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2014年06月09日

マラヤーラム映画新作上映1406-2

今をときめくヤングスター大集合!な映画だけど、中心となるのはこの3人らしい。

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Bangalore Days (Malayalam - 2014) Dir. Anjali Menon

原題:ബാംഗ്ലൂര്‍ ഡെയ്‌സ്

Cast:Dulquer Salmaan, Nivin Pauly, Fahad Fasil, Nazriya Nazim, Parvathy Menon, Nithya Menon, Isha Talwar, Vijaya Raghavan, Kalpana, Vinaya Prasad, Prathap Pothen, Maniyanpilla Raju, Sajid Yahiya, etc.

Crew:Anjali Menon (director, writer), Anwar Rasheed (producer), Gopi Sunder (music director), Samir Thahir (cinematographer), Brinda (choreographer)

公式サイト(FB)https://www.facebook.com/BangaloredaysMovie
公式トレーラーhttp://youtu.be/uVpHL5g4buY

■日時:2014年6月29日、午後2:00開映
■料金:大人1900円、10歳以上の子供1000円
■字幕:英語
■上映資材:DCP
■上映時間:ネット情報によれば約172分
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/access/

■主催者公式サイト(FB):https://www.facebook.com/CelluloidJapan
■参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/05/bangalore-days-malayalam-2014.html

※上映に際しては途中10-20分程度のインターミッションあり。別料金でインド・スナックのサービスあり。また、ペットボトルなどの自販機も会場にあり。

※事前予約をお勧めします。申し込みフォーム(会場=東京と記載ありますが埼玉です)の入り口はこちら。万が一の直前の急な変更や今後の案内などもメールで受信できるようになります。

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【ざっくりとしたストーリー】
ケララで生まれ育ったアルジュン(Dulquer Salmaan)、クッタン(Nivin Pauly)、ディヴィヤ(Nazriya Nazim)は大変に仲の良いイトコ同士で、3人の共通の夢はバンガロールに行って青春を謳歌することだった。クッタンはバンガロールのIT企業への就職が決まる。ディヴィヤは抗し切れない状況から卒業と同時に見合い結婚をすることになり、夫のダース(Fahad Fasil)と共にバンガロールに移り住む。アルジュンも、レース用バイクのメカニックとしてバンガロールに職を見つける。

新婚のダースとディヴィヤの仲はかなりギクシャクしたもので、ダースが出張で不在がちなこともあり、ディヴィヤは独身時代と変わらず二人のイトコと遊びまわっていた。しかし、やがて彼女も夫との関係に正面から向き合うこととなり、アルジュンとクッタンもそれぞれに愛する女性を見つける。

【みどころ予想】
ともかく、本作のキャスト・スタッフの陣容を知ったときの衝撃は並大抵のものではなかった。2010年に入ったころから目立ってきたマラヤーラムのニューウェーブ映画だが、始めの頃は必ずしもニューウェーブ=若者映画という訳でもなかった。世代交代はまず裏方から起こり、演じ手には中堅とその時々の若手俳優を使いながら徐々に新しい枠組みを模索してきたのだ。マラヤーラム・ニューウェーブはスターではなく裏方が牽引するものだった。それが、この1,2年ぐらいで徐々に風向きが変わり、その時々の若手俳優の中から篩に掛けられてスターと呼べる役者が台頭してきた(篩から落ちてしまった俳優たちも脇に回ってそれなりの味を出していることが多い)。特に男優で「デフォルトが髭無し」な連中が目立つようになり、価値観の緩やかな変化を感じさせられたものだ。

本作に登場する7人の若手俳優は、各人がそれぞれに主役をはれるだけのスターバリューの持ち主で、近年の話題作の多くに顔を出してきた。Twenty:20 (Malayalam - 2008) Dir. Joshiy 以来のマルチスター映画と言えるだろう(同作でお情けっぽく僅かな登場シーンを与えられていたヤング軍団がこれだ、隔世の感あり)。

とはいえ、本作の最大のインパクトは、やはり監督のアンジャリ・メーノーンにあるだろう。これまでのキャリアは短編、長編、脚本提供がそれぞれ1本という限られたものながら、その動向が常に業界とファンの注目の的となっている新鋭・気鋭の映像作家。最初に世に出た Kerala Cafe 中の短編に端的に現れているが、人間観察の鋭さ、それを効果的に表出する作劇術の確かさがその人気の理由。長編デビュー作 Manjadikuru の公開が諸事情から遅れたこともあり、より一層カルト的なステータスを得ることになった。今回はニューウェーブ作品としては珍しい9カロール・ルピーという(マ映画としては)高額の予算をあてがわれ、それに応える形で5月30日の封切り以来、空前の売り上げを記録しているという(資料)。

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【主要キャスト】
■アルジュン(アジュ):ドゥルカル・サルマーン
離婚した両親を持ち、自身は10年生でドロップアウト。しかしそんなことを歯牙にもかけず自由気儘かつ反抗的に生きるアルジュンは、グラフィーティ・アーティストでモトクロス・レーサーでもある。って、書いてるこっちが気恥ずかしくなっちまったが、大丈夫なのかDQS?しかし幸いにして各種レビューでは特にその辺への突っ込みは見当たらなかった。メガスター・マンムーティの息子、ドゥルカル・サルマーンについては過去にここで書いた。本作がデビュー以来の10作目となる。今のところ、繊細な心理の綾を演じるとか、そういった器用さは望むべくもないが、身の丈にあった伸び伸びとしたキャラクターを与えられると風格と存在感を発揮するタイプ。
■クッタン(クリシュナン):ニヴィン・ポーリ
職を得てやってきたバンガロールには田舎者コンプレックスから気後れを感じ、ホームシックに陥ってしまう生真面目なソフトウェア野郎。4月に上映された 1983 を観た人には既にお馴染みのニヴィンについてはここを参照。俳優デビュー前はバンガロールのインフォシスにIT屋さんとして勤めていたそうだ。こいつもまた、演技の幅が広いとはいえないタイプなのだが、本作でのコミカルなキャラは嵌り役と賞賛されている。
■ダース(シヴダース):ファハド・ファーシル
仕事の鬼で、常に出張で世界各地を渡り歩いているビジネスマン。新妻との間の距離を縮めることのできない夫という役柄を、オフスクリーンではこの8月に結婚することになっているナスリヤを相手にファハドがどういう気持ちで演じたのかが気になる。名匠ファーシル監督の息子、ファハド・ファーシルについてもここなどに書いた。2002年に親爺の監督作で一度デビューしたものの、かなり恥ずかしい出来で撃沈。それからしばらく姿を消して、2009年にカムバック。それ以降出演作は加速度を付けて増加し、2013年には12本が封切られた。文句なしのマラヤーラム映画界一の売れっ子。
■ディヴィヤ・プラカーシュ(クンジュ):ナスリヤ・ナシーム
沸騰するような活力の持ち主で、学業でも優秀、どこまでも陽性の魅力に溢れたディヴィヤ。MBAを取得して起業家になるという夢を持っていたのに、星占いのお告げで早々と結婚させられてしまう。ナスリヤについてはここに書いた。1994年生まれの19歳。幼少時からマーピラ・パーットゥと呼ばれるムスリム民謡の歌い手として活躍し、映画には子役として3本ほどに出演、TVではのど自慢番組の司会も務めていた。ヒロインとしては昨年2013年にデビュー、マラヤーラム・タミルの両映画界で話題をさらった。箸が転げたぐらいのことに堪えきれずにきゅふっと笑う、その表情としぐさには、強烈な破壊力がある。
■ミーナークシ:イシャ・タルワール
クッタンを翻弄するスチュワーデス。ここで紹介した中では唯一のムンバイ生まれの北インド人(公式サイトはこちら)。テレビCMに多く出演していたが、ニヴィンと共演したデビュー作 Thattathin Marayathu (Malayalam - 2012) が莫迦ウケして、以降「ほぼサウス女優」となっている。手っ取り早く出演作をチェックしたければ、短編映画 The Restaurant Couple がお勧め。
■ナターシャ:ニティヤ・メーノーン
ダースの忘れることのできない過去である女性。ニティヤについてはここで書いた。バンガロールで生まれ育った正真正銘のバンガロール・マラヤーリーだ。Aakasha Gopuram (Malayalam - 2008) でヒロインデビューした後、タミル、テルグ、カンナダでも活躍。どの映画界でも新感覚なオフビート系作品に出演している個性派。
■サラー:パールヴァティ・メーノーン
ラジオジョッキーとして成功した女性。その声に魅せられて、アルジュンは彼女をひと目見たいと願うようになる。パールヴァティのデビューは2006年で、メインの演技者たちの中ではちょっとお姉さんなイメージがある。異色の学園ドラマ Notebook (Malayalam - 2006) でのネガティブな陰を持つ役柄の演技が認められて、一味違うヒロインと看做されるようになる。役を選ぶタイプなのか、出演作はさほど多くはないが、タミルやカンナダでも秀作に顔を出している。

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【主要スタッフ】
■監督:アンジャリ・メーノーン
公式ブログあり。インタビューはこちら
■製作:アンワル・ラシード
本業は映画監督といっていいと思う。デビュー作 Rajamanikyam (2005) で、長らくお笑いを封印していたマンムーティにコメディー演技をさせ、なおかつ成功させた凄腕。コメディーを得意とするかに思わせておきながら、Kerala Cafe5 Sundarikal 中の短編では、張り詰めたシリアスな世界を展開する力も見せて、才能の幅広さを感じさせた。
■音楽:ゴーピ・スンダル
2006年ごろのデビュー以来、めきめきと頭角を現し、今では若手MDのトップと目されるようになった売れっ子。これまで上映した作品中でも Escape from Uganda1983Mr. Fraud の楽曲がこの人の手になるものだった。
■撮影:サミール・ターヒル
監督としても目覚しい活躍をしているカメラマン。デビュー作 Big B (2007) の冒頭シーンから歴然だが、雨や湖水、海面といった水っぽいものを撮らせたらこの人の右に出るものはいないと思う。

【マラヤーラム映画にとってのバンガロール】
バンガロールは、ケララ州の北に隣接するカルナータカ州の州都。ケララの大抵の場所から一晩バスか列車に乗れば辿りつけるほどの距離。根をおろした在住マラヤーリーの人口も相当に多い。全インド的にもトップクラスのIT産業の中心地であり、そのため国内外からの移住者も多く、近代的な町並みとコスモポリタンな雰囲気を誇る。そしてもちろん、カンナダ映画の中心地である。

ちょっと脱線するが、カンナダ映画にとってのバンガロールは、以前に紹介したラーガヴェーンドラさんのこの本によれば、「心の底からカンナダ人の街とみなされたことはない」のだそうだ(同書P.138)。そして、バンガロールが舞台になったカンナダ映画には二つの典型があり、ひとつは「のこのこ上京した田舎者が、色々酷い目に遭った末に暗黒街に落ち着く」ノワール系(例として MajesticKittiJogiDuniya が挙げられている)、もうひとつは「バンガロール育ちの中産階級の若者が恋に落ち、その成就のためになぜだか全力でバンガロールを離れようとする」ロマンス(例として Mungaru MaleGaalipata が挙げられている)なのだそうだ(同じ著者による Meanings Of The City より)。この説が妥当なのかどうかはここでは深入りしないが、ちょっと面白い話だと思う。

一方、マラヤーラム映画にとってのバンガロールはというと、No. 1 Snehatheeram Banglore North (1995) 以来(いや、これはパッと思い浮かんだだけで、実際はもっと遡るに違いない)の洒落た都会ものの定番の舞台なのだ。

マラヤーラム映画の都会ものの舞台で作例が多いのは、1.コーチン、2.ドバイ、3.バンガロール、4.チェンナイといったところ。コーチンはケララ州きっての商都だが、コンクリート・ジャングルとは程遠い呑気さで、クールな雰囲気が出ない。ドバイは超近代的な都市景観を誇るが、どうしたって出稼ぎ者の悲哀が付きまとう。チェンナイは、バンガロールと同程度に移住者が多く、ケララとの歴史的なつながりも強いはずなのだが、なぜだかさほど人気がない。いわゆるニューウェーブが盛んになるにつれて、マラヤーラム映画におけるバンガロールのプレゼンスは大きくなっていくばかりのようだ。その表れ方の特徴を一言で言うなら、「中産階級が占有する手の届くパラダイス」。ゲーテッド・コミュニティの高級フラットに住み、家ではマラヤーラム語、一歩外に出たら英語だけで生活し、故郷でのカーストや地縁や大家族から切り離されているが、寄る辺ない異境でもない、という不思議な空間。ケララ州内では実現しにくい、物質的な潤沢と個人主義、そして保守的なモラルからの解放が立ち現れる無色で抽象的な場であるのだ。ケララの衆が自州内にこうした場を持っていないのが幸なのか不幸なのかは判断できないが、南インド映画の世界に幾つか存在する「場の捩れ」現象のひとつとして興味深い。バンガロール・マラヤーラム映画として面白いのは 22 Female Kottayam (2012)、Olipporu (2013)、Silence (2013) なんていうあたり(必ずしも秀作とは言えないものもあるが)。

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【ついでに見るなら】
ナウでヤングなマラヤーラム映画の世界に興味をもたれたらお勧めしたい、本作のスタッフ・キャストがかかわった作品を、かなり悩んだ末に4本に絞って紹介。
1.Kerala Cafe (Malayalam - 2009)
旅をテーマにした10の短編からなるオムニバス。アンジャリ・メーノーンとアンワル・ラシードの監督作を含む。出演者にはファハド・ファーシル、ニティヤ・メーノーン。
2.Ustad Hotel (Malayalam - 2012)
監督はアンワル・ラシード、脚本をアンジャリ・メーノーンが担当。ドゥルカル・サルマーンとニティヤ・メーノーンが主演。ゴーピ・スンダルの音楽が素晴らしい。
3.5 Sundarikal (Malayalam - 2013)
こちらは女性をテーマにした短編オムニバス。アンワル・ラシード、サミール・ターヒルの監督作を含む。出演者にはファハド・ファーシル、ドゥルカル・サルマーン。ゴーピ・スンダルも1編中で音楽を担当。
4.Ohm Shanti Oshaana (Malayalam - 2014)
スクリーン上で相性のいいニヴィン・ポーリとナスリヤ・ナシームの共演作。秀作と言えるのかどうか正直なところ自信がないけど、乙女心後進地域のマラヤーラム映画にこんなのが出てきたかとひっくり返ること請け合い。

投稿者 Periplo : 00:26 : カテゴリー バブルねたkerala
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