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2012年09月16日

9月のJ-テルグ

また渋いのを持ってきたもんだねえ。

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まずは上映作品のアウトラインから。

Life is Beautiful (Telugu - 2012) Dir. Sekhar Kammula

原題:లైఫ్ is బ్యూటిఫుల్
タイトルのゆれ:LIB

Cast:Abhijeet Duddala, Sudhakar Komakula, Kaushik, Shagun Kaur, Zara Shah, Rashmi Shastry, Surekhavani, Kavya, Naveen, Vijay Devarakonda, Sanjeev, Sriram, Shriya Saran, Anjala Zaveri, Amala Akkineni

■日時:2012年9月23日、12:00ごろ開場(別料金でのランチサービスあり)、13:30開映予定(17:00ごろ終映予定)
■料金:大人2000円(当日券)1800円(予約)/5歳以上の子供1200円(当日券)1000円(予約)
■字幕:なし(の予定)
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/access/
※家族チケット・予約方法など上映に関しての詳細は、主催者公式サイトhttp://www.indoeiga.com/を参照のこと
■ 参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/10/screening-of-is-beautiful-in-japan.html

【粗筋】
とりあえず筋については何も書かない。ランタイムは2時間46分と予告されている。また、以下に紹介する Happy Days の広い意味での続編と言われているが、キャラクターの連続性はない。HDがカレッジ内の青春ものだったのに対して本作は何らかのゲーテッド・コミュニティを舞台にしているという。シェーカル・カンムラらしい、暴力的要素のほとんどない青春群像ドラマであることは間違いないだろう。その分、字幕なしでの鑑賞には若干難があるかもしれない。

【予想される見どころについて】
前回上映の Eega とは少し違った意味で監督が主役の映画といえるだろう。シェーカル・カンムラ(テルグ風に言えばカンムラ・シェーカル)は1972年にハイダラーバードで生まれた。高等教育修了後に米国に渡り情報処理学を学び、IT技術者として社会人生活も経験した後に帰国した(余談だが、インタビューなどでのこの人の英語は、一語一語を区切って独特の抑揚で話される美しいインド英語とは異なり、アメリカ訛りがキツくて筆者にはほとんど聞き取れない)。99年の実験的なデビュー作 Dollar Dreams が評価され、続く Anand で商業的な大成功を収めた。ストーリー・脚本も自ら手がけるタイプで、またデビュー以降13年間に手がけた監督作は今回公開作も含めて7本と寡作である。その全作品が、仲間たちと共に立ち上げた製作会社 Amigos Creations から送り出されている。

作風は、一言でいうならば「娯楽映画の枠内での新感覚派」かつ「当代一の語り手」。大掛かりなアクションや派手なアイテムダンス、独立したコメディトラックなどをほとんど採用せず、穏やかでユーモラスな語り口+長めの尺+美しい映像でロマンスをじっくりと描くものが多い。意志的で独立心の旺盛なヒロインと、NRI(在外インド人)的な性向をもつヒーローが特徴的(当人は嫌っていたというが、キャリアの初期にはNRI映画作家と呼ばれることもあった)。都市に住む中産階級のNRI的生活感というのはカンムラ作品の重要な鍵となるものと筆者は考えるが、その作品群が広く受け入れられたのは、そうはいってもやはりこの人が現実には米国からテルグの地に戻ってきて根を下ろしたからなのではないか。近年特に英印文学の世界で大層盛んな、2つの文化の間で揺れ動く主人公を自己愛たっぷりに面白おかしく描くという、既に充分に陳腐化したNRIもの定型とは違う、もう少し高いレベルに達していることが、カンムラ作品をテルグ界のメジャーリーグに押し上げたのだと思う。上で新感覚とは書いたが、それはゴリゴリのリアリズムとは必ずしも合致しない。リアリティのある設定やディテールによって一風変わったお伽噺を物語る、それがテルグの衆の心の琴線に触れたのではないかな。

今回もまた、主演は全く無名の6人の男女、注目はカンムラの語りに向かうことは間違いないのだが、豪華な脇役がサービスされるのがガイジンには嬉しい。

まずは、タコ焼き…ちゃうちゃうちゃう、Sivaji The Boss [邦題:ボス その男シヴァージ] (Tamil - 2007) Dir. Shankar のヒロイン、シュレーヤー・サラン(各地方語によってシュリヤー、シュレーヤなどとも)の登場。Happy Days でゲストとしてちょこっと顔を見せたカマリニ・ムカルジーよりはもうちょっとストーリーに絡んでくれるのではないかと期待している。

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そして、Preminchukundam Raa [邦題:愛と憎しみのデカン高原] (Telugu - 1997) Dir. Jayanth C Paranjee と Choodalani Vundi [邦題:バブーをさがせ!] (Telugu - 1998) Dir. Gunasekhar でヒロインをつとめた(つまり本邦で既に2本も出演作が公開されている)アンジャラー・ジャヴェーリーの久々の顔見せというのも興味深い。

さらには、1980年代後半にタミル映画を中心に南インド4州で活躍した往年のヒロイン、アッキネーニ・アマラがナーガールジュナとの結婚&引退から約20年ぶりにスクリーンに復帰するというのも現地のファンの間では多いに話題になっていた。

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あ、それからホントに蛇足だけど、台詞もないチョイ役で監督がちらりとカメオ出演することが多いのもカンムラ作品の癖。この顔がどこで登場するかに注意してみるのも一興かもしれない。以下は恒例の予習・復習用資料。

【豪華付録:シェーカル・カンムラ全作品ディスコグラフィー】

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cvDollarDream.jpgDollar Dreams (Telugu - 1999)

Cast:Satya Krishnan, Anish Kuruvilla, Priyanka Veer, Anil Prashanth, Santosh Kumar, Dashveer Singh, Ravi Raju

原題:డాలర్ ద్రేఅమ్స్

DVDの版元:Universal
DVDの字幕:なし
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間39分
DVD 入手先:Bhavani DVD など

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/10/dollar-dreams-telugu-1999.html

■ 芸術系、オルタナ系が不毛なテルグ映画界にあって、珍しくヒットして海外にまでその評判が聞こえた低予算映画に Hyderabad Blues (English/Telugu - 1998) Dir. Nagesh Kukunoor という1本がある。筆者は実見していないので詳しいことは言えないのだが、上でちょっと書いたような、帰郷したNRIが父祖の地にすんなりとは馴染めず文化的に格闘する様子を描いたものだという。翌年に公開されたこの Dollar Dreams は、ちょうどその逆のベクトル、学業を終えた後、あるいは社会人生活を経た後に渡米しようとする若者達の姿を描いており、そのリアリティのある語りが批評家からは大変に評価され、カンムラは国家映画賞デビュー監督賞を獲得した。本作冒頭にテロップとして掲げられているのだが、この時期インドから米国に移住する者の66%がアーンドラ・プラデーシュ人だったという。この迫力ある数字がカンムラに本作を撮らせる動機となったそうだ。Hyderabad Blues と同じく、本作中の登場人物も、テルグ語・英語・ウルドゥー語を混ぜこぜにした会話をする。彼らは必ずしも美國黄金郷に無条件に憧れているという訳でもないのだが、ハイダラーバードで中〜低層の暮らしを続けることにも積極的な意味が見いだせず揺れ動いている。移住など眼中にもなくハイダラーバードで草の根からの社会改革に取り組む女性、一足先に渡米しアメリカ訛りを身につけて一時帰国する若者、様々な人間模様を提示しながらも、どの道が正しくどの道が間違っているかという価値判断は一切加えずに本作は終わる。娯楽映画的なカタルシスは全くないが、改革開放経済への転換から8年経った世紀の変わり目のアーンドラ・プラデーシュの雰囲気がよく分かる、そう言う意味で貴重な一作。


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cvAnand.jpgAnand (Telugu - 2004)

Cast:Raja, Kamalini Mukherjee, Satya Krishnan, Anish Kuruvilla, Anuj Gurwara, Bakhita Franc, Chandana Chakrabarti, Melkote

原題:ఆనంద్ 

DVDの版元:Shalimar、KAD など
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間36分(劇場公開版)、約2時間59分(ディレクターズ・カット)
DVD 入手先:Bhavani DVD など

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/10/anand-telugu-2004.html

■ デビュー作から5年もの歳月を経てやっと送り出された第2作、初めての商業映画。とはいえ極めて限定的な公開で、ハイダラーバードで3本、ヴァイザーグ・ヴィジャヤワーダ・ワランガルで各1本、合計でたったの6プリントの封切りだったという。それが口コミによって人気を呼びロングランとなり、各種の賞も獲得した。本作公開時のキャッチコピーというのが 'manchi coffee lanti cinema'、つまり「上質の珈琲のような映画」。日頃目ぇ血走らせた親爺達が背中に仕込んだ鎌を抜くのに大喜びしてるような筆者には全身がムズ痒くなるようなスカしぶりだが、観てみるとこれが結構飽きないのだ。幼少時に事故で家族を失い孤児となりながらも毅然と生きるヒロインに対して、一目惚れした NRIの若い男があの手この手でアタックする、それだけのストーリーなのだが、寄せては返すさざ波のように行きつ戻りつするするエピソード群に身を任せるのが心地よい。コメディアンもアイテムダンサーも登場せず、切った張ったの暴力沙汰もゼロ、こんなお洒落カフェ映画があってもいいのかしらん、と思っていると、終盤近くにこれまでの居心地よさがガラガラと崩れ落ちるような凄い展開があって驚く(別にそこから血みどろリベンジ・ドラマが始まるという訳ではない)。これには度肝を抜かれて各種のレビューを読みあさってみたのだが、この部分に違和感を訴えているものは見当たらず、首を捻ってしまった。それをここでネタばらしする訳にもいかないのだが、当網站読者の方には是非とも本作をご覧頂いてこの不可思議なツイストについてご意見を伺いたいものだと切に思う。

それはともかく、本作のもっとも目覚ましい貢献は、ベンガル生まれのカマリニ・ムカルジーを実質的にヒロイン・デビューさせたことにあるだろう。Phir Milenge [邦題:フィル・ミーレンゲー/また会いましょう] (Hindi - 2004) Dir. Revathy で脇役出演してはいたものの、同年公開の本作でブレイクしてからはほぼサウス専属女優。テルグを中心としながらもすでに南印4言語を制覇しており、「隣のセクシーなお姉さん」として代え難い魅力を見せつけてくれている。同時に忘れちゃいけないのがヒロインの仕切り上手な友達として登場したサティヤ・クリシュナンさん。ドスの利いたガラッパチ喋りがなんとも格好良かったね。

本作が公開された2004年というのは、テルグ・メインストリーム映画においてヒーロー格俳優の世代交代がほぼ完了し、同時に技術的な面でも質的向上が目覚ましく、どんどん面白くなって行く上り調子の時期にあった。そういう時期に本作のようなシンプルなロマンスものが大当たりしたというのは注目すべきことだと思う。つまり観客の皆さんはメインストリーム映画に行き詰まりを感じてこういうオフビート作品を支持した訳ではなかったのだ。ハイカロリーなギンギンのフルコースと同時に「上質の珈琲」も楽しんでいたのだな。このあたりにテルグ人観客の貪欲さと懐の広さが窺い知れるような気がする。

なお、本作はNinaithale (Tamil - 2007) Dir. Viswas Sundar としてリメイクされた。


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cvGodavari.jpgGodavari (Telugu - 2006)

Cast:Sumanth, Kamalini Mukherjee, Neetu Chandra, Kamal Kamaraju, Thanikella Bharani, Shiva

原題:గోదావరి

DVDの版元:Bhavani、Shalimar など
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間32分
DVD 入手先:Bhavani DVD など
ネット配信:YTに字幕なし全編動画あり

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/10/godavari-telugu-2006.html

Anand の予想以上の成功に気をよくしたカンムラが2年後に送り出した、文字通りの大河ロマンス。ここに挙げた全作品の中で、娯楽映画としてのバランスのとれた楽しさという観点からはトップだと思う。公開当時に世間で言われた「テルグのタイタニック」の綽名に恥じないスケール感と華やかさに満ちている。

無名の新人俳優ばかりを使うのが常だった(使わざるを得なかった)カンムラだが、ここで初めて名門一家の御曹司を主役に据えることとなった。アッキネーニ・ナーゲシュワラ・ラーオ(ANR)の孫であり、ナーガールジュナの甥であるスマントだ。ただし、スマントの立ち位置は他のメジャー俳優とは若干違うところにあって、最も一般的なバイオレントで力強い庶民派のヒーロー像というのを必ずしも追求していない。本作のような、アメリカ帰りのITエンジニア(そしてこれはカンムラとも、実人生でのスマント自身とも重なる)で、もの静かでクールなヤッピー的キャラクターにはぴったりのキャスティングだったといえるだろう。というか、クレジットこそスマントが筆頭であるものの、本作の本当の主役は Anand に引き続いて登場のカマリニ・ムカルジーであることは誰の目にも明らかなのだ。この映画、一言でいうならば、カマリニさんがソウルメートを探して彷徨い、「私のこと好きなの?好きじゃないの?どっちなのキィーッ!」とジタバタしてるのを2時間30分を費やして描き切るという、贅沢極まりない一品なのだ。

「テルグのタイタニック」と呼ばれたのは、ストーリーラインに類似があるということでは全くない。ハイダラーバードに住むITエンジニア(政治の世界に入ることにも意欲を持っている)の若い男と、同じくハイダラーバードでファンションデザイナーの卵として苦闘する若い女が、それぞれの理由から聖地バドラーチャラムに向かうクルーズボートに乗り込み、アーンドラきっての大河ゴーダーヴァリを遡るというシチュエーションによるものだ。つまりソフィスティケートされた都会の男女と雄大な自然という組み合わせ。この出航ソングを見てもらえると分かるが、そのクルーズ船というのが露骨に等級差別化されていて頭の中がキーンとするのだが、これはあくまでも大道具さんが頑張ってこしらえたもので、実際にはこういうファンタスティックな乗り物は存在しないらしい。まあそれにラージャーマンドリーからバドラーチャラムまでは幾晩も船中泊が必要な距離ではないしね。しかしこれはかなり高くついたようで、本作が都市の若者というターゲット層の間では充分に受け入れられてヒットとなったにも拘らず資金を完全には回収できなかったようだ(カンムラへのインタビューによる)。

上にリンクした出航ソングが典型的だが、カンムラ作品のソングシーンには、超絶の踊り手、ソングのためだけの常規を逸した豪華セット、バックダンサーの大群といったものは登場しない。趣味のいい楽曲と巧みなピクチャライゼーションだけでも楽しいソングシーンが作れるという見本のようなソングが、各作品の中で最低ひとつはあるというのも、カンムラ映画の楽しみのひとつである。

ともかく、大河ゴーダーヴァリというバックグラウンドを得て繰り広げられるロマンスは、他のカンムラ作品と違う格別な開放感とスケールの大きいビジュアルが楽しめるお勧めの一作だ。


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cvHappyDays.jpgHappy Days (Telugu - 2007)

Cast:Varun Sandesh, Tamanna, Nikhil Siddharth, Rahul, Vamsee Krishna, Gayaturi Rao, Monali Chowdhary, Sonia Deepti, Kamalini Mukherjee, Krishnudu, Ranadheer Reddy, Aadarsh, Adithya, Chaitanya, Shuruthi

原題:హ్యాపీ డేస్

DVDの版元:Sri Balaj、iDream など
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間39分
DVD 入手先:MyIndiaShoppingBhavani DVD など

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/09/happy-days-telugu-2007.html

■ ハイダラーバードの名門工科大学CBITに入学した8人の若者たちを中心とした青春群像物語。入学式から卒業式までの4年間を細かいエピソードを連ねてじっくりと描く。以前 Kalloori の項で書いたように、筆者はこの手のノスタルジックな学園生活讃歌にはデタッチ気味なのだが、それでも本作がなぜ大ヒットしたかは何となく理解できる。ラストの学長の言葉に表れているように、大学時代の4年間というのは、中産階級のインド人の若者にとって、カーストのしがらみやジェンダー的な束縛、親の干渉、地域共同体の締め付けetc.といったものから自由でいられる、期限付きの人生唯一の黄金時代なのだ。その自由のただ中で、学年による上下、友情やステディ関係といった虚構性の高い縛りをわざわざつくり、子供じみた衝突や和合を繰り返す姿に共感できるかどうかが本作鑑賞の鍵だろう。仮に共感できなかったとしても、社会に出たインド人達がその想い出を宝物のように大切にする学生時代というのがどんなものなのかがよく分かって勉強になる。例によってキャストはほとんどが無名の新人だった。主演のワルン・サンデーシュは本作で幸運なデビューを果たしたが、その後は若干低迷気味。デビューから2年目のタマンナーがやはり群を抜いている。タマンナーのためだけに本作を見ても損はしないだろう。

なお、本作からは Jolly Days (Kannada - 2009) Dir. M D Sreedhar と Inidhu Inidhu (Tamil - 2010) Dir. K V Guhan という2本のリメイクが生まれた。シェーカル・カンムラ自身によるヒンディー・リメイクの企画もあり、オーディションまで行われたようだが、よく分からない事情からこれは没になってしまった。


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cvAvakai.jpgAvakai Biryani (Telugu - 2008)

Director:Anish Kuruvilla
Cast:Kamal Kamaraju, Bindu Madhavi, Rao Ramesh, Varun Jonnada, Praneeth, Kameshwara Rao

原題:ఆవకాయ బిర్యానీ
タイトルのゆれ:Avakay Biryani, Avakaya Biryani, Avakai Biriyani
タイトルの意味:Pickles and Biryani, Pickeled Biryani

DVDの版元:Sri Balaji、Bhavani など
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間23分
DVD 入手先:MyIndiaShoppingBhavani DVD など

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/10/avakai-biryani-telugu-2008.html

■ 本作のみがカンムラの監督作ではなくプロデュース作品。監督はアミーゴスの仲間であるアニーシュ・クルヴィッラ(Anand では重要な脇役として出演もしている)。シェーカル・カンムラ作品総まくりという主旨なのに、実はこの非監督作がここに挙げた中で一番完成度の高い作品だと思えるのだ(正直過ぎるな、自分)。テランガーナの僻村を舞台にしたヒンドゥー&ムスリム・ロマンスもの。このジャンルの通例に反して、男がムスリムで女がヒンドゥーの婆羅門である。田舎街でオートドライバーをやりながら苦労して高等教育の門を目指すムスリムの孤児の若者と、ポラヴァラムから一家で引っ越してきた(ダム建設に絡む立ち退きであることが暗示される)婆羅門の娘との交情を描きながら、より広いフレームで捉えられた風景が見るものを圧倒する。マラヤーラム映画界出身の撮影監督シャムダトの見事なカメラワークによって映し出されるのは、「テランガーナの美と貧困」。ハイダラーバードからバスで数時間の距離(ナルゴンダ郡のデーヴァラコンダが舞台ということになっている)でしかないにもかかわらず、「(上下水道の不備のせいで)村の女衆は毎日この広場で用を足すしかない」と州中央の政治家に訴えなければならない現状。あるいは、平和な田舎暮らしの中で、コミュナルな相互不信がどのように生まれるかをあぶり出す説得力。これまでに見た勇ましい、あるいは告発調のどんなテランガーナ映画よりも心に沁み入るものがあった。でありながらも、テルグ映画らしい楽天的な阿呆くささも同時に併せ持ち、大変に爽やかな読後感が味わえた。Godavari で嫌みな恋敵役を演じたカマル・カーマラージュがヒーロー、Pokkisham の小さな役でデビューしていたビンドゥ・マーダヴィが本作でヒロインとして多いに注目されることになった。


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cvLeader.jpgLeader (Telugu - 2010)

Cast:Daggubati Rana, Richa Gangopadhyay, Priya Anand, Kota Srinivasa Rao, Harsha Vardan, Suman, Ahuti Prasad, Suhasini, Subba Raju, Thanikella Bharani, Rao Ramesh , Narsing Yadav, Vai Sista, Udaya Bhanu

原題:లీడర్

DVDの版元:Sri Balaji、Bhavani など
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間52分
DVD 入手先:MyIndiaShoppingBhavani DVD など

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2012/10/leader-telugu-2010.html

■これまでアンティームなロマンスものを手がけてきたカンムラが、政治をテーマにした作品を手がけるというのにまず度肝を抜かれた。しかもテルグ映画界の名門一家の一つであるダッグバーティ家の御曹司のデビュー作というのだから期待と不安が押し寄せた。その新人ダッグバーティ・ラーナー(ヴェンカテーシュの甥にあたる)は見るからにウドの大木だし、こいつが声を枯らしてご立派な理想を叫び続けて、万単位のエキストラがそれを伏し拝むというだけの教条主義的マス映画だったら嫌だなという気持ちが強かった。が、実見してそれは見事に裏切られた。これ、ラストの十分弱を除けば、完全に密室のドラマで、宮廷クーデタものに近い内容なのだ。まず前提条件として、(現実に充分にある)政治家のポストの事実上の世襲というものを完全に肯定し、その上で、メディアが閣僚の更迭や交代として淡々と伝えることしか出来ない政治劇の裏側の暗闘をこれでもかというくらいにこってりと描き出してくれるのだ。そして極端なカースト偏重政治やテロリズムの横行、政治資金の黒い流れなど、現実のアーンドラ・プラデーシュの政治風土もしっかりと語られる。これまでのカンムラ作品とは趣を異にして、癖のある悪役や喰えない親爺がずらりと並び、大興奮の3時間弱だ。じゃあこの作品にはズル剥けのリアリズム政治しかないのかというと、「民と共に歩む」という理想の部分は、スハーシニお母様が体現して下さるのだ。リチャ・ガンゴパディヤーイとプリヤ・アーナンドというツインヒロインを差し置いて、スハーシニお母様の清冽さに心が洗われましたです。

投稿者 Periplo : 01:51 : カテゴリー バブルねたtelugu
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