光客相手のレストランを営む人物として描かれる。一方、マニカンタン(Salim Kumar)の貧しい一家は、おそらくコーチンの南、バックウォーター地帯に住んでいる。彼は老母を連れて船でエルナクラムにやってくる。作中に出てくる映画館はバネルジー・ロードにあるサンギータ。なぜかタミル映画 Nadodigal (Tamil - 2009) Dir. Samuthirakani をやっているのだ。この選択は何なのか。単に撮影の時点で実際に上映中だったってだけなのかな。

9.Makal [Daughter]
監督 : Revathy
出演 : Sona Nair, Srinath, Augustine, Sreelakshmi, Archana, Jayarao, Sasi,
Master Arun, Sai Shree
場所 : ナーガルコーイル。インド本土では最南端の都市であるこのナーガルコーイルは、かつてはトラヴァンコール藩王国の支配下にあったが、1956年の州界線再編によってタミル・ナードゥ州に組み込まれた。いわばタミルとマラヤーラムの汽水域のような場所。カニャークマリ岬へのゲートウェイ・シティとして有名だが、作中に登場するのは巨大な採石場。こちらの記事中にも解説があるが、この街の近郊の有力産業は花崗岩採石であるようだ。その現場で働く貧しいタミル人一家のもとに、裕福なケララ人の夫婦が訪れるという筋立てに、タミルとケララの微妙な関係の一端が読み取れるように思える。

10.Puram Kazhchakal [Passing Views]
監督 : Lal Jose
出演 : Mammootty, Sreenivasan, Manikandan, Sreelekha, Suresh Nair
場所 : タミルナードゥ州ポッラーッチ周辺からケララ州チャーラクディに向かう路線バスの中。西ガーツ山脈アナマライ山塊の高地を走るバスは途中マラックッパラ・ダム(Malakkuppara Dam)のそばに停車する。しかし検索してみてもこの名前はどうもヒットがない。どうやら実際にはパランビクラム・ダムで撮影されているようなのだが(ここでは過去に数多のマラヤーラム映画の撮影が行われている)、確証はない。周辺はパランビクラム野生動物保護区となっているネイチャー系のデスティネーション。ラストの場面は Vettulapara という小集落となっているがこれは架空の地名か。

エピローグとして、これまでのストーリーに登場した人物のうちの幾人かが、列車で出発するためにケララ・カフェを出て行くシーンがある。アナウンスは6825カニャークマリ・バンガロール急行の出発を告げている。こういう列車は存在していないようだが、上の挿話で登場したアイランド急行の戻りの便が相当するんだろうね。あ、それから、ケララ・カフェというのも、もちろん架空の場所だ。こんなお洒落な茶店がホントにあったらいいのにね。

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投稿者 Periplo : 03:01 : カテゴリー バブルねたkerala so many cups of chai
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2010年03月10日

ガキども

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常々思ってるのだが、印度映画界では子役の演技力が異常に高い。それに比べると、どこぞの「将軍様の神童」なんてのは猿回しの猿にしか見えない。ただし、その能力の高さが常に活かされているとは限らないのも事実。大抵の場合はべっとりシュガーコーティングされた分かりやすい子供らしさの図化で終わってしまっている。それでも時々、ぱっくり口を開いた異世界が覗けるような児童映画に出会ってたじろぐこともある。

低予算作品ながらかなりヒットしたという2009年のタミル映画異色作を見てみた。

Pasanga (Tamil - 2009) Dir. Pandiraj

今頃気付いたが、左上のジャケのイメージはこれのパロディなんだわな。そこからも察せられるように、最初の3分の1ほどは、子供達がドツキあう様を過去のタミル映画のパロディを交えて描写している。敢えて感情移入を拒むような退いた視点が印象に残る。中盤の3分の1になると、大人達が登場してきて、ドロドロとした子供と純真な大人の対比で話が進む。最後の3分の1は、子供同士の友情が極限状況を乗り越える、というようなヒューマンストーリーになっている。

まあ、映画館を後にするファミリー観客は、このラストの部分で安心して家路につくことができるのだろうけれど、一本の映画としてどうにも収まりが悪いのだ。最後のエピソードの泣かせの伏線となる「主人公の少年の奇妙な性癖」の提示のされ方が、ひどく取ってつけたような不自然さだし、開始時点での「昆虫の観察日記」風の突き放した視点が、いつの間にかアップを多用したクリシェ的な友情のドラマになってしまって、見ていてすごーく居心地が悪い。商業的な制約があって、テイストの異なる各パーツを一まとめにして公開したとしか思えないがどうなのだろう。

一体なにをやりたかったんだ?と激しい疑問に苛まれるヒット作が後から後からでてくるタミル映画は、だから止められないんだ。

ガキ映画ということでは、しかしもっとディープなものが前世紀末のテルグで作られていた。

Ramayanam [Bala Ramayanam とも] (Telugu - 1996) Dir. Guna Sekhar

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一貫してメインストリームの娯楽作品を撮り続けて来たグナ・シェーカルの監督作品。日本では『バブーをさがせ!』 [ 原題:Choodalani Vundi] (Telugu - 1998) が公開されている。また当サイトでは Arjun (Telugu - 2004) を過去に紹介している。大掛かりでかつ丁寧に作り込まれたアクションというのが作風といえるだろうか。

1996年4月14日に公開されたこの映画、1983年生まれのNTRジュニアを主役に据えている。撮影時点でのジュニアは12,13歳といったところか。凄いのは、ジュニアを始めとした主要キャストから数百人規模のエキストラまでを全て同年代の児童で揃えて、ラーマーヤナ(ヴァールミキ・ラーマーヤナに忠実な、正統的な筋立てとなっている)を実写してること。

見る前に予想していたのは、最晩年のNTRシニア(1996年1月18日に死去)の肝入りか何かで最愛の孫息子の主演作(大人が主演する映画の子役ではなく)がお膳立てされたもので、きっと何もかもが「リトル・スーパースター」を引き立てるための分かりやすいギミックなんだろな、というくらいのところだった。

ところが実際に見てみると全然違う。どこまでもガチな人間ドラマなのよ。しかも主演のNTRジュニアはあまり活躍してない。眉目秀麗なラーマ王子(上の写真群の右上)として画面中央に静かに佇んでるだけといった印象。ドラマの中心は、囚われの身となっても毅然として魔王の誘いを拒むシーター姫(同左上)、満たされない欲望に懊悩する魔王ラーヴァナ(同左下)、我が子可愛さに横暴を通そうとする継母カイケーイー(同右下)が担う。

いずれも奇麗事では済まない複雑な襞を持つ登場人物な訳だが、ここでまた「子供だから」という手心は一切ない演技を要求されて、それに見事に応えているんだな。かなり吃驚するよ。ぐいぐいと観客を引き込む迫真的なドラマでありながらも、見た目はあくまでも子供だから、常に異様な感覚に付きまとわれながら鑑賞することになる。

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見終わってみると、やはりこれは単なる「名門映画一族への御用聞き仕事」として作られたものではないことがはっきり分かる。それから、グナ・シェーカルのこれまでの仕事振りからして、特異な手法そのものにメッセージ性を盛り込む、という芸術映画的な志向を持ったものでもなさそうなのだ。それでは一体何なのか。

数百人の子役をかき集めること、衣装の調製、撮影現場でのきめ細かな演技指導、想像するだけで気が遠くなりそうな作業だ。大人を使って同じものを撮るのと比べたら、手間も金も倍増だったのではないか。そこまでの労力をかけて何がやりたかったのか、やはりよくわからないのだ。

かすかな手がかりと思えるのは、かつてMGRやシヴァージが加わっていたような少年演劇団の伝統だ。もちろん実見したことはないし、近代的な児童福祉の通念に反するようなこの芸能は今では残ってはいないだろうが。かつてのインドでは厳しく鍛え抜かれた少年達が演じる舞台劇が大人の娯楽となっていたという事実から、今日の日本人が持っているのとは微妙に異なる「子供の世界」の受容の仕方があるのではないかと想像されるのだ。これ以上言葉ではうまく説明できないが。

本作に関しての英語での情報は非常に乏しい。キャストもラーマ王子役のNTRジュニア、それにシーター姫役のスミタ・マーダヴの名前しか出てこない。そのほかの芸達者の子供達については、テルグ語のキャストを丁寧に解読していけば分かるのだろうが、ちょっとその気力が湧かないや。

当然ながら、絶世の美少女スミタ・マーダヴちゃんのその後が当然気になるのであるが、調べてみたところ、映画界とは縁を切り古典舞踊の道を歩んでいるということがオフィシャルサイトから判明。ときにモデル業もやっているようだ。まあ無難な選択だったということなのだろうが、そのまま映画界に進んでいたら間違いなくトップヒロインだったのになあ、と惜しい気もしている、テルグファンとしては。

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投稿者 Periplo : 02:27 : カテゴリー バブルねたsouth
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2010年03月07日

資料系アップデート1003

若干まだるっこしい手順ながら、マラヤーラム語の映画タイトルなどの意味を調べる方法にひとつ追加。

グーグルのインディック・トランスリテレーションを使ってマ語ネームをゲットする。このシステム、英文字とマラヤーラム文字の機械的な対応じゃなくて、一定程度辞書的な登録がされてるみたいなんだ。だから、Mohanlal と入れても Mohanlaal としても、ちゃんと同じ മോഹന്‍ലാല്‍ のネームを出してくれる。ただし、Nayantara だと നയന്താര、Nayanthara だと നയന്‍‌താര、なんて違う結果が出ることもある。

それはともかく、ここでゲットしたネームをコピペしてオンライン辞書にぶち込んでみる、マラヤーラム語の場合は以下の二つが見つかってる、他にもあるだろうけど。

Mashithantu:本日のところ28,179語を収録
Universal Dictionary:本日のところ2,280語を収録

こういうツールを使って調べたところ、Samastha Keralam P.O. (Malayalam - 2009) Dir. Bipin Prabhakar のタイトルの意味は「パーフェクト・ケララ郵便局」になる筈(ほんまかいな)。

グーグルのトランスリテレーションはサウス4言語を含む19言語をカバーしてるから、結構遊べそうだよね。

付記
シカゴ大テルグ語1:Brown, Charles Philip. A Telugu-English dictionary. New ed., thoroughly rev. and brought up to date ... 2nd ed. Madras: Promoting Christian Knowledge, 1903.
シカゴ大テルグ語2:Gwynn, J. P. L. (John Peter Lucius). A Telugu-English dictionary. Delhi; New York: Oxford University Press, 1991.
Universal Dictionary テルグ語:2,170語
シカゴ大タミル語1:Fabricius, Johann Philipp. J. P. Fabricius's Tamil and English dictionary. 4th ed., rev.and enl. Tranquebar: Evangelical Lutheran Mission Pub. House, 1972.
シカゴ大タミル語2:Kadirvelu Pillai, Na. Tamil Moli Akarathi. N. Kathiraiver Pillai's Tamil Moli Akarathi: Tamil-Tamil dictionary = Na. Kathiraiver Pillayin Tamil Moliyakarati: Tamil-Tamil akarathi. 6th ed., rev. and enl. Cennai: Pi. Ve. Namacivaya Mutaliyar, 1928.
シカゴ大タミル語3:McAlpin, David W. A core vocabulary for Tamil. Rev. ed. Philadelphia, Pa.: Dept. of South Asia Regional Studies, University of Pennsylvania, 1981.
シカゴ大タミル語4:University of Madras. Tamil lexicon. [Madras], University of Madras, 1924-1936.
シカゴ大タミル語5:Winslow, Miron. A comprehensive Tamil and English dictionary of high and low Tamil. Madras: P.R. Hunt, 1862.
Kannadakasturi カンナダ語:非ユニコード。現状ではうまく作動せず。
GICAS:ヒンディー語・日本語・英語

投稿者 Periplo : 19:54 : カテゴリー miscellaneous
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2010年03月05日

決壊の予兆?

codeshare.jpg単なる狂い咲きなのか、それとも安定的高値の崩壊の予兆なのか。アインガランとAPインターナショナルの「コードシェア便」DVDが某通販サイトで200ルピーで売られている。タミル映画に限定すると、本来はアインガランが印度国外、APインターナショナルが国内での販売と棲み分けしてたはずなのだが。アインガランDVDは今日現在のところ送料別で約8ポンドしてる、これでも安くはなってるけど。

ともかくそのうち実際にブツを検証してみる必要があるな。

「タミルの壁」問題についてはKollywoodTodayの2007年記事など参照。

DVD化の権利金については、マラヤーラム映画ではあるが、こんな数字が上がっている。

Before its release, ‘Roudram’ has created history by getting a record amount for its satellite and video rights in India. “It was sold for Rs. one crore-plus, which is a record in the Malayalam industry,” says Panikkar. (The Hindu 2008年記事 Portrait of the tough cop より)

大スターをフィーチャーしない映画でもこの種の権利金(DVD化、およびTV放映権)を資金繰りに組み込めばなんとか世に送り出せるようになってきてるらしい。ただしこれもマ映画の話。

The other matter of interest is that the channel rights of these entire flop films were sold at Rs 20 to 35 lakhs, which means that these films are sure to sell among families before television. So it seems to be high time, for someone to do something on this real problem that Mollywood is facing now.(IndiaGlitz 2008年記事 Who to publicize small films? より)

逆に言うとタミル映画はこういうのを当てにしなくても廻っていられるのかね。

投稿者 Periplo : 20:00 : カテゴリー バブルねたtamil
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