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2014年08月23日

マラヤーラム映画新作上映1409-1

メディカル・スリラーというインド映画らしからぬ肩書き。字幕がつかないのが本当に惜しいのだが。今回の会場は川口ではなく市川なのでご注意を。

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Apothecary (Malayalam - 2014) Dir. Madhav Ramadasan

原題:അപ്പോത്തിക്കിരി

Cast:Suresh Gopi, Jayasurya, Asif Ali, Abhirami, Meera Nandan, Indrans, Thampi Antony, Neeraj Madhav, Kavitha Nair, Jayaraj Warrier, Arun, Seema G Nair, Jayan Cherthala, Raghavan, etc.

公式サイトhttp://www.apothecarythemovie.com
公式トレーラーhttp://youtu.be/hlmrmlBCb6Q

■日時:2014年9月6日、午後14:00開映(終映は16:45頃)
■料金:大人2200円、5-15歳の子供1000円、5歳以下の子供は無料(座席なし)、今回に限り座席指定制
■字幕:なし
■上映資材:DCP
■上映時間:ネット情報によれば約152分、15分程度のインターミッションあり
■会場:千葉県市川市、イオンシネマ市川妙典(こちら参照)1番スクリーン
※当日券の購入および前売り代金の支払いは、イオンシネマ3Fの共通チケットブースではなく、3F1番スクリーン入り口にて。受付開始は13:00ごろから。上映は14:00きっかりにスタートする。
※本上映入場者はイオン市川妙典の駐車場が3時間まで無料で利用できる。
※今回はインド・スナックのケータリングはなし。イオンシネマの売店でドリンク、スナックの購入が可能。

■主催者公式サイト(FB):https://www.facebook.com/CelluloidJapan
■参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/08/apothecary-malayalam-2014.html

※事前予約をお勧めします。申し込みフォームはこちら。万が一の直前の急な変更や今後の案内などもメールで受信できるようになります。こちらの注意書きも参照。

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【ざっくりとしたストーリー】
映画は、ドクター・ヴィジャイ・ナンビヤール(Suresh Gopi)が交通事故に遭い、意識不明の重態で自らの勤務先の高級私立病院アポティカリーに収容されるところから始まる。そこから彼の過去の物語が、現実と幻想の混交物として展開する。ヴィジャイは高い技能を持つ成功した神経外科医だったが、病院の利益追求体制は彼に医療の倫理に反する行為を強要する。アポティカリーの経営陣には談合体質が浸透し、特に大手製薬会社からの圧力はすさまじく、無料治療を好餌として貧しい患者に対して事実上の人体実験を行うまでに至っていた。試薬の違法な投与によって犠牲になる患者が増えるにつれて、ヴィジャイの良心は苛まれ、抑鬱症状が現れる。そんな中、新たに入院してきたスビン・ジョーセフ(Jayasurya)との出会いが、彼の人生を変えることになる。スビンは顔面神経に複雑な問題を抱えていたが、彼の経済状態は高度医療を要求することになるその治療をまかなえるものではなかった。やむなくスビンは無料入院と引き換えに実験的な医療を受けることに同意したのだった。

【みどころ予想】
Melvilasom (Malayalam - 2011) でデビューしたマーダヴ・ラーマダーサン監督の第二作目。この作品については以前にここで短評した。18年という長い下積を経たこの人の第一作は、新人離れした巧みな演出と適材適所のキャストによって強い印象を残した。100分ほどのランタイムのうちのほとんどが軍事法廷を舞台とし、アクションも踊りもなく、クローズアップを多用した緊迫した口頭弁論だけで進行する。そして、ラストでの衝撃的な真相開示は見事としか言いようがなかった。

ただし、これはヒンディー語舞台劇の翻案ということで、その成功に一定の留保があったのも事実。今回のようにオリジナル・ストーリーで撮ったらどうなるのかというのが蟠っていたのだ。しかし8月7日の封切り以降、好意的なレビューに恵まれ(「マスターピース」とまで讃えているものも見受けられる)、こうしたアート寄り作品としては珍しく順調に(これを書いている現在)3週目に突入している。

前作では舞台は軍事法廷だったが、今回は先端医療を行う私立の高級病院。ランタイム150分のかなりの部分が病院内であるらしい。最低辺から最高級のところまで、もちろんインドの医療には問題山積。その実情の一部は娯楽的なインド映画でも垣間見ることができる。だらだら血ぃ流して担ぎ込まれても、支払い能力を証明できないと包帯さえ当ててもらえないとか、あれはホントにあることだからね。本作でスポットが当たっているのは、その中でも薬にまつわる問題であるらしい。外国人をターゲットにした医療ツーリズムを国策として打ち出しているインドで、「ジャイアント」にたとえられる製薬会社が自国民(それも貧困層の)に対してどれだけ冷酷であるか。アーミル・カーンがホストをつとめたTVドキュメンタリー、Satyamev Jayate などで既にこの問題は広く共有されているようだ(The cost of medicine の回は必見)。

地位も名声もある医師と、教育程度も低い無知で貧乏な患者との対峙のなかで、医療の倫理と病院の利潤追求との衝突とを描く監督の手腕に期待したい。

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【主要キャスト】
■ドクター・ヴィジャイ・ナンビヤール:スレーシュ・ゴーピ
成功した神経外科医、アポティカリー病院に勤務。二人の女児の父。スレーシュ・ゴーピは、モーハンラール、マンムーティ、ジャヤラームと並ぶマラヤーラム映画界の熟年四天王のひとり。日本では過去に主演作 Kaliyattam/The Play of God [邦題:神の戯れ] (Malayalam - 1997) が映画祭上映されている。これはシェイクスピアの『オセロ』を翻案した芸術映画だったが、この人の本領は痛快ポリスアクション。インテリ映画好きからの絶大な不支持を獲得しながらも、圧倒的な体躯と雷鳴のようなキメ台詞によって悪人どもを薙ぎ倒すお巡りさんぶりは、庶民のファンから喝采を浴びている。実はこの3年ほど出演作が極端に落ち込み、何事かと思っていたのだが、アミターブ・バッチャンの司会で有名なTVプログラム・KBCのマラヤーラム版である Ningalkkum Akam Kodeeswaran のホストとして大忙しであったからのようだ。本作は主演としては3年ぶりになるカムバック作といっていいだろう。
■スビン・ジョーセフ:ジャヤスーリヤ
ジャヤスーリヤについては以前の上映の時に書いた。スレーシュ・ゴーピと並んで本作で最も高い評価を受けている。難病に冒された貧困層の男を演じるために13キロの減量を行ったという。もともと落とすほどの脂肪の持ち主ではなかったのだから、せっせとボディビルで蓄えた筋肉を減らしたということなのだろう。いや、ご苦労さんです。
■プラターパン:アーシフ・アリ
スビンとほぼ同時期に入院してきた患者。アーシフ・アリについては過去のレビューで「何でも屋のアリちゃん」などと酷いことを書いてしまったが、デビュー5年目にして、ドゥルカルやニヴィンなどの後発組に若干水をあけられてしまっているのは確か。本作での演技は、短い出番ながら一定の評価を得ている。あるいはこのような捻りのある脇役としての路線に進んでいくのかもしれない。
■ドクター・ナーリニ・ナンビヤール:アビラーミ
ヴィジャイの妻、産婦人科医。ヴィジャイと同じアポティカリー病院に勤務。演じるアビラーミについては、長らく「Virumaandi (Tamil - 2004) で鮮烈なデビューを飾ったタミル女優」と信じ込んでいたのだが、改めてフィルモグラフィーを見てみて吃驚。この人はトリヴァンドラム生まれのマラヤーラム女優で、子役としては1995年から映画に出演していたとのこと。2001年ごろにチェンナイに移り、タミル、テルグ、カンナダで活躍するも、Virumaandi を最後に米国に移り住み、中断していた勉学を続けたという。本作はきっかり10年後のカムバックということになる。かつての「野生の美女」が今はどんな奥様になっているのか、楽しみだ。
■デイシー:ミーラ・ナンダン
スビンに関係のある女性として登場するらしいのだが、詳細な役柄は不明。ミーラ・ナンダンは、ラール・ジョース監督に見出されてデビューした Mulla (Malayalam - 2008) では大型タレントの登場を予感させたが、どうもその後パッとせず、現在は「ゲストで登場すると凄く贅沢な感じがするヒロイン」になってしまった。しかし1990年生まれとまだまだ若いし、今後もマラヤーラム映画専従のヒロインとして良質な作品に出て欲しいものである。
■スビンの父:インドランス
田舎とはいえ、識字率100パーセントのケララにありながら、なぜか自分の名前すら書けない貧しい男。インドランスについてはここに書いた。映画コスチューム・デザイナー出身(しかしどうしてもミシンをキコキコ踏んでる姿を想像してしまう。なお、以前のポストでは勘違いして同一人物だとしていたが、国家映画賞衣装部門で二度も受賞しているデザイナーのインドランス・ジャヤンはイトコ)で、1985年ごろから映画出演を始め、1990年代中頃からは売れっ子コメディアンとなって現在に至る。本作の多くのレビューで、「インドランスに演技ができるとは」という驚きの声が聞かれたが、何を今更という感じだ。マラヤーラム映画脇役軍団の底力を舐めちゃあいけない。

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8月の7日の現地公開後の圧倒的好評を受けて即座に動いたマラヤーラム上映チームの機動力には感服。

投稿者 Periplo : 22:54 : カテゴリー バブルねたkerala
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2014年08月09日

カンナダ映画新作上映1409

日本よ、これがカンナダ映画だっ!!!

いや、別に過去に映画祭公開された Phaniyamma [邦題:パニおばさん]や Thai Saheba [邦題:母上様]、Upendra [邦題:ウペンドラ]を無視するつもりじゃない。だけど、ここに挙がったのはどれも1980-90年代の作品、つまり21世紀のカンナダ映画としては本作が一番乗りと言えるのじゃないか。ただ、正直なところ、記念すべき杮落としが他言語からのリメイク作(いかにヒットしたとはいえ)ってのがちょっと残念ではあるけどね。

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※TOKYOと書いてあるが埼玉県川口市のこと、念のため(しかし、「ドイツのチューリヒ」とか、色々酷いね)

Oggarane (Kannada - 2014) Dir. Prakash Rai

原題:ಒಗ್ಗರಣೆ
タイトルの意味:tempering
インド料理用語のテンパリング(少量の油を熱してスパイスを加え、油にスパイスの香りを移したところで、もろともにメインの素材に振り掛ける技法、または振り掛ける油そのもの)のこと。ヒンディー語ではタルカーと呼ばれ、ダール・タルカーなどのメニューがポピュラー。
タイトルのゆれ:Un Samayal Arayil (Tamil), Ulavacharu Biryani (Telugu) ※ただし、タミル・テルグ版とも一部脇役のキャスティングが独自のものなので、厳密には同じ作品とはいえない。

Cast:Prakash Rai (Prakash Raj), Sneha, Tejas, Samyuktha Hornad (Samyuktha Belawadi), Aishwarya, Urvashi, Mandya Ramesh, Achyuth Kumar, etc.

公式トレーラーhttp://youtu.be/LrqY7c1U6Hw(参考:タミル版テルグ版
全曲ジュークボックスhttp://youtu.be/lvC4pqWUI-0

■日時:2014年9月7日、開映13:30
■料金:大人2500円、5-15歳の子供1200円、5歳以下の子供は無料
■字幕:なし
■上映資材:DCP(と推定)
■上映時間:ネット情報によれば約122分
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/access/

■映画公式サイト(FB):https://www.facebook.com/Oggarane
■参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2014/07/oggarane-kannada-2014.html

※上映に際しては途中30分程度のインターミッションあり。別料金でインド・スナックのサービスあり。また、ペットボトルなどの自販機も会場にあり。

※事前予約をお勧めします。申し込みフォームはこちら

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【ざっくりとした粗筋:ネタバレ度70パーセント】 ※筆者が字幕無しで本作を観て判断した粗筋だが、オリジナルのマラヤーラム映画のDVD字幕から推測して書いている部分もある。間違いがあったらご容赦を。

マイソール在住で、考古学局に勤めるカーリダーサ(Prakash Rai)は、45になっても未婚の偏屈な変わり者。親戚の男(Mandya Ramesh)と料理人のバーブ(Achyuth Kumar)と共に気ままな独身生活を送っていた。仕事を離れたところでの彼の情熱はもっぱら美食に向けられていた。36歳の吹き替え声優のガウリ(Sneha)は、若い頃に占星術師から結婚すると相手が早死にすると予言され、その後の自由恋愛でも占いのことを知った相手から逃げられ、ハイミスと呼ばれる年齢に差し掛かっていた。彼女はケララ人の美容師のマリア(Urvashi)、女学生のメーガナ(Samyuktha Hornad)などの女性たちと共に賑やかに暮らしていた。

ある時、ガウリは好物のケララ風クッティ・ドーサを宅配で頼もうと電話をかける。しかしそのコールは番号間違いで、受信したのはカーリダーサだった。噛み合わないやり取りの末に二人は罵り合って電話を切る。脇で面白がって見ていたのはカーリダーサの甥で就活中のナヴィーン(Tejas)。彼はその携帯を使ってガウリ宛に詫びのSMSを勝手に送る。受信したガウリの側ではメーガナがお節介を焼き、渋るガウリを説得してカーリダーサに詫びの電話を入れさせることに成功する。この通話で、お互いがかなりのグルメであることを知った二人は急速に親近感を覚え、頻繁に電話で話し合うようになる。やがて二人は実際に会ってデートをすることを考えるようになるが、いざ約束の日になって、自分の年齢や容貌に引け目を感じて気後れし、あろうことかナヴィーンとメーガナをそれぞれ影武者として送り出す。

実はしばらく前にひょんなことから一度出会っていたナヴィーンとメーガナは、カーリダーサとガウリとして面会し、ぎこちない会話を交わして別れる。二人は帰宅後に、思ったより相手は若かったので不釣合いだとそれぞれ報告する。カーリダーサとガウリはもう電話で話すこともできなくなり、失意の底に沈む。一方ナヴィーンはメーガナが忘れられず、機会を捉えてはアタックし、やがて二人は相思相愛の仲になる。しかしこのカップルはあくまでもカーリダーサとガウリとしてお互いに身分を偽り続けていたのだった。

本物のカーリダーサとガウリにはこの先真の出会いが起きるのか、ナヴィーンとメーガナはお互いの嘘を告白して心おきなく恋を謳歌することができるようになるのか?

その他のキャラクター
■カーリダーサの同僚(Aishwarya):カーリダーサがいつまでも結婚しないことを案じて助言する。
■ジャッカイヤ(unknown actor):先住民の老人。とある事情からカーリダーサが保護して自宅に住まわせる。しかしこれを誘拐と見る人権保護局はカーリダーサと対立することとなる。

【主要キャスト:キャラクター】 ※下のイメージには本作のスチルからではないものも含まれる
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プラカーシュ・ラーイ(ラージ):カーリダース
プラカーシュ・ラーイに今更説明の必要もないだろうとは思うのだが、ベーシックなことだけ書いとく。1965年生まれ、出生地はバンガロールともマンガロールとも言われハッキリしない。母語もまた、カンナダ語とされていたりトゥル語だったり(両方なのかも)。いずれにしろ「ラーイ」という本名から、映画界に多様な人材を輩出しているバント・カーストの出身であることが想像される。カンナダ語のTVと映画からキャリアをスタートし、Duet (Tamil - 1994) での悪役演技によってタミル映画界でブレイクし、以降サウス4言語とヒンディー語映画界で縦横に活躍、最も高額の出演料を稼ぐ悪役俳優の一人とみなされることになる。そうやってせっせと稼いだギャラを元手に(?)2002年からはプロデュースに進出し、2010年からは監督業にも手を染めている。自身で製作や監督を担当した作品群もそこそこ見てみたのだが、多少例外はあるものの、なんていうか、大抵がキャワユくて、胸キュンで、心温まるストーリーなんだよね。ハードコアでやりすぎの悪い奴の芝居が好きなこっちにとっては若干鼻白む部分もあるんだけんど。製作・監督・主演、しかも3言語同時製作という気合いの入った本作でも、胸きゅんワールドが炸裂しているので、こころして臨まれたい。
スネーハ:ガウリ
焦り気味のオールドミス役をやるには若々しすぎるんじゃないかと気の毒になったスネーハは、1981年生まれ。この人のバイオグラフィーもあまりはっきりとしない部分が多いのだが、ムンバイ生まれで湾岸育ち、両親はタミルに根を下ろしたテルグ人であるらしい。南印4言語映画に出演しているが、本拠地はタミル映画界と考えていいと思う。北インドやケララ出身の女優が席巻するタミル(テルグもだが)映画界で、地元出身ヒロインとして孤軍奮闘するにあたっては、色々と面倒もあったらしい(私には文句が言いやすいから、みんな私に当たるのよ!ってとこか)。しかしその代わり息の長い活動を続けることができ、2012年に俳優のプラサンナーと結婚してからもマイペースで仕事をしている。個人的には、初期の頃の「東宝シンデレラ」的まとまり加減、ぼってり塗りあげるメイクのセンスには馴染めないものがあったが、4年ほど前か、マラヤーラム映画に顔を出すようになった頃から、しっとりとしたいい感じになってきたものだと感心し、ちょっと見直し中。これまでの代表作は、大家族から切り離されて新婚生活を送る女性の孤独を描いた Pirivom Santhippom (Tamil - 2008) など。
テージャス:ナヴィーン
カーリダースとガウリを応援するつもりなのに、目の前に現れたガウリ(実はメーガナ)を見てトキめいてしまう、困った現代っ子ナヴィーン。演ずるテージャスはハイダラーバード生まれのテルグ人で、本作がデビューとなる。ごく最近までスポーツとしてポロをたしなんでいたというのだから金持ちのボンボンなのだろう。俳優を志願するようになってからはテルグ映画界のテージャ監督の下で助監督として修行しつつチャンスをうかがっていた。本作に続き、既に2本のテルグ映画と1本のタミル映画への出演が内定しているという。
サムユクタ・ホラナード:メーガナ
祖父母は高名な演劇人(こちらなど参照)、母のスダー・ベラワーディは女優、オジのプラカーシュ・ベラワーディも映画監督という芸能一家の生まれ。2007年ごろデビューし、Lifeu Ishtene (Kannada - 2011) でヒロインをつとめ、一定の評価を得た。こちらのインタビューなどを読むと、新進ではあるものの比較的慎重に役を選ぶ人であるようだ。
アチュト・クマール:バーブ
主人公カーリダースにヘッドハンティングされる腕利きの料理人。ストーリーにはあまり絡まないにも拘わらず、本作の「胸キュン」の肝はこの料理人にあるといっても過言ではない要の役。タミル版ではタンビ・ラーマイヤー、テルグ版ではブラフマージーが演じている。アチュト・クマールは演劇界出身の実力派性格俳優だが、正確なフィルモグラフィーは分かっていない。既にかなりの数の出演作があるようだが、注目を浴びたのは何といっても Lucia (Kannada - 2013) での映画館主/スター俳優のマネージャーの一人二役によって。Lucia でも本作でも、なにやら可愛げのある壮年男というイメージにぶれはないのだが、遡って改めて Aa Dinagalu (Kannada - 2007) でのギャング役など見てみるとかなり笑えると思う。
マンディヤ・ラメーシュ:カーリダースの親戚
カーリダースと何となく同居して呑気に暮らす独身の中年男。オリジナルのマラヤーラム版に無かったキャラクター。タミル版ではイランゴー・クマラヴェール、テルグ版ではMSナーラーヤナが演じている。マンディヤ・ラメーシュは演劇界出身のベテランで、今でも舞台が活動の中心ながら、90年代中頃にデビューした映画の世界でも100本超の出演作がある。代表作は、プラカーシュ・ラーイが主役の芸術作品 Nagamandala (Kannada - 1997) あたりか。
アイシュワリヤー:カーリダースの同僚
マラヤーラムのオリジナルでは男性だった同僚が、なぜかリメイクでは女性に変わっている。演じるアイシュワリヤーは Yajanan [邦題:ヤジャマン]で既に日本のスクリーンにもデビュー済み。この人のバックグラウンドもなかなかに迫力があり、祖父は、今日のアーンドラ・プラデーシュの生まれながら南インド映画界全域でボーダーレスに活躍した監督・俳優のYVラーオ(カンナダ映画界では初のトーキー作品の監督として名を残している、こちら参照)、母は Jeans [邦題:ジーンズ 世界は2人のために]や Padayappa [邦題:パダヤッパ]のラクシュミ。過去作品では、プラカーシュ・ラーイの妻役を演じた Aakasamantha (Telugu - 2009) などが印象に残る。
ウルワシ:美容師マリア
この人についてはかなり前にちょっと書いた。ただし、この時点では近過去のヒロイン女優としての紹介だったのだが、現在ではすっかりいいオバさんになって、肝っ玉母さんキャラが定番となっている。また、マノージKジャヤンとは離婚し、その後の再婚相手との間に一児をもうけている。30年以上の芸歴の中で代表作を挙げるのは難しいが、最初期に出演したカンナダ映画 Shravana Banthu (Kannada - 1984) を、撮影中の興味深いエピソードと共に紹介しておきたい。

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【トリヴィアなど】
プラカーシュ・ラーイ監督・主演・プロデュースの、話題の3言語(カンナダ、テルグ、タミル)同時製作映画。結果的にテルグ版、タミル版の評判は芳しくなく、上映も長続きせず、一方でカンナダ版は批評家受けもよくロングラン街道を邁進中。脇役のキャストを一部変えているとはいえ、基本的にストーリーは同じはずなのにこういうことが起きるのだから面白い(ちなみに原作である2011年のマラヤーラム映画 Salt N' Pepper も大ヒットした)。タミル版への容赦のない酷評はたとえばこちら、同じくテルグ版に対してはこちらで読める。

ついでだから他言語同時製作と吹き替え版の違いについてもちょっとまとめておく。

ある言語でヒットした映画を他の言語圏に持ち込む場合、リメイクと吹き替え(現地では dub と称される)の二つの可能性が考えられるが、一般論としては前者の方が格が上、後者は安っぽいプロダクトと見なされる。前者は、製作発表からオーディオ発売、封切りまで、プロモーションもしっかり行われることが多いが、後者はひっそりと作られ、場末館でのみ上映される隙間商品のような扱いのことが多い(ただし、アッル・アルジュン主演作のマラヤーラム語吹き替え版なんかだとどんな感じなのか、調査が必要)。

それでは本作のような他言語同時製作はどうなのかというと、たとえばカンナダ語版を撮影・編集して完成させた後にタミル語・テルグ語音声を載せるというようなことは基本的にはやっていないはずなので、吹き替えとは違う。やはりこれらは3本の別々の作品なのだ。こうした作品の撮影時には、登場人物の口の動きが分かるようなバストショット以上の近接ショットは、3言語分、3回ずつテイクするのが普通であるようだ(アフレコを前提とした話である)。

プラカーシュ・ラーイは3言語いずれにも堪能、スネーハはタミル&テルグはいけるけどカンナダは駄目、テージャスはテルグ語ネイティブでタミル語はまあまあ、カンナダ語はからっきし、サムユクタはカンナダ語ネイティブでタミル・テルグは心許ない。こんな状況下で、たとえばテージャスの台詞が多いシーンを撮る場合には、最初にテルグ版をテイクしてテージャスが感じをつかんだ後でタミル・カンナダ版のテイクに移る(いずれにしてもタミルとカンナダではテージャスの声は使われず、声優が台詞をあてることになるわけだが)とか、気の遠くなるような煩雑さだ(このような現場でのシステムをテージャスとサムユクタがそれぞれに証言している、こちらこちら)。

これだけの手間をかけて、話題づくり以上の何かメリットがあるのだろうかといつも思うのだが、まあチャレンジャーにとってはチャレンジし甲斐のあるものなんだろうね、としか言えない。そして、本作のように言語によって評価が劇的に異なるという結果を見せつけられると、インドの多言語の森の奥深さにクラクラするのである。

【付記】
南印主要4言語の映画中では、もっとも国外で上映されることが少ない(それどころか、他言語作品と競合しての自州内での上映率も最低なのではないかと疑っている)カンナダ映画だが、こちらの記事によれば、最近になって在外カンナダ人コミュニティー向けの上映を行う組織的な動きが少しずつ起こっているようなのだ。今回の川口での上映が定例会化するものなのかどうかはまだ分からないが、初回の動員が好調ならば次もあるかもしれない。新作のカンナダ映画をガンガン見たいという向きは、お誘い合わせのうえ、足を運ばれたい。

投稿者 Periplo : 21:15 : カテゴリー バブルねたkannada
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