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2012年01月27日

TNWコレクション:Avan - Ivan

おらもきっとインド映画見ながらこんな顔してるに違いねえ。おかしな男たちと喧しい女たちのお伽話。

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このタミル・ニューウェーブのシリーズを始めるにあたって、「バーラー監督作品は取り扱わない。何と言うか新潮流の一員というよりは、独自の作家性の中にいる人のような気がするからだ」なんてことを書いたのだけど、あっという間に自分でそのルールを破ってしまうのだ。理由は、すごく面白かったから。

cvAvanIvan.jpgAvan - Ivan (Tamil - 2011)

Director:Bala
Cast:Vishal, Arya, G M Kumar, Janani Iyer, Madhu Shalini, R K, Surya, Ambika, Jayaprabha, Prabha Ramesh, Ramaraj, Ananth Vaidyanatha, Vimalraj Ganesan

原題:அவன்-இவன்
タイトルの意味:That guy, this guy
タイトルの揺れ:Avan Ivan, Avana Ivan, Veedu Vaadu(テルグ吹き替え版のタイトル)

DVDの版元:Ayngaran, Lotus Five Star
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし(Ayngaran盤)
DVDのランタイム:約2時間11分
DVD 入手先:WebmallIndia など

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/09/avan-ivan-tamil-2011.html

都会度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆田舎度★★★★★★★★★★
暴力度★★★★☆☆☆☆☆☆お笑い度★★★★★★★☆☆☆
おセンチ度★★★★★☆☆☆☆☆衝撃度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ハッピー度★★★★★★★★☆☆シリアス度★★☆☆☆☆☆☆☆☆
消化不良度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆満足度★★★★★★★★☆☆

【ネタバレ度20%の粗筋】
テーニ地方西ガーツ山麓の小さな村。60歳を迎えた土地のラージャー(作中ではザミンダールという言葉が使われている)・ティールタパティ(G M Kumar)は、屋敷以外の資産の多くを手放してしまっていたが、村人からはハイネスと呼ばれ充分な尊敬を受けて体面を保っていた。しかし、二人の妻と幾人かの愛人に生ませた15、16人もの子供達は誰一人寄り付かず、コソ泥稼業の二人の若者と、太っちょの孤児の少年だけを相手に日々の無聊を慰めていた。

そのコソ泥とは、異母兄弟のワルター・ヴァナンガームディ(Vishal)とクンブダレーン・サーミ(Arya)である。二人はそれぞれの母(Ambika, Jayaprabha)と共に隣り合った家に住み、板挟みになって項垂れるばかりの父親を尻目に、罵り合い、掴み合う毎日を送っていた。父の家系は代々コソ泥を生業として来たため、二人も当然のこととして盗みを行い、警察からも目を付けられている。しかしその営みが犯罪としてはあまりに軽微であるために、曖昧な形で村の暮らしに溶け込んでいる。泥棒の技術では弟のクンブダレーンが勝っていたが、斜視の兄のワルターには女形としての芝居の才能があった。仲の悪い二人ではあったが、ハイネスの前では一緒に子供のように遊び回っていた。ある時、ワルターは盗みに入った先で遭遇した巡査のベイビー(Janani Iyer)に一目惚れし、一方クンブダレーンの方も大学生のテンモリ(Madhu Shalini)に目を付ける。(粗筋了)

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テルグ吹き替え版 Vaadu Veedu のポスター。

【寸評】
そもそもなんでバーラー監督作品をこのシリーズから除外しようと考えたかというと、簡単に言って歯が立たない感じがあったからだ。たとえば Pithamagan (Tamil - 2003) なんか、そもそもタイトルの意味すらよく分かんないし(直訳は「祖父」、どうやら野辺送りの際に唱えられる経文の一部らしいのだが)。スリランカからの難民流入という社会現象を背景に、母と息子の関係を描いた Nandha (Tamil - 2001) は、割とすんなり受け入れられたんだけど、それ以外の作品が、観応えはあるのだけれども論じにくい難物に思えてちょっと尻込みしちまったのだ。それら作品は、いずれも境界線上にいる人間を主人公に据え、彼らを各種の極限状態に追い込みながら存在への問いかけを提起するという類のもので、もちろんインドでしか成立し得ないものではあるが、どちらかというと芸術映画に近い感触で、タミルの風土との繋がりは比較的弱いものに思えたのだ。

で、本作なのだが、上に挙げたようなバーラー作品の定番を期待していた観客にはかなり評判が悪かったようだ。でもこれ、バーラー・ブランドのレッテルを外して、一本のタミル映画として見るとかなり楽しい仕上がりになっていると思う。少なくとも筆者は充分に楽しんだ。威信を保つことに腐心しながら実際は寂しがり屋の老人であるハイネス、おちゃっぴぃな婦警さん、獰猛な母親たち(以前のエントリーでは小娘時代の可愛らしい写真を掲載したこともあるアンビカー、それに Nadodigal でオッソロシい女代議士を演じて鮮烈な印象を残したジャヤプラバーが演じている)、といった人々が織りなす、いうなれば現代の古譚なのだ。田舎を舞台にしていながらリアリズムではなく、転倒した、あるいは揺すぶられる権威(ハイネスの遊び友達としての泥棒兄弟、夫を放ったらかして掴み合う妻たち、警官にタメ口で話しかける悪ガキetc.)がコメディの中で語られる。しかし最初から最後まで仙境では映画にならないので、後半から異物が登場する。それが何であるかはここでは書かない。この異物にヒンドゥー教的価値観への挑戦を見るべきなのかどうかは難しいところだ。筆者はむしろ経済原理の万能性の侵食であると受け止めた。その異物との戦いの果てのクライマックスは、残酷でありながらどこかユーモラスで、壮麗な大盤振る舞いでもあり、民俗学的な興味をも掻き立てる見事なものだったと思う。

演技という面で見れば、多くの評者が言うように、ヴィシャールが最大の功労者であり見どころでもある。長身で筋肉質、色黒でなおかつ斜視でありながら、その女装姿には目を釘付けにする何かがあり、冒頭のダンスシーンからその困惑させる色気にタジタジとなった。大いに話題となったその斜視だが、脚本段階ではその設定はなく、撮影の初日に監督が思いついたものだという(TOI記事による)。そもそも意志の力で寄り目となって踊りや乱闘を含む演技をするなどということが想像を絶するものだが、ヴィシャールは撮影中度々の酷い頭痛に悩まされたという。そこまでして何故斜視にしなければならなかったのか、劇的な必然性はどう考えても見当たらないのだが、もし斜視でなかったならば、ゲストで登場するスーリヤが裸足で逃げ出した(←誇張)その劇中演技にはそれほど説得力がなかったかもしれない。ハイネス(ハイネスゥと発音するのがコツ)としてペーソスある芝居を見せてくれたGMクマールは、監督・脚本家として30年以上のキャリアを持った人物だが、本作によって一気に脚光を浴びることになったのは間違いない。テレビコマーシャルのモデルをやっていたというジャナニ・アイヤルはそれまでに端役で何本かの出演作があったようだが、本作のヒロインが事実上のデビューのようだ。ちっこくて可愛い婦警さんには大変好感を持ったが、さてこの先どうなるかね。

最後に、アインガラン盤のDVDにわかりやすい字幕をつけてくれたシュライヤンティさん(象印社は最近字幕担当者のクレジットも付記するようになったのかな)にもお礼を言っておきたい。

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投稿者 Periplo : 20:09 : カテゴリー so many cups of chai Tamil new wave catalog
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2012年01月11日

TNWコレクション:Mynaa

下のポスター、なんかちょっとピーテル・ブリューゲルのこの絵を思わせるものがあるね。これに限らず、当エントリーに掲載のイメージを見て何か感じるところのある人がいたら、迷わず本作を見ていただきたい。以下の駄レビューは読まなくても全然オッケー。イメージ通りの、清々しくも狂おしい緑の眩惑体験。

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2008年に旗揚げされた制作・配給会社レッド・ジャイアントは、歴史が浅いながらもヴィジャイ、スーリヤ、カマルハーサンといった 大スターの出演作を扱い、すでにタミル映画界の重要な一角を占めるに到っている。この会社の若きCEOウダヤニディ・スターリンのお祖父様は、言わずと知れた前タミルナードゥ州首相カルナーニディ先生、そして親爺様はチェンナイ市長やTN州政府内閣の要職を歴任したジョンイ…じゃなかった、MKスターリン同志である。それはともかく、錚々たる大スターが名を連ねる同社の制作・配給作品群のなかで、無名俳優をフィーチャーした明らかに低予算な本作だけが異彩を放っているのだ。コンテンツにあれこれと指図されたくないということで制作はプラブ・ソロモン監督自身が担当したのだが、試写を見せられたウダヤニディ君がぞっこん惚れ込んでしまい、レッド・ジャイアントの配給のラインナップに加わったということらしい。

cvMynaa.jpgMynaa (Tamil - 2010)

Director:Prabhu Solomon
Cast:Vidharth, Amala Paul (Anaka), Sethu, Thambi Ramaiah, Susan George, Sevvalai, Manroadu Manickam

原題:மைனா
タイトルの意味:ヒロインの名前
タイトルの揺れ:Mainaa, Myna

DVDの版元:Ayngaran
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間26分
DVD 入手先:<Bhavani など

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/wish-listmyaa

都会度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆田舎度★★★★★★★★★★
暴力度★★★☆☆☆☆☆☆☆お笑い度★★★★★★★☆☆☆
おセンチ度★★★★★★★☆☆☆衝撃度★★★★★★★★★★
ハッピー度★★★★☆☆☆☆☆☆シリアス度★★★★★★★★☆☆
消化不良度☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆満足度★★★★★★★★★☆

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【ネタバレ度50%の粗筋】
タミルナードゥ州テーニ地方のペリヤクラム拘置所。ディーパーヴァリの前日。看守長(Sub Jail Officer)のバースカル(Sethu)は落ち着かなかった。彼は結婚して間もない妻のスダーと共にこれからマドゥライに向かい、シヴァガンガ郡のアマランガドゥから来る妻の実家のメンバーと合流することになっている。興奮気味のスダーは電話で親戚にあれこれ指図をしている。彼女は度を超して我が儘なところがあり、バースカルも若干持て余している。

拘置所に収監されている若い男スルリ(Vidhaarth)は、テーニ山地の僻村セッヴァングディの出身。博打うちの息子として荒んだ家庭で育った。幼い頃、彼は街で母子家庭が借金取りによって追い立てを食らっているところに行き会い、その母娘を自分の村に引き取り、自分の祖母と一緒に住まわせる。以後彼はその娘マイナーの守護天使となり、あらゆる事柄に関して世話を焼くようになる。

自身は学業からドロップアウトしてしまったが、美しく成長したマイナー(Amala)の通学に毎日自転車で送り迎えをするスルリは、そのあまりの献身ぶりを村人にからかわれても一向に意に介さなかった。彼女が初潮を迎えた時も、成女儀礼のための費用を日雇い仕事によって調達したのは彼だった。彼は当然のこととしてマイナーと結婚するつもりでいたが、彼女の母クルヴァンマは娘を教育のある隣村の男に嫁がせようと目論む。それを聞いて激嵩したスルリはクルヴァンマに暴力を振るい、村人の通報によって逮捕され14日間の拘置を喰らったのだった。

拘置所内の行事が終わり、当直以外の職員達が休暇に入る準備をしていたところに、スルリが脱獄して逃亡中という報告が舞い込む。この不祥事がマスコミに漏れるのを恐れる上層部は、バースカルに1日以内にスルリを捕捉するよう命じる。彼は看守のラーマイヤー(Thambi Ramaiah)を伴って、急遽セッヴァングディに向かう。ディーパーヴァリの遠出がキャンセルになったことでスダーは怒り狂う。バースカルとラーマイヤーの二人はクランガニまではバスで行ったが、そこから先は漆黒の山中を夜通し歩くしかなかった。

セッヴァングディに帰り着いたスルリは再びクルヴァンマと掴み合っているところを、やっと辿り着いたバースカルに拘束される。興奮したクルヴァンマは娘のマイナーにすら危害を加えようとしたので、成り行きからバースカル達は手錠をかけてスルリを連行するのにあわせて、曖昧な形でマイナーも同行させることになる。ところが予期せぬ椿事が重なり、4人は西ガーツ山中で道を見失い、ケララのムンナールに出てしまう。(粗筋了)

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【寸評】
タミル・ニューウェーブの一つの到達点ではないかという気がする、類型としてのカテゴライズを拒むユニークな作品。到達点ではあってもここで打ち止めになるとは思わないが。しばらく前に紹介した Poo (Tamil - 2008) は、田舎が舞台で純愛がテーマという点で、一見同じ括りに入りそうにも見えるが、Poo が寓話性&文学性を指向したものであったのに対し、こちらはどこまでも映画的リアリズムなんだな(そして純愛というよりは狂恋と言った方がいいかもしれない)。作中に展開する出来事は普通の人間が体験することでは全くない、にもかかわらずリアルさがある。そしてリアリズムであるからといって痩せて枯れたものになるとは限らないということが感動を呼ぶのだ。

撮影は作中の舞台設定とほぼ同じ、テーニ地方の最西端、ケララ州境に近いボーディナーヤッカヌールの僻村で主に行われたという。撮影監督のMスクマーランへのインタビューによれば、屋外ではトロリーやクレーンはほとんど使われなかった(予算がなくて使えなかった)という。他のキャストやスタッフの証言を読んでも、シューティング自体がほとんどロードムービーのようなものだったようだ。

ロードムービーが筆者の好物である(そしてロードムービーには点が甘くなりがちである)ということはこれまでに何度か書いてきた。しかし、言うまでもないことだろうが、旅をするなかで、ただ風景が移り変わり、珍しい景色が立ち現れるだけでは不充分だ。空間を移動することによって主体である人間が変容することにこそロードムービーの存在意義がある。本作でもその道行きの中で、清冽な山の空気が人間を変えていく、脱獄囚と連行する警官という社会的な立場・レッテルが段々に削ぎ落とされ、各人が一個の人間として向き合うようになっていく過程が鮮やかなのだ。一方で、同じ山中、僅かな距離しか隔たっていないにも拘らず、タミルとケララの際立った人気(じんき)の違いというのもまた非常に劇的なものとして迫ってくる。これら構成要素がハーモニーを奏で、これほどの高みに昇りながら、最後の落としはあんまりだろう、というのは多くのレビューワーが苦情を言っているところ。筆者も同意見。

演技者たちのなかで本作の第一の功労者は、何と言ってもアマラちゃん。それほど台詞も多くなく、主要キャラの中では振れ幅の少ない役柄なのだが、取り囲む男達を変容させる触媒であるかのような神秘的な存在感、大きな瞳とアルカイック・スマイルの表現力が多いに活きた。アマちゃんなしでは本作は成立しなかっただろう。そして看守役のタンビ・ラーマイヤー。本業は監督である(しかし端役としての出演も少なくはない)というこの人が、本作のユーモアのパートを一人で受け持って笑わせてくれた。監督のプラブ・ソロモンは、本作の前にすでに6本もの作品を送り出しているというのに不覚にも全くノーチェックだった。これから可能な限り遡って鑑賞してみようと思う。


少女の喉を潤した水の飛沫を浴びて、歓喜する男と呆れる親爺。馬鹿馬鹿しくも芸の細かい演出が本作のユーモアの源。

投稿者 Periplo : 02:14 : カテゴリー so many cups of chai Tamil new wave catalog
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2012年01月09日

真冬のクールビズ

前回に引き続き、首都圏で行われるテルグ語映画上映のお知らせ。

下に掲げたポスター上のロゴは、テルグ語で Businessman と書かれている。公式サイト上のタミル語ロゴマラヤーラム語ロゴ、いずれも「びすなす・めーん」と読める。マラヤーラムはともかく、タミルでは非タミル語タイトルの映画は何かと不利なのだが本当にこれで行くのだろうか〔タミル語題名は Pudhiya Nayaka(=New Actor)であるとする情報もあり〕。細かいがこれも注目点。

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Businessman (Telugu - 2012) Dir. Puri Jagannath
Cast : Mahesh Babu, Kajal Aggarwal, Prakash Raj, Raza Murad, Sayaji Shinde, Nassar, Dharmavarapu Subramanyam, Brahmaji, Jahangir Khan, Bharath Reddy, Mahesh Balraj, Jyothi Rana, Ayesha Shiva, Shweta Bhardwaj

■日時:2012年1月21日、14:00〜
■料金:大人2200円、子供1200円(当日券)
■字幕:英語
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/access/
■映画オフィシャルサイト:http://www.princebusinessman.com/
※前売り料金・予約方法など上映に関しての詳細はこちらのPDFパンフレットを参照のこと

インド本国、および米国などの主要外国市場で1月13日に封切られる娯楽大作が日本でもほぼ同時に見られるチャンス。しかも(テルグ映画としては初ということだが)国外公開フィルムには全て英語字幕がつくという。インド国内ではテルグ、タミル、マラヤーラムの3バージョンが同時公開。吹き替えというのはまた奥深い世界で、語り出すときりがないのだが、ともかく「本籍テルグ」映画が最初からタミル、マラヤーラム版を前提に作られて同日公開というのはかなり珍しいことなのだ。制作サイドの気合いが伝わってくるようだ。なお、日本での上映会場はかなり上等なホール。上映形式などのテクニカルな面に関しては専門家に語ってもらった、こちらをご参照いただきたい。

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【予想される本作の見どころ】
これを書いている時点で未公開なので、レビューの類はみあたらない。なので、現時点でわかっている範囲内で、なぜ筆者がこの上映を希有な機会と考えるのかを記してみた。というか、普通の興味の人にとっては、見どころはただ一つに絞られるのだが。

■主演のマヘーシュ・バーブについて
ともかく、チランジーヴィが半引退状態の現在、テルグ映画界でトップのカリスマ力を争うのはジュニアNTRとこのマヘーシュなのである(人によってはパワン・カリヤンも加えるかもしれないが)。そんなメジャーなスターさんについて、デフォルトが悪口のこの辺境サイトでわざわざ何か書く必要があるだろうかという気持ちから放置していたのだが、ジュニアと比べて一向に日本でその名が浸透しない。なのでこの機会に非力ながら真正面から紹介させていただこうと思う。

とはいっても、客観データに関してはウィキペディアに書いてあることをなぞるくらいしか出来ないけど。ガッタマネーニ・マヘーシュ・バーブ、1975年生まれ(テルグ人名は名字が先に表示されるのが通例なので、この人の名字はガッタマネーニである、バーブではない)。父は 1970年代にトップスターだったガッタマネーニ・クリシュナ、通称スーパースター・クリシュナ。冠タイトルが好きなテルグ界で息子のマヘーシュにあてがわれたニックネームは「プリンス」。弟のラメーシュ・バーブはプロデューサーとして裏方で働く道を選び、父所有のプロダクションハウス Padmalaya Studios で兄の出演作を制作する(全作ではないが)という万全の「同族企業」体制もある。まず同世代の男児のなかで選別を行い、特別に才能があるものが表舞台に出て行き、それ以外は実務能力を身につけて裏に回りバックアップする、ファンクラブという名前の「地盤」は代々引き継ぐ、こういうテルグに特有の「お家制度」の成功例の一つだね。

4歳の時から子役として時折映画出演していたが、ヒーローとしての本格デビューは Rajakumarudu (Telugu - 1999) Dir. K Raghavendra Rao。翌年の Vamsi (Telugu - 2000) Dir. B Gopal で共演したボリウッド女優ナムルター・シロードカルとは後に結婚して一児をもうけている。初期の主演作には作風のブレ、興行成績の波があったが、2000 年代中頃には王道アクション映画ヒーローとしての地位を確立している。特に Okkadu (Telugu - 2003) Dir. Guna Sekhar と Pokiri (Telugu - 2006) Dir. Puri Jagannath は記録的なヒットとなった。Pokiri の後若干のスランプがあり、2008-09の2年間は新作封切りが途絶えるという異常事態もあったが、何事もなかったかのように2010年に復活し、衰えることのないカリスマ性を見せつけた。男を惚れさせてなんぼのテルグ界(というかサウス)ではあるが、女性ファンも多く、その結婚にあたっては大騒ぎとなったらしい。プリンスご成婚によって発狂しちゃった女の子を主人公にしたコメディ映画 Ashta Chemma (Telugu - 2008) Dir. Indraganti Mohana Krishna は必見。

芸風の特徴は簡単に言うと「高貴さとクールさ」。そして無理してる感が全くないスタイリッシュな身のこなし。同じサウスでもタミルなどでは、精力と愛嬌が漲る庶民の代表としてのロウワー野郎がヒーロー格の主流となったが、テルグでは色白で長身で端正な男前というものへの嗜好が現在でもある程度は残っているようで、マヘーシュはそのカテゴリーのトップにいると言っていい。演技はかなり抑制された独特なスタイルで、たとえば号泣したり激嵩したりという芝居は少ないが、退屈さは全く感じさせない。第一印象では棒読みのようにも聞こえる台詞まわしにも、コントロールされた精妙な起伏が読み取れる。スチル写真だけだとトッちゃん坊や風に見えなくもないが、実際の作中では、霞を喰って生きてるような超然とした優雅さと、打って変わってアクションシーンで殺人マシーンと化した際の凄みに圧倒される。ファッションも今風のさりげなくもシャープな着こなしで、「極彩色のカジュアルウェア」が幅を利かせていたほんの少し前のテルグ界との隔世を感じさせるが、ときどきこんなもんを見せてくれたりする。これも余裕のなせる技か。

これまで当網站で紹介したことのある出演作は、Takkari Donga (Telugu - 2000) Dir. Jayanth C Paranji、Okkadu (Telugu - 2003) Dir. Guna Sekhar、Arjun (Telugu - 2004) Dir. Guna Sekhar、Athadu (Telugu - 2005) Dir. Trivikram Srinivas の4本だけだが、いずれも上に述べた特質を活かしたよく出来たアクション(=バイオレンス)映画。なお、この Businessman ではマヘーシュは初めてソングにも挑戦し、 テルグ、タミル、マラヤーラムの3バージョンを自分で歌ったというのだが本当だろうか?

ともかく、マヘーシュはNTRジュニアと並び、いかなる類型にも属さない&置き換えのきかない希有な役者なのである。

ファンクラブ公式サイト:http://www.princemahesh.com/
本人のものとされるツイッター:@urstrulyMahesh

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■その他
見どころは一つと言ったものの、監督やヒロインについても紹介しようと思ったのだが、既にここまでに長く書き過ぎ。手短かにいこう。

監督のプーリ・ジャガンナートは、今のテルグ娯楽映画の世界で最も脂の乗り切ったトップノッチの一人であると言っても誰からも反論はされないだろう。上にもちょっと書いたが、テルグのメジャー映画は今でもバリバリのスター主義を軸に廻っている。そういう中では、監督は独自の作家性とか一貫したテーマとかによって認められるというよりは、いかにスターの個性を引き出し、潤沢な予算を最大限に活かして、圧倒感のある作品を送り出せるかというところで勝負しているように思える。そういう観点から、筆者はグナシェーカルSSラージャマウリと並んでこのプーリ・ジャガンナート(@purijagan)を3トップと考えている。やはりこの人の真価は、アウェーで作ったお遊び映画 Bbuddah...Hoga Terra Baap (Hindi - 2011) ではなく、マヘーシュと組んで空前の大ヒットを記録した Pokiri (Telugu - 2006) によって測られるべきだろう。

ヒロインのカージャル・アガルワールは、ムンバイの出身。2004年にヒンディー映画でデビューした後、バーラティラージャー監督によってサウスに導かれ、タミル・テルグで着実に出演作を増やしていたが、Magadheera (Telugu - 2009) Dir. S S Rajamouli の記録破りの大ヒットによって明らかに「ステージが上が」り、その後 Singham (Hindi - 2011) Dir. Rohit Shetty ではヒロインとしてボリウッドに錦を飾ることになった。そのあたりの自信と余裕が CCLカレンダー(こういうサービス満点なモノが印度でも作られるようになったんだねえ)の2012年1月のセクシーなポーズにも現れているように思える。

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上映まで2週間となっても詳細不明という悠揚さには、一観客であるこちらの方が胃が痛い気分だが、本日主催者から来た連絡メールには、

Businessman new movie (with english subtitles) is a high voltage power packed action entertainer

と力強く書かれていた。乞うご期待。

投稿者 Periplo : 22:46 : カテゴリー バブルねたtelugu
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