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2019年06月14日

2本連続上映・6/29魅惑のテルグ映画第3回・その1

爺ちゃんはバーガヴァタムを書いたんだと思ってた。でも本当はこの現実の世界を書いていたんだ。

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Krishnam Vande Jagadgurum (Telugu - 2012) Dir. Krish

原題:కృష్ణం వందే జగద్గురుమ్
タイトルの意味:Praise Krishna, the Guru of the Universe
タイトルのゆれ:KJV, Ongaram(タミル語吹き替え版のタイトル)、 Krishna Ka Badla(ヒンディー語吹き替え版のタイトル)、Action Khiladi(マラヤーラム語吹き替え版のタイトル)
Cast:Daggubati Rana, Nayantara, Milind Gunaji, Murali Sharma, Kota Srinivasa Rao, Posani Krishna Murali, L B Sriram, Raghu Babu, Brahmanandam, Adithya Menon, Annapoorna, Satyam Rajesh, Hema, Ravi Prakash, Kishore, Roopa Devi, Hazel Keech (dancer), Sameera Reddy (special appearance) , Venkatesh (special appearance), etc.

Music:Mani Sharma

公式トレイラー:https://youtu.be/Gbv6mDaV_UE
全編動画(英語字幕付き):https://youtu.be/u0NwoZBCa2U
全曲ジュークボックス:https://youtu.be/OWtXzr9cyQg

■開催日:2019年6月29日(土)
■時間:開映12:30(開場と予約ランチの引き渡しは11:30ごろ、受け付けは12:00ごろから。映画は15:30前に終了の予定)、2本目の Nene Raju Nene Mantri の開映は16:00ごろ ※いずれも若干の後ろ倒しの可能性あり
■料金:1作あたり大人2400円(予約2200円)、12歳以下の子供1400円(予約1200円)、5歳以下の幼児は無料(シート無し)
■字幕: 英語
■上映資材:DCP
■上映時間:約139分
■会場:埼玉県川口市、SKIPシティ、彩の国ビジュアルプラザ http://www.skipcity.jp/visit/access/
※11:30ごろから、インド弁当ランチの販売あり(要予約)。インターミッションにスナックの販売あり。

■映画公式サイト(FB):https://www.facebook.com/KrishnamVandeJagadgurum/
■主催者公式サイト:http://indoeiga.com/
■今回特集の特設サイト:https://note.mu/miwaku_telugu(速報はツイッターを参照)
■参考レビュー集成:https://periplosjottings.blogspot.com/2015/02/krishnam-vande-jagadgurum-telugu-2012.html

※事前予約をお勧めします。申し込みフォームはこちら。万が一の直前の急な変更や今後の案内などもメールで受信できるようになります。

【粗筋】
ハイダラーバードを本拠地に活動するスラビ劇団の若手役者であるバーブ(Daggubati Rana)は、大衆演劇の将来性に悲観的で、別の道を志している。アメリカの工科系大学で勉強するための奨学金を得ることに成功した彼は、育ての親であり劇団の座長であるスブラマニヤム(Kota Srinivasa Rao)に渡米の意思を告げる。スブラマニヤムは、渡米はカルナータカ州バッラーリで行われる演劇祭での公演に出演してからにするように求める。彼は、『バーガヴァタム(バーガヴァタ・プラーナ)』に基づいた新作を書き下ろしており、その主役をバーブに演じて欲しいのだ。バッラーリはスブラマニヤムの故郷であるだけでなく、彼が孤児のバーブを引き取った場所でもある。それに対しても言葉を濁すバーブに失望して、スブラマニヤムは急死してしまう。養父の死期を早めた自責の念から、バーブは劇団とともにバッラーリに赴くことにする。バッラーリに到着し、公演準備をするバーブは、バンガロールから来たジャーナリスト、デーヴァキ(Nayantara)と出会い、惹かれるものを感じる。彼女はバッラーリで大規模に行われている違法な鉱物資源採掘とその中心人物レーダッパ(Milind Gunaji)のことを追っている。彼女と、彼女と接点を持ったバーブとは、レーダッパの手下と思われる刺客に繰り返し襲われる。それと同時にバーブは、これまで知らなかった自身の両親の殺害事件とその下手人について聞き、復讐を心に誓う。わずかな期間におびただしい流血が起きながらも、「バーガヴァタム」初演の、ダサラー祭の日がやってくる。

【主要キャラクター/キャスト】 ※イメージは本作のスチル以外のものも含む
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■バーブ/ダッグバーティ・ラーナー
孤児だったがスブラマニヤムに引き取られ、工科大学に進んだ。その体格の良さから、スラビ劇団でもヒーロー役を演じることが多い。
■デーヴァキ/ナヤンターラ
バンガロール・ベースのジャーナリスト。硬派なテーマを追い求め、上司の制止も聞かずに危険な取材に飛び込んでいく。ケーララ出身のナヤンターラは本作ではセルフダビングをしているという。
■スラビ・スブラマニヤム/コータ・シュリーニヴァーサ・ラーオ
スラビ劇団の座長で、自らが舞台に立ちながら、演出や戯曲執筆も行う。バーブからは「お爺ちゃん」と呼ばれている。
■レーダッパ/ミリンド・グナージー
いわゆる鉱物資源採掘マフィアのドン。1969年から始まったバッラーリの違法採掘の中心人物。このキャラクターのモデルは、実在の採掘事業者・政治家のガーリ・ジャナールダナ・レッディであるという。
■カルナーティ・チャクラヴァルティ/ムルリ・シャルマー
レーダッパを付け狙う男。
■パイディラージュまたの名をマッティ・ラージュ/LBシュリーラーム
バッラーリの採掘地から追われた部族民の男。精神のバランスを崩し、「土を隠す」と言って籠で土砂を運び続けている。

◆その他の人々◆
■サイダ/プラバーカル
レーダッパの手下。「カーラケーヤ王」プラバーカルの定位置の役どころはこんな感じ。
■ティップ・スルターン/ポーサーニ・クリシュナ・ムラリ
バッラーリに住むドライバー。
■ランガスターラ・パンディットまたの名をランパン/ブラフマーナンダム
自称演技術のグル。
■ヴィーララージュ/ラグ・バーブ
スラビ劇団の俳優。

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【トリヴィア】
今やテルグ映画界のトップ監督の1人となったクリシュの2012年の作品。ラーナーにとってはデビュー3年目の第6作目となる。ヴィシュヌ派の重要な聖典である『バーガヴァタ・プラーナ』のイメージを縦横に織り交ぜながら、部族民からの収奪と違法な鉱物資源採掘による自然破壊という社会問題をスリラーに仕立て、陰鬱な世界に神話的ヒーローが屹然と立つ、詩的想像力に裏打ちされた活劇を作り上げた。カーヴェーリ川長治さんのレビューで述べられている「神の似姿」としてのヒーローを、ラーナーはその体格を生かして見事に演じている。特に格闘シーンでの暴れっぷりは天晴れだが、センサーで随分カットされたらしい。ディレクターズカットが見たいところ。

◆舞台
本作の主要な舞台はカルナータカ州バッラーリ。アーンドラ・プラデーシュ州のラーヤラシーマ地方と隣接していることもあり、テルグ語話者住民も多い。2000年代後半から違法鉱物資源採掘問題で大揺れになり、それに題材をとった映画作品もいくつか作られた。Prithvi (Kannada - 2010) や Bachchan (Kannada - 2013)などがそれ。こうした問題はバッラーリだけでなく、インドの他の地方でも起きているが、そこにはトライブ(部族民)と呼ばれる先住民の権利問題が絡むことが多い。本作にも村を焼かれて追われるトライブの集団が登場する。トライブへの性急な同化圧力に歯止めをかけるために、独立以来インド政府はその居住地(ほとんどの場合辺鄙な山地部)の開発を法律で制限してきたが、それら山地部に換金性の高い鉱物資源が発見されるようになると、民間の採掘業者が禿鷹のように群がり、法規制の網の目をかいくぐり、乱暴な開発を推し進めることになった。それによって土地を奪われ追い詰められたトライブに、ナクサライトと呼ばれる極左ゲリラ集団が合流して、壮絶な武力闘争も多発した。これは2009年ごろから特に目に付くようになってきた現象で、映画祭公開された『ニュートン』の背景ともなっている。このあたりをもっと知りたければ、『小さきものたちの神』で名高いアルンダティ・ロイによるルポルタージュ『ゲリラと森を行く』を読んでみるのもいいかもしれない。このルポの舞台はバッラーリではなく、アーンドラ・プラデーシュとオディーシャの州境地帯だが、テルグ映画への面白い言及もある。

◆スラビ劇団
インド映画の草始期における民衆演劇の影響の重要性については、Kaaviya Thalaivan の時に若干書いた。1885年に旗揚げされ、現在も奇跡のように残って活動している実在のスラビ劇団については貴重なドキュメンタリー動画(英語字幕付き)もある。本作中ではスラビのレパートリーが分かりやすく展開するわけではないが、5つある舞台シーンはそれぞれ「アビマンニュの死」「ガトートカチャの死」「地底の女神(Patala Bhairavi)」「キーチャカ殺し」「バーガヴァタム」となっている。最初の2つは『マハーバーラタ』第七巻の32-51章と122-154章から来ている。「地底の女神」だけは神話ではなくフォークロアで、同名の映画作品はNTRシニアの出世作となった。「キーチャカ殺し」も『マハーバーラタ』第四巻の13-23章からだが、これを題材にした Narthanasala はテルグ神話映画の傑作のひとつ。「バーガヴァタム」は「クリシュナム・ヴァンデー・ジャガドグルム」というタイトルの新作という設定だが、『バーガヴァタ・プラーナ』に基づき、ヴィシュヌの10化身を順番に紹介し、クライマックスはナラシンハでしめるものらしい。ナラシンハと言ったら、やはりテルグの神話映画の金字塔である Bhakta Prahlada が思い出される。

◆タイトル
サンスクリット語のタイトル Krishnam Vande Jagadgurum (Praise Krishna, the Guru of the Universe) は『バガヴァッド・ギーター』の第2章からとられたと説明するレビューは多いが、実際に訳書を見てみてもこの文言は見当たらない。実はこの文句は、学術的な校定本からは削除されしまう「ギーター・ディヤーナム」と呼ばれるシュローカの一種で、『バガヴァッド・ギーター』が祈りの場で朗誦される際に、章ごとの頭で歌われるもの。シュローカ全体の訳はこちらの文書の6ページ目にある。ここを読むと、本作のヒロインの名前がデーヴァキであることも腑に落ちる。このタイトルは、そのまま劇中歌(劇中劇中歌)としてのクライマックスの長大なソングに繋がっている。難しいサンスクリット語の単語が散りばめられているにもかかわらず、このソングは大変に高い評価を得たようで、歌詞の解題を試みている人が何人も見受けられる(たとえばこちら)。

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投稿者 Periplo : 01:30 : カテゴリー バブルねたtelugu

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