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2013年05月06日

PJ2012-22:run baBBy run

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run baBBy run

Director:Joshiy
Cast:Mohanlal, Amala Paul, Biju Menon, Shammi Thilakan, Sai Kumar, Siddique, Guruvayoor Sivaji, Vijaya Raghavan, Anil Murali, Anpoop Chandran, Aparna Nair, Mithun Ramesh, Krishna Kumar, Ponnamma Babu, Majeed, Ameer, Biju Pappan, Babu Jose

原題:റൺ ബേബി റൺ
タイトルのゆれ:Run Baby Run, Run Babby Run

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間19分

ジャンル:コメディー・スリラー
キーワード:メディア戦争、サイン・オフ、特ダネ、すっぱ抜き、超高性能隠しカメラ、悪徳政治家、政商

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/01/run-babby-run-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★★☆

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【粗筋】
ヴェーヌ(Mohanlal)は腕利きのフリーランス報道ビデオカメラマン。レーヌカ(Amala Paul)はバラト・ヴィジョンというTV局のアグレッシブなレポーター。二人は過去に恋人同士だったことがあるのだが、挙式を目前に控えた時期に起きたとある事件が原因で袂を分かち、以後は顔を合わせていなかった。拒否することができない諸事情から、二人は何年ぶりかに再会し、密告者によって予告された犯罪の一部始終を隠れて記録するという任務に共同であたることを命じられる。すっぱ抜きに成功すればケララ中に激震が起こるくらいの巨大スキャンダルとなる、しかし目前で行われる人命に関わる犯罪を抑止せずに記録のみすることは許されるのか。それよりなによりも、犬猿の仲である二人が力を合わせてスクープをものにすることが果たしてできるのだろうか?

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【寸評】
いや、ジョーシ監督も気が若いわ。今度は熾烈な競争に明け暮れるニュースチャンネル業界を舞台にしたスリラーだ。テンポのいい進行、安定の悪役、ご都合主義の少ない(全くないとは言わないが)よくできた脚本、何よりも里帰りしたアマラちゃんの可愛らしさ。これまでのマラヤーラムの出演といったら、デビュー作 Neelathaamara (Malayalam - 2009) Dir. Lal Jose と Ithu Nammude Katha (Malayalam - 2011) Dir. Rajesh Kannankara しかなく、どちらもチョイ役だったので、ヒロインとしての凱旋帰国は本当に嬉しい。

しかし微かな何かが熱狂を妨げている気もする。一時期よりは若干は体重を減らしたように見えるラルさんは、脚本が求める渋い枯淡と稚気とを併せ持ってカッコイイことこのうえないのだが、アマラちゃんとのいわゆる「ケミストリー」ってのが、なんかこう微妙なところで足りてない気がするのだ。いがみ合いながらもお互いにめちゃくちゃ意識しあってる元恋人同士っていう設定は魅力的なんだがなあ。正直言うと、若手俳優との撮影本番に臨む前日にアマラちゃんがラルお父さんを代役にして演技の稽古をしてもらってる光景に見えて仕方なかった。

まあでも、そんな贅沢な文句を垂れるのはこのくらいにしておこう。特に前半での凸凹コンビによる、ジェットコースター的というかスイング系絶叫マシンみたいな振れ幅のあるドンデン返しの連続はかなり面白い。一度は観といて損はない爽快娯楽作品。

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アマラちゃんだけにしか興味ない人にも自信を持ってお勧めできる。

投稿者 Periplo : 23:58 : カテゴリー バブルねたkerala
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2013年05月05日

PJ2012-21:Mayamohini

永久脱毛のCMじゃないのよ~ん♥ 
て、ただでさえ少ないアクセスがまたこれで減っちまうな。
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Mayamohini

Director:Jose Thomas
Cast:Dileep, Biju Menon, Lakshmi Lai, Mythili, Baburaj, Spadikam George, Unnikrishna Namboothiripad, Kalabhavan Shajohn, Vijaya Raghavan, Nedumudi Venu, Sadiq, Kochu Preman, Ponnamma Babu, Aravind Akash, Ryaz Khan, Ambika Mohan, Madhu Warrior, Radhika

原題: മായാമോഹിനി
タイトルの意味:主人公が名乗る女の名。マーヤーは「イリュージョン」を意味するがドゥルガー女神の異名でもある。モーヒニはヴィシュヌ神のアヴァターラの中で唯一の女神の名。
タイトルのゆれ:Maya Mohini

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間42分

ジャンル:コメディ
キーワード:ムンバイ、コーチン、成り済まし、リベンジ

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/01/mayamohini-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

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【寸評】                                                   
申し訳ないが最初に重大なネタばらしをしてしまう。本作でディリープが演じるのは女性ではなく、女に化けた男である。全編のだいたい4分の3ぐらいを女装で通す。封切り前からこの女装姿のポスター等がばら撒かれて好奇心を掻き立て、結果的に大変なヒットとなった。特に女性の観客に馬鹿受けだったらしい。ディリープの過去作品 Chanthupottu (Malayalam - 2005) Dir. Lal Jose でもそうだったんだけど、ケララの奥様&お嬢様方はなぜだか女装男を見るのがお好き。ストーリー自体は目新しくもなんともない、とある目的のために雌伏するヒーローがラストで満を持して立ち上がり闘う、というパターンのもの。その雌伏を文字通りの「雌」にしたってことだけがユニークなのだ。つまり本作は、ストーリーやナラティブに何かを期待して臨むべきものでは全然ない。ただディリープの女装だけが見どころなのだ。で、その女装をどう評価するかといえば、こりゃ凄いと言わざるを得ない。作中で男たちがメロメロになってしまうというのも、ほんの少し前までシャキーラが荒稼ぎしていたケララの風土を考えれば充分に頷ける(ただし、ムンバイのギャングまでもがイチコロというプロットだけは無理があった)。

話は飛ぶが、ケララの奇祭の一つにコッタンクランガラ・チャマヤヴィラックというのがある。毎年3月末頃に、コッラムにあるコッタンクランガラ・バガヴァティ寺院に女装した男達が列をなして詣でるというもの。これは異性装趣味の男性ではなく、(原則としては)そこいらにいる普通のオッちゃん、ニイちゃんが行うものなのだ。事情通の解説によれば、この女装行列は「苦行」のひとつの形なのだという。つまりタイプーサムで体中に針金を突き刺すのと本質は同じ(もっともその割にはノリノリのオッちゃんニイちゃんも多いという報告もあり)。この作品もまた、神への捧げものとしての苦行映画なのだ。

ディリープは、マンジュ・ウォーリアルと結婚して引退させた罪を償うための苦行。ディリープと仮面夫婦を演じなければならないビジュ・メーノーンはサミュークタ・ヴァルマと結婚して引退させた罪を償うための苦行。ディリープと☓☓☓までさせられるバーブラージは、ちょっと人気が出たからと主演までしちまった思い上がりを自罰するための苦行。観客にしてからが、償うべき罪などないなんていう御仁はいるわけもない。つまり、誰も彼もがつべこべ言わずに見るべき一作なのだ。良識あるケララの観衆はそれを充分に承知していたので大ヒットとなった、いい話じゃありませんか。

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できれば女装を剥ぎ取るシーンはもうちょっとホラー映画みたいな演出にしてほしかった。

投稿者 Periplo : 23:44 : カテゴリー バブルねたkerala
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2013年05月04日

PJ2012-20:Ozhimuri

「ナーイルの女は象のように歩め!」「象には象遣いが必要なのものだぜよ」
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Ozhimuri

Director:Madhupal
Cast:Lal, Asif Ali, Bhavana, Swetha Menon, Mallika, Kochu Preman, Jagadheesh, Sudhir Janardhanan, M R Gopakumar, Nandu Lal

原題:ഒഴിമുറി
タイトルの意味:Divorce document
タイトルのゆれ:Ozhimuri - Document of Separation

DVDの版元:Movie Channel
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間6分

ジャンル:アート
キーワード:penn malayalam, marumakkathayam(母系相続)、離縁、ティルヴァタンコード(トラヴァンコール)藩王国南部地方、州界再編

オフィシャルサイト: http://www.ozhimuri.com/
参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/01/ozhimuri-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★★★

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【背景】 
タミルナードゥ州の最南端、カンニャークマーリ地方。そこは古くからトラヴァンコール藩王家の領地で、マラヤーラム語話者とタミル語話者が混住する地域だった。トラヴァンコール藩王国とその北のコーチン藩王国とはインド独立後の1949年に合併し、トラヴァンコール・コーチン州となり、両王家の人々は政治的権力を放棄した。1956年に、言語州再編の動きの中でトラヴァンコール・コーチン州はさらにその北のマドラス州マラバール地方と一体化し、ケララ州が成立する。それと同時に、最南端のカンニャークマーリ地方は、タミル語話者による政治運動の結果として、ケララ州から切り離されマドラス州(タミルナードゥ州の旧名)に組み込まれることとなった。

他のケララの地域と同じく、ここでも母系制をとるナーイル・カーストが社会階層の上部を占めていた。しかし、藩王国時代の1912年に Travancore Nair Act が成立し、ナーイルの財産相続も、母から娘への女系相続から、全ての子供へのへの均等相続になるべく制度が改められた。とはいえ法改正はこれまでの慣習を即座に変えるものではなく、その受け入れは各家庭によってバラツキがあった。それもあり、トラヴァンコール地方では(特に不動産)相続を巡る親族間での民事訴訟が異様なほどに多く、また係争が世代を跨いで続けられていることも珍しくないという。

ナーイルの母系相続と大家族制度は、これまでにも多くの研究者を惹き付けてきた。ひとつのカーストの慣習というレベルを超えてケララ州全体の際立った特徴として取り上げられることもしばしばある。筆者は長らくこれが不思議で、日本のナーイル研究の第一人者に尋ねてみたことがあるのだが、答えは極めてシンプルなものだった。ナーイルが財をほぼ独占していたから、その相続制度は社会全体にとっての関心事となった。その他のカーストには相続すべき財もほとんどなかったので、男系も女系もたいした意味を持たなかったのだと。ペン・マラヤーラム(Penn Malayalam、女の国ケララ)という言葉が劇中にも登場するが、この言い回しは上に書いたようなことごとを一言で指し示すものであるようだ。

【ネタバレ度50%の粗筋】
どこにもハッキリとは書かれていないが、本作の年代設定は2000年代初め頃と思われる。タミルナードゥ州カンニャークマーリ地方のナーイル旧家の当主ターヌピッライ(Lal)は71歳にして妻から離婚裁判を起こされるという事態に直面していた。妻のミーナークシ(Mallika)は55歳、一人息子で教師をしているシャラト(Asif Ali)はミーナークシの側に寄り添っている。ターヌピッライの弁護士となったバーラーマニ(Bhavana)は、保守的なタミル・バラモン家庭に育ちながらも法曹の道に進んだ進歩的な女性である。彼女は、老境に入ってからの離婚裁判は当事者の誰にも益にならないと考え、法廷外での和解に持ち込もうとしてまずシャラトに近づき、彼の両親の事情を聞き出そうとする。ターヌピッライの母カーリピッライ(Swetha Menon)は名家の家長で、旧時代のナーイルの領主の傲岸さの典型のような人物だった。彼女は貧しいレスラーのシヴァンピッライ(Lal)を夫として、ターヌピッライを生むが、彼以外に子供を持たなかったことで後に運命から仕返しを受けることになる。シヴァンピッライに飽きたカーリピッライは、定められた作法に則り、易々と、かつ一方的に彼を離縁する。離縁された父の絶望と惨めな最期を幼少時に目撃したターヌピッライは、母を憎み、母系制度を憎んでいたため、同じナーイルでもすでに父系相続に切り替えていた家庭の娘であるミーナークシを娶る。彼は、妻子に暴力を振るうことも辞さない専横な家父長としての家庭生活を送る一方、家格にふさわしい公職として得たトラヴァンコール文書局役人の地位は藩王家の解体によって名目だけの閑職となり、しかしそんなことは歯牙にもかけず完璧なナーイルの紳士としての社交生活を営むという、多面的な性格の持ち主であった。シャラトは、幼少時から家庭での父の暴力に反発し心を許すことがなかったが、バーラーマニに促されて父母の間に起こった過去の出来事を掘り起こして行くうちに、思いもよらなかった隠された事情や父の心情を知ることになる。

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【寸評】
いや、この連載20回目にして2012年最高傑作と思われるものを紹介してしまったら、この後を続ける気力が保てるだろうか。2時間ちょっとしかないにも拘らず、途中何度も停止しながら観た。退屈だからではなく、一気に観てしまうのが勿体なく感じられたからだ。デビュー作 Thalappavu (Malayalam - 2008) で唸らされたマドゥパール監督の4年ぶりの第二作。普段はなかなか目が行かないのだが、本作では原作・脚本担当にも刮目させられた。タミルナードゥ州最南部ナーガルコーイルの出身の、タミル・マラヤーラムのバイリンガル作家&脚本家&評論家であるジャヤモーハンだ。といっても最初は誰だか見当がつかなかったのだが、Naan Kadavul (Tamil - 2009) Dir. Bala、Angaadi Theru (Tamil - 2010) Dir. Vasanthabalan、Kadal (Tamil - 2013) Dir. Mani Ratnam の原作・脚本家として関わっている人と知ってかなり驚いた。特に Angaadi Theru は濃密に情念的なタミル固有の世界が展開されており、同じ人物が全く雰囲気の異なるマラヤーラム芸術映画にたずさわるとはとても思えなかったからだ。多言語のインドならではのバックグラウンドを持つ異才の人というのはいるものなんだ。

賞を獲ってなんぼである芸術映画、劇場で本作を観たそう多くはない観客の絶賛を浴びながらも、2012年ケララ州映画最優秀作品賞レースでは次点どまり、他にBGMと衣装部門での受賞のみに終わった。2013年1月に発表された第60回国家映画賞で、主演のラールに対するスペシャル・メンションが与えられたのが最高の評価となった。

結婚制度が重要なモチーフだが、社会派女性映画ではない。3世代が描かれるが歴史映画ではない。男女の愛や家族の絆をテーマにした詩的で心理小説的なスケッチとでもいったらいいのか。芸術映画に付きものの図式的な象徴性は少なく、生の人間のドラマが鮮やか。上では背景となる歴史的な流れを書いたりしたが、もちろん本作はこうした史実の絵解き解説ではない。父と息子、母と息子、姑と嫁、夫と妻といった関係性の中での、内に秘められ、時に噴出する強い感情的な紐帯をきめ細やかに描く。同時にトラヴァンコール南部地方の特殊な風土、社会変動の過渡期におけるナーイルの精神史も活写される。そこには失われた旧時代へのノスタルジーはもちろんあるが、同時に過去の愚かしさから学び、より良い関係性を築こうとする希望もあり、単なる懐古趣味では終わっていない。レスラーだった父シヴァンピッライと息子のターヌピッライの中年期から老年期までを一人で演じ切ったラールは賞賛に値する。この人に対してはどうしてもコメディー映画の監督としてのイメージが先行してしまっているが、考えてみれば俳優デビューの Kaliyattam (Malayalam - 1997) Dir. Jayaraj から数えれば15年もの演技のキャリアを持っている訳だ。マドゥパール監督との Thalappavu でもそうだったけど、もう、空恐ろしくなるくらいの巧みな演じ手である。が、一方でMoMa2大巨頭のようなカリスマ明星になることは絶対にないというのも分かる。しかしそんなことは当網站筆者にとってはニの次。本作の何が凄いって、やっぱシュウェちゃんことシュウェータ・メーノーンさんのド迫力の女お館様ぶり。出演時間はかなり限られているにも拘らず圧倒された!時代が変わりつつあることを絶対に認めない旧時代の封建領主の頑迷、人に頭を下げることなど考えたことすらない傲岸、微かに顔を覗かせる好色、富と自信に裏打ちされたディレッタントぶり、そして最後に陥ることになる孤独地獄、これら全てが短い出番の中で心憎いほどに見事な一幅の絵となって迫ってくるのだ。2012年に出産という大きな転機を迎えたシュウェちゃんだが、俳優人生の中での本作の占める位置はかなり大きいものとなったのではないかと思われる。シュウェちゃんのためだけに本作を観ても絶対に損はないと保証したい。

そうは言ってもバーヴァナちゃんのレース使いの法服も萌えどころとして高ポイント♥
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投稿者 Periplo : 23:30 : カテゴリー バブルねたkerala so many cups of chai
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