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2014年03月26日

PJ2013-02:Celluloid

実際のところ、こんなに美人の奥さんがいたのに、ダニエルは彼女を主演女優にしようとは思わなかった、そこにこそ一番のアイロニーがありはしないか。

一般劇場での封切りは印度映画100周年の節目の年である2013年の2月。しかしセンサー認証は前年度中に済ませてしまっており、2012年作品を対象としたケララ州映画賞の各部門を総嘗めにした。それが封切りの追い風となり、同時に、本来の2012年作品の秀作群が賞から閉め出された格好になり、その辺も気に食わんのだ。

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Celluloid

Director:Kamal
Cast:Prithviraj, Mamta Mohandas, Chandni, Sreenivasan, Sreejith Ravi, Thalaivasal Vijay, Chembil Asokan, Sruthi Dilip, Ramesh Pisharody, Jayan, Nedumudi Venu, Siddique, Indrans, T G Ravi, Thampi Antony, Irshad, Nandu Madhav, Jayaraj Warrier, Manikandan Pattambi, Madhan Bob

原題:സെല്ലുലോയ്ഡ്
タイトルの意味:映画の代名詞としての単語だが、無声映画期には「bioscope」という語の方が一般的だった。また、「Photo Play」という語も使われていたようだ。より直接的にフィルムの素材を示す「celluloid」が採用された理由は本編を見れば分かるようになっている。

DVDの版元:Horizon
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間7分

ジャンル:人間ドラマ
キーワード:無声映画、カースト、顕彰、政争、歴史、トラヴァンコール

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/07/celluloid-malayalam-2013.html

お勧め度:★★★☆☆

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【ネタバレ度95%の粗筋】
20世紀前半のトラヴァンコール藩王国。カンニャークマーリ地方に生まれたJCダニエル(Prithviraj)は、最新の娯楽として人気を集めつつあった活動写真に魅せられ、自ら製作をしようと考えるようになる。彼は、「インド映画の父」ダーダーサーハブ・ファールケー(Nandu Madhav)、そしてタミル人として初めて映画製作に携わったランガスワーミ・ナタラージャー・ムダリヤール(Thalaivasal Vijay)に教えを乞う。一通りの技術を習得した彼が考えたのは、当時主に作られていた神話映画ではなく、同時代を舞台にしたソーシャル映画の製作だった。その作品 Vigathakumaran : The Lost Child は、彼がトリヴァンドラム郊外に設立した Travancore National Pictures というスタジオで撮影されることになった。主演男優は彼が兼任することになったが、主演女優が問題だった。ボンベイからアングロ・インディアンの女優を連れてきたものの、ダニエルの足元を見た法外な要求と並外れた我儘ぶりに嫌気がさして追い返してしまう。彼が目を付けたのはダリトの芸能であるカーッカラッシ・ナーダガムの舞台で演じていたローサンマ(Chandni)だった。彼はローサンマにローシの芸名を与えて主演女優とする。日給は5ルピーと決められた。ダリト・クリスチャンとして(改宗していないプラヤルであったとする説もあり、紛糾している)最底辺で暮らしていたローシは、いきなり投げ込まれた新しい環境に戸惑いを見せたが、ダニエルと妻のジャネット(Mamta Mohandas)は彼女に分け隔てなく接し、自信をもって演技できるように励ました。

数々の困難のうちにも Vigathakumaran は何とか完成し、1930年に公開となった(1928年説もあり、紛糾している)。しかし封切りの記念上映にやってきたトラヴァンコール藩王国の郷紳たちは、ダニエルに招かれて同じ場にきたローシを追い出し、さらにはローシが劇中でナーイルの女性を演じていることを知るや激高し、騒乱を起こす。結局興行は中止となり、多額の負債を背負うことになったダニエルの、映画作家になるという夢はそこで絶たれてしまう。この事件の後、ローシはさまざまな嫌がらせを受け、ついには家を焼かれて行方不明になってしまう。

それから30年以上たった1966年。Chemmeen (Malayalam - 1965) Dir. Ramu Kariat がマラヤーラム映画として初めて大統領金賞(今日の国家映画賞最優秀作品賞にあたる)を獲得したニュースが流れていた。映画ジャーナリストのチェーランガーット・ゴーパーラクリシュナン(Sreenivasan)は、ふとしたきっかけから Vigathakumaran という作品がかつて存在したことを知り、調査を始める。この時点で、最初のマラヤーラム映画は初トーキーである Balan (Malayalam - 1938) Dir. S Nottani というのが定説であり、州の映画アカデミーもこれを採っていた。ゴーパーラクリシュナンは老いたダニエルとジャネットを探しあて、Vigathakumaran について聞き出す。夫妻はタミル・ナードゥ州南端のアガスティーシュワラムに逼塞しており、ダニエルはほぼ失明に近い状態で伏せっていた。ダニエルは重い口を開き、製作から公開に至る経緯とその後の人生を語り、さらにフィルムが現存していないことを告げる。

ゴーパーラクリシュナンは、ダニエルの業績が正当に評価されること、そして困窮している彼に何らかの年金が支給されるようにすることを目的に、ケララ州政府文化局に掛け合う。しかし、文化局の要人マラヤーットゥール・ラーマクリシュナン・アイヤル(Siddique)は取り合わない。彼によれば、フィルムが現存しないこと、無声映画なので言語の区別がしにくいこと(当時の流行にしたがってサンスクリット的な語彙を使った Vigathakumaran というタイトルもまた不利に働いた)、ダニエルが今はタミル・ナードゥ州となっている地域の出身であること、現在の住まいもタミル・ナードゥ州内であること、これらを考え合わせるとケララ州による顕彰や年金支給は難しいというのだ。ゴーパーラクリシュナンは議論の末にアイヤルが漏らした、「ナーダ―ルが作ったとかいう映画になぜそれほどに拘るのか」という言葉で、これ以上の交渉の余地のないことを悟る。結局のところ、彼は自分と同じバラモンの出身であるTRスンダラムが製作したという理由で、Balan を最初のマラヤーラム映画としておきたいだけなのではないか。その後ゴーパーラクリシュナンは時の州首相カルナーカランにも直訴をしたが、州首相は彼を補助金を掠め取ろうとするゴロツキであるかのように見なして追い払ったのだった。こうした一連の探索の中で、ゴーパーラクリシュナンは Vigathakumaran の製作にも参加していたスンダララージ(Sreejith Ravi/T G Ravi)による二本目のマラヤーラム映画 Marthanda Varma のリールが倉庫で朽ちかけているのを発見し、プネーの国立フィルム・アーカイブに収蔵させることに成功している。

時は下り、1975年。ゴーパーラクリシュナンの粘り強い活動がついに実を結び、ケララ州映画振興公団の設立を機に、ダニエルはついに「マラヤーラム映画の父」という公式のステータスを得ることになった。しかしその同じ年の4月にダニエルは貧窮のうちに他界していた。そしてさらに四半世紀後の2000年、ダニエルの伝記ドキュメンタリーが公開されることとなり、記念行事に招かれて登壇したのはダニエルの末子ハリス(Prithviraj)だった。既に初老の域に達しているハリスは、壇上で Vigathakumaran のフィルムの消失にいたる事情を初めて明かしたのだった。

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【寸評】
勉強になる、しかし楽しくない!というのが本作に対するシンプルな感想。映画の内容も、それからこの映画の公開や受賞をめぐる騒ぎも、どれもかなり政治的なものだった。題材となった1930年代から今日にいたるまでのケララのカースト間の緊張関係が大きな影を落としているようで、カツドウ屋讃歌とはかなり違ったものになっている。初期の映画人を扱った映画が、必ずカツドウ屋讃歌でなければならないという決まりなどないのは分かってるけど。

映画の創始期を扱った作品は映画大国インドにしては少ないものの、たとえば、ダーダーサーハブ・ファールケーを描いた Harshchandrachi Factory (Marathi - 2009) Dir. Paresh Mokashi などが有名。これは小品ではあったけれど、インド映画の船出を闊達で朗らかなユートピア的空間として記念したい(実際がどうであったのかは分からないが)という製作者の意図は十分に伝わってくるものだった。マラヤーラム映画としては Bioscope (Malayalam - 2008) Dir. K M Madhusudhanan というのがあった。これは1907年にトリシュールで初めて活動写真の興行をしたと言われるワルンニ・ジョーセフに光を当てたもの。ただし、完全に芸術映画のフォーマットで作られており、あまり印象に残るものではなかった。

本作の監督カマル氏は80年代後半から活躍しているベテランで、Perumazhakkalam (Malayalam - 2004) に代表されるようなエモーショナルなメロドラマに定評がある。一作ごとの浮き沈みはあるものの、ファーシル監督などと違い、まだまだ観客からの支持を失っていない名匠。

本作でカマル監督が描こうとしたテーマは大まかに3つあると思う。

A.ダニエル、ローシ、スンダララージといった創始期の映画人の忘れられた行跡に光を当てる
B.インドの他地域でも例を見ないほどに過酷だったという20世紀前半のケララのカースト差別を糾弾する
C.ダニエルの顕彰を拒んだ、20世紀後半の文化人たちの根強いカースト主義を批判する

そのためにカマル監督が採ったのは、ドキュメンタリー的手法とお得意のメロドラマの折衷だったが、結果的にはどちらも中途半端なものになって不満が残った。そして、全編を見終わって不必要なまでにいがらっぽい味を残すのが、3番目に挙げた文化人サークル内でのカースト派閥抗争なのだ。本来これは一般の観客にとっては一番どうでもいい要素なのだが、現地では異様なほどの政治的論争を呼び、1970年代のカースト対立が現在もまだしぶとく生き残っていることをうかがわせ、カマル監督は結局ダニエルの物語にこと寄せてこうした派閥政治的な部分でのアピールをしたかったんじゃないかとまで思わせるものがあった。

次に、本作でのダニエルのキャラクター造形について見ると、

1.映画への情熱に取り憑かれた夢追人
2.カースト差別に反対するヒューマニスト
3.マラヤーリーとして初めて映画を作ることに意味を見いだした地域ナショナリスト

の3つが強調されている。ここでは史実に忠実かどうかは問わない(史実との合致という観点で細かい検証をしている人もいる)。映画中のフィクショナルなキャラクターとしてこれらに説得力があるかというとちょっと疑問。

1については、映画に失敗した後はがらりと方向性を変えて歯科医になるなど、柔軟性がありすぎて、映画愛の人に見えないのが残念。映画を金儲けの手立てとしか見ていなかったとまでは思わないが、むしろ現在のインドにも数多くいる、起業家精神に富み、あれこれとチャレンジするのが好きなベンチャー野郎ではなかったのかと思えてくる。

2について、ダリトの少女ローシを女優として抜擢し導くシーンなどでは非常に理想主義的な美しい台詞が口にされるのに、封切り失敗後の冷淡さはなんだろうと訝しく思われる。そもそも20世紀前半のケララの社会状況の中で、ダリト女性を映画の主役にしたら起こるであろうトラブルが予測できなかったというのが現実的でない。冒頭では冗談めかして書いたが、妻を女優として起用しなかったということにも、良家の子女がカメラの前で演技するなど論外、アングロ・インディアンや下層の女にやらせる仕事だろう、というような当時の意識が透けて見える。ダニエルが、というよりも、この作品自体が、「最初のマラヤーラム女優」に対しての興味を途中から失い、メロドラマ的ナラティブを不完全燃焼で終わらせてしまっているのは、本当に不思議だ。

3の、地域ナショナリストとしての描写にもちょっと無理を感じる。ダニエルが何度か口にする「マラヤーリー」としてのプライドだが、これは現代の政治的正義を歴史的な過去に無理に当てはめていないか。Ozhimuri のレビューでも書いたが、カンニャークマーリ地方は古くからトラヴァンコール藩王家の領地で、マラヤーラム語話者とタミル語話者が混住する地域だった。ダニエルがタミル語とマラヤーラム語双方の話者であることは劇中でも明示される。南インドにおいて民族集団としてのマラヤーリーはタミル人とはもちろん別のものとして存在したが、言語をベースにした強い地域ナショナリズムが、1930年代のトラヴァンコール藩王国のナーダール・クリスチャン(タミル・ナードゥ州ティルネルヴェーリ地方からの移民の末裔)であるダニエルにあったと考えるのは難しくはないか。

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まあ、いろいろと文句を垂れたが、マラヤーラム映画史に興味があるものには大変に勉強になるコンテンツだし、例によって映像美は極上だし、決して駄作ではないので一度は見ても損はないと思う。

追記:なお、映画中にあるようにダニエルの「マラヤーラム映画の父」としての地位はその死後に公式なものとなったが、故意にか、うっかりとなのか、これが忘れ去られることも時々ある。2013年に開かれた第18回ケララ国際映画祭のパンフレットには「75歳になったマラヤーラム映画」という記載があったという。75歳というのは、初のトーキーであるBalan (Malayalam - 1938) の数え年である。カマル監督はこれに苦言を呈し、主催者代表であるプリヤン先生が謝罪・訂正するという一幕もあった。同映画祭には他にも色々と揉め事があって、主催団体である映画アカデミーの代表の地位からプリヤン先生が辞任するかもという憶測も流れている。

投稿者 Periplo : 19:42 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年03月22日

マラヤーラム映画新作上映1404

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1983 (Malayalam - 2014) Dir. Abrid Shine

原題:1983 നയന്റീന്‍ എയ്റ്റി ത്രീ

Cast:Nivin Pauly, Anoop Menon, Nikki Galrani, Joy Mathew, Kalabhavan Prajod, Jacob Gregory, Saiju Kurup, Neeraj Madhavan, Sanju, Srinda Ashab, Dinesh, Rajeev Pillai, Seema G Nair, Valsala Menon, Ambika Mohan, Shereej Basheer, Subbulaxmi, Bhagat Abrid, etc.

公式トレーラーhttp://youtu.be/bROIs4zMgjo
ソング全曲リスト動画http://www.youtube.com/watch?v=0qmLUrhwVxg&feature=share&list=PLG4Yw4HBlnx-Oe1PURptATWfZMqT5YO6v

■日時:2014年4月5日、午後3:00開映
■料金:大人1900円、10歳以上の子供1000円
■字幕:英語
■上映資材:DCP
■上映時間:ネット情報によれば約2時間18分
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/access/

■主催者公式サイト(FB):https://www.facebook.com/CelluloidJapan
■参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/02/1983-malayalam-2014.html

※上映に際しては途中10-20分程度のインターミッションあり。別料金でインド・スナックのサービスあり。また、ペットボトルなどの自販機も会場にあり。

※事前予約をお勧めします。申し込みフォームの入り口はこちら。万が一の直前の急な変更や今後の案内などもメールで受信できるようになります。

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【テキトーな粗筋】
トリヴァンドラム近郊の眠ったような村、ブラフママンガラム。1983年のクリケット・ワールドカップでのインドチームの優勝は、ローティーンのラメーシャンに巨大なインパクトを与え、人生を変えることになった。同じ年頃の無数の少年たちと同じく、彼もまたクリケット選手となりナショナルチームで活躍すること(この時代、クリケットのプロリーグは存在していなかった)を熱望するようになったのだ。

村で機械修理工場を営む父(Joy Mathew)は、息子がエンジニアとなって身を立てることを望んでいた。しかし、クリケットに熱中するラメーシャンは、元々は優秀だったというのに、学業に身が入らなくなりSSLCの成績も思わしくなく終わり、ついには大学進学のためのPDCから振り落とされてしまい、父の町工場で働くことになる。

青年となったラメーシャン(Nivin Pauly)には、幼馴染みの恋人マンジュラ(Nikki Galrani)がいたが、結局彼女はエリートコースに乗れなかったラメーシャンを見限り、在米NRIと結婚してしまう。そして、仲の良い友人たちとの草クリケットでは無敵のエースのラメーシャンだったが、さらにその上を追求することの困難さを身をもって知ることになる。

周囲のアレンジでスシーラ(Srinda Ashab)と結婚したラメーシャンは、やがて一人息子カンナン(Bhagat Abrid)を授かる。ラメーシャンは成長していくカンナンにクリケッターとしての素質を見出し、有能なコーチと評判が高いヴィジャイ(Anoop Menon)に息子を託すことにする。

【見どころ予想と予習ポイント】
1月31日に現地で封切られ、重々しい大スターの出ていない作品ながら高評価を獲得した。これを書いている3月中旬現在も上映が続いており、「2014年最初のヒット作品」との太鼓判が押された。

いわゆる「スポコン」とは趣を異にするものであるようで、こちらのレビューによれば、「クリケットと友情と愛」の物語なんだそうだ。別のレビューによれば、「溢れるほどのユーモアと繊細な感情表現とをエレガントにまとめあげた、魅力的な一本」だという。そして、目を通した多くのレビューが言及していることだが、1983年から30年に渡って語られる田舎の平凡な男の半生記に、同時代のインドの歴史的な出来事が絶妙に織り込まれている、という。とにもかくにも、今回上映には英語字幕がつくというので、ホントに安堵。

なお、いち早く本作をバンガロールで鑑賞された川縁先生(本作レビューはこちら)によれば、クリケットのルールについての知識は必須ではないけれど、1983年以降のクリケットW杯でのインドチームのパフォーマンスについては押さえておくべし(特に2003年と2011年の大会)とのこと。また、1983年にインド・ナショナル・チームのキャプテンだったカピル・デーヴや、「クリケットの神様」サチン・テーンドゥルカル(2013年11月の引退スピーチの出だし部分は必読)についても知っておいたほうがよいとの助言をいただいている。

監督のアブリド・シャインは本作がデビュー。女性誌のファッション・カメラマンとしてスタートし、ラール・ジョース監督の助手をしていたこともあるという。音楽は、ここ2,3年でめきめきと頭角を現して売れっ子になっているゴーピ・スンダルUstad Hotel ではスマッシュヒットだったが、Ee Adutha Kalathu ではパクリが指摘されたりもして、なかなかに目が離せない。

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【主要登場人物】
以下は役名(カッコ内は俳優名)と簡単なプロフィール。イメージは必ずしも本作のスチルからではない。また、筆者自身も未見の状態で各種のレビューから拾った情報を元に書いているので正確ではないところがあるかもしれないがご容赦を。

1983NivinPauly.jpgラメーシャン(ニヴィン・ポーリ)
ニヴィン・ポーリについてはこの間ちょっと書いた。2012年の Thattathin Marayathu、2013年の Neram、2014年の本作と、大ヒットに恵まれている幸運な新進スター。正直なところ、これまでの出演作では演技じゃなく素のままという感じで、芝居に感心したことはないのだが、本作では主人公の30年に及ぶ半生の大部分(一部は子役)を演じ、非常に高く評価されている。

1983NikkiGalrani.jpgマンジュラ(ニッキ・ガルラーニ)
ラメーシャンの幼馴染みの恋人役を演じるのは、本作がデビューとなるニッキ・ガルラーニ。バンガロール出身で、カンナダ映画を中心に活躍する女優サンジャナー(本名アルチャナ・ガルラーニ)の妹。昨年8月のインタビューによれば、本作のクランク・アップを待たずして、既に多くのオファーが舞いこんでいたという。この先、南インド4言語での活躍が予想される。

1983SrindaAshab.jpgスシーラ(スリンダ・アシャーブ)
ラメーシャンの妻となる女性を演じる。22 Female Kottayam (Malayalam - 2012) の脇役でデビュー、本作に至るまでに6本に出演、いずれも主演ではないが、なかなかに癖のある脇役ぶりを見せてくれている。Artist (Malayalam - 2013) でのしっかりものの友人役などがこれまでのところの代表作か。もともとはモデルをやっており、さらにADとして映画製作現場も経験していたという。まもなくタミル映画にもデビューする予定。

1983JoyMathew.jpgラメーシャンの父(ジョーイ・マーテュ)
ジョーイ・マーテュはもともとは舞台で活躍していた俳優&脚本家。なぜか2013年から映画で引っ張りだこ(こちら参照)になって今日に至る。また、舞台劇の強い影響をうかがわせるニューウェーブ作品 Shutter (Malayalam - 2013) で監督としてもデビューし、高評価を得た。

1983SaijuKurup.jpgパッパン(サイジュ・クルップ)
ラメーシャンの友人で草クリケットチームのキャプテン。成人後はクウェートに出稼ぎに行くことになる。サイジュ・クルップは、名匠ハリハラン監督の Mayookham (Malayalam - 2005) での主役という恵まれたスタートを切ったにも拘わらず、ヒーローとしてサバイバルできず、翌年以降ほぼ脇役専門となった若手。 インパクトのある顔立ちを生かしきれない小さな役が多かったが、2012年の Trivandrum Lodge あたりから存在感を増してきている。Hotel California (Malayalam - 2013) での一人二役はちょっと面白かった。

1983AnoopMenon.jpgヴィジャイ(アヌープ・メーノーン)
ラメーシャンの息子カンナンのコーチとして登場する。アヌープ・メーノーンはテレビドラマ俳優からキャリアをスタートし、Pakal Nakshatrangal (Malayalam - 2008) で映画俳優&脚本家としてダブル・デビュー。以降は双方の分野で活躍している。顔はモーハンラールに似ている。ただし劣化コピーっぽい。脚本家としての知的な面が受け入れられているのだろうと長いこと信じていたが、アパレル店の広告塔としてアマラ・ポールと共にポーズしてたりして度肝抜かれた。

1983Gregory.jpgサチン(ジェイコブ・グレゴリー)
ムンバイからやってきた謎の選手として、短いながら美味しい場面があるらしい。ジェイコブ・グレゴリーは、なんでもマラヤーラム語では初めてのオンライン・シットコムだという Akkara Kazchakal のキャラクター、「グリグリ」(グレゴリーのなまったもの)として人気を獲得した。アレッピー生まれだが長らく米国ニュージャージー州に在住していたNRI。同作の映画版 Akkarakazhchakal: The Movie (USA - 2011) で映画デビュー。マラヤーラム映画としては ABCD (Malayalam - 2013) が初出演となる。なかなかに面白い顔で、見ていて飽きさせないものがある。こちらにインタビューあり。

投稿者 Periplo : 00:03 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年03月18日

PJ2013-01:Annayum Rasoolum

天星小輪@柯枝。このイメージの格好よさに痺れて点が甘くなってるのは自分でも分かってる。
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Annayum Rasoolum

Director:Rajeev Ravi
Cast:Fahad Faasil, Andrea Jeremiah, Sunny Wayne, Soubin Shahir, Ranjith, Shine Tom Chacko, Srinda Ashab, Aashiq Abu, Sija Rose, P Balachandran, M G Sasi, Joy Mathew, Vinayakan

原題:അന്നയും റസൂലും
タイトルの意味:Anna and Rasool
タイトルのゆれ:Annayum Rasulum

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間47分

ジャンル:ロマンス
キーワード:デビュー監督、コーチン、ヴァイピン島、フェリー、大型アパレル店、カーッカナード、ポンナーニ、マッタンチェーリ、カーニヴァル、ポルトガル風ギター

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/06/annayum-rasoolum-malayalam-2013.html

お勧め度:★★★★☆

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【寸評】
久々の2時間45分越えの大作、しかも『ロミオとジュリエット』を翻案した(ただし、本作のプロモーションではそれを明確に謳った文言はなかったように記憶しているが)直球の大ロマンスもの。運命の出会いから始まり、コミュニティの違いなどからくる周囲の大反対にあう、そして結末も大体見えている、それでもなかなかに惹きつけて逸らさないものがあった。それは、そう多くはない登場人物の造形が細やかでリアリティがあるのと、舞台となる幾つかのロケーションの詩情溢れる描写によるものと思える。

前者に関して言うと、たとえばファハド・ファーシルが演じるハイヤーのドライバーという職業だ。ここでの主人公ラスールの性格が、この種のドライバー(高等教育を受けていない若者にとってはかなり割のいい、ただし不安定な職業)の典型を活写していて感動した。怖い顔をして何やら深刻そうだが、実は何も考えていない。一転して笑うと人の良さが無防備なまでにむき出しになる。ヒロインに対するストーカー的行為が自分をどのように見せるかにも考えが及ばない自意識の欠如。基本的に純情で気のいい奴なのだが、そうした思慮のなさや不運が積み重なって、徐々に追い詰められていく様子に説得力がある。一方アーンドリヤー・ジェレマイヤー演じるヒロイン・アンナが、大型アパレル店の販売員というのも絶妙。アパレル販売員残酷物語としては Angaadi Theru (Tamil - 2010) Dir. Vasanthabalan という凄まじい作例があるが、ここで描かれる職場はもうちょっと穏健な雰囲気。とはいえ、家計の助けとなるささやかな給金以上の何かをヒロインに与えるものではなく、希望のないモノトーンな日々を送っている。それもあってか、ストーカーもどきとして登場したラスールを、最初こそ迷惑がるものの、結局は命がけで愛し抜くという選択をすることになる。こうした、特にヒロイックでもなく、お手本にしたいような優れた美点があるわけでもない平凡な市井人の恋愛を、観客が応援する気にさせるかどうかが、この映画の勝負の分かれ目だったと思うが、充分に成功している。

上にストーカーと書いたが、インドの恋愛ものにおけるストーカー的求愛行動には注釈が必要だ。欧米型のロマンス映画の常道が対話によって育まれる愛情であるのに対して、インド映画では一目惚れと付きまといというのが典型のひとつとしてある。普通に考えて女子はこれをやられたら気味悪いだろと思うのだが、映画を離れて現実の恋愛のありかたとしても稀ではないという証言もある。と同時に、そもそも自由恋愛というもの、すなわち学校や社会で偶然に巡り合った相手に恋愛感情をもつということ自体がふしだらであり、家やコミュニティの恥である(たとえば、自由恋愛で結ばれた者がいると、その兄弟姉妹が見合いでハンデを負うことになる)という通念も、特に中産階級以下のクラスで根強い。これを分かりやすく見せてくれたのが往年の名作 Aniathipravu (Malayalam - 1997) Dir. Fazil だったが、15年以上たった現在も、大きくは変わっていないようだ。本作ではカップルへの逆風を一層際立たせるためにムスリムとクリスチャンという宗教の違いが設定されているが、これは本質的なものではないし、製作者の意図したテーマはコミュナルな対立ではなかったものと思われる。

上に書いたロケーションの魅力についてだが、特筆すべきはコーチンのヴァイピン島の描写だろう。コーチンの西側に縦に27kmも延びる細長い島で、その南端はフォート・コーチンから指呼の距離、フェリーで10分足らずだが、観光客でにぎわうフォート・コーチンとは対照的に、眠ったような住宅街。ヒンドゥー、ムスリム、クリスチャンが混住しており、車も入れないような隘路がくねくねと続く様子が物語の舞台としてふさわしいように感じられた。一方で、主人公の家族が住むマラバールのポンナニは、ケララ・ムスリムの集住地域のひとつ。寂しげな漁村の風景が印象に残った。

何しろ長いので尻込みされる向きもあるかもしれないが、自信を持ってお勧めしたい一作。ニューウェーブの流行と相まって、年々ランタイムが短くなる傾向にあるマラヤーラム映画だが(統計はないが、体感としては平均値2時間10分程度ではないだろうか)、将来こういう作品が、その長さだけで劇場から閉め出しを食らったりすることにならないように祈りたい。

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投稿者 Periplo : 00:34 : カテゴリー バブルねたkerala so many cups of chai
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2014年03月15日

PJ2013-00:Project 2013 前口上

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2013年3月にコーチン郊外にオープンした巨大ショッピングセンターLuluの中にあるPVRマルチプレックス。ケララでは初のPVRチェーンで9スクリーン、2192席を誇る。こちらの大まかな計算では年間300本の上映が可能という。ケララも本格的なシネコン時代を迎えることになるのか。


さて、恒例のシリーズをまたおっぱじめようと思う。

2013年はマラヤーラム映画にとってはかなり凄い年だった。何といっても年間製作本数(ストレートなマラヤーラム語映画)が158本だ。5年前の2008年に全点潰しなどと息巻いていた時の年間本数は63本。250%の成長率じゃ。作品一覧はウィキペディアのリストに拠っている。

製作本数の多い御三家であるテルグ映画の104本、ヒンディー映画の120本、タミル映画の149本をぶっちぎって堂々のインド第一位。

しかしもちろん、これは手放しでお祝いする性質の記録ではない。スクリーン数が激増した訳でもなければ、州外に販路が開けたわけでもないのに平均で月に13本強が公開されることになり、つまり誰にも見られることもなく無駄死にする作品が増えたということだ。そこそこ名の知られた俳優が出演しながら誰かが実見したという証言が見あたらない幻映画がここにまとめられているが、これなどは氷山の一角だろう。しかしそれでも、堰を切ったような制作意欲の発露というのが、2000年代のマラヤーラム映画を知るものにとっては感慨深いのだ。これだけの製作本数増を促したのは何と言ってもサテライトTV放映権料なのだという。DVD化権の方は大したことないらしい。インフレの進む現在でもマ映画のDVDは一枚100-130ルピー程度で、うまみがあるとは思えないし、この値段ですら出費を渋る消費者も少なくない。一般的に映画とは敵対するものと見なされているTVがこうして映画製作を後押ししているというのは不思議なものだ。

心理的なバックボーンは、ここ数年来のニューウェーブの流行。ともかく、脚本本位制を言い立てて、大スターを起用していなくともプロデューサーを説得できるようになった、というのは大きいようだ。個人的に調べてみたところ、全158本のうち、デビュー監督によるものは78本、つまり約半数ということになる。残りの半数中にも、デビューから2,3年の新人監督によるものが目立った。一方で、プリヤン先生をはじめとする昔日の巨匠や、ランジットなどを代表格とする働き盛りの実力派監督は、あまりパッとしなかった。つまり、監督主義で見るという戦術があまり有効ではなくなったということ。結局、贔屓の俳優(スターだけではなく)を見つけてそれを追いかけるという古典的な方法がストレスを少なくするだろう。

トレンド分析や目立った作品のリストとしては MovieOrange さんのFlashback 2013 - malayalam が、大変丁寧にまとめてくれていてとても参考になる。これに付けくわえるとしたら、ポスト・プロダクション諸施設がチェンナイからコーチンへ緩やかにシフトしているという The Hindu 記事 Mollywood comes home to Kochi ぐらいか。


しかしそれだけじゃつまんないので、ここでは下世話なレベルでの2013年注目の顔について簡単に紹介しとく。4人をピックアップした。

FahadFazil.jpgNivinPauly.jpg

■ファハド ”地獄を見たから今の俺がある” ファーシル
1982年生まれの32歳。以前のまとめで書いたプロフィールに訂正は特にない。経年変化として書いておくべきことは、2012年の4本から2013年の12本へという出演作の増加。マンムーティ6本、モーハンラール5本、プリトヴィラージ4本(うち1本はヒンディー語作品)といったところを引き離して、主演格俳優としてはトップに躍り出た(他のインドと比べれば既存スターのこの本数だって凄いのだけれど)。お蔵入りが日の目をみた旧作や、オムニバス中の短編なども混じるが、ならすと月に1本、こいつの新作が封切られたことになる。この年に封切られたとある作品のレビューを読んで、「ファハドの人気に寄り掛かっただけの安易さ」と責められているのを目にして驚いたものだ。つまり作品の市場価値を上げるためにどうしてもその顔が欲しい、っていうレベルのスターにまでなってるんだな。「脚本が主役」のニューウェーブ映画で頭角をあらわし、「ニューウェーブの顔」となったファハドがスターバリューをもつに至ったというのはなんとも感慨深い。当人はいたってクールに「やっと時代が俺様に追いついたのよ」などと嘯いているが、ともかくこの大車輪状態がいつまで続くのかを見守りたい。

■ニヴィン "てへぺろ顔がデフォルトなもんで" ポーリ
まあ、こいつを取り上げたのは来月上映の 1983 へのご祝儀ってのもあるんだけどね。1984年コーチン生まれの29歳。若者群像映画 Malarvaadi Arts Club (Malayalam - 2010) Dir. Vineeth Sreenivasan (以前にここで言及)でデビューした。同作のオーディションで主演に抜擢されるまではIT技術者で、特に演技者としての訓練は受けていなかったという。悪いが MAC はメインの5人の若者の顔の区別がつかんうちに終わった一本だったぜよ。その後は小さな役が何本か続いたが、やはりヴィニート・シュリーニヴァーサン監督による Thattathin Marayathu (Malayalam - 2012) が空前の大ヒットとなり上り調子となった。この TM のレビューでは「リアリティがあるといえば聞こえはいいが、悪役が似合いそうなニヤケ面のヒーロー」などと書いたが、要するにこのニヤケ面が役作りとは思えず、素人がカメラの前に立って照れ笑いしてるようにしか見えなかったのだ。悪役といっても学園ものの小ずるい奴という程度の意味だったが、当人のインタビューを読むと、本格的な極悪をやってみたいということを繰り返し言っていて、ちょっと意外。2013年は5本(うち1本はマラヤーラム&タミル語のバイリンガル)に出演した。

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■ナスリヤ・ナシーム
文句なしの2013年の台風の目。1994年生まれの19歳だっ!公式(?)ファンサイトはこちら。出演作こそ4本(うち2本がタミル映画、1本はマラヤーラム&タミル語のバイリンガル)だが、「googleで最も検索されたアイドル」的な騒がれ方をした例としてはマムタ・モーハンダース以来か。

1月封切りのMaad Dad (Malayalam - 2013) Dir. Revathy S Varmha でヒロイン・デビュー。本作のヒロインは元々アルチャナ・カヴィが予定されていたというし、作品全体としても華々しいところのない凡作だったが、ナスリヤに対する期待だけは沸騰寸前になっていたようだ。というのは、彼女がヒロイン・デビュー以前に少なくとも7年ほどの芸歴を持っており、それなりに知られた顔だったから。

子役としての映画デビュー作 Palunku (Malayalam - 2006) Dir. Blessy ではこんな感じ。続く Pramani (Malayalam - 2010) Dir. B Unnikrishnan ではこんな、同年の Oru Naal Varum (Malayalam - 2010) Dir. T K Rajeev Kumar ではこんなだった。いや、不覚、この3作全部見てるけど、子役ナスリヤはほとんど記憶に残ってなかった。

それからテレビ・タレントとしての顔もある。AsiaNet で放映されていた Munch Star Singer Junior の司会だ。これに携わっていた期間がどのくらいあったのかはよく分からないが、ともかく10代でリアリティー・ショーを仕切っていたというのだから、頭の回転も相当に早いに違いない。動画はいくらでも見つかるが、一例として2011年2月のものを挙げておく。

そして、2012年には非映画音楽ポップアルバム Yuvvh のプロモ用ミュージックビデオでニヴィン・ポーリと共に姿を見せ、これがまた馬鹿当たり。本稿を書いている時点で、YT上の動画へのアクセスは350万を超えている。

しかし一番びっくりしたのは、彼女が幼時からマーピラ・パーットゥの歌手もやっていた、ということ。マーピラ・パーットゥについては、ケララ・ムスリムについて以前書いた時にもちょっと触れたけど、ムスリムの間で現在も大変にポピュラーな歌謡の形式、まとまった説明がウィキペディアにある。TVで大人気の勝ち抜き喉自慢でもマーピラ・パーットゥはよく歌われているし、非ムスリムも含むプロの歌手によってアルバムも盛んに作られている。普通の日本人が聴くと、まあ大概は演歌を思い浮かべるだろう。こんな感じで歌ってたのだ。これ見てホントに考えが改まったよ。瑞々しい笑顔がキュートなハイティーンてだけじゃない、ド演歌で鍛えられてきた生え抜きの芸能人でもあるんだなと。

話題づくりは充分、いよいよ本格的にトップ女優の座に大手をかけるかと思われた今年2014年の1月に、ナスリヤはファハド・ファーシルとの熱愛宣言&婚約発表で世間を驚かせた。8月の挙式に向けて女優としての仕事を整理しているとも言われているが(結婚後の芸能生活継続の有無については何も発表されていない)、こういう芸歴を知ると、まあちょっとゆっくりしたくなったのかなとも思えてしまうのだ。

■ハニー・ローズ(ハンニ・ロース)
1989年生まれの24歳(とウィキペディアには書いてある)。手作り感溢れるレトロなオフィシャルサイトはこちら

Boyy Friennd (Malayalam - 2005) Dir. Vinayan のツイン・ヒロインの一人として眼鏡っ娘(+直毛)デビュー。しかし、業界の嫌われ者ヴィナヤン監督のもとで巣立った新人のジンクスとでも言おうか、その後のキャリアは実にぱっとしないもので、タミル、テルグ、カンナダに出かけていった(こちら参照)ものの、全く鳴かず飛ばずだった。この時期の出演作は見たいと思ってもディスクにもなっていないものが大半。

転機が訪れたのは Trivandrum Lodge (Malayalam - 2012) Dir. V K Prakash の眼鏡姐さん(+カーリーヘア)の演技によって。ここでのハニーがもうね、何というか…(絶句)。いや、見ての通り、目と目の間がちょっと離れてるし、弛みもあるし、腫れぼったいし、全体的にも繊細さを欠く大雑把な顔立ち、体の線ももっそりしていて、凄い美人ていう訳じゃないのよ。ただもう何とも言えずエロい。いたいけな青少年が目にしたら、そりゃもう何かの拍子にやらせてくれるかもしれないお姐さんと思っちまうことは間違いないわな。ご当人は、本当の自分は家庭的なタイプなのだと言っているけど(こちら参照)、やはりこれ以降の役にもかなり悩ましいイメージのものが続いたのは事実だ。その延長線上にマンムーティーの(一応)ヒロインを演じた Daivathinte Swantham Cleetus (Malayalam - 2013) Dir. Faisal Alleppy があった訳で、どんな役かはお楽しみということで書かないでおくが、タイプキャストも悪くないじゃんと思ったのだった。この作品を含め2013年には7本に出演、今年も引き続き不敵なエロさで青少年や中年を懊悩させてほしいもんである。

なお、タミル映画などでは一時期サウンダリヤの芸名だったことがあり、また Trivandrum Lodge の成功後、その役名からドワニを名乗っていたこともあるが、結局ハニーに戻したようだ。

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しかし、正味なところ、安定的にヒットを飛ばし続けたのは、この年もべったべた路線で6本に出演したディリープだという。ディリープを舐めちゃいかん。イメージは Nadodi MannanSound Thoma のもの。


来週あたりからゆるゆる始めて、少なくとも年内には完結させたいと思っている。のんびり行くよ。

投稿者 Periplo : 14:19 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年03月08日

PJ2012-36~53:贅沢な残り物

2012年回顧シリーズ、今回がホントの最終回。前回のお勧めの一本できれいに終えたい気持ちもあったけど、やはりモーハンラール、マンムーティの出演作には何らかの言及をしておきたいというのもあって、その他作品を3~5行のコメント付きで紹介することにした。残り物とはいえ、ブロックバスターや、フィルムフェア(サウス)賞を獲得した作品も含まれている。一気に18本。

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Ivan Megharoopan より。シュウェちゃんの看護婦さんてのは痺れるね。

NamukkuPaar.jpgNamukku Paarkkan...

Director:Aji John
Cast:Anoop Menon, Meghana Raj, Jayasurya, Devan, V K Sreeraman, Janardhanan, Tini Tom, Sudheesh, Ashokan, Kaviyoor Ponnamma, Geetha Vijayan, Nandu, Kalabhavan Shajon, Irshad, Sudheer Karamana, Mohanlal (voice)

原題:നമുക്ക് പാർക്കാൻ
タイトルの意味:For us to inhabit
タイトルのゆれ:Namukku Paarkkan, Namukku Parkkan

DVDの版元:Harmony
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間55分

ジャンル:ファミリー
キーワード:マイホーム建設、風水、獣医、汚職、花崗岩、耐える長兄、コーッタヤム

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/03/namukku-paarkkan-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
憧れのマイホームを建てるために、田舎の獣医がくぐり抜けなければならなかった試練の数々が教訓的に語られる。似たようなテーマの作品として Oru Naal Varun (Malayalam - 2010) Dir. T K Rajeev Kumar というのがあったが、コメディタッチの同作に対して、本作はかなり陰鬱な仕上がり。地味なキャストと相まって、どんよりとした気分にさせられる。他のカーストの墓地だった土地を買うとか、建材の石を安く入手するために施主自身が隣接州に出かけて行くとか、涙ぐましい。


no66madhura.jpgNo.66 Madura Bus

Director:M N Nishad
Cast:Pasupathy, Swetha Menon, Padmapriya, Mallika, Jagathy Sreekumar, Sudheer Karamana, Sasi Kalinga, Thilakan, Pala Charlie, Anil Mural, Rekha, Makarand Deshpande, Kollam Ajith, Chempil Asokan, Vijay Babu, Jagadeesh, Jayalalitha, Mahima, Seema G Nair

原題:No. 66 മധുര ബസ്സ്
タイトルのゆれ:No.66 Madhura Bus

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間52分

ジャンル:リベンジ・アクション
キーワード:マドゥライ、コッラム、ペンテコステ派、ガンジャ栽培、Pathimoonnu Kannara Palam

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/03/no-66-madhura-bus-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
ケララ州南部のコッラム(クイロン)を朝に発ち、タミル・ナードゥ州マドゥライに向かうバス。そこに乗り込んだ男の復讐に向けた旅の一部始終。タミル俳優パシュパティを主役に、マラーティー&ヒンディー俳優マカランド・デーシュパーンデーを悪役とした異色作。ジャヤ・ラリタの演じるマドゥライの女衒が印象に残る。


TKTC.jpgThe King & The Commissioner

Director:Shaji Kailas
Cast:Mammootty, Suresh Gopi, Sai Kumar, Rajiv Krishna, Janardhanan, Samvritha Sunil, KPAC Lalitha, Devan, Jayan Cherthala, Vijay Menon, Nedumudi Venu, Biju Pappan, P Sreekumar, Mohan Agashe, Baiju Ezhupunna, Kunchan, T P Madhavan, Fathima Babu, Kishore, Neha Mishra, Becky Thomas, Reena Bashir, Fathima Babu, Kishore, Sanjjanaa (Archana Galrani), Srilanjani, Neha Mishra, Augustine, Sudheer Karamana, Spadikam George, Adithya Menon, Risa Bawa

原題:ദി കിംഗ് & ദി കമ്മീഷണർ
タイトルのゆれ:TKTC

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約3時間10分

ジャンル:愛国アクション・スリラー
キーワード:スリーピング・セル、要人暗殺計画、bombastic dialogues

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/03/the-king-commissioner-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
どうだ参ったか!の3時間10分。マンムーティのヒット作 The King (Malayalam - 1995) とスレーシュ・ゴーピのヒット作 Commissioner (Malayalam - 1994) のそれぞれの当たり役キャラを一本の映画の中で復活させようという凄い試み。過去二作品の監督も本作と同じシャージ・カイラース。しかし製作はかなり手間取り、その間も両スターの不仲がまことしやかに伝えられもした。劇中でもこの二人はあまり仲が良くないという設定。デリーの中央政界の要職はマラヤーリーで占められているとか、拳銃を構えながらも一人一人順番に発砲するように訓練されたグーンダとか、ストーリーを分かりやすくするための工夫が泣ける。主要キャラの登場の後にはたっぷりとクラッカー&紙吹雪タイムが設定されてる親切設計、こういう映画はホントに珍しくなったのだ。TVショーの司会などで忙しくなってしまったスレーシュ・ゴーピのこの年唯一の公開作品。


Thalsamayam.jpgThalsamayam Oru Penkutty

Director:T K Rajeev Kumar
Cast:Nithya Menon, Unni Mukundan, Swetha Menon, Sruthi Dilep, Manianpillai Raju, KPAC Lalitha, Suraj Venjaramoodu, Siddique, Baburaj, Tini Tom, Devi Chandana, Binu Adimali, Sruthi Menon, Kottayam Nazeer, Kalabhavan Navas, Vinayakan, Kochu Preman, Susheelan, Baiju, Chembil Asokan, Azeez, Satheesh, Subbulakshmi, Dinesh Panicker

原題: തല്‍സമയം ഒരു പെണ്‍കുട്ടി
タイトルの意味:A girl in a live telecast
タイトルのゆれ:Talsamayam Oru Penkutty

DVDの版元:Harmony
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間51分

ジャンル:サタイア+ラブコメ
キーワード:リアリティー・ショー、痴漢、不倫暴露、アイドル

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/04/thalsamayam-oru-penkutty-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
リアリティーTVと映画とは基本的に相性が悪いはずだが、それでも何かとこれを扱った作品は作られ続けている。田舎の素朴な女の子が、リアリティー・ショーの参加者として選ばれ、その生活の一部始終がリアルタイムでTVで報じられるようになった末に見たものは…という意欲的なストーリーライン。抜擢されたヒロインが、天然が入ってる面白い被写体から、やがてレポーター的な役割を担うようになり、最後にはカメラとのある種の共犯関係に至るというのは、メディア批評として鋭いと思ったが、落としどころに困って王子様を登場させたのには首を捻らざるを得なかった。


Jawan.jpgJawan of Vellimala

Director:Anoop Kannan
Cast:Mammootty, Asif Ali, Sreenivasan, Mamta Mohandas, Leona Lishoy, Baburaj, Joji, Sunil Sukhadha, Joju George, Kottayam Nazeer, Niyas Backer, Sadiq, Ranjith, Devan

原題:ജവാൻ ഓഫ് വെള്ളിമല
タイトルの意味:Soldier of Vellimala ※ジャワーンとはインド国軍の最低ランクの兵卒を指す言葉
タイトルのゆれ:Jawaan of Vellimala

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間7分

ジャンル:サスペンス
キーワード:デビュー監督、ダム、退役軍人、自殺の名所、見鬼、シャルル・ボネ症候群

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/04/jawan-of-vellimala-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
興味深いキャスト、印象的なポスター、Classmates のジェームス・アルバートの脚本などなど、期待の大きかった一作だが、結局何が言いたいのか良く分からなかった。カールギル戦闘で負傷して退役した元兵卒が、ダムの管理人として働くなかで遭遇する不思議な出来事と過去の因縁。コミカルに始まった物語が、やがてサスペンスとなり、最後にはヒロイズムの昇華となる。当然ながら、前年末からケララで大騒ぎになっていたムッラペリヤール・ダムの問題が見え隠れするのだが、残念ながらシャキッとした風刺にはならなかったようだ。


Poppins.jpgPoppins

Director:V K Prakash
Cast:Indrajith, Padmapriya, Shankar Ramakrishnan, Mythiri, Kochu Preman, Indrans, Priyanandanan, Saiju Kurup, Sathyan Anthikkad, Siddique, Anne Augustine, Jayasurya, Meghana Raj, Kunchacko Boban, Nithya Menon, P Balachandran, Nandhu, Jayaraj Warrier, P Sebastian, Jayaprakash Kuloor, N G Roshan, Haneesh, Master Dhanajay, Master Abhinav, Sreelatha Namboodiri, Moly Kannamall, Maya Viswanath, Parvathi Nair, Baby Nayantara

原題:പോപ്പിൻസ്
タイトルの意味:小一時間を使って調べたが結局良く分からなかった。おそらくはインドの製菓メーカーによるキャンディーの名前をもらったものと思われる。

DVDの版元:Movie Channel
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間43分

ジャンル:オムニバス
キーワード:夫婦関係、寓話、パーヤーサム

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/04/poppins-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
正直言って頭抱えた一本。いまやニューウェーブを代表する一人となったVKプラカーシュによるオムニバス。様々な男女関係を切り取った5つの短編からなるアート系作品。同じ監督による Aidu Onda Aidu (Kannada - 2010) のリメイクだが、カンナダ版に関しての情報は激レアで、豪州在住者によるこのレビューぐらい。ジャヤプラカーシュ・クルールによるマラヤーラム語の戯曲 '8 Natakangal'の翻案だという。寓話風のものから現代の都市生活のスケッチまで、いずれもそれらしい作りになっているのだが、どれもこれも手ごたえがない。見終わって一番強烈に脳裏に刻まれているのがクンチャーコー君のこの髪型だってのはどうも。


AyaalumNjanum.jpgAyalum Njanum Thammil

Director:Lal Jose
Cast:Prithviraj, Prathap Pothen, Narain, Samvritha Sunil, Rima Kallingal, Remya Nambeesan, Kalabhavan Mani, Salim Kumar, Swasika, Prem Prakash, Ambika Mohan, Anil Murali, Ramu, Sidharth Siva, Sukumari, Hemanth Menon, Balachandran Chullikkadu, Sreenath Bhasi, T P Madhavan, Majeed

原題:അയാളും ഞാനും തമ്മിൽ
タイトルの意味:Between him & me
タイトルのゆれ:Ayalum Njanum Tammil

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間13分

ジャンル:人間ドラマ
キーワード:医師の倫理、汚職警官、左翼組合、異宗教間恋愛、ムンナール
参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/05/ayalum-njanum-thammil-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
大変に評価の高かった一作で、2012年のベスト5に入れている評者も目立った。緊急を要する手術を、未成年患者の両親の承諾なしに行った結果、最善を尽くしたにも拘わらず患者が死亡してしまい、主人公である執刀医が窮地に立たされる、というのが出だし。これを見て、医療と、医療ミスと、それに対する社会の向き合い方をテーマにした高度に現代的な物語を期待したのだが、途中から回想シーンに入り、主人公の医師としての成長物語に変じる。立派なお話ではあるのだが、若干白ける。我が子が急患時に適切な手当てを受けられなかったとして、カラーバワン・マニの演じる警官が社会活動家を巻き込んで抗議行動を繰り広げるというエピソードは、なかなかにヒリヒリとするもので印象に残った。


Bavuttiyude.jpgBavuttiyude Namathil

Director:G S Vijayan
Cast:Mammootty, Kavya Madhavan, Shankar Ramakrishnan, Kottayam Nazeer, Rima Kallingal, Vineeth, Kaniha, Sudheesh, Harisree Ashokan, Mohan Jose, Augustine, Sudheer Karamana, Lena

原題:ബാവുട്ടിയുടെ നാമത്തിൽ
タイトルの意味:In the name of Bavutty
タイトルのゆれ:Bavuthiyude Naamathil

DVDの版元:Satyam Audios
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間2分

ジャンル:人間ドラマ
キーワード:マーピラ、孤児、マラップラム、コミュニスト、大富豪、元カレ出現

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/01/bavuttiyude-namathil-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
近年のマンムーティ主演作の定番となった、「無学だが、インテリに欠けている人生の智恵をもつ、お人よしの中年男」のバリエーション。ここでは、マラバールの大金持ちの家に住み込む運転手兼下男、お助けマンにしてアルジュナの御者クリシュナ、つまりは神さまでもあるんじゃないか?という設定。牛肉を(酒のつまみに)食するヒンドゥー教徒とか、結婚外の色恋に対する(一定の保留つきながら)不思議な寛容とか、現代的なモチーフが興味深い。主人公と共に働くムスリムの使用人を演じるカニハーの繋がった(ラミャ・ナンビーシャンのバージョンも見つかっているが、本編中には登場しない)がなんか楽しい。


Theevram.jpgTheevram

Director:Roopesh Peethambaran
Cast:Dulquer Salmaan, Shikha Nair, Sreenivasan, Vishnu Raghav, Riya Saira, Vinay Forrt, Anu Mohan, Janardhanan, P Sreekumar, Pala Charlie, Baby Anjela, Baby Andrea, Unni Mukundan, Aashiq Abu

原題:തീവ്രം
タイトルの意味:Extreme
タイトルのゆれ:Thivram

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間6分

ジャンル:クライム
キーワード:シリアル・キラー、復讐、地下室、拷問、チャーラクディ

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/07/theevram-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
ドゥルカル・サルマーンの注目の三作目だったが、これはちょっとハードルを上げ過ぎたようでずっこけた。明らかに韓国映画から影響を受けたと思われる猟奇風味リベンジ・スリラー。自宅で子供たちにピアノの手ほどきをする物静かな音楽教師が、地下室では一変して…という設定だが、ド君の演技には説得力がなかった。シュリーニヴァーサン演じるへっぽこ捜査官が、血を見るとぶっ倒れそうになるというギミックも効果的ではなかった。残虐な殺人を犯しても、初犯の場合は死刑になるのはレアケースである、という現状(本当にそうなの?)に対して異議の申し立てをしたいという意図は分かった。


Casanovva.jpg
Casanovva のふざけたラルさんポスター。


MyBoss.jpgMy Boss

Director:Jithu Joseph
Cast:Dileep, Mamta Mohandas, Mukesh, Ganesh Kumar, Sai Kumar, Seetha, Valsala Menon, Subbalaxmi, Abu Salim, Rekha, Kalabhavan Shajon, Anand, Jeevan, Dharmajan, Sonia

原題:My ബോസ്

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間39分

ジャンル:コメディ
キーワード:ムンバイ、IT企業、女性上司、チェールッタラ、バックウォーター、クッタナード

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/07/my-boss-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】ムンバイにあるIT企業に就職した主人公が、切れ者の女性ボス(マラヤーリーだが、オーストラリア国籍を持っており、白人の企業社会のアグレッシブさを体得している)の下でしごかれる、という出だし。ちょっと Aadavari Matalaku Arthale Verule
(Telugu - 2007) Dir. Sri Raghava を思わせるところがあるが、AMAVがほんわかしたラブコメに落ち着くのとは対照的に、本作ではかなりどぎつく「じゃじゃ馬ならし」が追及される。頓智力で世の中を泳ぎ回る主人公に途中までは共感できるのだが、ヒーロー&ヒロインのそれぞれに科される「諌め」のアンバランスさ(ヒロインにだけ厳しい)がだんだんと辛くなってくる。しかし、このヒロインのキャラクターは現実の自分自身に似ている、とのマムタの証言もあって興味深い。ハリウッド映画のパクリだとして(こちら参照)非難されたが、大ヒットとなった。Software Ganda のタイトルでカンナダ・リメイクが進行中。


Ithiramathiram.jpgIthramaathram

Director:K Gopinathan
Cast:Swetha Menon, Malavika Nair, Biju Menon, Nedumudi Venu, Anoop Chandran, KPAC Lalitha, Vinu Joseph, V K Sreeraman, Tashi Bharadwaj, Siddique, Prakash Bale, Seetha, Babitha, Ben Bal, Rajeev, Manu, Ajitha Nambiar, Goutham

原題:ഇത്ര മാത്രം
タイトルの意味:So much as this
タイトルのゆれ:Ithramathram, Ithra Maathram

DVDの版元:Saina
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間34分

ジャンル:アート
キーワード:デビュー監督、予期せぬ死、ワヤナード、多面性、女ざかり

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/07/ithramaathram-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
冒頭では、夜叉とユディシティラとの問答がマハーバーラタから引用される。「この世でもっとも驚異的なこととは何か?」「何千もの者たちが日々死んで行くというのに、人々が自分だけは死なないと信じるかのごとく何事もなく営みを続ける。これ以上の驚異があろうか?」カッコいい、芸術映画はこうじゃなくっちゃ!ワヤナードの田舎の村、38歳で突然逝ってしまった一人の主婦の葬儀に訪れた人々が、それぞれの思い出を想起するという形式の、『羅生門』的な一本。死が予測不可能であることが生を豊かにする、という観念が美しく語られる。アート映画なのでシュウェちゃんのエッチさも5割増し。


kasanova.jpgCasanovva

Director:Rosshan Andrrews
Cast:Mohanlal, Sriya Saran, Laxmi Rai, Jagathy Sreekumar, Riyaz Khan, Roma Asrani, Shankar, Lalu Alex, Vikramjeet Virk, Abhishek Vinod, Shahid Shamzy, Arjun Nandakumar, Ambika Mohan

原題:Confident കാസനോവ
タイトルのゆれ:Casanova, Confident Casanovva

DVDの版元:Central
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間44分

ジャンル:ゆる系スリラー
キーワード:プレイボーイ、ドバイ、強盗、リアリティー・ショー、リベンジ

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/07/casanovva-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
2012年のモーハンラール出演作全5本の中で最高に「やらかしちまったな」感のある一本。Udayananu Tharam (Malayalam - 2005) 以降、本網站が注目している寡作なローシャン・アンドリュースの第4作目。大規模なドゥバイ・ロケ、3人のヒロイン格女優起用、二時間半越えのランタイムと、バブリー感が満々だが、貧乏監督がいきなり潤沢な資金を与えられて舞いあがっちゃった悲しい作例となった。欧州・中東を股にかけて遊びまくるジェットセット(死語)の色事師(死語)というラルさんのキャラ設定も、半端にファミリー観客を意識したのか、腰が引けていて全く生きず。第一ヒロインとしてシュレーヤー・サランが出てきてロマンスが展開される部分だけは、さすがに華やぎがあった。ラストの日本語がなんともいえん。


Shikkari.jpgShikkari

Director:Abhaya Simha
Cast:Mammootty, Aditya, Poonam Bajwa, Suresh Krishna, Tini Tom, Innocent, Mohan, Francis Mathew, Sihi Kahi Chandru, Achyutha Kumar, Ashawath Ninasam, Sarath Lohitashwa, Satish Ninasam, Naveen D Padil, Chandrahas Ullal, Dinesh Mangalore

原題:ശിക്കാരി (Malayalam)、ಶಿಕಾರಿ (Kannada)
タイトルの意味:Hunter
タイトルのゆれ:Shikari, Shikaari
※ちなみに過去に紹介したことのある Shikkar (Malayalam - 2008) Dir. M Padmakumar と実質的に同じタイトルだが、カンナダ版に引きずられる形でこれでいくことになったのだろう。

DVDの版元:Movie Channel
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間5分

ジャンル:スリラー
キーワード:1945年、サウス・カナラ、ワヤナード、コーンカン地方からの移住、フリーダム・ファイター、文芸作品映画化

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/08/shikkari-kannadamalayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
マンムーティの初のカンナダ映画として製作中からかなり話題になっていた。筆者が見たのはマラヤーラム版のみ。マラヤーラム版の方が一足早く封切りとなったが、内容を見てみれば、本作が「本籍カンナダ」であることはほぼ間違いない(一部のキャストが差し替えられているという情報もあるが、カンナダ版を見ることができないので未確認)。冒頭でゲストのアーディティヤがすかして登場し、映画に関する哲学的な勿体を披露する、意味不明なソングシーンを見ただけでもそれは明らか(俺がマラヤーラム版のプロデューサーだったら、情け容赦なくこれはカットするね)。余談だが、このアーディティヤはデビュー作 Love / Yei! Taxi (Kannada/Malayalam - 2004/2007) Dir. S V Rajendra Singh Babu ではゲストにモーハンラールを迎えた経歴もあり、何かマ映画界と因縁があるのかと思うのだが不明。話を戻すと、興行的にはどちらの州でも惨敗したらしい。面白いのは両州の批評家によるレビューの明暗。マラヤーラムの方では、アマチュア、生煮えetc.とこき下ろされているのに、カンナダでは(若干の保留があるものの)結構誉められてるんだよね。マルウッドとサンダルウッドの感性の違いがはっきりと出た、この読み比べは大変に面白かった。批評を読むのが面白いから観るべしという変なお勧め。


IvanMegha.jpgIvan Megharoopan

Director:P Balachandran
Cast:Prakash Bare, Padmapriya, Shweta Menon, Remya Nambeesan, Jagathy Sreekumar, Thampi Antony, V K Sreeraman, Margi Sathi, Murugan, Anu Mol, Chembil Asokan, Kannur Sreelatha, Bhanumathi, Sudarshan Annur, Vijayakumar Prabhakaran, Gopan Karunagappalli, Jayapriya, Ambika Mohan, Asha, Sunitha Nedungadi, Gopu Keshav, Surabhi, M R Rajan, Manojkumar IOTA, Sajitha Madathil, Shaji Surendranath, Chandramohan Kozhikode, Vijayan Peringode, Saji Sopanam, Manu Jose, Kalamandalam Prabhakaran

原題: ഇവൻ മേഘരൂപൻ
タイトルの意味:Behold, a Cloud-like Man!
タイトルのゆれ:Ivan Megharupan, Songlines of a Poet(サブタイトル)

DVDの版元:Highness
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約1時間50分

ジャンル:アート
キーワード:デビュー監督、詩人、クリシュナーッタム、影絵芝居、放浪

オフィシャルサイト:http://www.megharoopan.com/
参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/09/ivan-megharoopan-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
どこの若造が作った映画なのかと調べてみれば、ここ2,3年で一気に出演が増えた脇役俳優Pバーラチャンドランの監督デビュー作なのだった。いつも村のトディ屋でにゃあにゃあ言ってる親爺たちの一人がこんなアートなことを考えてるとは思いもよらなかった。なんたって「恋多き詩人の彷徨」だ、こっ恥ずかしいったらないじゃないか。アート映画とはいえ女優陣があまりにも魅力的なので楽しみにしていたのだが、単なる健忘症のスケベ中年の色恋遍歴(腹上死であがり)としか思えず、羨ましい…じゃなかった、詩心てものは全く感じられなかったなあ。話題作りのために本編とは無関係のMTVを撮るとか、あんまし感心しない。


Face2Face.jpgFACE2FACE

Director:V M Vinu
Cast:Mammootty, Siddique, Kalabhavan Mani, Vijaya Raghavan, Vineeth Kumar, Abu Salim, Nishant Sagar, Ragini Dwivedi, Roma Aslani, Mamukkoya, Guruvayoor Sivaji, Kunchan, Rajesh Hebbar, Reena Basheer, Shan A Sameed, Mahesh, Amritha, Gayathri

原題:ഫെയ്സ് 2 ഫെയ്സ്
タイトルのゆれ:FACE 2 FACE, Face2Face

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間4分

ジャンル:スリラー
キーワード:無軌道警官、サスペンション、償い、猟奇殺人、Facebook、コーチン

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/03/face2face-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】スリラーとしては脇が甘過ぎて全く評価できず。マンムーティ主演作について回るソングシーン問題だが、今回は金持ちのボンボンからなるバンドを登場させて屋外ギグを展開するという方式で乗りきった。そのうちの一曲はなんとアーンドラ・プラデーシュ州のヴァイザーグでロケされている。ストーリー上の必然があってのものではなく、いわゆる「ワープ」のシーンである。他州映画が、ストーリーと無関係にヴァイザーグを撮影地に選ぶというのは史上初じゃないだろか。モッズもどきのファッションに身を固めたケララの餓鬼どもがNTR像の前で踊るというのは、何とも言えない奇観であった。


PuthiyaTheeran.jpgPuthiya Theerangal

Director:Sathyan Anthikkad
Cast:Nedumudi Venu, Nivin Pauly, Namitha Pramod, Innocent, Mallika, Siddique, Molly Kannamaly

原題:പുതിയ തീരങ്ങള്‍
タイトルの意味:New Shores
タイトルのゆれ:Pudhiya Thirangal, Puthiya Theerankal

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間7分

ジャンル:漁村人情
キーワード:不思議老人、漁師、アレッピー、トラウマ、性犯罪

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/03/puthiya-theerangal-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★☆☆

【寸評】
Traffic (Malayalam - 2011) Dir. Rajesh Pillai で脇役として出てきて大変に可愛いらしかったナミタ・プラモードのヒロイン・デビュー作とのことで期待したのだが、「若いのに似合わず情に厚い、可愛い海の女」というキャラ造形に無理がありちょっと可哀そうだった。タイトルは「新しい岸辺」だが、どこが新しいんじゃい!と非難轟々、興行的にもイマイチに終わった。だがね、サティヤン・アンティッカードが何か新機軸を始めてイイことがあるかね?と逆に問いたい。ここのところしばらく途絶えていたように思われる伝統的設定「漁師もの」を復活させて、ほのぼのドラマにしたかったというのは良く分かる。Chemmeen (Malayalam - 1965) Dir. Ramu Kariat からいただいてきたコスプレもあり。


Cobra.jpgCobra

Director:Lal
Cast:Mammootty, Lal, Lalu Alex, Padmapriya, Kaniha, Salim Kumar, Manianpillai Raju, Siddique, Ramu, Sreejith Ravi, Babu Antony, Jagathy Sreekumar, Vijay Menon, Kunchan, Indrans, Pala Charlie, Radhika, Leena Maria Paul

原題:കോബ്ര

DVDの版元:AP International
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間22分

ジャンル:コメディ
キーワード:双子、赤子取り違え、スポコン、格闘技、色黒コンプレックス、ラール・アレックスの腕毛

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/03/cobra-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
Ozhimuri のレビューでは、性格俳優としてのラールについて最大限の賛辞を送ったが、監督としてのラールはどうやらもう賞味期限を過ぎてしまったようなのだった。メガスター・マンムーティをフィーチャーした、ヴィシュ・シーズン封切りの難しいこと言わないお祭り映画だけど、なにもかもがどんよりと生温くて笑えない。1990年代あたりからBサーキット向けに作られるようになった、いわゆる「クンフー映画」(ただし主にタミル、テルグ、ヒンディーのもの、マラヤーラム映画での作例を筆者は知らない)の要素を取り込もうとした点は興味深い。


Karmayodha.jpgKarmayodha

Director:Major Ravi
Cast:Mohanlal, Murali Sharma, Bineesh Kodiyeri, Basil, Badri, Sai Kumar, Mukesh, Asha Sarath, Sukumari, Aishwarya Devan, Sona Heiden, Malavya, Vani, Sanjana, Devika, Thomas Pappan, Rajiv Pillai, Kannan Pattambi, Vishnu Hariharan, Shalin, Riyaz Khan, Sudheer Karamana, Anil Murali, Santosh Sleeba, Janardhanan, Piyush Vijayan, Lakshmi Menon, Sasi Kalinga, Vinita Menon, Nandhu, Majeed

原題:കർമ്മയോദ്ധാ
タイトルの意味:Warrior of Dharma

DVDの版元:Movie Channel
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間2分

ジャンル:クライム・アクション
キーワード:エンカウンター・スペシャリスト、ムンバイ、コーヴァラム、少女誘拐、娼婦輸出、葉巻

参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/01/karmayodha-malayalam-2012.html

お勧め度:★★☆☆☆

【寸評】
ミリタリー監督メイジャー・ラヴィが初めて軍隊ものを離れて撮ったクライム・アクション。しかし相変わらず、「一般人(および無能な上層部)はオフィサー(この場合は警察官)の足手まといになることばかりしくさって、そのくせ感謝の気持ちがないんじゃ」という意識がそこここに透けて見える。今回の敵は、ティーンエイジの少女を誘拐して売春婦として国内外に売り捌く犯罪組織。11月末の公開で、その後程なくして全インドを揺るがしたニルバヤー事件が起き、時宜に適ったテーマ立てとしてもてはやされてもよさそうなものだったが、そうはならなかった。若い世代の携帯電話への熱中が犯罪の温床として槍玉に挙げられ、共働きの母親の多忙が誘拐の呼び水になったかのようなエピソードが混じり、完全なる母性の象徴としてお祖母ちゃんが礼賛され、どちらかといえばニルバヤー事件で炙り出されボコボコに批判された「女子に隙があったんじゃ論者」のスタンスに近いものであることが明らかになってしまった。悪役に変態性と復讐動機をあてがったことにも疑問。ハードボイルドでハードコアなラルさんはカッコいい。


Bavuttiyude Namathil photo P1120271_zps0ffb7fd1.jpg
Bavuttiyude Namathil の上映館の様子。

投稿者 Periplo : 01:14 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年03月02日

PJ2012-35:Manjadikuru

Manjadikuru1.jpg

Director:Anjali Menon
Cast:Thilakan, Rahman, Murali, Jagathy Sreekumar, Sagar Shiyaz, Harishanth, Kaviyoor Ponnamma, Urvasi, Bindu Panickar, Praveena, Sindhu Menon, Sridevika, Thrissur Chandran, Firoz Mohan, Julia George, Kannan Pattambi, Poojapura Ravi, Venu Machad, Sreekumar, Prithviraj, Padmapriya
Children Cast:Sidharth, Vyjayanthi, Rijosh, Arathi Sasikumar

原題:മഞ്ചാടിക്കുരു
タイトルの意味:インド原産のナンバンアカアズキの実(こちら参照)。西洋の四葉のクローバーのように縁起の良いものと見なされている。ケララではクリシュナ寺院に奉納されることが多い。グルヴァユール寺院にこの実を奉納した山岳地帯の女性信徒の伝説が有名。グルヴァユール寺院に大いに関係のあるこの映画にも、マンジャーディクルが印象的に使われるシーンがあった。
タイトルのゆれ:Lucky Red Seeds(英語題名)

DVDの版元:Satyam Audios
DVDの字幕:英語
DVDの障害:特になし
DVDのランタイム:約2時間7分

ジャンル:アートなメロドラマ
キーワード:子供、タラワード、大家族、骨肉の争い、湾岸NRI、児童労働、階級格差、トリシュール地方、酷暑期

公式サイト:http://www.manjadikuru.com/
参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2013/08/manjadikuru-malayalam-2012.html

お勧め度:★★★★★

Manjadikuru2.jpgManjadikuru3.jpg

【寸評】
舞台は今から約20年前のケララ中部。酷暑期。ドゥバイで生まれ育った10歳のヴィッキ(Sidharth)は両親に連れられて母の故郷であるトリシュールの田舎の村にやってくる。毎年一回の定期的な帰省とは異なり、今回は祖父アップクッタン・ナーイル(Thilakan)の死去を受けてのものだった。大邸宅カウストゥバムには、祖母デーヴァヤーニ(Kaviyoor Ponnamma)と大叔父ヴァースデーヴァン(Thrissur Chandran)が住み、敷地内にはオジのラグ(Rahman)一家が小さな離れを建てて住んでいる。葬儀のために各地に散らばるその他の子供たちもやってくる。長女のアンム(Bindu Panicker)はデリーから、次女でヴィッキの母であるスジャータ(Urvasi)はドゥバイから、三女のシーラ(Praveena)はマドラスから、それぞれ配偶者・子供と共に、四女のスダーマニ(Sindhu Menon)は身重でありながら単身でアメリカから到着する。極左運動に身を投じるために家出した長男のムラリ(Murali)までもが10数年ぶりに姿を現し、2男4女全員が揃うことになった。

ヴィッキはオジのラグの二人の子供、カンナン(Rijosh)とマニクッティ(Arathi Sasikumar)とすぐに打ち解けて一緒に遊びまわるようになる。屋敷にはもう一人の子供がいた。タミル・ナードゥ州シヴァカーシからやってきて女中として働くロージャー(Vyjayanthi)だ。12歳の彼女は家の人々からは名前で呼ばれることもなく、何かにつけては容赦のない罵声を浴びせられ、それでも懸命に働いている。ヴィッキたち3人はロージャーの置かれた状況を次第に理解し、彼女を何とか助けようと思うようになる。

故人の子供たちを中心とした一族は、葬儀の後も16日間邸宅に滞在を続ける。デーヴァヤーニの意思で、16日後にアップクッタンの遺言が読み上げられることになったからだ。もともとあまり仲の良くない兄弟姉妹は、小競り合いを繰り返しながら戦々恐々としてその時を待つ。

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オムニバス映画 Kerala Cafe (Malayalam - 2009) 中のHappy Journey という一編を監督し、批評家・映画ファンを唸らせたアンジャリ・メーノーンによる待望の長編第一作。2008年には撮了していたが、プロデュースの部分に何やら問題があり、公開が引き延ばされた。2009年に没したムラリが登場しているのもそのため。2008年からやや短いビデオ版が各地の映画祭で上映され、多少の評判は聞こえてきただけに、それらにアクセスできないファンにとっては幻のカルト映画と化していた。2012年5月にやっと一般公開に漕ぎつけ、アンジャリが脚本を担当した Ustad Hotel とほぼ同時期に劇場に掛かることになった。

いわゆる「子供の澄んだ目に映った~」というタイプの設定で、それは通常ならば心の濁った筆者がもっとも忌避するものなのだけれども、本作にはやられた、参りましたと言うほかない。同時に、目の澄んだ子供が「戦争なんてなくなればいいのに」とか言うのに喝采するような観客にも受けるだろう。つまり、大変に高いポテンシャルをもったアート映画だということだ。

筆者のような腐った奴がなぜ感銘を受けたかというと、それは、子供の目から見た大人世界の批判という面を当然持ちながらも、個々の大人気ない大人たちの「大人の事情」ってやつが幅広い諧調で描かれているからだと思う。寄る辺のない女中っ子ロージャーに対しての無情な仕打ちと共に、各人の抱える過去の傷や、現在の問題、相互の憎しみ、労わり合いといったものが、2時間超の中にぎっしりと詰まって、主人公の独白にあるように「白と黒の間には無限の色が存在する」ことが示されるのだ。

そして無垢で無謬の子供たちも、いつまでもそのままでいられる訳ではない。やがて彼らも、自分の意思による行為の結果起こってしまった思わしくない事々に直面しなければならなくなる。責任を取りたいと思ってもそのすべもなく、非難の眼差しの前にただ項垂れるしかない事態に追い込まれる。子供時代の終わりが、雨季の先触れの驟雨によって区切られる。

メインのテーマと共に、現地の観客に強くアピールしたのは、圧倒するノスタルジー。携帯電話も、インターネットも、それどころか田舎にはエアコンすらなかった時代、子供にとってチョコレートを包む銀紙やマンジャーディクルが宝物となりえた時代の細かな描写は、それを知る世代の観客にとっては堪らないものだったろうと想像できる。

筆者にとって最も印象的だったのは、大家族の物語で登場人物が多いのに、その紹介のされ方、キャラの立ち方、ストーリー中での捌かれ方が絶妙で、誰が誰だか分からなくなるというのがほとんどなかったこと。これはもちろん、アンジャリ・メーノーンの采配だけでなく、子役から最長老に至るまでの演技者たちの高い演技力にも負っている。こんな渋い演技をする俳優たちが世界の片隅で広く知られることもなく埋もれている、という不当感を久しぶりに抱いた作品でもあった。

個人的には、2013年に没したティラカン翁にトップクレジットを贈りたい。限られたシーンのみの出演、翁にとってはなんでもない芝居だったことは想像できるが、ただもう素晴らしかった。晩年のオフスクリーンでの翁は、色々と揉め事が多く、アグレッシブに吼える痛ましい姿には不可解な面も多かったが、できれば本作でのイメージを翁の最後の姿(もちろんこれは遺作ではないのだが)として心に留めておきたいものだと思ったのだ。

Manjadikuru6.jpg

投稿者 Periplo : 00:27 : カテゴリー バブルねたkerala so many cups of chai
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