« Project 2011: その4 | メイン | Project 2011: その6 »

2012年08月23日

Project 2011: その5

それでは今回もオマケから。2011年に目覚ましかった男優編だ。お姉ちゃん&小母ちゃんと比べていまいちノリが良くないな。モーハンラール、マンムーティのツインタワーはメガヒットこそなかったものの存在感は減じていない。それから若いニイちゃんたちが何やらワラワラ出てきてるみたいだが、悪いが顔を覚えきらん。まっ、来年あたりに淘汰された時点でまだ生き残ってたら覚えてやってもエエよ。

chackochan.jpg

2011年にグワーッと来た人って言ったら、やっぱこの人、希少な30代明星(当年35歳ということになっている)クンチャーコー・ボーバン君(別名チャコーチャン、ふざけているのではなく、ケララ・クリスチャンの間でポピュラーな愛称形で、現地でもこう呼ばれている)でしょう。

かなり前に少しだけ紹介したこともあったけど、「お家制度」がそれほど強固ではないマ映画界の中で、名門といえばこれほどの名門も他にいないだろうという育ちの良さ。監督・プロデューサーだった祖父のクンチャーコーは1947年にアレッピーにウダヤ・スタジオを創設し、マドラス、コインバトール、セーラムなどタミル・ナードゥ州のスタジオ施設に依存していたマラヤーラム映画界をケララに呼び戻し、一時代を築いたという。その後事業はチャコーチャンの父でやはり監督だったボーバン・クンチャーコーに引き継がれたが、いつの頃からかケララではスタジオ・システム自体が斜陽化し、TV撮影施設として細々と存続するのみとなっていた。その父が2004年に没した後はチャコーチャンが引き継ぎ、2009年には Uday Soorya Hi-tech Film City なる名前で再出発したなどと報じられたが、これが現在事業として軌道に乗っているのかどうかは調べてみてもよく分からなかった。

チャコーチャンの個人的な芸歴に転じると、Aniyathipravu (Malayalam - 1997) Dir. Fazil でデビュー、これは大ヒットとなり、チョコレートヒーローとして若い女性の間での人気が沸騰した。Aniyathipravu は非の打ち所のない名作だったが、それを名作たらしめたのはファーシル監督のきめ細かな演出に支えられたチャコーチャンの天才的な演技力だったと思う。 そして、(例によってだが)二十歳そこそこのヒーローというのはこの時期のケララでは全くもってユニークな存在でもあった。さらに「ダンスのセンス全滅」 なマ映画界にあって、踊りの能力においてもチャコーチャンは突出していた。易易と軽々と踊る若いロマンチック・ヒーローというのは革命的な存在だったのだ。

デビュー以降2004年頃までは概ねこの路線で、しかしかなりのんびりとキャリアを築いていたのだが、その後出演本数が落ち込み、内容もどんよりとしたものになっていき、ついに2007年には新作封切りゼロにまでなってしまう。2004年に父をなくし、翌2005年に結婚し、それらと関係があるのかどうか不明ながら同じ頃に不動産ビジネスに乗り出したのが原因である。途中 Twenty:20 (Malayalam - 2008) Dir. Joshiy での情けな~いアイテムダンサーと Lollipop (Malayalam - 2008) Dir. Shafi での情けな~い恋敵役を経て、本格的な再出発はジャヤスーリヤと共演の Gulumal: The Escape (Malayalam - 2009) Dir. V K Prakash から。かつてのような、単独ヒーローとしての出演があたりまえという待遇はもうなかった。

俳優としてのチャコーチャンが本当に息を吹き返したのは Elsamma Enna Aankutty (Malayalam - 2010) Dir. Lal Jose によって。チャコーチャン自身も自分の復活がラール・ジョース監督に負っていることをインタビューで述べている。そして2011年には秀作、サイテー映画、ゲスト出演とりまぜて出演作を8本にまでのばした。かつてのおっとりした構えを振り払うかのように、親爺達ともみ合ったり(Seniors)若いのに混じってみたり(Sevenes)ニューウェーブだったり(Traffic)古くさいのだったり(Doctor Love)。比較的短躯で童顔なのは変わらず、しかし突風には充分気をつけなければならない頭髪になって、それでも ’I have to keep myself young if I have to be competing with them in this field’ なんて言ってるのだ、泣ける〜。結局、2000年代半ばの休業に到る事情、不動産ビジネス分野での成果など、本当のところはどうだったのかは分からない。けど、勝手な想像をすることを許してほしいのだ。呑気に構えすぎて身上が傾き、試しにやってみた投機で大火傷して、やっと我に返った若様がお家再興のためについに本気で踊り出す、ロマンだあ〜、浪花節だあ〜。

SNBaburaj.jpg

脇役マニア的には、当サイトでは「万年チンケ悪役」が冠言葉になってしまったバーブラージの突然のブレイク。 Salt N' Pepper でのコミカルな料理人役が大受けしてしまっての椿事。調子に乗って翌2012年には主演作品まで公開された(Naughty Professor)が、これは調子に乗りすぎたようで撃沈されてしまった。まあしかし、いつも目ぇ吊り上げて「ぶっ殺したる!」なんて言ってる奴が、意外にお惚けだったり意外に優しかったりするところを見せられると胸キュンになっちゃう観客ってのは、なんか大衆情報化社会を感じさせる現象だよね。

なんてところで、やっと本題。

星1つ

cvKayam.jpgKayam

Director:Anil K Nair
Cast:Swetha Menon, Manoj K Jayan, Bala, Aparna Nair, Anil Murali, Sona Nair, Subair, Kottayam Nazir, Pala Charlie

原題:കയം
タイトルの意味:Whirlpool

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間51分

ジャンル:エ ロ
キーワード:ニンフォマニア、漁師、幼時のトラウマ、男性不信、たらい舟

当網站の関連ポスト:2010.12.31(予告的紹介)
参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/kayam-malayalam-2011

【寸評】
70 年代または80年代に作られた同名作品のリメイクらしい。しかしオリジナルについてはVCDが発売されているのみで、情報が全くつかめない。それはともかく、本作も事前には結構期待が高い一品だったのだ。並外れて肉感的で性への欲望を隠そうともしない野生の美女と翻弄される男たちなんてストーリー、マラヤーラムでしか作れないアートなファンタスティック・ワールドになるかもしれなかった、それもシュウェちゃんことシュウェータ・メーノーンさんの主演でだ。しかし制作者側の力量が決定的に不足していた、三流桃色映画が途中で収拾がつかなくなってホラー映画に路線変更して無理矢理終わらせるというていたらく。おまけにプロデューサが小銭欲しさに本作のスチル写真を勝手に精力剤メーカーの広告に流用することを許したとして(こんなの)、シュウェちゃんが訴えを起こす、なんていうみっともない一幕も。やれやれ。


cv3kings.jpgThreee Kings

Director:V K Prakash
Cast:Kunchacko Boban, Indrajith, Jayasurya, Sandhya, Ann Augustine, Samvritha Sunil, Ashokan, Jagathy Sreekumar, Salim Kumar, Suraj Venjaramoodu, Kunchan, Sreejith Ravi, Vijay Babu, Ambika Mohan, Majeed, Balachandra Chullikkad, Sasi Kalinga

原題:ത്രീ കിങ്ങ്സ്
タイトルのゆれ:Three Kings

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間03分

ジャンル:コメディー
キーワード:ニランブール、王家、三馬鹿息子、マイソール、埋蔵宝物、TVリアリティショー、ハリウッド元ネタ

参考レビュー集成:http://periplo.posterous.com/three-kings-malayalam-2011

【寸評】
この前のエントリーBeautiful の項)では「突然ランクアップし、ほとんど一部リーグ入りしたと言ってもいいくらいになった」と書いたVKプラカーシュ監督のコメディー。これまで紹介してきた2011年作品の中では文句なしのサイテーだ。だからこのプラカーシュさんは信用できないんだよ。どういう訳かケララ人が愛好する、中年男(まあ本作では若者という設定だけど)3、4人が画面狭しとドツキ合うタイプのやつ。敢えてポジティブな点を挙げるなら、中盤に出てくる(ケララ人から見た)テルグ人の名前の神秘に関するジョークのところが面白かった。もっと色々書こうと思ったのだが、これを見た時にオイラがとってたノートには、あとは「笑いの永久凍土帯」としか書かれていなかったのだった(泣)。

【2013年10月18日追記】
その後、本作はMast Maja Maadi (Kannada - 2008) Dir. R Ananth Raju の志の低いパチリだということも判明した。

ThreeeKings.jpg
これは多分カメラマンが悪のりしたイメージ・スチルだろう、いくら何でも本編には出てこないだろうと思ってたら、実際にこーゆーシーンがあった……。クンチャーコー君、やっぱり少しは脚本を選ぼうよ。

以上で、筆者が鑑賞した2011年作品の45本の紹介は終わり。次回はそれ以外の40余本について簡単にリストアップしようと思う。

投稿者 Periplo : 01:50 : カテゴリー バブルねたkerala

コメント

コメントしてください

サイン・インを確認しました、 . さん。コメントしてください。 (サイン・アウト)

(いままで、ここでコメントしたとがないときは、コメントを表示する前にこのウェブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)


情報を登録する?