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2014年02月28日

PJ2012-34:Da Thaadiya

デブと偉丈夫、その境界はどこにあるのだ???????

この項でちょっと考えてみようと思い、太め画像の収集まで始めたのだが、あまりにも長大な論考になりそうなので諦めた。とりあえず、作中に主人公をマハーバリになぞらえる台詞がある、ということだけ書いておく。
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Director:Aashiq Abu
Cast:Sekhar Menon, Sreenath Bhasi, Ann Augustine, Nivin Pauly, Arundathi Nag, Maniyanpilla Raju, Edavela Babu, Vinay Forrt, Jayaraj Warrier, Basil Kothamangalam, Jonathan Matthew, Thesni Khan, Kunchan, Gayathri, V K Sreeranan, Majeed, Kozhikode Narayanan Nair

原題:ടാ തടിയാ
タイトルの意味:Hey! Fatty
タイトルのゆれ:Da! Thadiya, Da Taadiya

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間59分

ジャンル:コメディ
キーワード:デブ、強制ダイエット、マッタンチェーリ、ローカル政治家、アーユルヴェーダ、コンプレックス商法、クリスチャン

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/01/da-thadiya-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

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【寸評】
コーチン・マッタンチェーリのクリスチャンの名家に生まれたルーカ・ジョーン・プラカーシュ(Sekhar Menon)は、その120kgを超える巨体をものともせず、そしてロースクールからドロップアウトしてしまったことを特に苦にすることもなく、毎日を楽しく過ごしていた。亡くなった彼の祖父はコーチン市長を務めた人物。父(Maniyanpilla Raju)と叔父(Edavela Babu)はその政治的な威信を継承しようと独自のローカル政党を立ち上げているが、未だに選挙で当選したことがない。ルーカは当然のこととして大食漢で美食家でもあるが、それは彼を可愛がる祖母(Arundhati Nag)の料理上手によるところが大きかった。

そんなルーカの前に、長らく離れ離れになっていた幼馴染みのアーン・メーリ(Ann Augustine)が現れる。彼女はすらりとした細身の都会的な女性となっていた。ルーカは子ども時代以来の恋心が再び燃え上がるのを抑えきれないが、彼女は曖昧な態度に終始し、ルーカに高級アーユルヴェーダ・クリニックでの減量プログラムを受けることを勧める。

意を決してクリニックに入所したルーカだったが、厳しいダイエットに耐えかねて途中で逃げ出してしまう。こっそりと家に戻った彼が知ったのは、そのクリニックの怪しげなグルであるラーフル・ヴァイディヤル(Nivin Pauly)とアーン・メーリが恋仲であること、彼女がクリニック行きを勧めたのはその営業戦略の一環でしかなかったことだった。

失意のどん底に沈んだ彼が、再び自分自身を取り戻すために選んだのは政界入りの道だった。

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衝撃作 22 Female Kottayam に続くアーシク・アブ監督作。今回は打って変わってローカル色の濃いコメディ。筆者は本作をまさに舞台であるコーチンで見る機会があったのだが、劇場は大入り満員、台詞の一々が馬鹿受けで、かなりの熱気だった。ヒーローのシェーカル・メーノーン、悪役のニヴィン・ポーリなどが初登場するシーンでは歓声が起こった。ただしそれは、映画スターに対するものというよりは、同級生や遊び仲間が映画に出てるのを見て盛り上がる、といったニュアンスのものに感じられた。

基本はお気楽コメディ。メッセージ的なものを探すとすれば、体型で人を差別しちゃいけません&体型を過剰に思い悩んでウジウジしちゃいけませんという真っ当なもの。それから、無闇に神秘化・高級リゾート化して一部が怪しげな方向に向かっているアーユルヴェーダ業界に対しても警鐘が鳴らされている。

しかしまあ、ぶっちゃけた話、本作の一番の映画的愉楽は、「インパクトのある凄いデブを心ゆくまで見つめる」ことにあるだろう。本職はDJだというシェーカル・メーノーンは実際にもコーチン出身、アーシク・アブ監督作品には様々な形でかかわってきた(こちら参照)。そして本作の後にもちょっとした脇役での映画出演は続いている。おデブ系俳優というと Vinayakudu (Telugu - 2008) Dir. Sai Kiran Adivi で主演デビューしたクリシュヌドゥがまず思い浮かぶ。この人の場合、大増量前はヒーロー俳優予備軍だったというだけあって、色白で目もぱっちり。それもあってか、清らかなデブが真心によってハクいお姉さんのハートをゲットというストーリーで成功した。片やシェーカルの方は、せり上がった頬肉が圧迫して吊り目になってて、かなり変顔、時に凄く人が悪そうに見える。より動物っぽい感じが強くて、それが堪らんほどイイのだ。一方で「ビッグ・ハグ」という、敵対的な相手の心をもとろかす武器も持っていて、見るからに気持ちよさそうなんだよね。ということで、理屈を忘れて身体感覚で楽しめる、稀有なタイプのマラヤーラム映画なのだ。リラックスして臨んでほしい。

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コーチンの劇場では、初日初回の上映に体重100kg超の人を入場無料にするというプロモーションを行い、猛者の皆さんが押し掛けたという報道もあった。

投稿者 Periplo : 23:55 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年02月27日

PJ2012-33:Matinee

The Dirty Picture にケララから呼応するかのように作られた、アイテム女優一代記。

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Director:Aneesh Upasana
Cast:Mythiri, Maqbool Salmaan, Lena, Thalaivasal Vijay, Valsala Menon, Sasi Kalinga, Kiran Raj, Soja Jolly, Dinesh Nair, Fathima Babu, Subbulaxmi, Kochu Preman

原題:മാറ്റിനി

DVDの版元:Saina
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間4分

ジャンル:映画界内幕
キーワード:デビュー監督、アイテム女優、ソフトポルノ、コーリコード、マーピラ、チェンナイ

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/07/matinee-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
1990年代中頃のケララ北部。ナジーブ(Maqbool Salmaan)は、保守的なムスリム家庭に育った青年で、映画俳優となることを夢見ていた。その希望は家族からの反対にあうが、彼は何とか両親を説得して、念願の主演デビューのチャンスを掴む。その映画のヒロインに抜擢されたのは、やはりデビュタントであるサーヴィトリ(Mythiri)だった。彼女はナジーブとは対照的に、呑んだくれの父親(Sasi Kalinga)に半ば売り飛ばされるように映画界入りしたのだった。

待望の封切日、ナジーブは家族を引き連れて映画館に赴く。そこで彼が目にしたのは、後半部を全く別の俳優が演じるポルノに差し替えられた作品だった。新作にインパクトが足りないと感じ、資金回収を危ぶんだプロデューサーの指示によるものだった。家族から絶縁され、地元の人々にも顔向けできなくなった彼はチェンナイに逃れ、成り行きからサーヴィトリと共同生活を始める。そして、サーヴィトリには映画の中でセクシーなダンスを踊る割のいい仕事が舞い込むようになる。

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ボリウッド音痴ではあるものの、The Dirty Picture (Hindi - 2011) Dir. Milan Luthria ぐらいは観ておこうと思ったのだった。何といっても80-90年代のサウスを席巻したシルク・スミターの伝記的作品を謳ってるわけだし、色々ヤバすぎてサウスでは映像化できないこともボリでならしれっと撮っちゃえるんじゃないかという期待もあって。筋書きはまあ面白かった。ただ一方で見終わってもかなり醒めた気分だったというのも否定できない。基本的には安っぽいストーリーなのだけれど、その安っぽさを(たとえば「パルプ・フィクション」のように)テクスチャーとしての魅力に高めるまでには至らなかったように感じた。また、舞台は全編を通じてマドラスなのに、初登場シーンのヴィディヤーを除き、主要登場人物がどこをどう頑張ってもタミル人・サウス人には見えないところが何とも。つまり、まったく現実感のない、どこの国のいつの時代の話か?というよそよそしさで、手応えのない映画体験だったのだ。

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一方でこの Matinee はというと、モデルとなった実在の人物は特にいないようだが、全編が徹底したリアリズムに貫かれている。ケララといえば、芸術映画で毎年国家映画賞レースを賑わせるのと同時に、ソフトポルノの量産でも全インドに名前をとどろかせている。特に90年代後半から2000年代前半にかけての映画産業の相対的な不振期には業界全体がソフトポルノの売り上げで何とか回っていたという話まである(まあ、誇張だろうが)。お花畑でヒーロー&ヒロインが踊るお綺麗なロマンス映画が、インターミッション後何の脈絡もなくホームビデオ画質のソレもんシーンに切り替わるところなど、まさにその状況を象徴している。

それと、スター俳優が売れまくってる栄光の絶頂期とその後の転落を対比させるというのが、芸能界内幕ものの常套手段であり、The Dirty Picture もその例に漏れないのだが、本作には「有卦期」の描写が一切ない。最初から最後まで、全てが「苦界」なのだ。ヒロインを演じるマイティリのお腹の曲線(左下写真参照)といい、夢破れてヒロインに寄生して生きるしかなくなる男を演じるマクブール・サルマーンの情けなさといい、気が滅入るような雑巾リアリズム。これはチェンナイへの集団就職者の最底辺の世界を描いた Angaadi Theru (Tamil - 2010) Dir. Vasanthabalan のそれに近い。主役をとことん苛める作劇術にある種の爽快を感じることができる人には、本作はそこそこのお勧めといっていいと思う。

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投稿者 Periplo : 22:51 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年02月26日

PJ2012-32:Ardhanaari

君はヒジュラの葬式を見たことがあるかっ?
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Ardhanaari

Director:Santhosh Souparnika
Cast:Manoj K Jayan, Thilakan, Sukumari, Maniyanpilla Raju, Mahalakshmi, Saikumar, Irshad, Asha Sarath, Suraj Venjaramood, Thesni Khan, Kochu Preman, N Jayakrishnan, Poojappura Ravi, Kollam Ajith, Master Antony, Master Amarchandran

原題:അർദ്ധനാരി
タイトルの意味: Androgynous
※ただし、本作中ではさらに限定的に、ヒジュラでありなおかつバイセクシャルでもある者の意味で使われている
タイトルのゆれ:Ardhanari、Ardanaari

DVDの版元:Horizon
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間53分

ジャンル:メッセージ
キーワード:ヒジュラ、差別、性の多様性

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/04/ardhanaari-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

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【寸評】
ヴィナヤン(Manoj K Jayan)は幼少時から女装への憧れと同性への性的な願望を胸に秘めていた。長じて自分の心に素直に生きることを決意して、タミル・ナードゥに出かけて行き、ヒジュラのコミュニティに加わる。しかしそこで彼/彼女が身をもって体験したのは、コミュニティの結束をもってしても防ぎきることのできない世間の差別と国家の無情だった。

題名から分かるとおり、ヒジュラ集団の実態を題材とした映画。このテーマは過去にも幾つか作例があり、日本でも公開された Navarasa (Tamil - 2005) Dir. Santosh Sivan や Tamanna (Hindi - 1997) Dir. Mahesh Batt などが有名。監督サントーシュ・サウパルニカは本作がデビューであるという以上の情報が見つからない。それよりも、プロデューサーがマラヤーラム映画界のトップシンガーであるMGシュリークマールであるということに注目が集まった。

先に難点を挙げさせてもらうと、この監督の力量は限りなくアマチュアに近い。メロドラマ風の演出、カット割りと編集、BGMの使い方、時代考証(一人のヒジュラの50-60年に渡る年代記だってのに青年期から携帯電話が出てくる)、どれをとってもイライラさせられる。ストーリーとしても、ヒジュラに対する詩的で神話的な称揚と、社会・国家によるマイノリティ差別(または差別の放置)への社会派的糾弾という、相容れない二つの要素がごちゃごちゃになっていてどっちつかず。それからキャスティングの一部に致命傷があった。主演のマノージKジャヤン、ティラカン、マニヤンピッライ・ラージュといった面々は易々と演じており何も言うことはない。ただし、ティラカンに別人の吹き替えを当てなければならなかったのは、事情があったのかもしれないが惜しまれる。ヒジュラ集団を演じる俳優たちの中に、二人の女優がいる。スクマーリマハーラクシュミだ。この二人、特にマハーラクシュミは、大変重要な役どころであるにもかかわらず、ビジュアル的にヒジュラとしての説得力がない。途中までヒジュラ集団に同居する謎の女性としか思えず、混乱させられた。

詩的な記述と社会正義の追及が同居していると上に書いたが、筆者が個人的に期待したのは、どちらかと言えば前者。最もマージナルな者が、特定のある瞬間にだけ最も完全なものとなりうるという逆説を感動的に劇化した「変容」のシーンに期待したのだが、溜息のでるような凡庸な仕上がりだった。本作におけるハイライトは、それとは別の、とあるヒジュラの葬式のシーンだったように思う。ヒジュラの葬式は、これまでにも映画中に出てきたものを見たころがある(何という作品だったかどうしても思い出せない、悶々)が、本作での描写はかなり克明。これほどに痛切な弔いのシーンはこれまでインド映画で見たことがない。「マージナリティ」というものを残酷に儀礼化したこの葬儀のためだけに本作を見ても決して損ではないと思う。

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主人公の少年時代を演じたマスター・アントニーの妖しい美しさも、多くの観客の注意を惹いたようだ。

投稿者 Periplo : 01:12 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年02月25日

PJ2012-31:Padmasree Bharat Dr. Saroj Kumar

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映画界の内幕ものってのは、あまりいい予感がしない作品でもやっぱ資料として見ておきたくなるもんだ。

Padmasree Bharat Dr. Saroj Kumar

Director:Sajin Raaghavan
Cast:Sreenivasan, Vineeth Sreenivasan, Fahad Fasil, Jagathy Sreekumar, Suraj Venjaramoodu, Mamta Mohandas, Salim Kumar, Mukesh, Manikuttan, Kollam Thulasi, Apoorva Bose, Shari, Ponnamma Babu, Sandhya, Meera Nandan, Sarayu, Roopa, Nimisha Suresh

原題:പത്മശ്രീ ഭരത് ഡോക്ടർ സരോജ് കുമാർ
タイトルの意味:Dr. Saroj Kumar, Padmashree awardee, National Film Award awardee
※パドマシュリーは、インド共和国によって授与される勲章のひとつ。バラト(バーラト)は、インド国家映画賞の主演男優賞が、1968年から75年の間、Bharat Award for the Best Actorと称されていたことによる。たとえば、マラヤーラム語の演劇と芸術映画で活躍した名優バラト・ゴーピの芸名もここから来ている。「ドクター」というのも、高等教育機関が往々にして人気俳優に良く分からない名誉博士号を授与することを皮肉ったものと解釈できる。
タイトルのゆれ:Padmasree Bharat Doctor Saroj Kumar, Padmashri Bharat Dr. Saroj Kumar

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間27分

ジャンル:サタイア
キーワード:マラヤーラム映画界、内紛、映画人組合、隠し子、メガスター、ITDレイド、名誉将校、殴打事件、プロデューサー銃撃、超人ヒーロー

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/03/padmasree-bharat-dr-saroj-kumar.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
サロージ・クマール(Sreenivasan)はマラヤーラム映画界を代表するスターでかつアイドル。しかしここのところフロップが続いており、人気の陰りは誰の目にも明らかなのだが、傲慢なふるまいを止めようとしない。彼は新進監督アレックス・サミュエル(Fahad Fasil)と組んだ新作の撮影現場で、共演相手のシヤーム(Vineeth Sreenivasan)という若手俳優に無茶な難癖をつけ、撮影をボイコットする。アレックスとプロデューサーのパッチャーラム・バシ(Jagathy Sreekumar)は、何とかサロージを宥めようとするが上手くいかない。困った二人は、逆にシヤームを主役に据えた別の映画に取り掛かろうとする。怒ったサロージはあの手この手でこの企画を妨害しようとする。

マラヤーラム映画界に特有の奇習、過去のヒット作の人気キャラを流用して(往々にして監督・脚本などはオリジナルとは別人が手がけ)全く新しい作品を作るという手法による一作。本作は Udayananu Tharam (Malayalam - 2005) Dir. Rosshan Andrrews に登場した悪役、汚い手を使って成り上がった俳優サロージ・クマールというキャラを、オリジナルと同じくシュリーニヴァーサンが演じたもの(脚本もシュリーニ自身が手がけている)。

1956年生まれ、1970年代後半から活躍するベテランのシュリーニヴァーサンは、コメディを得意とするが、コメディアンという言葉では括りきれない才人。オフスクリーンでも時折鋭い映画界批判を行うことがあり(一例としてこちらなど参照)、かなりどぎつい風刺ネタでも、この人がやると文句をつけにくいという面があるのかもしれない。キャラ頂きの元となった Udayananu Tharam には、モーハンラールが演じる万年助監督の人間ドラマがあって、スパイシーなお笑い悪役としてシュリーニ演じるサロージ・クマールがいたわけだが、本作では人間ドラマはなくなり、ほぼ100%風刺の連打となった。今回のおちょくりの対象はマラヤーラム映画だけに限定されず、広くサウス映画界や政界に及んでいる。たとえば「ドクター●●●クマール」なんて名前の人物に隠し子モチーフが加わったとなれば…(略)。それから、自宅に呼びつけたプロデューサーを至近距離から銃撃するなんて…(汗)。お約束のラジニの物真似もたっぷりと。

もちろん、主な標的はマラヤーラム映画界である。例えば、映画人組合による特定俳優の排除とか、名誉将校の地位を得ようと躍起になるスター、往年の名作の劣化リメイク、ファンクラブ会員の強制動員etc。各モチーフにはオタク心を刺激される。ただ、言わせてもらえば、どのネタもちと古臭い。マ映画自体がこの数年で大きく変わったのに、それを無視して、批判対象も批判の手法も7年前の Udayananu Tharam の時点でストップしちゃってるんだな。それと、トップスターである主人公を断罪するのに、ムケーシュ演じるプロデューサーが、「お前のような害虫が居座っているからマラヤーラム映画界が健全に発展できないのだ」というような意味のことを面と向かって言う、非現実的で杜撰なシーンがあって、ちょっと萎えてしまう。これは手抜きだ。こんなあり得ない性急な台詞ではなく、映画全体でメッセージを発するべきだっただろう。なんで、興味深いが心からは笑えない、そんな一作になってしまったのだ、残念なことに。

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ゲストで登場のカワイ子ちゃんたちの名前がミーラ・ナンダン以外特定できなかったとは、俺もまだ修行が足りん。

投稿者 Periplo : 00:19 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年02月24日

PJ2012-30:Asuravithu

昨年の夏以降、あまりに色んな事がありすぎて途絶えてしまっていた2012年マラヤーラム映画の総まくり。さすがに2014年に入ってもダラダラ続けるのは莫迦みたいだ。とりあえず、テキストを既に用意してあったもの、どうしてもこれには触れておきたいと思ったものに絞り込んで、あと数回でシリーズを終えようと思う。そしてすぐに2013年のまとめに入るつもりでいる(キリッ。

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Asuravithu

Director:A K Sajan
Cast:Asif Ali, Samvritha Sunil, Vijaya Raghavan, Lena, Maqbool Salmaan, Master Ganapathy, Jagannath Varma, Pala Charlie, Baburaj, Siddique, Harishree Ashokan, Anil Murali, Rekha, Kalsala Babu, Ronedavid Raj (Dr. Roni), Jiya Irani, I M Vijayan, Becky Thomas, Vidyalakshmi, Seema G Nair, Mehul James

原題:അസുരവിത്ത്
タイトルの意味:Devil’s seed

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間29分

ジャンル:クライム・アクション
キーワード:修道院、コーチン、ユダヤ人マフィア、リベンジ、クリスチャン、犯罪目撃者

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/03/asuravithu-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
ドン・ボスコ(Asif Ali)は修道院に寄宿し神学校で学ぶ孤児。バックウォーターの渡船に乗って働くマーティ(Samvritha Sunil)は、彼に思いを寄せている元気な娘。ドン・ボスコの運命は、用をいいつかって出かけたコーチンで、マフィアによる殺人の現場を目撃したことから、予期せぬ変転を迎える。

何でも本作は、同じ監督による Stop Violence (Malayalam - 2002) の続編なのだそうだ。正編はそのうち気が向いたら観ようかとも思っていたが、続編の方を先に観てしまって完全にその気をなくした。まあ、正編を観ないと続編の意味が分からない、という性格のものではなかった。大体5分に1人ぐらいの割合で人が殺される残虐映画。にもかかわらずダレダレに退屈で2時間半を見通すのが辛かった。ストーリーは古臭くて黴が染み出てきそうな、ぽっと出の若造が簡単に暗黒街の帝王になってしまうという劇画調。しかし同じ荒唐無稽バイオレンスでも、これがテルグ映画なら、キャスティングさえ誤らなければ充分に元の取れる娯楽作になっていたはずだ。ロマンスでもキャバレー・シーンでも何でも入れて適当に色をつければいいところを、何を勘違いしたのかキリスト教の象徴を散りばめたド深刻路線+田舎者憧れのスタイリッシュ映像でまとめようとして、「ポットボイラー」とは程度遠いものになってしまった。最大の問題は主演のアーシフ・アリが全然ヤクザに見えないことにあった。2009年にデビューして、2011年からものすごい勢いで出演しまくって、若手のホープとみなされているが、これといった当り役はまだない。悪役から自身の役でのカメオまで、声を掛けられたらどこでも出張る、「何でも屋のアリちゃん」と筆者は命名しているが、本作では極道ファッションで肩をいからせて凄めば凄むほど無理が感じられていたたまれない気分にさせられた。そして例によってだが、唯一の救いはサムちゃんことサムヴリタ・スニルさんの愛らしさにあったのだった。なお、本作は1968年の同名作品とは一切関係がない。

本作ではマンムーティの甥のマクブール・サルマーンが小さな役でデビューを果たしたが、これを見ただけではまだ海のものとも山のものとも判断できない感じだった。

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まっ、なにはともあれサムちゃんさえ出ていりゃね…。

投稿者 Periplo : 18:51 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年02月05日

【日程変更】マラヤーラム映画新作上映1402

2月14日正午現在、大雪のため開催が微妙な状態になっている。当日まで主催者公式サイトを確認されたい。
[追記]日程変更が確定。下記を参照のこと。

“Visuals can be deceiving” というのが現地での本作のキャッチコピー。「カメラは嘘をつく」とでも訳すべきか。むしろ「人生に必要な知恵はすべて映画で学んだ」の方がいいだろうか。

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Drishyam (Malayalam - 2013) Dir. Jeethu Joseph

原題: ദൃശ്യം
タイトルの意味:Sight, Visual, Seeing, View
タイトルのゆれ:Dryshyam, Dhryshyam, Dhrysyam

Cast:Mohanlal, Meena, Kalabhavan Shajon, Ansiba Hassan, Baby Esther, Asha Sarath, Siddique, Roshan Basheer, Irshad, Kunchan, Sukumar, Shobha Mohan, Aneesh G Nair, Sreelakshmi, Kozhikode Narayanan Nair, P Sreekumar, Kalabhavan Rahman, Koottikkal Jayachandran, Kalabhavan Haneef, Neeraj Madhav, Baiju, Pradeep Chandran, Antony Perumbavoor

公式トレーラーhttp://youtu.be/eMASubc1y_k

■日時:2014年2月15日、午後3:00開映2014年2月23日、午後4:00開映
■料金:大人1900円、10歳以上の子供1000円
■字幕:なし
■上映資材:DCP
■上映時間:ネット情報によれば約2時間44分
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/access/

■映画公式サイト:http://www.drishyamthemovie.com/
■主催者公式サイト(FB):https://www.facebook.com/CelluloidJapan
■参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/01/drishyam-malayalam-2013.html

※上映に際しては途中10分程度のインターミッションあり。別料金でインド・スナックのサービスあり。また、ペットボトルなどの自販機も会場にあり。

※事前予約をお勧めします。申し込みフォームの入り口はこちら。万が一の直前の急な変更や今後の案内などもメールで受信できるようになります。

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【前半部の粗筋 - ネタバレ30パーセントぐらい】
ケララ中東部の山岳地方、イドゥッキ郡トドゥプラの小村ラージャッカードに住むジョージクッティ(Mohanlal)は孤児として育ったが、現在は妻のラーニ(Meena)、長女のアンジュ(Ansiba Hassan)、次女のアヌ(Baby Esther)と共に幸せな家庭生活を営んでいた。彼は農業に従事しながら、一方で村のケーブルテレビ局も経営している。そして無類の映画好きでもあり、一人ビデオを観るためにそのテレビ局の小さなオフィスに籠もることもしばしばあった。低学歴ながらウィットを持つ彼には、日常のさまざまな局面で、これまでに観た世界の映画のプロットを応用するという子供っぽい癖もある。

ほとんどの村人たちと良い関係を築いているジョージクッティだったが、溜り場の食堂でサハデーヴァン巡査(Kalabhavan Shajon)とちょっとした諍いを起こし、サハデーヴァンは彼を目の仇とするようになる。

一家の平穏な生活は、長女のアンジュが林間学校に出かけた際に遭遇したとある出来事によってひっくり返される。家族を守るためのジョージクッティの闘いがそこから始まる。

【さらに踏み込んで 40パーセントぐらいまで書いちゃった】
それは不良青年ワルン(Roshan Basheer)の突然の出現がきっかけだった。彼は林間学校中にアンジュが浴室を使っているところを携帯電話で盗撮し、それをインターネット上で公表すると脅しをかけてきたのだ。その翌日からワルンは行方不明となる。

ジョージクッティの一家は、ワルンの失踪に何らかの関わりをもつものとして、真っ先に警察から目を付けられた。幼い次女のアヌすらが、容赦ない尋問に耐えなければならなかった。サハデーヴァン巡査との過去の小競り合い、そしてワルンの母ギータ・プラバーカル( Asha Sarath)が警察の高官であることなど、状況は圧倒的に不利だった。ジョージクッティと警察との抜きつ抜かれつの神経戦がここから始まる。

【かなりヤバいネタバレなんで、知りたい人だけマウス指定で反転させて読んでくだはい】
実はトリック部分は、東野圭吾原作で2008年に公開された『容疑者Xの献身』からのパクリだという説がある。しかもこの日本映画については、一昨年のアジアフォーカスで上映された『カハーニー/物語 / Kahaani』のスジョイ・ゴーシュ監督がヒンディー語で正式なリメイクを行うと言明しており(こちら参照)、めんどくさい事になりそうな予感もする。自ら脚本をしたためたジートゥ・ジョーセフ監督自身はインタビューでこれを否定し、『容疑者Xの献身』はまだ観たことがないと述べている。

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【蛇足っぽいトリビア】
昨年2013年に158本が公開されたマラヤーラム長編劇映画の中で、日付的には最後から3番目の12月19日の封切り。怒濤のブロックバスターとなり、同年の最大ヒットどころか、あの Twenty:20 (Malayalam - 2008) Dir. Joshiy をぶっちぎって、マラヤーラム映画史上最大の売り上げを記録し、現在も更新中。今月に入り、連続上映45日超で興収50カロール・ルピー突破というニュースも入ってきている。時に200カロール超えが出ることもあるヒンディー映画などと比べればかわいい数字だが、シネコンの数がそれほど伸びず、入場料100ルピー以下の従来型館が主流のケララではこれは凄いことなのだ。ちなみに本作の製作費はこの記事によれば3.5カロール。例えば先月上映したテルグ映画 Yevadu のそれが35カロールなどと言われているので、10分の1の規模ということになる。

既にヒンディー、タミル、テルグ、カンナダのリメイクが決まっており、ヒンディー版とタミル版はカマル・ハーサンが、テルグ版はヴェンカテーシュが、カンナダ版はラヴィチャンドランが主演すると発表されている。

監督のジートゥ・ジョーセフは、本作が5本目となる、新人以上中堅件未満という感じの立ち位置。デビュー作 Detective (Malayalam - 2007) は、マラヤーラム映画では珍しい本格的な推理ものと称賛された(ただし興行的にはイマイチだった)。以前にここでちょっと書いた Mummy and Me (Malayalam - 2010) は、母娘の葛藤を描いたホームドラマ。ケララ版「じゃじゃ馬馴らし」My Boss (Malayalam - 2012) は政治的に微妙な線。昨年公開のもう一本 Memories (Malayalam - 2013) は、かなり当たったトラウマ系スリラー。本作公開に当たってのインタビューはこちら

本作で特筆すべきなのは、単にヒットして金を稼いだということだけでなく、観客と批評家のどちらもが高く評価したこと(これはマラヤーラム映画では結構珍しい)、それから、ここ数年マラヤーラム映画界を席巻しているニューウェーブ的な技法(凝った映像、多重ストーリーライン、都会性etc.)とは無縁の、正統的な語りで観客を惹きつけたという2点。後者については、今後のマラヤーラム映画の方向性にも影響を与えそうな予感もする。モーハンラールを始めとしたアンサンブル・キャストの演技も絶賛されてはいるのだが、本作には「なんといっても脚本が主役」との呼び声が高いからだ。この「脚本が主役」というのが、鼻息の荒いニューウェーブ派の人々の旗印だっただけに(そして、ニューウェーブ信奉者から「ギャラの高すぎる金食い虫」と批判されているモーハンラールが主役であるということも相まって)、なんとも皮肉なことに思える。

日本人の観客にとってはもちろん、昨年リバイバル上映も成った『ムトゥ』のヒロイン、ミーナとのスクリーン上での再会が特筆すべきポイントだろう。『ムトゥ』のインドでの封切りが1995年、日本での映画祭公開が97年(劇場公開は翌98年)。現地封切りから数えると18年ぶりのミーナが拝めるのだから(ミーナ出演作はその後も日本で公開されたが、いずれも『ムトゥ』から過去に遡る作品だった)。もちろんミーナちゃんも変わった。2010年に3度目の来日をした時(その際のスナップ)と比べても、さらに一層どぉーんと肥えてオカミさんっぷりにも磨きがかかったが、それでもやっぱり可愛いんだよねえ。これを印度の神秘と言わずして何と言う。

さらに、本作の舞台にして同時にロケ地でもある、イドゥッキ郡トドゥプラの魅力的な風景にも注目してほしい。ケララ中部の内陸部、西ガーツ山脈に抱かれた比較的冷涼な高地で、ここ6,7年でマラヤーラム映画のロケ地として大ブレイクしている。椰子の木陰にヌル~い微風が吹き渡るという、よくあるイメージとは違うケララの魅力が感じられると思う。

【主要登場人物】
以下は役名(カッコ内は俳優名)と簡単なプロフィール。イメージは必ずしも本作のスチルからではない。また、筆者自身も未見の状態で各種のレビューから拾った情報を元に書いているので正確ではないところがあるかもしれないがご容赦を。

DrishyamLal.jpgジョージクッティ(モーハンラール)
マラヤーラム語ではジョーッジュクッティと発音される。孤児として育ち、学校は4年生(5年制初等教育の4年目、大体9歳ぐらい)で挫折した。そんな訳で新聞を丹念に読むことも苦手だが、それを特に苦にしてもいないし、世の出来事への批評眼はかなり鋭い。教育がなくとも頭の回転は早く、警察を相手にした家族を守るための闘いにもひるむことがない。普段の彼は勤勉で、大層な倹約家でもある。いつの日か村の映画館を買い取って、自分自身の劇場を経営するという夢があるからだ。そんな彼も、二人の娘には可能な限りの最上の教育を受けさせたいとの親心を持っている。

DrishyamMeena.jpgラーニ(ミーナ)
ジョージクッティのケーブルTV局は、彼女の名前からラーニ・ヴィジョンと命名された。4年生どまりの夫を何かにつけてからかうラーニは、10年生(中等教育の2年目、大体15歳ぐらい)でドロップアウトした。消費が大好きな彼女は、人並みに外食したり服を買ったりしたいと願い、時々夫と揉めることもある。しかし、娘たちに高い教育を受けさせたいと願う点では彼との間で意見の相違はない。

Ansiba.jpgアンジュ(アンシバ・ハーサン)
ジョージクッティの長女。11年生。

esther.jpgアヌ(ベイビー・エステル)
ジョージクッティの次女。7年生。

AshaSarath.jpgギータ・プラバーカル(アーシャ・シャラト)
インスペクター・ジェネラル(IGP)。警察の階級についてはこちら参照。ワルンの母親。捜査の中でジョージクッティ一家を激しく追及する。

DrishyamSiddique.jpgプラバーカル(シッディク)
ギータの夫、ワルンの父親。

RoshanBashir.jpgワルン(ローシャン・バシール)
プラバーカルとギータの間の息子。甘やかされた不良。

Shajon.jpgサハデーヴァン(カラーバワン・シャージョーン)
村の巡査。ジョージクッティとの間で確執がある。

NarayananNair.jpgスレイマン・コーヤ(コーリコード・ナーラーヤナン・ナーイル)
食堂のオーナー

PSreekumar.jpg?(Pシュリークマール)
ラーニの父。

ShobhaMohan.jpg?(ショーバ・モーハン)
ラーニの母。

Irshad.jpgスレーシュ・バーブ(イルシャード)
サブ・インスペクター(SI)。

Kunchan.jpgマーダヴァン(クンジャン)
巡査長。

NeerajMadhav.jpgモーニッチャン(ニーラジ・マーダヴ)
ジョージクッティのケーブルTV局の助手。

AneeshMenon.jpg?(アニーシュGメーノーン)
ジョージクッティの義弟。

Antony.jpgアントニー(アントニー・ペルンバーヴール)
マラヤーラム語ではアーンタニと発音される。緊密で無駄がなく、全ての登場人物の全ての言動に意味があると評される本作中で、唯一の謎キャラ。アントニー・ペルンバーヴールは本作の製作も担当したアーシルワード・シネマズの代表。と言っても、ビジネスマンというのでもなく、実はモーハンラールの運転手をしていた人。つまり実質的にはモーハンラールのホームプロダクション会社の世話人というところらしい。

Drishyam4.jpg
はっ、ニューウェーブ?そんなごちゃごちゃしたことせんでも、俺様が本気出せばこんなもんよ!!と言う(かのような)ラルさん

投稿者 Periplo : 03:49 : カテゴリー バブルねたkerala
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