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2016年07月15日

7月のカンナダ映画

今年前半のカンナダ映画の最大の収穫との呼び声も高い。「エモーショナルなスリラー」であるという。
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Godhi Banna Sadharana Mykattu (Kannada - 2016) Dir. Hemanth M Rao

原題: ಗೋಧಿ ಬಣ್ಣ ಸಾಧಾರಣ ಮೈಕಟ್ಟು
タイトルの意味:Wheatish Complexion Average Build
※「小麦色の肌、中肉中背」とは、尋ね人の広告でよく見られる表現。ここで言う小麦色とは、日本での使われ方とは違い、白皙でもなければ漆黒でもない平均的なインド人の肌色を示す。
タイトルのゆれ:GBSM, Godhi Banna Sadharana Maykattu, Godi Banna Sadharana Mykattu, etc.

Cast:Rakshit Shetty, Anant Nag, Sruthi Hariharan, Achyuth Kumar, Vasishta N Simha, Ravikiran Rajendran, Aruna Balaraj, etc.

Music:Charan Raj

公式トレーラー(英語字幕つき):https://youtu.be/aPk9fBdtugg
全曲ジュークボックス:http://godhibannasadharnamykattu.com/audio/

■開催日:2016年7月31日(日)
■時間:13:15開映(チケット販売・引き換えは12:00から、映画は16:00頃に終了予定)
■料金:大人1500円、12-16歳の子供1000円、12歳以下の子供は無料
■字幕: 英語
■上映資材:DCP
■上映時間:ネット情報によれば約144分
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/access/
※インターミッションに別料金でスナックの販売あり。

■映画公式サイト:http://godhibannasadharnamykattu.com
■主催者公式サイト:なし
■参考レビュー集成:http://periplosjottings.blogspot.jp/2016/06/godhi-banna-sadharana-mykattu-kannada.html

※事前予約をお勧めします。申し込みフォームはこちら。万が一の直前の急な変更などもメールで受信できるようになります。なお、この申し込みフォームはオートリプライに対応していません。申し込みから確認メール返送までしばらく時間がかかることがあります。
※フォーム中のLocationはothersを選択すればOK。Organizationの欄はNAなど適当に。一番下のyour suggestions/wishes to TKBは必須項目だが、何か記入されていれば日本語でも問題なし(TKB=Tokyo Kannada Balagaとは在京カンナダ人会のこと)。なお、電話番号欄はハイフンを入れると認識されないことがあるようだ。

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【粗筋】
ムンバイで多忙な銀行マンとして暮らしているシヴァ(Rakshit Shetty)は、昇進とニューヨークへの転勤が視野に入ってくるようになり、故郷のバンガロールに一時帰省する。バンガロールでは、アルツハイマーと診断されて介護老人ホームに入所している父のヴェンコーブ(Anant Nag)に再会する。連れ立って買い物に出かけた際に、シヴァは父に苛立って暴言を吐いてしまうが、その後父は行方不明になる。シヴァはホームの精神科医であるサハナー(Sruthi Hariharan)に助けられながら父の捜索を始める。

ヴェンコーブは、入り組んだ経緯からギャングのランガ(Vasishta N Simha)によって拉致されていたのだった。ランガと手下のマンジャ(Ravikiran Rajendran)は、たまたま行きがかったクマール(Achyuth Kumar)をも巻き込み、ヴェンコーブを人質として立てこもる。

【主要キャラクター/キャスト】
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■ヴェンコーブ・ラーオ/アナント・ナーグ
66才のアルツハイマー患者。妻は既に他界している。演じるアナント・ナーグは絶賛されているが、これまでのキャリアを考えれば、これくらいはチョロいものだったろうと推測。映画デビュー第二作目にあたる Ankur [邦題:芽ばえ] (Hindi - 1974) が日本の映画祭で初上映されたのが1983年のこと。悪役的性格の強いヒーローとして鮮烈な印象を残した。同じころに前後して上映された Bhumika [邦題:ミュージカル女優] (Hindi - 1977) 、Nishant [邦題:夜の終わり] (Hindi - 1975) 、Manthan [邦題:撹拌] (Hindi - 1976) にも脇役として登場し、当時のインド映画愛好家の間ではお馴染みの顔だった。上記はすべてシャーム・ベネガル監督によるもので、いわゆる「インディアン・ニューシネマ」の代表作。このことから筆者は長らくこの人を北インド人と誤解していたが、実際にはサウス人、ただし言語的バックグラウンドは複雑。1948年にコーンカニー語話者の両親の元に生まれた。出生地はボンベイとも北カルナータカとも言われてよくわからない。幼少期にはカルナータカ南部の僧院に送り込まれ、厳格なバラモンとしての教育を受けた(つまりサンスクリット語とカンナダ語で生活していたことになる)。高校生相当の年頃にボンベイに移り、ここから英語、ヒンディー語、マラーティー語の世界で生きることになり、同地で高まっていた演劇運動のうねりに身を投じた。映画デビュー後1979年ごろにバンガロールに居を移し、以降はカンナダ映画界を本拠地としている。大スターだった弟シャンカル・ナーグ(交通事故で若くして亡くなった)との共演・共同プロデュース作も多い。出発点は芸術映画だったが、その後の役柄はバラエティに富み、軽妙なコメディーから社会派スリラーまで何でもこなすようになった。2000年過ぎあたりからはメジャースター主演作でのお父さん役が定位置になったが、やはりそれは役者としては物足りないものだったのだろう(こんなこと言ってるし)。本作でのアルツハイマー患者の役は、遠い昔に戯曲を読んだアーサー・ミラーの『セールスマンの死』を思わせるものがあり、演技者魂を刺激するものがあったとインタビューで語っている。
■シヴァ(シヴァ・ラーオ)/ラクシト・シェッティ
ヴェンコーブの息子。ムンバイで投資銀行に勤める独身男。ラクシト・シェッティについては、昨年上映の Vaasthu Prakaara のところで簡単に紹介した。
■ドクター・サハナー/シュルティ・ハリハラン
養護老人ホームでヴェンコーブを担当する精神科医。ヴェンコーブに対しては特別な親しみを感じている。シュルティ・ハリハランは、ルーツをケララ州パーラッカードにもつタミル人だが、バンガロールっ子として育った人であるらしい。元々はダンサー志望で、女優デビュー前はバックダンサーを3年ほどしていたという。そのダンスの技量はまだ充分には披露されてないようだが、この先に期待したい。まだ新進の部類に入るキャリアだが、デビュー2作目(そして初めてのカンナダ映画、初めての主演)となった Lucia (Kannada - 2013)の圧倒的な成功によって存在感を示した。それ以降の出演作に大ヒットが出ていないのが気になるところだったが、本作によってカンナダ映画界ではトップ女優の域に近づいたのではないかと思える。
■ランガ/ヴァシシュタ・シンハ
無口なギャング。とある人物を事故に見せかけて殺すようボスに命令されている。ヴァシシュタはソフトウェア・エンジニアから転身した人。Raja Huli (Kannada - 2013) での悪役演技で一躍注目されるようになった。

【トリヴィア】
東京カンナダ人会による上映はこれで5本目、これだけ続くとそのセレクションにはっきりとした傾向が見て取れる。つまりカットアウトが立つような大スターのビッグバジェット・アクション映画を避け、無印で良質な脚本本位な低予算映画を持ってきているということだ。理由は色々あるのだろうが、運営メンバーの一人によれば、何よりもファミリーが安心して見られる(つまりバイオレンスの少ない)ということを重視しているのだという。このあたり、本国でならA認証になるようなウルトラ暴力映画を未就学児と共に楽しむ在日テルグ人観客などと比べると興味深い。

女子供への思いやりからとはいえ、こうした作品への志向性は、本国での観客の動向とも無縁ではないようなのだ。2010年を過ぎたあたりからぽつぽつと現れてきた一風変わった作品群(筆者は特にこの時期以降のヨーガラージ・バットとドゥニヤ・スーリの両監督の作品を重要なものと考える)は、マラヤーラム映画のニューウェーブのように映画界を一変させることはなかったが、こつこつとした積み重ねが緩やかな地殻変動を起こそうとしているようにも見える。共通した作風はないものの、従来の芸術映画とは明らかに風合いが異なるし、常に作られ続けている単に低予算なだけのB級系でもない。特に2013年の Lucia、そして2014年の Ulidavaru KandantheUgramm は、こうした傾向の作品でも製作費を回収し、場合によってはロングランとなれることを示し、若い映像作家たちを勇気づけたようだ。

エンジニアから転じ、助監督/短編映画作家を経て、本作が長編劇映画の監督デビューとなるヘーマント・ラーオも、そうした一人であったことを認めている。そして、6月3日の封切り以降、絶賛を浴びながらドリームランを続け、リメイク権も方々に売った本作は、もしかしたらこの流れの重要な結節点となるのかもしれない。カットアウトが立つことはないが、上に述べた映像作家や作品と密接に関わっている、本作の大変に魅力的なキャストの名前を見ていると、そんなことも予想され、期待は否応なしに高まってくるのである。

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投稿者 Periplo : 04:27 : カテゴリー バブルねたkannada
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