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2012年07月28日

Project 2011: その3

長いブランクが空いてしまったけど、シリーズはまだ続くのだ。星三つともなるともうほとんど悪口ばっか書き倒してる感じだけど、実際には各種の賞を取った作品なども目白押し。そういうのを相手に難癖ばかりつけるのは、自分がいかにリテラシーが低くて度量の狭い人間かを宣伝してるようなもんだなあ、と思いつつもやめられない。逆に筆者以外の人にとってははまだまだお宝が詰まってるセレクションと言えるかもしれない。

vellari.jpg
Vellaripravinte Changathi のイメージスチルから。

2011年はニューウェーブ以外にもここ数年来の目立った傾向が幾つか認められた。ひとつは、古い時代の有名作のリメイク、それから人気作のキャラを流用した続編の数の増加。前者では RathinirvedamKayam なんていうあたり、後者ではAugusut 15 なんてところ。さらに今年顕著だったのは1970〜80年代など近過去のノスタルジックな再現を売り物にした作品群。NayikaVenicile VyaapariVellaripravinte Changathi などなど。こっちも老いぼれだからこういう懐古趣味は嬉しいのだけれど、その再現された過去が、ビジュアル面だけの面白さにとどまり、上手く仕掛けとして機能している作品が見当たらなかったのが残念。

それから作品を離れると、他州(の州都クラス)からはかなり遅れて(掲示板にこんなスレがあるくらいだ)、やっとケララにもマルチプレックスの波が迫りつつあるようだ。ケララ初のMPがコーチン郊外に出来たのが2010年、しかしこれはやや不便な場所にあり、自家用車を持たない人間には気軽に行きにくい(それを狙っているのだろうか)ものだった。その後の歩みは遅々たるもので、観客の流れを大きく変えるまでには至っていない。なおかつMPが後押しするのはマラヤーラム以外の映画である可能性もある。しかしMP化はやっぱりマ映画の質的な変化にも影響を与えて行くことになるだろう。2011年限定ではなく、もうちょっと長いスパンでこの流れを見守りたい。

また目覚ましかったのが映画作品パブリシティにおける恐ろしいほどのビジュアルの洗練化。これは主としてネット上のパブリシティが舞台となっているのだが、たとえば Oldmonks などというデザイン事務所が脚光を浴びたり、他のポスターデザイナーについても映画ニュースの中で名前を目にする機会が増えた。サウスの映画パブリシティ・アートのいい味ワールドを愛するものとしてはちょっと寂しい。っていうか、パブだけこんなに先鋭化して本編を置き去りにしちゃあいねえかい?といいたくなるようなものもままあるのだ。ネットを離れて街頭ではどういうシーンが展開してるのか気になって、ついこないだ確認のためにコーチンまで行っちゃったんだけど、昔ながらのものも残ってはいるものの、やっぱり何となくニューウェーブな感じのものが目立ってきているのだった。

無駄話はこれくらいにしとこう。色々とバラエティに富んだ19本。

星3つ

cvMakeUpMan.jpgMakeup Man

Director:Shafi
Cast:Jayaram, Sheela, Kunchacko Boban, Prithviraj, Siddique, Suraj Venjaramoodu, Janardhanan, Jagadeesh, Salim Kumar, Jagathy Sreekumar, Shammi Thilakan, Kamna Jethmalani, Babu Namboothiri, Saiju Kurup, Appahaja, Devan, Krishna Kumar, Pala Charlie, Baiju, Kalpana, T P Madhavan

原題:മേക്കപ്പ്മാന്‍
タイトルのゆれ:Make Up Man

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間27分

ジャンル:コメディ
キーワード:映画界内幕、スキャンダル、TV視聴率、Touch Up

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/makeup-man-malayalam-2011

【寸評】
心ならずも女優となったヒロインが、意外にも順調にスターダムの道を突き進み、一方でその夫はスポットライトの外に取り残されて、やがて夫婦間に亀裂が生じる、というストーリーライン。クンチャーコー・ボーバンとプリトヴィラージが自分自身の役で登場するのだが、クンチャーコーお坊ちゃまの扱いが不当に軽く、見ていてプンプン怒ってしまった。映画界にTV界が絡んでくるところが今日的ではあるが、それ以外は古くさいスタ誕もので退屈。


cvRace.jpgRace

Director:Kukku Surendran (Subil Surendran)
Cast:Kunchacko Boban, Indrajith, Mamta Mohandas, Baby Anikha, Gowri Munjal, Jagathy Sreekumar, Geetha Vijayan, Sreejith Ravi

原題:റേസ്

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間03分

ジャンル:スリラー
キーワード:ニューウェーブ、コーチン、バンガロール、ソングなし

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/race-malayalam-2011

【寸評】
異色の民俗映画とでもいうべき Veeralipattu (Malayalam - 2007) で大層注目した新進監督クック・スレンドランが長いブランクの後に送り出した作品として個人的には期待が高かったのだが、空振り。現地での評判・興行成績も芳しくなかったらしい。いや、スリラーとしては手堅くまとまっているのだ。ただ、これまで以上にオリジナリティが問題となってくるニューウェーブ(しかもスリラー)の中にあっては、前年公開作 Cocktail Dir. (Malayalam - 2010) Dir. Arun Kumar とあまりにも似すぎているのは致命傷だと思う(おそらくは共通のネタもとからプロットを頂いてきたのだろうが)。そうではあっても、作中クンチャーコー・ボーバンが半泣きでコーチンの街頭を駆け回るシーンを眺めるのに一種の快感があったことは確かだ。


cvChristian.jpgChristian Brothers

Director:Joshiy
Cast:Mohanlal, Suresh Gopi, Sarath Kumar, Dileep, Lakshmi Rai, Kaniha, Lakshmi Gopalaswamy, Kavya Madhavan, Sai Kumar, Jagathy Sreekumar, Biju Menon, Vijaya Raghavan, Suresh Krishna, Devan, Salim Kumar, Harisree Ashokan, Suraj Venjaramood, Subair, Kaviyoor Ponnamma, Anand, Kunchan, Shobha Mohan, Kollam Tulasi, Ramu, Anoop Chandran, Majeed, Jagannatha Varma, Guruvayur Sivaj, P Sreekumar, Pala Charlie, Kiran Raj, Babu Antony

原題: ക്രിസ്ത്യന് ബ്രദേഴ്സ്

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約3時間00分

ジャンル:アクション
キーワード:大家族、ロンドン、ムンナール、クリスチャン、聖職者の還俗

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/christian-brothers-malayalam-2011

【寸評】
Twenty:20 (Malayalam - 2008) ですっかり味をしめたとしか思えないジョーシ監督がまたしても送り出した「こてこてマルチスター画面ぎゅうぎゅう映画」、当然のことながら大ヒットした。上映時間もきっかり3時間、なんやこちゃこちゃしとるニューウェーブなんぼのもんじゃい!な一作。モーハンラール、スレーシュ・ゴーピ、サラト・クマール、ディリープにそれぞれ充分に見せ場が用意されていて、対する悪役、そして脇役も充実(ヒロイン達にはちょっと不満あり)。クリスチャンもののお約束である大家族内の揉め事がメインプロットだが、ストーリー自体は退屈。スターさん達が対峙する際の大見得と殺気の応酬でハイボルテージなものに仕上がっているという感じだ。気力・体力が充実した状態で鑑賞に臨まれることをお勧めしたい。蛇足ながら本作にはジョジ(Joji)とジョージ(George)という名前を持つ人物が登場するのでえらく混乱する。ケララ・クリスチャンの名前の神秘にまたしても悶絶。


cvAugust15.jpgAugust 15

Director:Shaji Kailas
Cast:Mammootty, Nedumudi Venu, Siddique, Jagathy Sreekumar, Meghana Raj, Sai Kumar, Swetha Menon, Lalu Alex , Balachandran Chullikkad, Thalaivasal Vijay, Biju Pappan, Madhu, Deepesh, Aditya, Majeed, Ambika Mohan, Pala Charlie, Johnny, Kiran Raj, Harishree Asokan, Narayanan Nair, Zeenath, Poojapura Ravi

原題:ഓഗസ്റ്റ് 15

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間23分

ジャンル:スリラー
キーワード:別監督による続編、トリヴァンドラム、サイバーセル、ラール・アレックスの腕毛、プラサーダム

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/august-15-malayalam-2011

【寸評】
サウスでもマ映画界だけでなぜか盛んな珍現象として、コンビの活躍(監督、脚本家、作曲家など)とならび、昔のヒット作のキャラを流用した続編の盛行というのがある。しかも続編のスタッフはオリジナルのものとは別人というケースが多いのだ。あまりに多いんで列記はしないが、たとえば今年公開の The King and The Commissioner (Malayalam - 2012) Dir. Shaji Kailas なんて、マンムーティ主演の The King (Malayalam - 1995) とスレーシュ・ゴーピ主演の Commissioner (Malayalam - 1994) 、どちらも本作と同じシャージ・カイラース監督のものだが全く無関係な2作を無理矢理ドッキングさせた続編だったりする。そして二匹目の泥鰌をねらったこういう試みは大抵惨めな失敗に終わるのだが、それでも後を絶つことがない、不思議なもんだ。

話を戻すと、本作は要人警護の対テロ特別捜査官を主人公とした August 1? (Malayalam - 1988) Dir. Sibi Malayil の続編。正編は今ではカルトクラシックとされているというけど、実際に観てみての感想は「あまりにも捻りがなさ過ぎて気が抜ける」というものだった。続編である本作の感想はというと…まるでマラソンの伴走白バイみたいなマ様の格調高い単車乗りこなしと、ラール・アレックスの腕毛が凄い、という以外は何もないのだった。


cvUrumi.jpgUrumi

Director:Santosh Sivan
Cast:Prithviraj, Prabhu Deva, Arya, Genelia D'Souza, Nithya Menon, Vidya Balan, Tapu, Jagathy Sreekumar, Alexx ONell, Robin Pratt, Amole Gupte, Ankur Khanna

原題:ഉറുമി
タイトルの意味:Curling blade
タイトルのゆれ:Urumi: The Warriors Who Wanted to Kill Vasco Da Gama, 秘剣ウルミ - バスコ・ダ・ガマに挑んだ男(2011年の第12回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映された際の邦題)

DVDの版元:MoserBaer
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間51分

ジャンル:歴史
キーワード:ポルトガル、香料貿易、反植民地闘争、水のカーテン、騎馬戦

公式サイト:http://www.urumithefilm.com/
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/urumi-malayalam-2011

【寸評】
16世紀のマラバールでヴァスコ・ダ・ガマと対決した架空のケララ人の英雄をロマンチックに描く歴史もの。

7曲あるソングは1曲(だったっけ?)を残して他を全てカット、ポルトガル人がインド人の耳を切り落とすシーンなども細かくトリミング、2011年秋にNHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映されたのは約 50分がマイナスされた国際版(日本版?)だった。そして付随する日本語字幕はどうやら171分のオリジナル版を見ずに作成されたようで、時に意味の通らない箇所があった。おそらく本作は、これまでの例に従い今年秋の同フェスティバルの頃にNHK-BSで放映されるものと思われるが、DVDと放映とどちらがお勧めかというと難しい。ソングのない120分は退屈だし、ソングが入っても171分はかなり辛い。DVDでソングだけを再生するのがお勧めかな。なんか気のないことばっか書いてると自分でも思うけど、どうしても乗り切れない一作だったのだ。

最新のマラヤーラム映画が東京で公開されるというのは本当に珍しいことなので、お客さんの反応をネット上で追いかけてみたのだが、たとえばツイッターでの反応は賛否で8:2ぐらいに見えた(つまり上映は成功だったと言っていいのだろう)。推してる人たちは歴史ロマンに感じるところがあり、エキゾチックなケララ風俗に好感を持ったようだった。駄目だった派は一様に退屈さを言い立てている。その退屈というのが、ラジニ映画みたいじゃないから退屈だったということなのか、もうちょっと深い話なのか。

なぜ乗り切れないのかと考え続けたのだが、ヴィジュアルの洗練に反比例して全体に漂う安易さと子供っぽさがネックなのだと思った。単純すぎる輪廻転生的な人物の相似関係、悪役レスラーみたいなポルトガル人の演出の大雑把さ。あるいは20世紀の組織化された反植民地闘争のロジックを強引に16世紀のケララに当てはめた蜂起の図式的描写。歴史考証面では劇画調の衣装や、何かやたらと布を張り渡したリゾートホテルみたいな嘘くさい大道具。

屋外シーン撮影がほとんどモンスーンの曇天のもとで行われているというのも不可思議だった。そのせいで、全般的に画面が寒々しいものとなっていた。これは要するに霧に煙るケルティック神話ワールドみたいなのを印度でやりたかったってことなのか。あるいは世界の辺境であったケララを際立たせるために寂しい景色に敢えてしたのか。

それと、色々なところで指摘されていたが、スローモーションの多用も興ざめだった。本作でのサントーシュ先生はスローモーションでの跳躍と水のカーテンに取り憑かれてしまったようだ。どちらも粋を凝らした造りだが、延々と見せられるとかえって逆効果。クライマックスの戦闘シーンまでもがほとんどスローモーション尽くしというのはいただけなかった。

歴史映画だからといって重厚で雄渾なものでなければならないという決まりはない。ケララだからといって太陽と椰子の風景でなければならないという決まりはない。どうも本作は敢えて逆を逆をと狙って行ったもののようであるのだが、今ひとつ効果的ではなかったように感じた。
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cvBhaktaJananga.jpgBhakthajanangalude Sradhakku

Director:Priyanandanan
Cast:Kavya Madhavan, Irshad, Vanitha, Kalabhavan Mani, V K Sreeraman, Jagadeesh, Salim Kumar, Indrans, Pala Charlie, Sadiq, Geetha Vijayan, Jaffer Idukki, Augustin, Guruvayur Sivaj, Kalabhavan Sasi

原題:ഭക്തജനങ്ങളുടെ ശ്രദ്ധയ്ക്ക്
タイトルの意味:直訳は to the faith of all devotees といったところだが、実際には大寺院の構内放送などでattention, please のような呼びかけ語として使われることが多いフレーズ
タイトルのゆれ:Bhaktha Janangalude Sradhakku

DVDの版元:MoserBaer
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間03分

ジャンル:アート系サタイア
キーワード:新興宗教、霊能者、アル中

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/bhakthajanangalude-sradhakkumalayalam-2011

【寸評】
あのランジットがストーリー担当、Sufi Paranja Katha (Malayalam - 2010) のプリヤナンダナン監督の次作ということで、これも大層期待していたのだが、中途半端な出来だった。全編に渡って映画ならではの華と躍動感がなく、新聞の風刺漫画を動画化して延々と見せられているような感じなのだ。現代のケララ(あるいはインド)で聖者というものが如何にイージーに捏造され、聖者を祀り上げる教団が如何に利権の巣となって行くかを、分かりやすく見せてくれる学習映画としては良く出来ているのだが。ソングは2曲ある。


cvTheTrain.jpgThe Train

Director:Jayaraj
Cast:Mammootty, Jayasurya, Sheena Chohan, Sabitha Jayaraj, Jagathy Sreekumar, Sai Kumar, Salim Kumar, Anchal Sabharwal, Kota Srinivasa Rao, Valsala Menon, KPAC Lalitha, Zeenath, Augustin

原題:ദി ട്രെയിന്‍

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間53分

ジャンル:反テロリズム
キーワード:ムンバイ、同時多発テロ、売れないミュージシャン、自殺願望、ヒンディー語ソング

当網站の関連ポスト:2012.00.00(レビュー)
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/the-train-malayalam-2011

【寸評】
ムンバイの近郊鉄道を舞台とした同時多発爆破事件(実際の事件をもとに構成された架空の事件)の起きた一日をグランドホテル形式で描く。中心となるのは、以前のテロ事件で妻子を失ったため異様なまでに猜疑心・警戒心が強くなった対テロ捜査官(Mammootty)と、ケララからボンベイに出てきてチャンスをつかもうともがくミュージシャン(Jayasurya)、この2人を中心としたお互いに関係のないエピソードの流れ。しかしヒンディー映画界から世に送り出された「ムンバイ・テロ映画」の秀作群には遠く及ばなかった。まず、ミュージシャンのジャヤスーリヤのパートが単調過ぎで、なおかつ短いランタイム中にソングが時間を食い過ぎていた。それからナラティブが凝ってる割に犯人特定&追跡の部分が雑でご都合主義的だった点もマイナス。どうも水増し感が感じられる作品なのだ。もちろん過去のムンバイ・テロ事件ではマラヤーリーが犠牲になったケースもあるのかもしれないが、いや勿論そうではなかったとしてもムンバイで起きた事件だからといってマラヤーリーが無関心であっていいわけがないのだが、それでもどうしてこれをマラヤーラム映画として作りたかったのかなあ、そんな疑問が頭の中をグルグル。


cvBombayM12.jpgBombay March 12

Director:Babu Janardhan
Cast:Mammootty, Unni Mukundan, Roma Asrani, Irshad, Rajeev Govinda Pilla, Shari, Sadiq, Lal, R Jayan, V K Sreeraman, Anil Murali, Sudheer Karamana, Baby Diya, Akhil Dev

原題:ബോംബെ മാര്ച്ച് 12

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:途中ストップする箇所あり
DVDのランタイム:約2時間06分

ジャンル:ミステリー
キーワード:アレッピー、1993年ボンベイ爆弾テロ事件、1998年コインバトール爆弾テロ事件、アーンドラ・プラデーシュ、脚本家の監督デビュー

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/bombay-march-12

【寸評】
ジャケット写真だけを見た段階では、1993年3月12日に起きたムンバイのテロ事件(92-93年にかけてのボンベイ大暴動に続いた悲劇だった)を背景に、マンムーティが狂信的なヒンドゥー原理主義者と穏健ムスリムの二役をやる、社会派の看板を掲げたアイドル映画なのじゃないかと思っていたけど、実見したら全然違ってた。テロに彩られたインド現代史のなかで翻弄され、自らのアイデンティティを変えることを選んだ男の物語。いわゆるハイパーリンク方式のナラティブが採用されている(監督のジャナルダンはこのシリーズのパート2で紹介した City of God の脚本家でもある)のだがニューウェーブな印象は全くない。「そら無茶無茶やで!」というどんでん返しストーリーながら、マンムーティの力で最後まで惹き付けて離さないものとなっている。なお、本作でマラヤーラム・デビューしたモデル上がりのウンニ・ムクンダンは、今年になって一気に出演作の本数を増やしており、若手ヒーロー群の一角に食い込んでいる。


cvIndianRupee.jpgIndian Rupee

Director:Ranjith
Cast:Prithviraj, Thilakan, Rima Kallingal, Lalu Alex, Revathy, Babu Namboothiri, Mallika, Suresh Krishna, Shammi Thilakan, Kalpana, Majeed, Jagathy Sreekumar, T P Madhavan, Mamukoya, Zeenath, Sasi Kalinga, Tiny Tom, Sadiq, Guruvayur Sivaj, Irshad, Augustin, Sasi Eranjikkal, Asif Ali, Fahad Fazil

原題:ഇന്ത്യന്‍ റുപീ

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間32分

ジャンル:サタイア
キーワード:ニューウェーブ、不動産業、土地バブル、アルジュナを導くクリシュナ、コーリコード

オフィシャルサイト:http://www.indianrupeethefilm.com/
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/indian-rupee-malayalam-2011

【寸評】
2011年度の国家映画賞マラヤーラム映画部門作品賞、ケララ州映画賞作品賞などを受賞した重要作品。発表する作品の一々が大きな期待を持って迎えられるランジットの監督作(Pranchiyettan and The Saint に続くものとなる)で、各種の受賞だけではなく封切り後の巷の評判も総じて高かった。しかし正直なところ、うわあああ〜、困ったー、という一本だ。

コーリコードに住む、無一文だが野心だけは人一倍の若い男(Prithviraj)が、ブームに沸く不動産取引の世界に乗り込み、自己資金ゼロから始まり、やがて倍々ゲームで巨額の取引を転がすようになる。その背後には、まるで放浪者のような風体の蔭に恐ろしいほどの知恵と奸智を持った謎の老人(Thilakan)の導きがあった、というストーリー。まあ、ここまで書けば、その先に何が待ち受けているかは容易に想像出来るだろう。やがて主人公はポーカーゲームの虚しさに気づく訳なのだが、そこにどういうプロットを持ってくるかが鍵となる訳だ。が、前半の急坂を駆け上るような成り上がりのエピソード、どういうカラクリで巨額物件を転がせるようになっていくのかがハッキリと理解できなかった。英語字幕が悪いのかそれともこちらの頭が悪いのか(日本人でも不動産業や金融業の専門家が見たらすんなり理解できるものなのだろうか)。それ以上に、ティラカン演じる極めて重要なキャラクターである老人(ティラカンの芝居もまた激賞された)のドラマ上の存在意義がどうもはっきりとしなかったのだ。分からないので色々とレビューを読んでみた。で、同じような感想を持ったブロガーの批評を見つけてちょっとホッとしたりもしたのだが、まあ少数派である事には違いはない。

2,3年前の湾岸経済失速の道連れになってケララはもう落ちていく一方なのかと勝手に思っていたけれども、実際には空前の不動産・建設ブームに湧いているという。それにともなった不正土地取得だの人心の荒廃だのというのは、ここのところ映画のテーマや背景となってよくお目にかかるようになってきた。本作は現実にあるそういう事々を日々耳にしている現地の人にとってはグサリとくるものがあったのかもしれないが、ドラマとしては非常に凡庸で盛り上がりに欠けるものに思えた。しかしその盛り上りに欠けるドキュメンタリー風のナラティブ自体が評価されて各種の受賞をもたらしただろうことが想像され、マ映画も難しい時代に入ったものだと痛感されたのだ。


cvMakaramanju.jpgMakaramanju

Director:Lenin Rajendran
Cast:Santosh Sivan, Karthika Nair, Nithya Menon, Jagathy Sreekumar, Laxmi Sharma, Mallika Kapoor, Shamna Kasim, Chitra Iyer, Saiju Kurup, Dinesh Panicker

原題:മകരമഞ്ഞ്
タイトルの意味:マカラはヒンドゥー教神話の架空の動物、manjuというサンスクリット語には様々な意味があるようだが、この場合は「雨雲」か。
タイトルのゆれ:The Mist of Capricorn(英題)、Makara Manju

DVDの版元:MoserBaer
DVDの字幕:なし
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間05分

ジャンル:アート
キーワード:ラージャー・ラヴィ・ヴァルマー、神話、ミューズ、芸術家の苦悩

公式ブログ:http://makaramanjufilm.blogspot.jp/
当網站の関連ポスト:2009.11.062010.05.31(予告的紹介)
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/makara-manju-malayalam-2011

【寸評】
センサー認証は前年に通っていたが、劇場公開に漕ぎ着けるまでには大変だったらしいことが窺えるアート映画。これも期待は大変に高かった。何といっても Mazha (Malayalam- 2000) のレーニン・ラージェンドラン監督作品〔間に Rathri Mazha (Malayalam- 2008) というイマイチだった一本を挟んでいるにせよ〕 、そして、ケララのみならず亜大陸全域の大衆文化に大きな足跡を残したラージャー・ラヴィ・ヴァルマーの評伝(学術的な正確さが期待できるものではないにしても)だ。しかしまず入手したメディアに泣いた。アート系にしては珍しく英語字幕がついていないのだ。そしてDVDの画質が悪い、ところどころVCD並みのくぐもった映像になる(オリジナルのフィルムの状態が悪いということはちょっと考えにくい)。封切りのずっと前から流通していた、クラシックアートしてる美麗スチルの数々を目にして、仮にどんなにヘボいストーリーでもビジュアルでだけは楽しませてくれるに違いないと思っていたのにガッカリだ。そのストーリーだが、字幕がないので確たる論評は出来ないのだが、ラージャー・ラヴィ・ヴァルマー画伯の架空の恋愛事件を、彼が描こうとしていた神話画の大作『プルーラヴァスと天女ウルワシー』(このタブローは現存する)と絡めてロマンチックに描くというもの。ちなみにこの神話はカーリダーサによって戯曲化されたものが有名で、日本語訳『武勲に契られし天女ウルヴァシー』は文庫本で簡単に読める。当時のトラヴァンコールの宮廷における芸術家と社会との関わりも色々と語られており、印象的な、そして台詞の意味が知りたいシーンは幾つもある。また「大根だけどモード系」のカールティカ・ナーイルの面白い顔を眺めているのは本当に面白い。一方で、絶望した芸術家が描きかけのキャンヴァスをナイフで切り裂いたりするような、腰を抜かすような古くさい表現に腰を抜かしたりもした。既に世界各地の映画祭は一巡してしまったようではあるが、今からでも遅くはない、リマスターした美麗プリントと日本語字幕でどこぞの映画祭で掛けてくれることを切に望む。なお、本作で主演デビューしたサントーシュ・シヴァンの台詞はどうやらビジュ・メーノーンによって吹き替えられているようだ。
makara_manju.jpg


cvSevens.jpgSevenes

Director:Joshiy
Cast:Kunchacko Boban, Asif Ali, Rejith Menon, Nivin Pauly, Aju Varghese, Vineeth Kumar,Bhama, Maniyan Pillai Raju, Nadiya Moidu, Ameer, Rima Kallingal, Mamukoya, Shivaji, Dinesh Panickar, Ambika Mohan, Zeenath, Mahadevan, Bindu Panickar, Kunchan, Vijaya Raghavan

原題:സെവന്‍സ്
タイトルの意味:狭義のマラバール地方で盛んな7人制サッカーのことを sevens という。余計なeを加えてSevenes としたのは、たんに綴りを7文字にしてロゴデザイナーの都合に合わせただけなのか、命数占いってやつに従ってのことなのか。
タイトルのゆれ:Sevens

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間29分

ジャンル:青春
キーワード:コーリコード、コーテーション、グーンダ、ベイポール、婦警さん

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/sevenes-malayalam-2011

【寸評】
Christian Brothers のようなコッテコテ大作を送り出す一方で、ジョーシ監督はこんな低予算若者映画も手がけた。サッカーを通じて友情を育んできた若者達が、貧困から来る諸問題に直面し、悪の道への誘惑にさらされる様を描く。スーパーヒーローの登場しない若者群像映画ではあるけど、ニューウェーブではない。それはもう見てもらえれば分かるのだが、風合いが全く異なるのだ。このあたりに「椰子國ニューウェーブ」の定義の難しさがある。古典的な若者成長物語を現代の社会問題のもとで描こうとした意欲作だが、ヒーロー映画としては誰が主役なのかいまひとつはっきりしない、やっぱり群像映画なのだろうけど個々の人物への目配りがが足りない、サッカーのモチーフが途中で消えてしまうこととともに不満点としてそれが残った。特筆すべきは久々にマ映画にカムバックしたナディヤ・モイドゥが演じる婦警さんの格好良さ。この婦警さんの説教がまたイイのだ!この部分のためだけに本作をお勧めしたい。それにつけてもジョーシ監督の気の若さよ。


cvOrmaMathram.jpgOrma Mathram

Director:Madhu Kaithapuram
Cast:Dileep, Priyanka Nair, Master Sidharth, Jagathy Sreekumar, Dhanya Mary Varghese, Nedumudi Venu, Salim Kumar, Harishree Ashokan, Sasi Kalinga, Pala Charlie, Anil Murali, Majeed, Guruvayur Sivaji

原題:ഓര്മ മാത്രം
タイトルの意味:Memories Alone
タイトルのゆれ:Orma Maathram

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間05分

ジャンル:人間ドラマ
キーワード:不治の病、核家族、子供の神隠し、視力喪失、異教徒間結婚、堕胎、フォートコーチン、ムスリム女祈祷師、ユダヤ人骨董商、文学作品の映画化

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/orma-mathram-malayalam-2011

【寸評】
主人公を徹底的に苛めるタイプの人間ドラマ。核家族の逼迫した暮らし。珍しく出かけた行楽地(コーチンからトリシュール動物園に遠足するのだ)で爆弾騒ぎがあり、その混乱の中で一人息子が行方不明になる。我が子の行方を必死に探す父親は、一方で進行が止められない眼病を患っており、視力を完全に失う日をただ待ち受けるしかないetc。陰々滅々たるエピソードのオンパレードで、一般にシリアス映画には好意的な批評家からも「80年代アート映画の焼き直し」などと酷評された。愛嬌もおどけもないディリープのシリアス演技はそれだけ切り離して高評価を受けたが、まあ別に驚きはしない。ともかくエモーショナルに牽引するものが一切ない辛い2時間。上のキーワード欄に挙げたような興味深い部品群への興味によってなんとか最後まで見通すことが出来たという感じだ。


cvBeautiful.jpgBeautiful

Director:V K Prakash
Cast:Jayasurya, Anoop Menon, Meghna Raj, Nandu, Jayan, Tini Tom, Unni Menon, Aparna Nair, Praveena, Thesni Khan, Kochu Preman, Ponnamma Babu, Jayan, Pala Charlie

原題:ബ്യൂട്ടിഫുള്‍

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間48分

ジャンル:人間ドラマ
キーワード:ニューウェーブ、孤独な金持ち、Thoovanathumbikal、筋弛緩症、ヒンディー語ソング

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/beautiful-malayalam-2011

【寸評】
知る人ぞ知る話だが、本作の監督VKプラカーシュは、毎年春に東京でひっそりと開催されるラブストーリー映画祭の常連出品者ともいえる人なのだ。おそらくは主催者との何らかの繋がりがあってのことだと思われるが、その監督作品がほぼ全てデジタル・シネマのフォーマットであることも大きいように思える。現地では、これまでこの人はそういった技術面の文脈でのみ言及され、監督としてはいつまでも二流扱いされ続けていた。筆者も、異色のホラー映画 Moonnamathoral (Malayalam - 2006) 以外はほとんど評価していなかった。それが本作の大成功で突然ランクアップし、ほとんど一部リーグ入りしたと言ってもいいくらいになったのだ。しかし本作を観ての筆者の感想は…う〜ん、退屈、としか言いようがない。いやしかし、より高いヒューマニティの持ち主が観たら感動的なものとなるのかもしれない。一生かかっても使い切れないほどの財を持ちながら全身を筋弛緩症に冒され食事すら一人では出来ない孤独な若者(Jayasurya)と流しのステージ歌手(Anoop Menon)との友情の物語。

一つだけ、末梢的に見えるかもしれないけど実は重大な瑕疵について書き留めておきたい。ヒロインであるカルナータカ出身のメーガナ・ラージについてだ。前年に Yakshiyum Njanum (Malayalam - 2010) Dir. Vinayan というどうしようもない作品でマラヤーラム・デビュー、この2011年には本作も含め4本に主演するなど、急速にマラヤーラム女優化が進んでいる。本作での彼女の芝居が悪かったというのではない、ミスキャストだったというのでもない。ともかく肌が吹き出物だらけで見るに耐えない状態だったのだ。ただそれだけの事なのに映画の世界に入り込めず、肌の荒ればかりに目が行ってしまうほど酷いものだった。一般的にサウスの女優さんの肌荒れ問題というのは大層同情をそそるものだ。日本の芸能人ならば、仮にぽっつり大きなニキビが出来てしまっても、応急処置でほとんど目につかない程度にまでしてくれる美容整形外科を頼ることが出来る。芸能プロダクションのバックアップ体制というのはそういうものだ。実際の映画作品から推測するに、サウス印度の場合、そういう部分のケアはほとんど存在しないようなのだな。これまでも若いピチピチの女優さんの頬っぺに盛り上がった吹き出物を見ては痛々しい思いをしてきたものだった。しかし本作のメーガナさんのそれは限度を超えていたと思う。本人もそうだが、監督を始めとした周りも何らかの策を講じるべきではなかったか。女優を綺麗に撮る努力を怠った作品にはどうしても厳しくなってしまうのだ。


cvNayka.jpgNayika

Director:Jayaraj
Cast:Padmapriya, Jayaram, Mamta Mohandas, Sharada, Siddique, Salim Kumar, Narayanan Kutty, Ambika Mohan, Sukumari, KPAC Lalitha, Sarayu, Jagathy Sreekumar, Sasi Kalinga, Sabitha Jayaraj

原題:നായിക
タイトルの意味:Heroine
タイトルのゆれ:Naayika

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間00分

ジャンル:ロマンス
キーワード:レトロ、芸能界内幕、認知症、女性が主役

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/nayika-malayalam-2011

【寸評】
1970 年代のマラヤーラム映画界(「バラタンという新人監督」に対する言及がある)で活躍したトップヒロインの銀幕の裏側での悲劇を、現代の女性ジャーナリストが追うという筋立て。封切り前に公開されたイメージスチルの類が非常に洗練されて美しく、大層期待を掻き立てられた一作だったが、実見すると凡庸なメロドラマで残念な結果となった。映画界の舞台にした作品というのにはそれだけで興味を惹かれるかれるものがある(実際に印度映画では他と比べて数的にも多いのじゃないだろうか)けれど、本作はヘビーなメロドラマでコーティングした「批判精神なき映画界内幕もの」で終わってしまったように思う。ともあれパドマプリヤーのコスプレは素敵だし、二昔前の色男をやるジャヤラームも適役。しかし、1970年代の映画女優に、映画デビュー前に「女性として初めて舞台に立った」(マグダラのマリア役ということになっている)というエピソードをかませるのは時代錯誤じゃないのかな、いくらなんでも。OldMalayalamCinema さんによれば、劇中のエピソードのいくつかにはモデルとなった人物や事件があったようだ、詳しくはこちら参照。
nayika1.jpg


cvOMK.jpgOru Marubhoomi Kadha

Director:Priyadarshan
Cast:Mohanlal, Mukesh, Bhavana, Shakti Kapoor, Suraj Venjaramuudu, Maniyan Pillai Raju, Nedumudi Venu, Innocent, Mamukoya, Lakshmi Rai, Lakshmi Gopalaswamy, Sreenivasan (narration)

原題:ഒരു മരുഭൂമിക്കഥ
タイトルの意味:Desert Tale
タイトルのゆれ:Oru Marubhoomikkadha, Oru Marubhoomi Katha, Arabiyum, Ottakavum, P Madhavan Nairum in Oru Marubhoomikkadha, Arabeem Ottakom P. Madhavan Nayarum

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間45分

ジャンル:コメディ
キーワード:アブダビ、中年恋愛、湾岸ビジネスマン、身代金誘拐、砂漠での立ち往生

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/oru-marubhoomi-kadha-malayalam-2011

【寸評】
一応この網站のタイトルにもなってるプリヤン先生監督作、それも7年ぶりのマラヤーラム映画への里帰り、しかもラルさんとのコンビ、もうちょっと騒いでも良さそうなものだと我ながら思うのだが、こんな地味な紹介になってしまった。いや観る前は、ただもう時代遅れのドタバタを延々見せられるんじゃないかという気がして、これについて触れるのが怖かったのだ。恐る恐る見てみたら、ドタバタには違いないがそんなに酷いものじゃなかった(そんなに素晴らしいものでもなかったけど)。砂漠の景色の中で繰り広げられるそれは、ヴィジュアルとして心地よく開放感があるものだったし、バーヴァナちゃんのバイオレンス・アクション(マ映画的水準では)が笑えた。前回は田舎人情ものの巨匠サティヤン・アンティッカードによる、ニューウェーブどこ吹く風の、あいも変わらぬ Snehaveedu を紹介したけれど、プリヤン先生もまたニューウェーブとは無縁の立ち位置で、名優モーハンラールを中心に据えることにこだわり、虚構性の強いアイデンティティ・エラー系お伽噺コメディを作り続けていくのだろうなと思った。


cvVellaripravinte.jpgVellaripravinte Changathi

Director:Akku Akbar
Cast:Dileep, Kavya Madhavan, Indrajith, Maniyan Pillai raju, Kollam Tulasi, Sadiq, Lal, Suraj Venjaramoodu, J Pallassery, Vijaya Raghavan, Manoj K Jayan, Mamukoya, Anil Murali, Zeenath, Sai Kumar, Guruvayur Sivaj, Majeed

原題:വെള്ളരിപ്രാവിന്റെ ചങ്ങാതി
タイトルの意味:Friend of pigeon
タイトルのゆれ:Vellari Pravinte Changathi, Vellaripravinte Changaathi, Vellaripraavinte Changaathi

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間26分

ジャンル:ロマンス
キーワード:レトロ、映画界内幕、お蔵入り映画作品、異教徒間恋愛

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/vellaripravinte-changathi-malayalam-2011

【寸評】
結果的には狙いが何だかよくわからない作品としか思えなかったのだが、冒頭の20分にだけはドキドキした。1970年代に撮影されたが封切られることなくお蔵入りとなったマラヤーラム語の映画作品、監督はその後自殺してしまう。35年後にその息子はコーリコードからチェンナイに向かう。男はジェミニ・ラボの奥深く、お蔵入り作品のフィルムを保管する収蔵庫に足を踏み入れる…。ここでゾワッと来たね、名作の予感がしたよ。しかしそこからフィルムが撮影された時代に話が飛ぶと、あとはただひたすら退屈な100分超のセピア色のメロドラマになってしまうのだった。それはまだ我慢しよう、その後再び話は現代に戻ってくるのだが、激しくずっこける。一体これは何なのだと自問自答するうちに映画は終わってしまうのだった、最初のドキドキを返してくれ。しかし本作のシリアス系の芝居によってディリープは2011年度ケララ州映画賞の主演俳優賞を受賞したのだった。いまひとつ納得がいかない。それにしても、上に紹介した Orma Mathram といい、本作といい、これまでの定番じゃないものに色々挑戦しているところを見ると、マラヤーラム映画界の孤独な40代スター・ディリープ(1968年生まれ)は、下からの突き上げが目立ってきた昨今に、何か方向転換をはかろうとしてるんだろうかね。それとチェンナイの撮影所には本当にこんな「お蔵」があるのだろうか、興味が掻き立てられて仕方がない。


cvVenicile.jpgVenicile Vyaapari

Director:Shafi
Cast:Mammootty, Kavya Madhavan, Poonam Bajwa, Vijaya Raghavan, Janardhanan, Johnny, Suraj Venjaramoodu, V K Sreeranman, Biju Menon, Abu Salim, Jagathy Sreekumar, Unda Pakru, Majeed, Suresh Krishna, Salim Kumar

原題:വെനീസിലെ വ്യാപാരി
タイトルの意味:The Merchant of Venice
タイトルのゆれ:Venicele Vyaapari, Venicile Vyapari

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間24分

ジャンル:コメディ
キーワード:レトロ、1980年、ベルボトム、旧式の警官ユニフォーム、コイール、アレッピー、アラック、労働運動、ハウスボート、入れ子式ストーリー

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/venicile-vyapari-malayalam-2011

【寸評】
熟年映画では悪役のグーンダも熟年。和むわ〜。
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cvManusya.jpgManushyamrugam

Director:Baburaj
Cast:Baburaj, Kiran Rethod, Oviya, Seema, Aishwarya, Kalabhavan Mani, Prithviraj, Spadikam George, Majeed, Pala Charlie, Devan, Kollam Tulasi, Abu Salim, Indrans, Jagathy Sreekumar, Mamukoya, Kalsala Babu, Harishree Ashokan, Anil Murali, Aditya Menon, Ponnamma Babu, Kulappulli Leela

原題:മനുഷ്യമൃഗം
タイトルの意味:Human beast
タイトルのゆれ:Manusya Mrugam, Manusyamrugam

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間21分

ジャンル:スリラー
キーワード:羅生門、クリスチャン、ローリードライバー、性欲過多、一家皆殺し、キランの旅路

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/manushya-mrugam-malayalam-2011

【寸評】
Black Daliya (Malayalam - 2009) に続く、チンケ悪役バーブラージの監督第二作目。前作と同じく、B級コンテンツの割に脇を固める俳優が異様に豪華。そしてこれもまた前作と同じく、陰々滅々かつ血みどろのスリラー。例によって期待値最低で臨むと思ったよりも面白かったりして、かといって激賞できるものでもなく、始末が悪い。ウィキペディアの解説によれば、1980年の同名の映画作品をバーブラージ自身が翻案して脚本を書いたとのことだったが、調べてもオリジナルについては分からなかった。いかにも80年代のある種の作品群を思わせる暗いストーリーではある。ともかく、そこそこ面白く作れるのだからバーブラージ監督には一つだけお願いしたい。画面を綺麗に撮る努力をしてほしいのだ。主題が主題だけに難しい面はあるとは思うが、色の使い方、俳優の肌の調子、空気感の表現など、マラヤーラム映画ならヘボいBクラス作品でも普通はクリアできてるところに達していないのだ。まるでちょっと昔のカンナダ映画みたいなのをなんとかしてくれたら、まだ先が開けると思うんだけどなあ。


cvManikyakallu.jpgManikya Kallu

Director:M Mohanam
Cast:Prithviraj, Samvritha Sunil, Nedumudi Venu, Anoop Chandran, Indrans, Salim Kumar, Bindu Panicker, Kottayam Naseer, Anil Murali, Jagadeesh, KPAC Lalitha, Kulappulli Leela, Sasi Kalinga, Kochu Preman, Jagathy Sreekumar, P Sreekumar, Sai Kumar, Suresh Krishna, Devan, Ambika Mohan, Manraj, Narayanan Kutty

原題:മാണിക്യക്കല്ല്
タイトルの意味:Gemstone mining
タイトルのゆれ:Manikyakkallu

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間18分

ジャンル:人間ドラマ
キーワード:Model High School、熱血教師、チェンダたたき、密造酒、パーラッカード地方

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/manikiakkallu-malayalam-2011

【寸評】
あの Katha Parayumbol (Malayalam - 2007) でデビューしたMモーハナン監督の第二作目。で、やっぱ学校が舞台で、クライマックスは全校集会でって流れになるんだな。かつて名門の名をほしいままにしていたけれど今は見る影もない田舎のハイスクール、生徒だけではなく教職員もダレきっている。そこに転任してきた静かなる熱血教師が子供達を変え、教師にも刺激を与え、廃校の危機にあった学校を救う、というストーリー。くっ、臭っさ〜〜〜ってやつで途中何度も気を失いかけたんだけど、結局最後まで見ちゃった。それはひとえに無気力教師の一人を演じるサムちゃんが尋常でなく可愛かったから。この監督は前作でもミーナーちゃんをえらく可愛く撮ってたんだった。しかしケララ人観客にはそれ以外にもなにか訴えるところがあったようで、2011年度のケララ州映画賞のストーリー部門でモーハナンが受賞している。だっけどさ、場末校の汚名を挽回して先生マンセーとなるのは、結局のところ統一テストで高得点を上げた生徒が続出したから、そしてそれを讃えて先生大感謝ラリーを全校あげて行う、という身も蓋もない即物性。やっぱ印度には勝てないと思ったよ。
ManikyaKallu.jpg

投稿者 Periplo : 18:54 : カテゴリー バブルねたkerala

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