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2011年09月27日

レビュー:Traffic

汚れちまった人生だけど、それでも生きにゃあならんのだ。

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渋い実力派俳優を揃えて低予算で勝負、2011年前半に封切られて評判になり、結果的にかなりの興行成績を収めたという一本。

cvTraffic.jpgTraffic (Malayalam - 2011)

Director:Rajesh Pillai
Cast:Sreenivasan, Kunchacko Boban, Rahman, Vineeth Sreenivasan, Asif Ali, Lena, Sandhya, Roma Asrani, Ramya Nambeesan, Sai Kumar, Vijayakumar, Prem Prakash, Anoop Menon, Namitha Pramod, Anjana Menon, Gauri Krishna, Munshi Venu, Baiju Ezhupunna, Saju Alffingal, Dr. Rony, Santosh Krishna, Sudeep Joshi, Premlal, Manoj, Raj Kumar, Sibi Kuruvilla, Reena Basheer, Fathima Babu, Nisha Sarang

原題:ട്രാഫിക്‌

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間56分
DVD 入手先:MyIndiaShoppingWebmall IndiaAmazon.comBhavani DVDMaEbag など

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/traffic-malayalam-2011

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【ネタバレ度10%の粗筋】
9月16日の朝9時ごろ、エルナクラムの市街地のとある交差点。自家用車を運転する若い女性は、しばらく前から前後を付きまとっては野卑な言葉を投げかけてくるバイクの不良達に悩まされていた。マラヤーラム映画界のトップに立つスター、シッダールト・シャンカル(Rahman)は、新作の封切りを横目に、早朝撮影を終えてパーラッカードの自宅に自家用機で向かう前に、ライブのTVインタビューをひとつこなそうと車を走らせていた。医師のエイベル・テリアン(Kunchacko Boban)は愛妻シュウェータ(Ramya Nambeesan)へのサプライズ・プレゼントに買った新車を引き取り、自ら運転して帰宅するところ。助手席には友人のジートゥがいた。交通巡査のスデーヴァン・ナーイル(Sreenivasan)は長年の勤続で初めてくらった停職処分が解けて、職場である警察署にスクーターで向かっていた。微細な収賄に手を染めて検挙され、その模様が大々的に報道されてしまったため、彼は家族にあわせる顔がなかった。若いレーハン・シャイフッディーン(Vineeth Sreenivasan)は、念願かなってTV局の採用試験をパスし、試用期間初日に親友ラージーヴ(Asif Ali)のバイクに同乗して出勤するところだった。FMラジオ局のディレクターであるマリア・テリアン(Roma Asrani)は空港に向かう同僚が運転する車に乗って移動する途中で、自局の放送を耳にしてその内容に腹を立てていた。

同じ日の昼前後、コーチン警察のコミッショナーであるアジマル・ナーセル(Anoop Menon)は、コーチンからパーラッカードまで、非常にデリケートな荷物を運ぶために警察の総力をあげて作戦行動にとりかかるよう州政府高官から依頼される。両都市間の距離は約180km、自動車専用の高規格道路は存在しない。立体交差すらほとんどないのだ。ウィークデイの午後に、この区間を平均時速100km、2時間で走り抜けなければならない。何よりも厳しいのは綿密に作戦を練る時間がないということ。1秒でも早く行動を開始しなければならないのだ。(粗筋了)

【寸評】
いや、アクロバティックな脚本に唸ったね。いわゆるグランドホテル・スタイルのストーリー。普通このタイプの物語は、クライマックスに来てそれまで無関係だった登場人物が一堂に会して大イベントが起きるというのがパターン。このスタイルは、まあまずクライマックスを先にブチあげておいて、そこに到るまでの各人の人生行路みたいなのを個別にそれらしく構築すればいっちょあがりだ。実際に本作と同時期に公開された Vaanam (Tamil - 2011) Dir. Krish などもそれだった。 ところが本作はその裏をかいて、冒頭でいきなり主だった登場人物が一つの交差点の周辺でニアミスしてしまう。そしてその後彼らはくっついたり離れたりしながら最後まで濃くあるいは薄く関わり続けるのだ。しかも最初の全員集合にしても、実は直前の各人の言動が微妙に絡み合った結果であるというのにも感銘する。また、2時間を切るランタイムの中で大勢の登場人物の性格や置かれた状況を的確に表出するテクニックも凄い。一例を挙げるならば、ラフマーンが演じるマラヤーラム映画界のトップスターが口にする「俺の名前を出したのか?」という一言、これでこの人物がいかに思い上がった増長慢であるかがクッキリと浮かび上がる。台詞だけではなく、シュリーニヴァーサンのアップの顔が映し出されるだけで、平凡な下積み人生の中でほんの一瞬魔が差した汚職警官の深い悔恨が押し寄せて、貰い泣きせずにはいられなくなるのである。やはり芸達者脇役軍団の芝居は凄い。一方で親子や恋人・夫婦同士の感傷的なやりとりもむせび泣くバイオリンと共にたっぷり描かれるのだが、どこか抑制が効いている。制作者達は、たとえばシュリーニとヴィニートを親子役にキャスティングするとか、そういう方向での安易なセンチメントの盛り上げには一切興味がなかったようだ。

しかし、いろいろ書いてみたものの、最大のアトラクションはコーチン(エルナクラム)〜パーラッカードの2時間走破大作戦の部分。一度でもこの2点間移動をやってみた者なら分かるスリリングさ。ケララ州の大動脈である国道47号線で平地部を貫いてトリシュール近郊まで北上する約90キロ、ここまではまだ何とかなる。残り半分は徐々に高度を上げて行く片側一車線道、ところどころに葛折もある。狭隘なのに交通量の多いこの部分を平均時速100kmで駆け抜けるのはまず無理。どうするかというと、前半の平地部でさらにスピードを上げて時間を稼ぎ、なおかつ山地部では国道から外れた小集落の村道を抜け道として利用するしかない。運搬車の乗員、そして路上の歩行者のリスクといったら尋常じゃないのだ。しかもそこに、ある人物の突然噴出した激情の波が押し寄せて…。と、最終的には運転技術ではなく人の心が道行きを揺さぶる。まあ、面白いですよ。低予算映画でもクレバーに制作されれば、ヒットに繋がるという見本のような一本。カマル・ハーサンが出演するというタミル・リメイク、 結構なマルチスターになりそうなヒンディー・リメイクの話も既に動いているようだが、できれば最初にマラヤーラム版を観とくことをお勧めしたい。

【それでも突っ込みはある】
ケララ・ポリスにはGPSナビを買う金もないんかい!

【本筋には無関係だが気になる】
クライマックスの舞台になる架空の集落、ビラール・コロニー。ゴールのパーラッカードに近い最後の難所として現れる。劇中の台詞によれば「マイノリティ(=ムスリム)が集住し」「デリケートで警察も気軽には踏み込めない」「ブラックマーケットのある、違法流通物資の集積地」「かつての手入れでは銃撃戦が起きたこともある」「DVDを求める外国人観光客がしばしば訪れる」。なぬっ、DVD? そんなパラダイスな無政府地帯がケララにある訳? モデルはどこだーっ!

Traffic
しかしいくら脚本の勝利だからと言って、裏方の方が威張ってるこのポスターには感心しないがな。

投稿者 Periplo : 03:31 : カテゴリー バブルねたkerala so many cups of chai
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2011年09月15日

秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男

Urumi

10月15日から19日の5日間、東京渋谷で行われる第12回NHKアジア・フィルム・フェスティバル、今年の唯一のインド映画はサントーシュ先生の Urumi (Malayalam - 2011) Dir. Santosh Sivan に決定。上映スケジュールは未定、詳しくはAFFサイトを追っかけてくだせえ。

日本上映を奉祝して一発レビューでもあげたいところだすが、あいにくこれに関しちゃ4月に現地で字幕なしで観ただけ。DVDも発注済だけど、ブツはケララの皆さんがオーナム惚けから我に返るまで(いつだ?)トリヴァンドラムの倉庫で寝てることだろうから、ちょっとタイミングが悪いやね。

なんでとりあえず今日のところはリンクのご紹介ということで。
オフィシャルサイト:http://www.urumithefilm.com/
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/urumi-malayalam-2011

投稿者 Periplo : 00:12 : カテゴリー バブルねたkerala
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