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2012年06月25日

Project 2011: その2

本当は個々に独立したレビューを上げたいんだけど、というくらいの秀作が集まった。全部で10本、志の高いものばかりだと思う。

SaltnPepper.jpg
Salt N' Pepper でのシュウェちゃんの役どころはマラヤーラム映画の吹替え声優。いつも吹替えのお世話になってるシュウェちゃんはどんな気持ちでこれを演じたんだろうか。

星4つ


cvGadhama.jpgGaddama

Director:Kamal
Cast:Kavya Madhavan, Sreenivasan, Suraj Venjaramoodu, Biju Menon, V G Muralikrishnan, Jaffer Idukki, Lena, Sukumari, KPAC Lalitha, Sasi Kalinga, Shine Tom, Manu Jose, Ali Khamees, Mariam Sulthan, Khaamiz S Mohammed, Hala Al Sayed, Ahmed Saleh, Adnan Althuki, Tehani Al Mohammed, Abi Gael

原題:ഗദ്ദാമ
タイトルの意味:Housemaid(原題はアラビア語)
タイトルのゆれ:Khaddama, Gadhama

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間56分

ジャンル:スリラー
キーワード:ニューウェーブ、湾岸出稼ぎ、サウジアラビア、住み込みメイド、虐待

当網站の関連ポスト:2011.10.08(レビュー)
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/gadhama-malayalam-2011

【寸評】
これについても感想は以前のレビューに書いた。仮の試みとしてはこれもニューウェーブの括りの中に入れてみたけどどんなもんだろうか。ベテランのカマル監督は以前から、女性が主役のストーリーとか様々な試みをしてきた人なので。センチメントも組み込んだキリッとしたスリラーで短尺という点で2011年のトレンドとも合っていると思うのだけれど。


cvAdaminte.jpgAdaminte Makan Abu

Director:Salim Ahamed
Cast:Salim Kumar, Zarina Wahab, Mukesh, Nedumudi Venu, Kalabhavan Mani, Suraj Venjarammoodu, Sasi Kalinga, Thampi Antony, Jaffer Idukki, Ambika Mohan, Gopakumar

原題:ആദാമിന്റെ മകൻ അബു
タイトルの意味:Abu, Son of Adam
タイトルのゆれ:Adamante Makan Abu

DVDの版元:Saina
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間45分

ジャンル:アート
キーワード:ハッジ、湾岸出稼ぎ、行商人、アッタール、バクリード、ハラール・マネー、ジャックフルーツの木、コーリコード、デビュー監督

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/adaminte-makan-abu-malayalam-2011

【寸評】
2010年度の国家映画賞(作品賞、主演男優賞ほか全4部門)を受賞するまで誰もこの作品のことを知りもしなかったという、驚きのダークホース。その勢いをかって米アカデミー賞の外国映画部門にも出品されたが、米学会の審査員・マスコミにはほとんど理解されることがなかったようだ。底辺で慎ましく生きるムスリムの老夫婦が人生の究極の目的としてのハッジにのぞもうとして直面する出来事をゆっくりとしたテンポで描きながら、イスラームの信仰の本質を浮かび上がらせる。言うなれば説教映画なのだが、極東のふざけたガイジンの心にも響く(なぜアメリカ人にはアピールできなかったのだろう?)。主演のサリム・クマールはもとより、スラージ・ヴェニャーラムード、カラーバワン・マニといった普段お笑いに従事することが多い面々の渋い芝居に痺れる。これがデビューとなった監督・プロデューサーのサリム・アフメドはカンヌール出身、旅行代理店に勤めながらも映像作家への憧れが絶ちがたく、テレビ業界に転職したという。本作はアートの定式に則った造りであったが、この先より商業的で大掛かりな作品に挑む野心ものぞかせている。


cvArjunanSaksih.jpgArjunan Saakshi

Director:Ranjith Shankar
Cast:Prithviraj, Ann Augustine, Mukesh, Nedumudi Venu, Vijayaraghavan, Jagathy Sreekumar, Ambika Mohan, Ramu, Suraj Venjaramoodu, Biju Menon, Suresh Krishna, Anand, Salim Kumar

原題:അർജുനൻ സാക്ഷി
タイトルの意味:Arjunan, the witness
タイトルのゆれ:Arjunan Sakshi

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間56分

ジャンル:スリラー
キーワード:ニューウェーブ(前半だけ)、行政長官暗殺、「コーチンをインド第五の都市に」、土地不法占拠、巨大モール、メトロレイル計画

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/arjunan-saakshi-malayalam-2011

【寸評】
コーチンの秩序ある発展を目指した有能な行政長官(Mukesh)の暗殺事件。1年が経っても犯人解明の手がかりは見つからず、迷宮入りとなろうとしていた。ある日、新聞記者(Ann Augustine)の元に、その事件の目撃者だという男からの連絡が入る。アルジュナンと名乗るその男は、とあるホテルのレストランで彼女と接触することを申し出る。しかし、約束の時間に現れ指定された席に座ったのは、純然たる偶然でそこにやってきた建築技師(Prithviraj)だった。彼はその席に座ったことによって、目撃者の存在を察知した犯人と思われる勢力から攻撃を受けるようになる、というような出だし。 Passenger (Malayalam - 2009) のランジット・シャンカル監督の第二作目。つまりかなりの期待が寄せられたものだったのだが、思い切り空振り、どちらかというとクズ映画に分類されるような結果となってしまった。前半は小気味よいテンポで意外性の連続、期待させておきながら、後半に入って馬鹿過ぎる悪役・難解な動機・もっさりしたダルい進行によって台無しになってしまった。大体、開発を主導する行政長官と、ここでの犯人が代表する勢力というのがなぜ対立しなければならないのかが全然分からない。この不自然さからは、逆に現実に込み入った裏事情が存在することを窺わせるが、それが劇的なストーリーとして結実しなかったのが残念。にもかかわらずここで星4つとしたのは、目撃者アルジュナンにことよせて語られるメッセージが美しいと思ったから。


cvCityOfGod.jpgCity of God

Director:Lijo Jose Pellissery
Cast:Indrajith, Prithviraj, Rima Kallingal, Parvathi Menon, Rohini, Swetha Menon, Jagadheesh, Anil Murali, Rajeev Govinda Pillai, Kalabhavan Sunny, Valsala Menon, Arun Narayan, Rajesh Hebbar, Sreehari, Kishore Sathya, Sudheer Karamana

原題:സിറ്റി ഓഫ് ഗോഡ്

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間26分

ジャンル:スリラー
キーワード:ニューウェーブ、コーチン、ナーガルコーイル、タミル人出稼ぎ、低所得者コロニー、コーテーション殺人、復讐、若いツバメ

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/city-of-god-malayalam-2011

【寸評】
いわゆるハイパーリンク・シネマの各種の技法を駆使して作られたお洒落クライム・スリラー。長回し手持ちカメラで撮影するアクション・シーンなど斬新でドライな語りが心地よいが、テーマとなるのは金持ちの退廃と貧乏人の健全の対比という伝統的なもの。都市そのものの多様性や重層性の描写という点では弱い。リジョー・ジョース監督のトレードマークと言ってもいいかもしれない、凝りに凝った映像処理は一時的にはもてはやされてもやがて飽きられて行くんじゃないかという印象を持った。ナガルコーイルからコーチンに出てきた日雇い労働者が口にする「コーチンはオイラにとってのドゥバイよ」という台詞は衝撃力があった。ヒロインが3人とも既婚者または未亡人であるという点、一群のタミル人の登場人物を(ローヒニ以外)すべてケララ人俳優でまかなったという点は凄い。見どころは久しぶりにマ映画に戻ってきたパールヴァティちゃん。Poo (Tamil - 2008) Dir. Sasi そのまんまの役作りだけど相変わらず可愛い。往年の名優カラマナ・ジャナルダナン・ナーイルの息子スディールがマイナーな役で出てきてくれたことがとてつもない収穫だった。


cvMelvilasom.jpgMelvilasom

Director:Madhav Rama Dasan
Cast:Suresh Gopi, Parthiban, Thalaivasal Vijay, Ashokan, Nizhalgal Ravi, Krishna Kumar, Sanjay

原題:മേൽവിലാസം
タイトルの意味:The Address
タイトルのゆれ:Melvilasam

DVDの版元:MoserBaer
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間38分

ジャンル:法廷スリラー
キーワード:軍事法廷、上官への反逆、軍隊内いじめ、舞台劇翻案、ジャワーンサワール

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/melvilasom-malayalam-2011

【寸評】
スレーシュ・ゴーピの主演作(アートであれアクションであれ)が批評家から高評価を得るなんて天変地異の前触れじゃないかと心配したのだが、実際に観てみるとスレーシュさんは客寄せのパンダで、本当の主役はパールティバンとタライヴァサル・ヴィジャイという2人のタミル人俳優であることがわかり(2人が自分でダビングしたのかどうかは不明)別の意味で驚いたのだった。オリジナルはヒンディー語の舞台劇でそれがケララでもマラヤーラム語に翻訳されて舞台上演されていたものだという。台詞がマラヤーラム語であること以外のローカライズは行われておらず、登場人物が皆北インド風の名前を持つなど、リアリズムからは乖離しているがそれはあまり気にならない。回想シーンを除き物語は全て法廷内で進行し、ソングはない。最後の方で顔を見せる童女以外、女性の登場人物もいない、禁欲的な100分。いかに成功したものとはいえ、舞台劇を映画化することに意味があるのだろうかと最初は思うのだが、映画ならではのアップを多用した画面に繰り広げられる制服オッさん達の芝居に釘付けになる。つぶらな瞳の性格俳優パールティバンがなぜ主役として登用されたのか、後半のドンデン返しで一気にわかる、アッと驚くよ。


cvSaltnPepper.jpgSalt N' Pepper

Director:Aashiq Abu
Cast:Lal, Swetha Menon, Asif Ali, Mythili, Baburaj, Vijayaraghavan, Kalpana, Ambika Mohan, Majeed, Archana Kavi, Ahmed, Kelu Mooppan, Dileesh Pothen, Nandu

原題:സാള്‍ട്ട് & പെപ്പെര്‍
タイトルのゆれ:Salt & Pepper

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間59分

ジャンル:ラブコメ
キーワード:ニューウェーブ、Thattil Kutti Dosa、吹替え声優、未婚中年、見合い、トリヴァンドラム

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/09/salt-n-pepper-malayalam-2011.html
YouTube上の有料全編視聴:http://youtu.be/u842eompQbU(ただし字幕なし)

【寸評】
さてさて、今回紹介の中では一番の問題作。といっても内容が衝撃的なのではない。倭人の目にはどこをとっても平凡なラブコメにしか見えない本作が、ケララで異様なくらいの反響を引き起こした不可解が衝撃的なのだ。現地の観衆にとっては、中年男女の恋愛、酒を飲むヒロイン、食という最も日常的なモチーフを物語の中心に持ってきたこと、遮蔽物のないキスシーンetc.といったものがともかく目新しく映ったようで、Salt n’ Pepper is a Cultural Milestone とまで持ち上げている批評に度肝を抜かれた。逆に本作中に見当たらないものを数え上げてみると、カーストの桎梏、貧富の差、お館様、借金を残して死んだ父、湾岸出稼ぎ、カタカリ、腐敗した政治家、汚職警官、嫁の行き先が決まってない妹、水郷の風景、グーンダ、市場の乱闘なんていう伝統的なマ映画の部品が網羅される感じだ。いや、例えばハリウッドで一定の間隔ごとに工業製品のように製造されているナイスミドル(←死語)向けお気楽ラブコメとどこが違うのか。舞台がケララであるという点以外さして違いはないと思う。ケララの衆にとっては「これが我々自身によって作り出された」というのが重要であるということなのかな。首にカメラぶら下げたガイジンとしてこれにどう向き合うべきなのか。以前に欧米の何かで見たような話、しかも前にどっかで見たものの方が出来が良かったりする。近年のボリウッドの都会派作品を見ていて時に感じていた落ち着かないもどかしさに、ついにケララでも直面することになってしまった。内容にも不満はある。まずラブコメとして膨らませ方が足りない点。普通に考えればここでインターミッションだな、というところで映画が終わってしまって満腹できない。それから、Thattil Kutti Dosa というナイスなアイテム(くくっ、ここに目に毒動画もあり)を介して知り合ったカップルが、その後何を勘違いしたのか、第一次世界大戦中にフランス女が作ったケーキの話で延々盛り上がるのだが、劇中で再現される(明らかにインド人パティシエの手になる)このケーキが 半端なくゲロ不味に見える!!!! いや実際、ムンバイやデリーのことは良く分からないけど、サウスの生洋菓子ってサイテーだからね。美食談義で蘊蓄を開陳しあう都会の中年カップルが、これのせいで途端に幼稚にみえちゃうんだよお。星4つにしながら、罵詈雑言ばっかし書いてしまったが、冒頭タイトルロールでケララ各地の旨いもんを見せてくれる ♪Chembavu は凄い。オイラ深夜にこれ見て何度号泣しただろう。


cvChappaKurish.jpgChaapa Kurish

Director:Sameer Thahir
Cast:Fahad Fazil, Vineeth Sreenivasan, Ramya Nambeesan, Roma Asrani, Niveda Thomas, Jinu Joseph, Sunil Sukadha, Dinesh Panicker

原題:ചാപ്പാ കുരിശ്
タイトルの意味:Head or Tail ※But I wanted it in the colloquial lingo.” To one's amusement he adds "It's called 'Changum Chappayum' in Kollam, 'Thalayum Valum' in Kottayam, 'Raja Kozhi' in Thrissur and 'Chaappa Kurish' in Cochin. And I belong to Cochin." (Yentha.com 記事 Behind The Camera: Chappayum Kurishum Screenil より)
タイトルのゆれ:Chappa Kurish, Chaappa Kurishu, Chaappakurish

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間11分

ジャンル:スリラー
キーワード:ニューウェーブ、iPhone、コーチン、トイレ、YouTube、貧富の差、エ ロ 動画流出、デビュー監督

当網站の関連ポスト:2012.02.28(レビュー)
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/chaappa-kurish-malayalam-2011

【寸評】
これについても書きたいことは以前のレビューで概ね書いた。デビュー監督のサミール・ターヒルは、本作の後すぐに次作に取り組むということもなく、再びシネマトグラファーに戻って Diamond Necklace (Malayalam - 2012) Dir. Lal Jose などを担当している。こちらの方の仕事ぶりも結構楽しみだ。


cvJanapriyan.jpgJanapriyan

Director:Boban Samuel
Cast:Jayasurya, Bhama, Manoj K Jayan, Lalu Alex, Jagathy Sreekumar, Bheeman Raghu, Sasi Kalinga, Anoop Chandran, Salim Kumar, Devan, Sarayu, Geetha Vijayan

原題:ജനപ്രിയൻ
タイトルの意味:The Popular One

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間01分

ジャンル:コメディ
キーワード:ミステイクン・アイデンティティ、エスカレーターに乗れない奴、映画狂、役所仕事、デビュー監督

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/janapriyan-malayalam-2011

【寸評】
ジャヤスーリヤが「愛され体質」の村の天然イイヒトをやるなんて、ほとんどそれ自体がジョークだと思ったが、これがハマったのだ、信じられないくらいに。上で Salt N' Pepper について書いたのとは逆に、こちらには借金こさえて死んだ親爺、適齢期だけど持参金が用意できない妹、女高男低身分差恋愛、なんていう伝統的な要素が満載。それがどうしてこんなに面白いかというと、拝金主義とか役人の無気力とか度を超した利己主義とか、普通なら辛辣に、あるいは腕力でもって糾弾されることごとを、主人公が頓智力と無意識過剰でもって正して行くのが痛快だからなのだと思う。古くさい人情コメディでも丁寧に作ればヒットにつながるという好例。


cvPranayam.jpgPranayam

Director:Blessy
Cast:Mohanlal, Jayaprada, Anupam Kher, Anoop Menon, Niyas, Aryan, Niveda, Sreenath, Apoorva Bose, Dhanya Mary Varghese, Navya Natarajan

原題:പ്രണയം
タイトルの意味:Love

DVDの版元:Movie Channel
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間18分

ジャンル:ロマンス
キーワード:異教徒間の結婚と子供の宗教、老境の恋、パンチャーリー

公式サイト:http://www.pranayamthemovie.com
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/pranayam-malayalam-2011httpsmailgooglecommail

【寸評】
ラルさんだって新しいことをやってみた。ジャヤプラダー、アヌパム・ケールというボリウッド大スターとの共演。そして実年齢以上の老け役、車椅子の障碍者、そして老年(インドの現実的なライフスパンからいえば立派な老年だと思う)の三角関係恋愛だ。筆者は実見していないのだが、オーストラリア映画『もういちど』の翻案ということだ。ただし、原作は老人の性にも大胆に切り込んだものだというが、インドの場合それは絶対に絶対にタブーなようなのだな。まあそれと、自分の心に忠実であるために長年連れ添った夫を捨てて恋人と暮らす老女というのも無理だ。なのでインド版のストーリーはその代わりにより細緻を凝らした複雑なものになり(まるで『クレーヴの奥方』のように)、事実上別の映画となったようだ。ほとんど心理戦と言っていいようなその三角関係の果てに、しかしハッキリと残酷なまでに恋の勝者を提示したクライマックスは大変よろしかった。回想シーンでジャヤプラダーの少女時代を演じるニヴェーダー・トーマスちゃんも子役を脱して可愛らしくなってきて小父さん嬉しくなっちゃったよ。


cvSnehaveedu.jpgSnehaveedu

Director:Sathyan Antikkad
Cast:Mohanlal, Sheela, Padmapriya, Mallika, Biju Menon, Innocent, KPAC Lalitha, Mamukkoya, Rahul Pillai, Reeja, Chembil Ashokan, Lena, Urmila Unni, Arundathi, Sasi Kalinga, Appukutty

原題:സ്നേഹവീട്
タイトルの意味:House of Love
タイトルのゆれ:Snehavidu

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間20分

ジャンル:人間ドラマ
キーワード:田舎、人情、異教徒間結婚、勘当、映画界下積み、隠し子、マザコン中年

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/snehaveedu-malayalam-2011

【寸評】
こっちのラルさんはノスタルジック路線だ。巨匠サティヤン・アンティッカード節が全開のユートピア的田舎人情譚。それ以上でもそれ以下でもないのだが、サティヤン監督作品の楽しみとして人間味ありすぎの傍役さん達の人生模様というのがあるわけで、本作の場合はKPACラリタ小母さんとレナ演じるその娘、そして宗教の違う婿のビジュ・メーノーンの3人のやり取りが面白かった。ニューウェーブが話題をさらった2011年のマ映画界で、時の止まったオアシスのような空間を作ってくれた本作はありがたかった。これからもこういうものが出てきてほしいよ。

Snehaveedu.jpg
やっぱ田舎はええのう…、ラルさんはええのう…。(Snehaveedu

投稿者 Periplo : 23:57 : カテゴリー バブルねたkerala
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2012年06月24日

Project 2011: その1

2008年2009年2010年に引き続き4回目、ずれたタイミングでお送りするマラヤーラム映画のアニュアル回顧シリーズ。

traffic2011.jpg

それは Passenger (Malayalam - 2009) Dir. Ranjith Shankar あたりから何となく見えてきていたのだった。Cocktail (Malayalam - 2010) Dir. Arun Kumar でおずおずと予言めいたことを書いたりもしたんだけど、まだためらいもあった。それが2011年に一気に来たという感じだ。まるで鹿威しに水が満ちてカッコーンとひっくり返るように。この2011年にマラヤーラム映画の様相がかなり大きく変わってしまったように思えるのだ。

何がどう変わったかを説明しようとして、脱二大巨頭、脚本重視、都会志向、ジャンル映画化、ヤング群像、ミニマリズム、スタイリッシュ志向、脱演芸会臭、スリラー盛行、中産階級的価値観、同時代への批評…etc.色々な言葉が渦を巻いて頭が爆発しそうになったんだけど、簡潔に最低限の定義をすると、「クレバーな映画」への指向がはっきりとしてきた、ということだと思う。

こう書くと何もかもがひっくり返ってしまったかのようだが、冷静に個々の項目を検討すると、以前から言われてきたマ映画の特色とされるものを並べただけのようにも思えて混乱する。本当に一番大きく変わったのは、二大巨頭中心からヤングの団体戦に、田舎呑気から都会の無情に、ってとこかな。

ともかくこの流れはインテリ寄りの観客には大層歓迎されているようで、「80年代マ映画黄金時代の再来」とまでハシャいでいる面々も見受けられる。しかし、これで本当に80年代のように観客が映画館に押し掛けるようになるのだろうか。結論を出すにはもう少し観察を続ける必要がありそうだ。

ガイジンの感傷としては、この変化は必ずしも諸手を上げて歓迎できるものではない。タミルでもテルグでもヒンディーでもなく、なぜマ映画を観るのかといえば、やはりそれは二大巨頭のアイドルぶり&村のチャイ屋やトディ屋でのドーティ親爺達のにゃあにゃあ政談が楽しいというのが大きかったのだ。ケララの衆にとっては、マラヤーラム語で作られている限りそれは「我らの映画」なのだろうけど、首にカメラぶら下げた観光客にとっては「やっぱカタカリは観たいよ」となるのはしょうがないじゃん。

地方色が薄まった「よくできた映画」というだけならわざわざ苦労してマ映画を観る必要もなくなりそうではあるのだが、それでも筆者はまだまだ付き合って行くつもりだ。やはりここまで深く入れ込んでしまうと、自分の好みとは違う方向に進んでいるようだというぐらいの理由では見限ってしまうことができないのだ。マ映画とケララ社会がどこに行こうとしているのか見届けたい気持ちがある。より積極的な理由としては、マ映画芸達者脇役(&主役)軍団が新しいフェーズにどんな活躍を見せてくれるかが楽しみなのだ。

ということで、もしかしたらこの先引っ込めてしまうことがあるかもしれないが(ここまで書いてもまだ自信がない)、マラヤーラム・ニューウェーブという言い方をこのシリーズでは使ってみようかと思う。

以下に、2011年に公開されたマラヤーラム語(吹替え除く)長編劇映画88本の内の約半数、45本を駆け足で振り返る。今年も例年と同じく秀作・駄作ともに充実していたが、初回は最も2011年的な快作とサイテー映画各一本を取り上げたい。

星5つ

cvTraffic.jpgTraffic

Director:Rajesh Pillai
Cast:Sreenivasan, Kunchacko Boban, Rahman, Vineeth Sreenivasan, Asif Ali, Lena, Sandhya, Roma Asrani, Ramya Nambeesan, Sai Kumar, Shanti Krishna, Vijayakumar, Prem Prakash, Anoop Menon, Namitha Pramod, Anjana Menon, Gauri Krishna, Munshi Venu, Baiju Ezhupunna, Saju Alffingal, Dr. Rony, Santosh Krishna, Sudeep Joshi, Premlal, Manoj, Raj Kumar, Sibi Kuruvilla, Reena Basheer, Fathima Babu, Nisha Sarang

原題:ട്രാഫിക്‌

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間56分

ジャンル:スリラー
キーワード:ニューウェーブ、グランドホテル、コーチン、パーラッカード、国道47号、公道レース

当網站の関連ポスト:2011.09.27(レビュー)
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/traffic-malayalam-2011

【寸評】
言いたいことは以前のレビューで大体書いたが、一つだけ付け加えるとしたら、本作のソングシーン(たとえば ♪Pakalin)が恐ろしくクレバーに作られているという点かな。切り詰めたランタイムの中、このソング一曲を挿入することで、無闇と多い登場人物の職業から家庭環境までを圧縮して効率よく説明して大層経済的。ちょっと嫌になるくらいに。

Traffic201102.jpg
シャヒード・カーダル監督によるタミル・リメイク(このキャスティングは興味深い)、ラジェーシュ・ピッライ監督自身による(らしいが未定)ヒンディー・リメイクが進行中という。


星ゼロ

Krishnaynum.jpgKrishnanum Radhayum

Director:Santosh Pandit
Cast:Santosh Pandit, Souparnika, Rupa Jith, Devika, Ajit, Vijayan, Hanif

原題:കൃഷ്ണനും രാധയും
タイトルの意味:Krishna and Radha

DVDの版元:Movie Channel
DVDの字幕:なし
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間34分

ジャンル:ロマンス&コメディ
キーワード:異教徒間恋愛、ワンマンアーミー、YouTube発ヒット、炎上マーケティング

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/krishnanum-radhayum-malayalam-2011
YouTube 全編動画:http://youtu.be/_UDI2gOVLww

【寸評】
マラヤーラム映画に関心のある日本人でもこれを観た人はまずいないだろうし、実際に観る必要もないと断言してしまおう。ただ本作の監督・主演・作詞・作曲・プレイバック・美術・衣装・アクション・原作・脚本・制作・編集の全てをこなしたサントーシュ・パンディットという男を巡る数々の現象が、実に新時代的だと思えるので紹介しておきたいのだ。

2011 年3月頃にYouTubeにアップされた本作のミュージカル・シーン ♪Rathri Shubharathri が、コンテンツの貧弱さに対して異様なほどのアクセスを集め(これを書いている現時点で100万超え)、またコメント欄が罵倒で埋め尽くされたことが発端である。程なくしてパンディットはネット上のカルト・ヒーローとなり、10月に本編が封切られて最初の数日はほぼフルハウスとなった劇場もあったという。ネット上と同じく劇場でも観客のほとんどはスクリーンに向かって罵詈雑言と嘲笑いを浴びせるのがもっぱらだった。斜に構えた批評家の中には、メインストリームのマラヤーラム映画への毒のある批判として、超低予算のこのアマチュア作品を二大巨頭出演作よりも優れたものと持ち上げる者も現れた。現地の主要なマスコミはほとんど全てがインタビューやパネルディスカッションにパンディットを登場させた。その作品の質と興行成績のアンバランスへの批判に対して、彼は「自分の映画を見たいと思った人だけが劇場に足を運んでくれればいいのだ、自分は誰にも強要はしない」と見事に切り返している。YouTube芸人としてのパンディットの特徴は、タミルのウィルブル・サルグナラージなどとは違い、笑いを取ろうとしてないという点。

詳しくはシヴァラーム・シュリーカンダートによる ManoramaOnline の記事 The Curious Case of Santosh Pandit が要領よくまとめてくれているので、そちらをご参照いただきたいが、なんというか、ケララへの本格的な大衆消費社会の到来を物語るような、極めて象徴的な現象に思えて仕方がないのだ。伝統的な口コミと並んでネットの情報が興行に影響を与えるようになったということ。鍛え抜かれた玄人の芸を味わうためではなく、神のごとき名優を仰ぎ見るためでもなく、イタい素人を嘲るために金を払って劇場まで赴く観客が多出したという点。多くの観客が心の奥底で抱いてはいても普通は実行にうつすまでにはいたらない映画出演の願望を図々しく自分で叶えてしまう奴が出てきて、その代わりにフラストレーションの捌け口として一般人はそいつには何を言ってもいいという構図。これを新時代と言わずして何と言う?

KrishnanumRadhayum.jpg
もちろん、成功したマラヤーラム映画の常として、タミルとヒンディーの吹替え版も製作されたという。さらに英語吹替え版も作られるらしい。

投稿者 Periplo : 16:21 : カテゴリー バブルねたkerala
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2012年06月14日

資料系アップデート1206

iruvardirector.jpg
Iruvar (Tamil - 1997) Dir. Mani Ratnam に出てくるダイレクタル・サーブはこの人がモデルなのかもしれない。まあ劇中の人は流暢にタミル語を喋ってはいたけど。

アップデートではあるけれど新刊ではない。最近やっとこの本の存在に気づいたってだけだ。ってか、もうプレミア付きの古書としてしか入手できないんだけど、検索してみたところ日本語でこれについて書いてる人はいないみたいだし、とりあえず紹介しとく。


guidetoadv.jpgA Guide to Adventure - An Autobiography

著者:Ellis R. Dungan, with Barbara Smik
版元:Dorrance
発行:2001年(初版)
入手先:米アマゾンなど

エリスRダンガン(タミルではドゥンガンと呼ばれた、またDuncanと誤記されることも多い)は1909年にアメリカ・オハイオ州でアイルランド系の両親の間に生まれた。働きながらヨーロッパを周遊するなどして気ままな青春時代を送り、1932年に南カリフォルニア大学の新設されたばかりの映画学科に入学し、映像作家としての基礎を学んだ。インターンとしてハリウッドの撮影現場に出入りする中で親しくなったインド人同級生マニック・ラール・タンダンの誘いに応じて1935年にボンベイに渡ったが、結局マドラスのタミル映画界に落ち着き、1950年に帰米するまでの15年の間にトップ監督としての地位を築いた。太平洋戦争中、映画撮影の物資が欠乏していた時代には、報道カメラマンとしても活躍し、ガンジーやネルーなど独立闘争をになった巨星達のポートレイトも撮影している。アメリカに帰国して後は、主としてドキュメンタリーを手がけ、成功を収めた。本書が刊行された2001年に92歳でその生涯を閉じた。

タミル時代に世に送り出した長編劇映画で監督としてクレジットされているものは12本、初監督の Sati Leelabathi (Tamil - 1936) は、MGRが端役でデビューした作品でもある。事情により途中で監督を放棄せざるをえなかった(プロデューサーの努力により完成した)最終作品 Manthiri Kumari (Tamil - 1950) でMGRはスターとして大きく飛躍したとも言われている。

タミル映画界におけるダンガンは、変わり種というのではなく、堂々たるヒットメーカーであり、先進的なハリウッドの技術を持ち込み、また自らが編み出した様々な工夫を根付かせた革新の人でもあった。

交友関係も非常に広かったらしい。本書中の記載によって1950-60年代を中心に活躍した名カメラマン、マーカス・バートリーがアングロ・インディアンであったことなども知った。ダンガンが最も活き活きと回想しているのは、MSスッブラクシュミとその夫Kサダーシヴァムとの付き合いである。ダンガンはMSの主演で Shakuntalai (Tamil - 1940) と Meera (Tamil - 1945) の2本を生み出し、後者はヒンディー吹替え版も作られて全インド的なヒットとなった。1947年に封切られた Meera のヒンディー語吹替え版は、MSの最後の出演映画となった。

本書は全部で22章に分かれているが、最初の12章が生い立ちからインド時代に当てられている。基本的には共著者のバーバラ・スミクによるダンガンへのインタビューから書き起こされた本書なのだが、インド時代の5章分だけは、タミル映画史家のランドール・ガイ(こんな名前だがれっきとしたタミル人の爺ちゃんである、こちら参照)の要請に応じて1990年にダンガンが書いた文章から構成されている。またランドール・ガイは、2002年の The Hindu 記事によれば、ダンガンの評伝を執筆中ともあるが、結局これはどうなったのかね。

本書のタイトルが最も端的に表していると思うが、ダンガンは理論家ではなく現場の人であり、冒険家であった。したがって本書中の記述も時に勘違いなどがあり、また映画製作にまつわる話とそれを離れた個人的なエピソードが入り交じっており、整然としたタミル映画史を期待するのは無理というものだ。なのでなおさら上に書いたランドール・ガイによる評伝の刊行が待たれる。一方で本書には、個人の回想録ならではの面白過ぎるエピソードが満載で、一気読みしてしまうのが勿体ないくらいのものだった。そのいちいちをここで書いてしまうのはアンフェアだと思うので、代わりに本書に一切書かれていなかったことを紹介したい。

それは、ダンガンがインド映画に対して「歌と踊りが突然に挿入される奇妙なスタイル」のような評価を一切していないことだ。もちろんそれはオリジナルがタミル映画史家の求めに応じて書かれた文章であるからかもしれない。にしても、一般のアメリカ人読者向けにまとめられた本書でそういう記述がないことはやはり驚きだ。実際ダンガンの代表作といえる Meera は、2時間弱(DVDで)のランタイム中に20曲が挿入されるれっきとしたミュージカル。冒険野郎映画作家は柔軟で適応力に富んだ人物だったのだろう。そして世界の映画自体も若々しいものだったんだろうね。

投稿者 Periplo : 13:00 : カテゴリー バブルねたtamil
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