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2011年12月26日

こいつぁ春から縁起がいい

dookudu-oosaravelli.jpg

今年最後のエントリーはタミル・ニューウェーブのとっておきで華麗に〆ようとしてたのだけれど、番狂わせが起きたので急遽告知に変更。

在首都圏テルグ人向けの集まりで、今年公開されたばっかの大型娯楽作品2本が大型スクリーンで一挙上映になるという話。

Oosaravelli (Telugu - 2011) Dir. Surender Reddy
Cast : Jr NTR, Tamannaah Bhatia, Shaam, Payal Ghosh, Jaya Prakash Reddy, Rahman
Dookudu (Telugu - 2011) Dir. Sreenu Vaitla
Cast : Mahesh Babu, Samantha Ruth Prabhu, M S Narayana, Brahmanandam, Dharmavarapu Subramanyam, Prakash Raj

■日時:2012年1月7日、Oosaravelliが11:00〜13:30、Dookuduが15:00〜17:30
■料金:当日券は1本1500円、2本通しで2200円
■会場:埼玉県川口市、彩の国ビジュアルプラザ
http://www.skipcity.jp/access/
■字幕:なし

予約・問い合わせ先などの詳しい情報はこちらを参照、付随した喫飯情報はこちらを参照のこと。

ということで、予定していた投稿は来年送りに。相変わらずの調子で続けてまいりやす。どなたさんもよろしくお付き合い下せえ。

しか〜し…

【1月5日追記】
上映内容の大幅な変更。

上映作品:Oosaravelli のみ
上映開始:14:00
入場料:予約済みのチケットについては1000円に変更、当日券もそれに準じたかたちで変更があるはず
変更の理由:Dookudu の代わりに Mogudu のフィルムが届いてしまったため
参考:こちら参照

いや〜、期待を裏切らない見事などんでん返し。「目出度さも中くらいなり」ってとこかね。それにしても印度人の最大の被害者は印度人てのはホントだね。

なお、これとは別にマヘーシュ・バーブの新作の上映を1月26日に行うという話もあり。詳細については乞うご期待。

投稿者 Periplo : 03:44 : カテゴリー バブルねたtelugu
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2011年12月23日

TNWコレクション:Renigunta

生は冥く、死もまた冥く。

renigunta01.jpg

タミル初のギャングスタ映画と言っていいのか、ブラジル映画『シティ・オブ・ゴッド』の亜流なのか、あるいはマドゥライ映画のアーンドラ臨時出張所とでも言うべきなのか。ともかくタミル・ニューウェーブの一群のバイオレンス映画のなかでもぶっちぎりのむごたらしさ。これと比べたら ParuthiveeranSubramaniapuram がお上品な文芸作品に見えるほどだ。

cvRenigunta.jpgRenigunta (Tamil - 2009)

Director:R Panneerselvam
Cast:Johnny, Sanusha, Nishanth, Theepetti Ganeshan, Thamizh, Sandeep Ravinder, Bunker, Sanjana Singh

原題:ரேணிகுண்டா
タイトルの意味:アーンドラ・プラデーシュ州南部の町の名前。インド全域から参拝客が訪れるティルマラ・ティルパティ寺院へのゲートウェイとなっている。現在はティルパティ市の一部。タミルナードゥ州境までの距離は40kmほど。
タイトルの揺れ:Renigunda, Reniguntaa

DVDの版元:Moser Baer
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間31分

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/renigunta-tamil-2009

都会度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆田舎度★★★★★★★★★★
暴力度★★★★★★★★★★お笑い度★★★★☆☆☆☆☆☆
おセンチ度★★★★★★★☆☆☆衝撃度★★★★★★★★★★
ハッピー度★☆☆☆☆☆☆☆☆☆シリアス度★★★★★★★★★★
消化不良度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆満足度★★★★★★★★☆☆

renigunta02.jpg

【ネタバレ度50%の粗筋】
タミルナードゥ州南部、デーヴァコーッタイにすむ10代半ばのシャクティ(Johnny)は、どこにでもいる平凡な少年だった。父は公共事業局の下級役人、母は連続テレビドラマが何よりも好きな主婦。両親はことあるごとにシャクティに、将来よりよい生活を送るためには勉学に励むしかないと叱咤していたが、彼はどうしようもなく勉強が苦手だった。ところがある日、父が裁判で街のドンに不利な証言をする意志を示したために、両親は市場で衆人環視のなか誰からも助けの手を差し伸べられることなく殺されてしまう。絶望したシャクティは刃物を手にドンに立ち向かうが、無謀な試みは成功するはずもなく、殺人未遂でマドゥライの刑務所に収監される。彼はそこで自分よりもやや年嵩の4人の少年囚と同房になる。彼らは未成年ながら札付きのギャングで、これまでに既に殺人に手を染めていた。

4人はかねてからの脱獄計画を実行に移すが、憐憫の気持ちからシャクティも連れて行くことにする。逃亡に成功した5人は大小の犯罪行為を繰り返しながら「ギャングの本場」であるムンバイを目指すが、運命のいたずらによってアーンドラ・プラデーシュ州のレーニグンターに流れ着く。そこで彼らは大人のギャングの下働きとして殺しを請け負うことになる。シャクティは貧しい街の一角で聾唖の少女(Sanusha)に出会い、二人はお互いに淡い恋心を抱く。一方、彼らが後にしてきたティルマンガラムでは、脱獄した少年達に手酷く侮辱された警官ラーダークリシュナンが職務を超えるような執念で5人の行方を追い求めていた。(粗筋了)

renigunta03.jpg

【寸評】
いやー、凄い映画だった。これまで当シリーズで紹介してきたものの多くは、なんのかんの言っても有名作品、ぼや〜んとした興味しかなくとも何かしら情報は入ってきていた。しかし本作は全くのノーマーク、ただ安いからという理由だけで買ってあったDVDを再生機に放り込んだのは、ニューウェーブでも単なる流行に乗っかって作られて何処ともなく消えて行ったB級作品もあるだろう、そういうのを1本ぐらいチェックしておいてもよかろう、などという思い上がった気持ちから。で、実際に観てみて、これはやられた〜ってとこだ。

「何処ともなく消えて行った」などと上に書いたが、調べてみれば実際には興収もそこそこにはなったようで、元来が無名俳優ばかりの低予算映画であることを考えれば大化けと言っていいくらいかもしれない。レビューをあれこれ漁ると、批評家筋からは概ね不評だったことが窺えるが、そういった評価とは無関係に口コミが観客を呼んだということなのだろうか。監督のRパンニールセルヴァムは本作がデビューだが、現在に至っても大変情報が少ない。リングサーミ監督の下でアシスタントをしていた人のようだ。主演のジョニーは主に娯楽作品を手がけてきたプロデューサー、SSチャクラヴァルティの息子でやはり本作がデビューというのだが、まあこれまでの(ヒーロー格の)タミル俳優にはいないタイプだわな。残りの少年達も、本当にストリートからリクルートしてきたんじゃないかと思われるような恐ろしいリアリズム。見ていても演技をしているとはとても思えなかった素のままぶり。ともかく全編を通して、名前までは分からなくとも顔だけは知っているクラスの俳優さえ殆どいなかったというのにも吃驚。

しかし、目新しいのはキャスティングだけで、ストーリー自体は幾度となく語られてきた、ギャングと、警官の無法と、足抜けと、娼婦と、無垢な下町の美少女の物語なのだ。ただその語りのいちいちが舌を巻く程に巧みで目が離せず、奔流のようなバイオレンスに息もつけず最後まで釘付けにされてしまう。そして、カメラ(若くして亡くなったジーヴァ監督の下で仕事をしていたというシャクティが担当)と美術(サンジャイ・カランが担当)が作り出した、泥濘のリアリズムと白昼夢のような非現実の世界とが交互に訪れる、エッジの立ったビジュアルが凄い。たとえば、唯一のロマンチックな劇中歌 ♪Mazhi Peyyum Podhu、狭い路地でのヒーローとヒロインとの追っかけっこというマンネリの極地のような素材が、こうも巧みに繊細にコンポーズされたかと驚嘆せざるを得ない。

中盤以降の物語の舞台がアーンドラに移るというのにも意表をつかれた。といっても登場人物の殆どがタミル人(もしくはタミル語を話す人物)であり、別に他所の土地とその住人を都合良く邪悪なものと決めつける、エスノセントリックなタイプの娯楽映画によくある設定ではない。本当のところ、なぜ本作の舞台がレーニグンターでなければならなかったのか、筆者には今ひとつ理解できないのだが、街のいたる所に貼られたテルグ映画のポスター、テレビで踊るチランジーヴィ、そしてタミルとアーンドラでの殺しの作法の違いを得々と説明するギャングの手下、などなど大変に印象的だったことは書いておきたい。

また、気が滅入る程のリアリズムに支配された男優達に対して、女優達の方は同じくリアリズムに裏打ちされながらも恐ろしく魅力的だったことも付け加えたい。ヒロインのサヌシャーは、マラヤーラム映画への子役出演からキャリアをスタートしたというのだが、なんと1996年生まれ!はっきり言って本作でも子役として扱った方がいいんじゃないかというロリっぷり。演技らしい演技もしていないように見えてるが、役への馴染み方は尋常ではなかった。一方、劇中の台詞で「レーニグンター・スペシャル」と紹介される娼婦役のサンジャナ・シンは、営業用ポートレートの塗りに塗ったオフスクリーン写真では典型的なボリウッド女優。いやぁ〜お願いそばに来ないで〜と言いたくなるよな「おっかない系」なのだが、作中での「幸薄い美人」ぶり、浮世絵の女のような凄みある艶気は、これまた目を見張らされるような驚きだった。この二人の存在感があったからこそ、やりきれない暴力の二時間半に微かな甘さのある余韻が生じたのだと思う。

sanusha.jpgsanjana.jpg

投稿者 Periplo : 05:23 : カテゴリー Tamil new wave catalog
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2011年12月18日

TNWコレクション:Nadodigal

Nadodigal.jpg

これも広義のマドゥライ映画と言えるだろうか。しかしストーリーは単純なのに、メッセージは非常につかみどころがない、いかような解釈をも許すようなものとなっている。 Subramaniapuram (Tamil - 2008) の監督Mシャシクマールが主演し、同作で悪役を演じたPサムドラカニが監督をつとめて本作で一大ブレイク、この二人の監督の間での出演と監督を交互にやりとりする不思議なキャッチボールはその後も続いている。

cvNadodigal.jpgNadodigal (Tamil - 2009)

Director:P Samuthirakani
Cast:Sasi Kumar, Vijay Vasanth, Bharani, Ananya, Abhinaya, Ganja Karuppu, Jayaprakash, Ranga, Shanthini Deva, Jayaprabha, Lakshmi Ramakrishnan, L Raja, Niveda

原題:நாடோடிகள்
タイトルの意味:Nomads
タイトルの揺れ:Naadodigal

DVDの版元:Ayngaran など
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間48分
DVD 入手先:Bhavani など

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/naadodigal-tamil-2009

都会度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆田舎度★★★★★★★★★★
暴力度★★★★☆☆☆☆☆☆お笑い度★★★★★★☆☆☆☆
おセンチ度★★★★★★★★☆☆衝撃度★★★★★☆☆☆☆☆
ハッピー度★★★★☆☆☆☆☆☆シリアス度★★★★★★★★☆☆
消化不良度★★★★★★★★★☆満足度★★★★★★☆☆☆☆


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本作には以下にあげるリメイクが存在する。クレジットなどから、いずれも公式リメイクであると思われる。なおかつ、プリヤン先生によるヒンディー・リメイクの噂もあり、これが実現すれば Bodyguard (Malayalam - 2010) Dir. Shafi と並んで南印4言語+ヒンディー制覇を果たすことになる。リメイク天国印度でもこれは結構珍しいのだ。

shamboshivashambo.jpg
Shambo Shiva Shambo (Telugu - 2010)

Director:P Samuthirakani
Cast:Ravi Teja, Allari Naresh, Siva Balaji, Priyamani, Abhinaya, Sunil, Roja, Chandramohan, Ahuti Prasad, Sudha, Kota Srinivasa Rao, Mukesh Rishi, Suryatej Mamidi, Rao Ramesh, Krishna Bhagawan, Tanikella Bharani

原題:శంభో శివ శంభో
タイトルの意味:Shiva, the bringer of peace
タイトルの揺れ:Shamboo Shiva Shamboo, Shambu Shiva Shambu, Shambo Siva Shambo, Sambho Shiva Sambho

※現在のところDVD、VCDの発売は確認できず。

IthuNammudeKadha.jpg
Ithu Nammude Katha (Malayalam - 2011)

Director:Rajesh Kannankara
Cast:Asif Ali, Nishan, Abhishek, Ananya, Amala Paul, Nimisha Suresh, Vineeth Kumar, Kaviyoor Ponnamma, Shoba Mohan, Indrans, Lalu Alex, Jagathy Sreekumar, Ambika Mohan, Suraj Venjaramoodu, Kottayam Nazir, Devan, Kalaranjini, Dhanya, Jagadheesh, Lishoy, Balachandra Chullikkad, Manoj Thomas

原題:ഇതു നമ്മുടെ കഥ
タイトルの意味:This is our story
タイトルの揺れ:Ithu Nammude Kadha

DVDの版元:MoserBaer
DVDの字幕:なし
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間11分
DVD 入手先:BhavaniWebmallIndia など

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/wish-list-ithu-nammude-katha

※リメイクのなかで筆者が実際にチェックできたのはこれだけ。いずれどこかで感想、というか如何に脱力したかを書きたい。ここでは、筆者の脳内では既に「タミル映画界のトップ女優」扱いになっていたアマラちゃんが、美味しいところのない小さな役で登場していて魂消たことを記録しておく。

Hudugru.jpg
Hudugaru (Kannada - 2011)

Director:Maadesh
Cast:Puneeth Rajkumar, Srinagara Kitty, Yogish, Radhika Pandit, Abhinaya, Rangayana Raghu, Sadhu Kokila, Vishal Hegde, Ramya Barna, Avinash, Vanitha Vasu, Srinivasa Prabhu, Sudha Belawadi, Tabala Nani, Honnavalli Krishna

原題:ಹುಡುಗರು
タイトルの意味:Boys
タイトルの揺れ:Hudugaaru, Hudugru

※ DVDが発売となったらしいのだが、レーベルを特定できず。なお、上に記したデータについてはカーヴェリ川長治さんによるレビューを参考にさせていただいた。

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話をオリジナルに戻す。

【ネタバレ度50%の粗筋】
タミル中南部のラージャパーライヤムに住む3人の若者、カルナ(カルナーカラン、M Sasikumar)、 パーンディ(Bharani)、チャンドラン(Vijay Vasanth)は幼い頃からの友達同士だった。カルナは公務員試験に挑戦を続ける就職浪人。大学では歴史学を専攻し、成績優秀でゴールドメダルを獲得したが、全く金にならないことを学んだとして家族からも責められている。パーンディは外国に出稼ぎに出かけることだけを夢見ている能天気野郎。チャンドランはコンピュータ・スクールの講師をしているが、独立して自分のスクールを持つことを目指している。カルナの妹パヴィトラ(Abhinaya)とチャンドランは密かに心を寄せ合っている。カルナには従姉妹のナッランマー(Ananya)が何かと付きまとい、クールな彼は適当にあしらっているが、内心は愛おしく思っている。しかしナッランマーの父はカルナが公務員としての勤め口を得るまでは娘の許婚とは認めないと釘を刺していた。

ある日、カルナの旧友のサラヴァナン(Ranga)が都会の大学での勉学を終えて戻ってくる。再会を喜ぶカルナに対して浮かぬ顔を見せるばかりのサラヴァナンは問題を抱えていた。彼にはプラバー(Shanthini Deva)という恋人がいたのだが、双方の親に交際を反対されて無理矢理引き離されていたのだ。プラバーの父親は実業家でナーマッカルの町の有力者、一方サラヴァナンの母(Jayaprabha)はカニヤークマリ区選出の元議員で多数のグーンダを抱える女傑。この二人はお互いに自分の子供が相手の子によって誘惑されたとして激しく非難し合っていた。

義に厚いカルナはどんなことをしてでもサラヴァナンとプラバーを結婚させると誓い、パーンディとチャンドランを巻き込んで作戦を練る。三人は双方の親の追跡をかわして恋人達を駆け落ちさせ、シヴァンマライ寺院で挙式させることに成功するが、このことによってそれぞれが取り返しがつかない程の大きな代償を払うことになる。(粗筋了)

【寸評】
冒頭で「非常につかみどころがない」と評したが、くどいようだがストーリー自体はとてもシンプルなのである。観る前は、Chennai 600028 の田舎版、「馬鹿は死んでも直らない」を笑う楽天的なヴァカモノ群像映画だと思っていたのだ。だが実際に観てみるとちょっと違う。それはシャシクマールが演じる第一ヒーローであるカルナの造形によるところが大きいと思う。まず、見かけからして若々しくない。そして時流に沿わない歴史学などというものを学んだ反骨的な面、駆け落ちの作戦行動にあたって采配を振るう智将と言ってもいいような一面もある。また職を得られないことに対する内に籠ったコンプレックス。一方で、行為の報いとしてどれほど深刻な事態が待ち受けているかを予測できない向こう見ずさ、友情と恋愛に対する無条件の信頼という素朴さもある。単なる田舎の馬鹿アンちゃんではなく、複雑な襞を持ったキャラなのだ。そんな彼が、信じるもののために行動を起こし、多大な犠牲を払って成し遂げる。しかし後半になってその達成が根本から揺るがされる。今度はその事態に対して再びの戦いを挑み、裏切り者を打ち負かすのだが、ここですでに観客はその勝利が一時のものでしかないことを知っている。罰を受けた小狡い者達が結局は勝者であるのは動かしがたい。これは挫折と敗北の物語なのだ。まるで『坊ちゃん』のように。それでも彼はラストシーンで再び同じ行動を起こすことが暗示されている。何と言うか、哲学的な匂いすらするストーリーではないか。

もちろんもっと即物的な観点から本作を楽しむことも可能だ。例えば、ニューウェーブ映画ならではの、ワイヤーに頼らないリアルなアクション。誇張のないアクションに基づいた作戦行動の一部始終はスリラーとして満点の出来。また、家族の意に逆らった恋愛および駆け落ち婚は是か非か、というサウス映画の永遠のテーマを掘り下げた作品としても観ることができる。特にカップルの友人達が(時には面白半分で、あるいは大人全般への反抗の気持ちから)駆け落ちに協力することに関しては、賛成派・反対派双方に議論の材料を与えただろう。実際に2007年にテルグ映画界で大騒ぎとなった駆け落ち事件でも新郎新婦の友人達の力はかなり大きかったようだ。余談ながらこの事件は様々なレベルでテルグ映画のストーリーにも影響を与えた。どちらかと言えば若いカップルに同情的だったのが、Parugu (Telugu - 2008) Dir. Bhaskar で、二人の行動を悪意をもって解釈したのが Fitting Master (Telugu - 2009) Dir. EVV Satyanarayana だった。他にも多くの作例があるものと思われる。

音楽についても書いておくと、Anjathey からこっち注目することになったスンダルCバーブによるソングはどれも良い。特に繰り返される ♪Shambo Shiva Shambo は観た後に頭の中で何度も自動再生してしまうような中毒性を持っている。本作のエネルギッシュな本質を凝縮したような曲調が素晴らしい。別々の作曲家を起用したカンナダ、マラヤーラムのリメイクでも、この曲だけはオリジナルを採用しているというのも頷ける。

などとクドクド書いてみたが、ここでの特記事項は何て言っても本作でデビューしたアビナヤちゃんでしょう! 以前に別の女優に関する記事のなかでちょっとだけ紹介した、聴覚障碍にもめげず女優業の道を歩むカワイ子ちゃん。以前の記事ではハイダラーバードの出身と書いたけれども、今ウィキペディアのエントリーを見たらカルナータカ人となっている。しかしこれにも裏付けがない。この先アビナヤちゃんがもっともっと売れっ子になれば、詳しいバイオデータが出て来てくれるだろう。ともかく、本作と同じ役柄でアビナヤちゃんが登場するというテルグ&カンナダ・リメイク、オッちゃんは草の根分けても絶対に観るんじゃと、ここに宣言しておく。

NadodigalAbhi.jpg

投稿者 Periplo : 14:57 : カテゴリー Tamil new wave catalog
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2011年12月16日

TNWコレクション:Kadhalil Vizhunthen

孤独な若い男女が都会の片隅でひっそりと身を寄せ合う、リアルな恋愛ドラマになるのかと思いきや…。

KadhalilVizhunthen1.jpg

サンTVなどで知られるメディア王、カラーニディ・マーランが立ち上げたサン・ピクチャーズの初配給作品(ちなみに同社の初制作作品が『ラジニカーントのロボット』)。カラーニディ・マーランのお祖母様のお兄(弟?)様というのが、言わずと知れた前タミルナードゥ州首相カルナーニディ先生、親父様がDMKの有力政治家だったムラソリ・マーラン氏(故人)である。ただし、本作公開の頃、マーランとカルナ一族の対立関係は最高潮に達していた。

主演のナクル(ナクランとも)は女優のデーヴァヤーニの弟、Boys (Tamil - 2003) Dir. Shankar の脇役でデビューの後、プレイバックシンガーとして一定のキャリアを積んでいたが、本作のために35kgとも言われる大減量を成し遂げてヒーローとしてカムバックしした。ヒロインのスネーナーは経歴などが今ひとつよくわからないが、北インド出身で、2006年からテルグ映画などに出演しており、本作がタミル映画デビューとなった。監督のPVプラサードも本作がデビューだが、やはり情報が少ない。

cvKadhalil.JPGKadhalil Vizhunthen (Tamil - 2008)

Director:P V Prasath
Cast:Nakul, Sunaina, Livingston, Sampath Raj

原題:காதலில் விழுந்தேன்
タイトルの意味:I Fell in Love
タイトルの揺れ:Kaadhalil Vizhunthen, Kadhalil Vizhundhen

DVDの版元:Ayngaran
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間26分
DVD 入手先:Bhavani など

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/kadhalil-vizhunthen-tamil-2008

都会度★★★★★☆☆☆☆☆田舎度★★☆☆☆☆☆☆☆☆
暴力度★★★★★★★☆☆☆お笑い度★★☆☆☆☆☆☆☆☆
おセンチ度★★★★★★★☆☆☆衝撃度★★★★★★☆☆☆☆
ハッピー度★★★★☆☆☆☆☆☆シリアス度★★★★★★★★☆☆
消化不良度★★★★★★★☆☆☆満足度★★★★★☆☆☆☆☆

【ネタバレ度40%の粗筋】
夜のチェンナイの街路。足に怪我を追った女性を車いすで運ぶ若者が数人の男達に追われて逃げまどっている。彼は中央駅に駆け入り、発車しかけているニルギリ・エクスプレスに乗り込む。見咎めた車掌のスブラマニ(Livingston)に、彼は二人が駆落ちしようとしていることを打ち明け、同情を示すスブラマニに彼女との出会いから始まる恋物語の一部始終を語り始める。

サバ(サバパティ、Nakul)は貧しい家に生まれながらも工学系のカレッジに通うサッカー好きの青年。ミーラ(Sunaina)は裕福な家に育った、別のカレッジに通う女学生。どちらも幼い時分に母親を亡くしているという以外には全く共通点のない二人だった。ある日往来で、ミーラの身につけたドゥパッタが風に煽られて吹き飛び、バイクに乗っていたサバの視界を遮ったことから事故となり、サバは瀕死の重傷を負う。半狂乱になったミーラは彼を高級医院に運び込み、費用を全て受け持って入院させる。彼が危機的な容態を脱した後もミーラは看病に通い、二人は2ヶ月の入院期間中毎日顔を会わせることになる。退院した後もミーラのことが忘れられないサバは、しかし自分との階級の違いも充分に分かっており、ひっそりと遠くから彼女を眺めることに満足していた。

車掌を聞き手にした恋物語が続くなか、追っ手の男(Sampath Raj)も諦めておらず、セーラム駅に先回りして二人を捕捉しようと迫っていた。

KadhalilVizhunthen2.jpgKadhalilVizhunthen3.jpg

【寸評】
困った映画だ。とりあえず最初から最後まで飽きずに見させてもらったんだし、アクションシーンの造りの上手さ('action' Prakash という人物が担当しているという)には一定の注目をしていいと思ってるのだが、総体としてみてジャンクな感じが拭えない。筆者はどういう訳だかこのナクル+スネーナーのコンビの次作 Masilamani (Tamil - 2009) Dir. Manohar というのを先に見てしまっていた。こちらは下町人情を背景にした典型的な女高男低の身分差ロマンスもの。で、今時のタミル娯楽映画はここまでオーラのないフツーの兄ちゃん姉ちゃんをフィーチャーするところに来ちまったのかと愕然とした。そしてこの二人は「俺的には追わなくてもいい俳優のリスト」に整然と格納されてしまったのだ。

にも拘らずなぜ高価な象印DVDを取り寄せて本作を見たかというと、一つには我が偏愛のアイテムである鐵成分のある作品であるらしいことと、もう一つには本作の挿入歌 ♪Naaka Mukka の異様なまでの大ヒットに釣られてという、二つの理由があった。

で、本作を見てみて、やっぱり女高男低の身分差ロマンスで、その手のストーリーのお決まりのあれやこれやが次々と展開して、それにしてもやっぱりナクルが一番の問題じゃん、背が高くて色が白めでダンスが上手くても必ずしもヒーローにはなれないっていう見本みたいな俳優だ、ストーカー系悪役がいいとこじゃん、そんなにタミル映画界は人材不足なのかいな…とまた同じことを考えてたら、インターミッション後…。あああ、納得。ネタバレを避けるためにこれ以上細かく書くのは止めるが、200%納得のキャスティングだわ、これ。ただしこの手はもう二度と使えないわな。

KadhalilVizhunthen4.jpgKadhalilVizhunthen5.jpg

問題のクットゥ・ソング ♪Naaka Mukka は男声のもの(ナクルが自分で歌っているらしい)と女声のもの(フォークシンガーのマドゥライ・チンナ・ポンヌが担当)がそれぞれ一回ずつ使われている。片や港湾ビルの建設現場、片やトラック・ターミナルという、どちらも肉体労働の現場で繰り広げられる超高速ダンスビート。踊りの技巧というよりはノリとエネルギーが身上の狂熱の名シーンだと思う。Naaka Mukka とは字義通りには「舌と鼻」、ミュージック・ディレクターのヴィジャイ・アンソニーによれば、とりたてての意味のない言葉遊びだというのだが、様々な解釈が出回った。「雌牛は死んだ/人間が食っちまった/皮を剥いで太鼓を作れ」なんていうアグレッシブでロウワーな含意を感じさせる歌詞にはゾクゾクさせられる。そしてこういう曲が大ヒットするタミルというものに、「またしてもやられたっ」と感じるのだ。

ただしこれ、…ストーリーと全然関係ないんだよね。よく印度映画にあまり関心のない人が「インド映画って意味もなく踊り出すんでしょ?」と馬鹿にして言うレベルよりも、もっと過激にストーリーに無関係なんだ。監督のプラサードさんは、封切り前に大ヒットしてしまったこの曲とこのダンスに合わせて、全然違うストーリーをゼロから作り直した方が良くはなかったかね。争いを好まずヒステリックな物言いを避ける温厚そのものの筆者が「ジャンク」などという言葉をつかってしまったのはこれが原因。まあ、ジャンクにもいい部品がとれる有用なジャンクとそうでないものがある訳で、そういう意味では本作は「価値あるジャンク」ではあるのだが。

ともかく、本来の作中で適切な存在意義を与えられなかったこのソングは、一人歩きを始めた。今ひとつ信じられないのだがクリケット・ワールド・カップの開会式典で演奏されたとか、IPLのシーズン開幕試合で流れたとか。つい先日封切られたシルク・スミターの伝記的映画 The Dirty Picture (Hindi - 2011) Dir. Milan Luthria の作中でも使われたという(ただし筆者は未確認)。そういう一連の一人歩きのなかで一番凄いと思ったのが下の動画。

日刊の英字全国紙 THE TIMES OF INDIA が2009年の同紙のチェンナイ・エディション発足を記念して発表したイメージ広告動画 "A Day In The Life Of Chennai"。一見するとドキュメンタリーだが、400人のエキストラを使って撮影された超短編劇映画。いんや、カッコよ過ぎじゃ!これぞタミル魂ってやつじゃありませんかい。

というわけで、この Kadhalil Vizhunthen は絶対のお勧めではないが一度ぐらい見ても損はしない作品、"A Day In The Life Of Chennai" の方は何度見ても厭きない絶対のお勧めなのであった。

投稿者 Periplo : 04:04 : カテゴリー Tamil new wave catalog
| コメント (3)

2011年12月10日

TNWコレクション:Goa

goa1.jpg

久しぶりに転げ回って笑った。自分大丈夫かと心配になったほど。Michael Madana Kama Rajan (Tamil - 1990) Dir. Singeetam Srinivasa Rao には及ばなかったけど、Kadhala Kadhala (Tamil - 1998) Dir. Singeetam Srinivasa Rao と同じくらいには笑った。凄いじゃん。面白さのツボは、ゴアといやあ都会の人間がヴァカンスに出かけて弾けるところと相場が決まってたのを、田舎者に行かせたとこにあると思う。

cvGoa.jpgGoa (Tamil - 2010)

Director:Venkat Prabhu
Cast:Jay, Vaibhav Reddy, Premji Amaran, Sneha, Piaa Bajpai, Melanie Marie, Aravind Akash, Sampat Raj, Vijayakumar, Chandrashekar, Silambarasan, Nayantara, Prasanna

原題:கோவா または GOA
タイトルの揺れ:Goa - A Venkat Prabhu Holiday

DVDの版元:Lotus Five Star など
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間34分

オフィシャルサイト:http://www.goathemovie.com/
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/goa-tamil-2010

都会度★★★★★☆☆☆☆☆田舎度★★★★★★★★☆☆
暴力度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆お笑い度★★★★★★★★★★
おセンチ度★★★★★☆☆☆☆☆衝撃度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ハッピー度★★★★★★★★★★シリアス度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
消化不良度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆満足度★★★★★★★★☆☆

【ネタバレ度30%の粗筋】
テーニ地方の僻村パンナイプラムでパンチャーヤト集会が開かれていた。村の掟を破った3人の若者を裁くためだ。軍人の息子ヴィナーヤカン(Jai)はアメリカかぶれの穀潰し、ラーマラージャン(Vaibhav Reddy)は村長(Vijayakumar)の息子だがやっていることは村中の女の子に秋波を送るだけという軟派野郎、舞踊家の息子サーミカンニ(Premji Amaran)は女神への願掛けによって授かったという出生から学校にも行かずに寺院での奉仕に明け暮れるべく育てられた朴念仁だった。3人の罪状は、村の掟に逆らって村境を超えテーニに遊びにいこうとしたこと、彼らはそれを14回も繰り返したのだ。

それぞれの家族の厳重な監視のもとに置かれた3人はますますフラストレーションを募らせ、さらに大胆な逃亡を試みる。それはテーニではなくマドゥライに出かけるということ。今回はまんまと脱出に成功し、マドゥライの知り合いアラハルサーミを訪れた3人だったが、そこで彼らが目にしたものは…。(中略)

色々あって3人はゴアを目指す。目的はリッチなガイジンのギャルをゲットして、国外で暮らすこと。そこで彼らはクラブ歌手のローシニ(Piaa Bajpai)、白人ツーリストのジェシカ・アルバ(Melanie Marie)、フローティング・カジノを経営する実業家スハーシニ(Sneha)に巡り会う。(粗筋了)

Goa3.jpg

【寸評】
Chennai 600028ヴェンカト・プラブ監督の第3作目。スッパルスターの次女で、元々はグラフィック・デザイナーをやってたサウンダリヤ・ラジニカーントが興した制作会社オーカー(アーッカルと読むべきか)の初プロデュース作品。前のポストで紹介の Thamizh Padam とほぼ同時の公開で、しかもどちらも映画のパロディが満載の作品ということで大変に話題になった。双方ともヒットを記録したが、本作の方はゲイのモチーフからA指定となり、売り上げの面では Thamizh Padam には及ばなかったようだ。しかし筆者に言わせれば、こっちの方が比べ物にならないくらい面白い。

両作ともタミル映画のパロディに満ち満ちているが、Thamizh Padam は純粋にパロディのためのパロディ、一方この Goa は薄々とはいえ、ストーリーがある。田舎者が都会(というかコスモポリタンな観光地)に出て右往左往する様を笑うヴァカモノ映画。そして濃ゆい、濃すぎるほどのキャラクターがある。そのキャラの配役のいちいちに Casting Coup とでも言うべき意外性があって効果を増幅させている。ヴァイバヴ ‘半端イケメン’ レッディ、‘viをつけたかった’ ジャイあたりはまあ普通だが、監督の実弟であるプレームジ・アマランには度肝を抜かれた。途中までこいつだと分からなかったぐらいだ。アラヴィンド ‘ハムスター’ アーカーシュには初めて演技力を見せつけられた気がした。サンパト ‘チンケなドン’ ラージもまた登場後しばらくは気がつかなかったくらいのブッ飛んだ役作り。一番凄かったのはスネーハかな。「東宝シンデレラ」女優だと思ってたスネーハがあんなことやこんなこと…。まあ、デビューから10年にもなれば作風も変えないと、ということなのか。プリヤン先生の見つけものである可愛いピアー・バジパイだけはいつもの彼女。白人ツーリスト役のメラニー・マリーは、ジェシカ・アルバという役名で登場する。様々な報道によれば、当初この役は実際にハリウッド女優のジェシカ・アルバにオファーされたというのだが、ホントかね。話題作りのために草野球チームが巨人軍に練習試合を申し込んだだけ、という気がしないでもない。ともあれ、このメラニーはタミル人好きのする優しい感じのブルネットで、含羞の演技もきちんとこなし、Madrasapattinam (Tamil - 2010) Dir. A L Vijay のエイミー・ジャクソンに匹敵するくらいの好感度があった。

それから、過去の映画への言及についても分かる範囲内で。とりあえず一番吹くお笑いの部分は Subramaniapuram に依っているので、これは前もって見といた方がより笑えると思う。Manmadhan (Tamil - 2004) Dir. A J Murugan はラストシーンの駄洒落用。Ammoru (Telugu - 1995) Dir. Kodi Ramakrishna は映像そのものが作中で使われちゃってる。 Paruthiveeran は瞬間芸なので見逃さないように。Dil Chahta Hai (Hindi - 2001) Dir. Farhan Akhtar もちょっとだけ出てくる。それから、幾多のヴィレッジ映画&幾多のラジニのアクション映画も。スネーハのキャラは多分ハリウッド映画からなんだと思うけど分からない、誰か教えて。

転げ回ったなどと褒めちぎってみたものの、不満はある。シランバラーサン、プラサンナー、ナヤンターラをゲストに引っ張ってきながら使い方が勿体なさ過ぎ。特にナヤン様はもっと笑わせて下さってもよかったように思う。それと、前半のハイテンションが後半でやや減速してしまったこと。お淑やかなスネーハをあそこまでブチ切れキャラにしたのならもうちょっと暴れてもらえばスカッとしたのに。是非続編を作ってこのへんの不完全燃焼を解消してほしい。

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もっと言っちゃうと、一番バッカバカだったのはゴアに出かける前の「マドゥライの段」だったんだけどね。

投稿者 Periplo : 01:31 : カテゴリー Tamil new wave catalog
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2011年12月07日

TNWコレクション:Thamizh Padam

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前にもことわったように、このタミル・ニューウェーブのコレクションは年代順の紹介ではない。ただし、ずっしり重いものの後には笑える軽めのものという感じで、交互に取り上げていこうとは思っていた。だけんど、ここに来てどっと冷え込んだせいなのか、オイラなんかダウナー系なのよ。なんで、しばらくお笑い系を連投で行こうと思う。却って寒くなってしまったりしないことを祈りながら。

cvThamizhPadam.jpgThamizh Padam (Tamil - 2010)

Director:C S Amuthan
Cast:Shiva, Disha Pandey, Paravai Muniyamma, Manobala, M S Bhaskar, V S Raghavan, Venniradai Murthy, Delhi Ganesh, Shammuga Sundaram, Periardasan, Ponnambalam

原題:தமிழ்ப் படம் または தமிழ்படம்
タイトルの意味:Tamil Cinema
タイトルの揺れ:Tamizh Padam, Tamil Padam, Thamizhpadam, Tamizhpadam

DVDの版元:Ayngaran
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間20分

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/thamizh-padam-tamil-2010

都会度★★★★★☆☆☆☆☆田舎度★★★★★☆☆☆☆☆
暴力度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆お笑い度★★★★★★★★★★
おセンチ度★★☆☆☆☆☆☆☆☆衝撃度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ハッピー度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆シリアス度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
消化不良度★★★★★★★★☆☆満足度★★★★★☆☆☆☆☆

【ネタバレ度20%の粗筋】
昔ながらのタミルの田舎の村・シニマーパッティには、独自の掟があった。それは誰であれ村人の家に男子が生まれたら、即座に間引きしなければならないという過酷なものだった。こんな掟が出来たのは、過去のある時期村出身の男子から映画スターが続々と輩出したことに原因があった。スターになった彼らはことごとく州首相の地位を狙うと言明し、それが州与党を刺激して、政府が村のライフラインを止めるなどの嫌がらせを行う事態に陥ったのだった。これを憂慮した村のパンチャーヤットは、マドラスに出ていって映画スターになることを目論む男子が二度と出現しないよう厳しい掟を定めたのだった。

そんな村にまたしても男児が生まれてしまった。掟に従うしかない父親は、産婆(Paravai Muniyamma)に息子を殺すことを命じるが、いたたまれない産婆は赤子を連れてマドラスに逃れる。シヴァ(Shiva)と名付けられたその赤子はマドラスの下町ですくすくと育ち、街のヤクザものを懲らしめ、闇の組織と戦い、可愛い女子大生プリヤー(Disha Pandey)を追いかけ回す、立派なタミル男子となった。(粗筋了)

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【寸評】
これもまた興味深い新顔の揃った異色作。発足からまだ日は浅いものの、今や既にタミル映画界の注目の制作会社となった Cloud Nine Movies の初作品だ。クラウド・ナインのトップである若きダヤーニディ・アラヒリのお祖父様は、言わずと知れた前タミルナードゥ州首相カルナーニディ先生、そして親爺様は「存在自体がマドゥライ暴力映画」の血塗られた無冠の(←かつては)帝王MKアラヒリ氏だ。

監督のCSアムダンは広告業界出身の映像作家で、本作が劇映画としてはデビュー作。主演のシヴァは Chennai 600028 (Tamil - 2007) Dir. Venkat Prabhu でデビューの後、これが初主演。困った一文字名前だが、時々 R J Shiva と表記されることもある。このRJは何かというと、ラジオ・ジョッキーの略らしい。元々はラジオ・ミルチの人気パーソナリティだという。ミュージック・ディレクターのカンナンも、本作でデビューして現在は売れっ子になっている。

しかし、初物として何よりも話題を振りまいたのは、本作がタミル映画始まって以来初めての「全編丸々のタミル映画のパロディ」であるという点だった。本編自体は低予算で作られたが、封切り前からメディア・ミックスの大宣伝が行われ、公開後は主として30代以下の観客層に馬鹿ウケしたという。本作を観ての筆者の正直な感想は、「確かに凄いが最初から最後まで醒めきってるんだけど俺どうしてくれる?」だった。インド映画趣味に棹さす者の端くれとして、引用・パクリ・本歌取りには敏感だし好物でもある(本作に関してもいちいち注釈をするつもりで張り切っていたが、ウィキペディアに詳細な解説があったので省略した)。ただ、パロディだけを延々140分見せられても、通常のタミル映画鑑賞後の満腹感(というか膨満感というか)が全然なくて物足りないんだわ。

コンテンツ的にはここ30年ほどタミル映画のパロディ集成なのでストーリーは殆どない。ここ30年に限定したのは、やはり1980年代以降のタミル映画のスタイルがそれ以前のものとは変わって来ているということなのだと思う。そしてそれは若い観客にアピールするためにも適切な戦略だっただろう。本作が採用したパロディのやり方にはふた通りがある。一つは大スターが演じる映画的マニエリスムをスターじゃないしょぼくれた人物がやること。ふたつ目は娯楽映画の定式・慣用句を極端化して見せること。前者はすなわち主演のシヴァが行う全て、つまり神彩を帯びた大スターによる殺気を放つ見栄切りを、へっぴり腰のシヴァがやる痛さを笑う。後者は、たとえばヒーローのサイドキックをつとめるコメディアンが、しばしば学園ものにしては妙に歳を食ってたりする現象を誇張して笑わせたりするものだ〔上の写真がそれ。主人公の友人達、左からシッダールト(Manobala)、ナクル(M S Bhaskar)、バラト(Venniradai Murthy)だ、トホホ〕。でありながら、巨大ファンクラブ組織をもつ大スターを直接に揶揄することはスレスレでなんとか避けているというクレバーさ。しかし、The Best of Tamil Cinema 1931 to 2010 第2巻の321ページには、これだけのパロディが物議を醸さずすんなりと通ったのは、州首相(当時)の後ろ盾をもつクラウド・ナインの制作だったからこそと多くの人々が感じたことが率直に書かれている。

ということで、辛い一日が終わった後に思い切り笑ってストレス発散したいとか、そういう期待で本作を観ることは日本のファンにはお勧めできないと個人的には思う。しかしポジティブな面ももちろんある。とりあえず予習なしで観てみると、自分のタミル映画に関する知識の蓄積度合いが分かること。それから、より重要なことなのだが、これだけのパロディをやりながらも、制作者がタミル映画の各種の慣用句を恥じて捨て去ろうとしているのではないらしいことが感じられる点だ。何度も観たくなるものではないが、一見の価値はある。テルグ版とかマラヤーラム版とかも誰か作んないかね。

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封切り前の大プロモーションでは、このような本編とは無関係のパロディ・ポスターも多数ばら撒かれたという。

投稿者 Periplo : 04:12 : カテゴリー Tamil new wave catalog
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2011年12月04日

TNWコレクション:Chennai 600028

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以前のポストでは、自分が印度映画の学園青春ものにいかに馴染めないかについて愚痴ったりしたのだが、今度は学園外若者群像映画だ。さらにハードルが高くなった気がしないでもない。若者群像というと、これまではたとえば Boys (Tamil - 2003) Dir. Shankar なんかが即座に思い浮かんで来たものだったが、あれは恋愛を主軸に据えてヒーロー・ヒロインがハッキリとした、安定感のあるナラティブだった。しかし今回取り上げるのは、ただもうホントにそこいらのニイちゃん達がグダグダしてるのを撮っただけみたいな烏合の衆ムービー。個人的にはヴァカモノ映画と呼んでいる。そのヴァカモノ映画のトップランナーと言えるのが、本作でデビューのヴェンカット・プラブ監督。プロデュースはSPBチャラン、プレゼンターとして親爺様のSPBもデカイ顔をエンドロールで見せてくれている。例によって無名俳優ばかりを集めて低予算で作られ、雪崩的なヒットになったという。

cvChennai600028.jpgChennai 600028 (Tamil - 2007)

Director:Venkat Prabhu
Cast:Siva, Jai, Nithin Sathya, Aravind Akash, Premji Amaran, Ajai Raj, Vijay Vasanth, Prasanna, Ranjith, Arun, Karthik, Vijayalakshmi, Christine Zedek, Ilavarasu, Sampath Kumar

原題:சென்னை 600028
タイトルの意味:600028とはチェンナイ市のマイラープールの一地区、ラージャ・アンナーマライプラムの郵便番号
タイトルの揺れ:Chennai 28, Chennai-28

DVDの版元:Moser Baer
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間20分

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/chennai-600028-tamil-2007

都会度★★★★★★★★★★田舎度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
暴力度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆お笑い度★★★★★★★☆☆☆
おセンチ度★★☆☆☆☆☆☆☆☆衝撃度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ハッピー度★★★★★★★★★★シリアス度★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
消化不良度★★★★★★★★☆☆満足度★★★★★★☆☆☆☆

chennai2802jpg.jpgchennai2803.jpg

【ネタバレ度20%の粗筋】
チェンナイ市街地の南部、ラージャ・アンナーマライプラム近くにある住宅公団建設の規格住宅街ヴィサーラッチ・トーッタムは、通称ライムストーン・カナルと呼ばれる、いたって雑駁な庶民の集落。ここに住む若者達によるアマチュア・クリケット・チームはシャークスという名前で、北にあるラーヤプラムのロッカーズとはライバルというだけではなく、フィールドの外でも乱闘沙汰を繰り返す大人げない関係にあった。シャークスはカールティック(Siva)、シーヌ(Premji Amaran)、アラヴィンド(Aravind Akash)、パラニ(Nithin Sathya)をはじめとした10人の若者達からなり、遠い昔にキャプテンを務めた床屋の親爺マノーハラン(Ilavarasu)のもとに集っていた。あるとき、敵対するロッカーズの主力メンバーの一人であるラグ(Jay)が、巡査の父親の配置換えに伴って、ラーヤプラムからヴィサーラッチ・トーッタムに引っ越してくる。何度かの小競り合いの後、さる経緯から、ラグはシャークスでプレイをすることになる。(粗筋了)

【寸評】
従来型のジャンル分けならばコメディということになるこの作品、ガイジン観客には二重の障壁がある。ひとつは重要なモチーフが草クリケットであるという点、クリケットのルールを知らないとクライマックスでなかなか盛り上がれない。もうひとつは、本作のユーモアの来るところが、街の兄ちゃん達のダラダラした喋くりにあるという点。英語字幕を一所懸命追っかけてはみるのだが、本当の可笑しさが理解できたという自信はない。にも拘らず、やっぱ見てて爽快感があるんだな。社会階層的には「中の下」ぐらいのところにいる、ハンサムでもなく、身体能力が高い訳でもなく、頭が良さそうでもない若いのが、ただ馴れ合ったり、ドツキ合ったりしてるだけなんだけど、下町のファンキーなビートが感じられる。ストーリーもあってないようなもので、所々マジでベタな展開になるかなと身構えてると、軽くいなされたり、寸止めされたり。ほぼ唯一の映画的な見せ場として、アラヴィンドがセクシーな美女に××されて××っていうシーンがあるんだけど、これがもう都市伝説そのものってくらいの現実感のなさで、却って笑える。タミル映画としては、そしてサウス映画としても空前の、アンチ・カタルシスなストリート・タメぐち映画なんだわ。

サウス映画として空前というのにはかなりの確証があるけど、インド映画としてはどうなんだろう。ともかく都会派若者映画の先進地域っていったらヒンディー映画界だということは知っている。まあそんな沢山は観てないから大口は叩けないけど、若者群像という点ですぐに思い浮かぶのは Dil Chahta Hai (Hindi - 2001) Dir. Farhan Akhtar あたりか。今からちょうど10年前に封切られ、都市の若者の間で大ヒットしてカルト作品の地位を獲得した。「ボリウッド・ニューウェーブ」の嚆矢であるとする評価も少なくない。しかし、先進地域のボリウッドですら、若者映画で若者を演じるのは、この作品でのように、スターとしての地位が確立した30代の俳優であることが少なくないのだ。なおかつ、印度の伝統的規範意識やボリウッド的フォーミュラを脱却した都会的洗練をUSPとしたこの作品が描き出したのは、ムンバイ(とシドニー)の都会ならではのお洒落さと、富によって保証された個人主義的な価値観や自由なライフスタイルだった。観客が憧れを抱くとしたら、それは万国共通の都市の洗練された表象と、自由な生き方を可能にする富そのものに対してでしかありえないような造りになっているのだ。

一方でこの Chennai 600028 はどうかというと、(実はタミル・ニューウェーブ都市ものの多くがそうなのだが)繁栄する州都を舞台にしながら、巨大ショッピングモールとか、ヒップなクラブとか、バブリーな高層フラットとか、田舎もんが憧れるような分かりやすいお洒落な都市の記号が見当たらない。出てくるのはほとんどが貧乏人で、見た目も別に格好良くもなんともないそこいらの若いのなのだ。でも、それが却って都会的だと思いませんかい?なおかつ、本作は観客にある種の憧れを抱かせる力を持っている。それは、地位の高低や富の多寡を問わず、運命によってその地に生まれ、その地の住人を名乗れること(そして固有のスラングを解すること)に対する他所者からの叶わぬ憧れだ。もちろんそういう潜在力をもった場はどこにでもある訳ではない。筆者がハイダラーバード産ウルドゥー語映画に妙に執着したり、フォート・コーチンを舞台にしたマラヤーラム映画をつい収集してしまったりするのは、チェンナイと並んでこの二つが(個人的には)そういう魔力を持った場所であるからなのだと思う。

受け入れられるかどうかは、個々の観客のチェンナイに対する思い入れに依るとは思うのだけれど、格好良さやお洒落さを必死に追求する田舎臭さから自由になった、新タイプの都会映画のサンプルとして、観といて決して損はない一作。

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なんつうか、ともかく絵にならない映画なのだ。ポスターも民主的にキャスト全員が並んで記念撮影みたいなのばっか。

投稿者 Periplo : 14:25 : カテゴリー Tamil new wave catalog
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